璃奈「ねえみんな。ゲームしよう」 5

139ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 08:53:48.11ID:Dc9V1hN/

自分の立場を顧みずかすみちゃんに全身の協力を捧げたせつ菜ちゃん。
そんなせつ菜ちゃんが自分の目的のために歩夢ちゃんを傷つけるわけがない、そう言うしずくちゃんの気持ち。
でも、だからこそ今日せつ菜ちゃんが自分の目的のために──あるいはかすみちゃんのために、動いたという可能性。
仮にそうだったとして、その行為を責めるような言い方は許さないと言う果林ちゃんの気持ち。

そのどれも、苦しいほどによくわかる。
よくわかるから──わからなくなる。


果林「せつ菜の話はいったんいいわ。ひとまず、次に進みましょう」

しずく「だったら次は果林さんが話してください」

しずく「一方的に対立して疑うような物言いばかりされて、納得がいきませんから」

果林「……いいけど」


少しだけ瞳に涙を浮かべて強い視線を寄越すしずくちゃん。
果林ちゃんは渋い声で答えると、一秒だけ私の方を見た。

すぐに視線を戻して、果林ちゃんは話し始める。

 

140ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 08:57:04.71ID:Dc9V1hN/

果林「私は、起きてすぐに彼方の部屋を訪ねたわ。このゲームで最も重要な立ち位置にいるのが彼方なんだから、万が一なにかあっちゃいけないと思ってね。部屋も隣だし、それが私の役目だと思ったから」

果林「…で…彼方と話してるうちに愛も来て、裁判が始まるまで三人で一緒にいたわ」

果林「ね?彼方、愛」

彼方「………!」

愛「うん、そだね。愛さんはちょっとだけ寝坊しちゃって、五分くらいかな?遅れてカナちゃんの部屋に駆けつけたら、カリンもいたよ。そっからは三人で話してた」

彼方「……そうだね。間違いないよ」

果林「そもそも、せつ菜の話が裏付けになると思うけど、階が違う私が起きてから歩夢の部屋に行って秘宝を奪って部屋を出る──どう頑張っても二、三分はかかるでしょう。それをせつ菜が気付かなかったってことになるわけだけど」

せつ菜「う、そうですよね……」


果林ちゃんの部屋は四階の奥。
歩夢ちゃんの部屋は二階の奥で、その手前にせつ菜ちゃんの部屋があって、しかもせつ菜ちゃんが言うには起きてすぐに部屋を出て歩夢ちゃんの部屋の前にいたらしい。
そうなると、他でもないせつ菜ちゃん自身が自分以外全員の無実を証明することになる。

 

141ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:00:26.66ID:Dc9V1hN/

せつ菜ちゃんの隣で、しずくちゃんが困惑したように眉尻を下げる。
一応しずくちゃんとエマちゃん、愛ちゃんの話も聞いておきたいけど……正直、そうする意味があるか疑わしいほどに、状況は固まりつつある。

時刻は… 1340分。
あんまりのんびりもしていられない。

だけど、今の時点で一つ考えておかなくちゃならないことがある。


──果林「私は、起きてすぐに彼方の部屋を訪ねたわ。このゲームで最も重要な立ち位置にいるのが彼方なんだから、万が一なにかあっちゃいけないと思ってね。部屋も隣だし、それが私の役目だと思ったから」

──果林「…で…彼方と話してるうちに愛も来て、裁判が始まるまで三人で一緒にいたわ」


果林ちゃんが意図的に言わなかったこと。
私の許可なく、私の部屋に入っていた事実。

でも、愛ちゃんだって当然のように入ってきたことを考えると、私がなにか勘違いしてるだけ?
今、貴重な時間を使って議論の場に持ち出すことじゃない?

 

142ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:03:48.89ID:Dc9V1hN/

…………いや、これは今こそはっきりさせておかなくちゃならない。
だって──


彼方「ごめん、彼方ちゃんから一つ確認してもいいかな」ノ スッ

果林「…!」

しずく「も、もちろんです。なんでしょう?」

彼方「その、彼方ちゃんがログインして目を覚ましたときね、……その…」

果林「……」フイッ


ごめん、果林ちゃん。


彼方「果林ちゃんが、傍にいたの」

しずく「え?……ん…?」

エマ「えっと、どういうこと…?」

しずく「彼方さんが眠っている間に、勝手にお部屋に入ったということですか?」

果林「……」

彼方「そうだよね、果林ちゃん」

果林「…そうね。入ったわ。彼方が目を覚ます前に」

 

143ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:07:06.97ID:Dc9V1hN/

しずく「そんなのっ、どうして早く言ってくれないんですか!ものすごく重要なことじゃないですか!」

果林「待ってよ!無断で部屋に入ったのは確かだけど、彼方に危害は加えてないわ!」

果林「彼方がログインするまで目を覚まさないってことをすっかり忘れてたのよ、ノックしても返事がないのが心配で…それでドアを開けてみたら開いたから、悪いとは思ったけど…!」

しずく「それこそ、彼方さんに危害を加えていないなんて信じられるわけないじゃないですか。なにもしていないって、どうやって証明するんですか?」

果林「違うの、私は本当に彼方が心配だっただけで……なんにもしてない…」

果林「そうよね彼方、起きたときに変なところなんかなかったでしょう?私、隣にいただけよね…?」

彼方「う、うん。それは、うん…なんにもされてないよ」

しずく「わかりませんよ。果林さんの【特殊能力】がどんなものであるか、判明していないんですから。気付かないうちになにかの能力にかけられている可能性はあるはずです」

果林「……っ…」

彼方「それは、」

エマ「ご、ごめんなさい」

エマ「少しお話が戻っちゃうんだけど、確認してもいいかな…」

愛「しずく、カリン。落ち着いて、いったんエマっちの話を聞こう」

 

144ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:10:28.98ID:Dc9V1hN/

愛「エマっち、なに?」

エマ「私の理解が追いついてなくてごめんなさい。他の人のお部屋って、勝手に入れないんだよね?だって、昨日璃奈ちゃんが一年生の教室で見せてくれたもの」

彼方「!」

エマ「勝手に入れないからこそロウジョウの作戦に使えるんだって言ったでしょ?」

彼方「そ、それ!彼方ちゃんが今その話をしたのは、果林ちゃんを責めたかったからじゃなくて、そのことを確認したかったからなの!」

しずく「そうだったんですか、すみません…話の腰を折ってしまっていたみたいで」

彼方「ううん、いいの。気になって当たり前のことだもん、彼方ちゃんがもっと早くに切り出しておけばよかったよね」

エマ「勝手にお部屋に入っちゃったのはダメなことだけど、それよりも勝手に入ることができたのはどうしてなんだろうって、思っちゃって」

しずく「それは、つまり…果林さんの【特殊能力】は、許可なく部屋に立ち入れるような類いのものだということでしょうか…?」

 

145ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:13:52.90ID:Dc9V1hN/

果林「…えっと、」

せつ菜「違いますよ。部屋の主の許可を得ずとも入室できるのは、ルール上の仕様です」

せつ菜「そうですよね?璃奈さん」

璃奈「うん、そう」コクン

彼方「えっ……!?」

しずく「そ、そうでしたっけ?でも、昨日確かに教室で…みんなで立ち会って確認しましたよね?」

せつ菜「はい、教室はそうでした。ただ、そもそも教室と皆さんの部屋では仕様が違うんですよ」

せつ菜「ルール6をよく見てください」スッ


そう言ってせつ菜ちゃんが指差したのは、璃奈ちゃんの背後に立つホワイトボード。
そこには部屋の立ち入りに関するルールが記載されていて──


彼方「…あっ!」


6.
行動可能範囲は部室、一年生教室、二年生教室、三年生教室、寮、講堂(裁判所)の六ヶ所

6-1.
教室には各学年のメンバー以外立ち入ることができない。ただし室内にいるメンバーの誰かが許可すれば他学年のメンバーも立ち入ることができる

6-2.
寮内、他人の部屋には部屋の主が入室を拒否すると立ち入ることができない


しずく「教室と部屋では、ルールが違う…!」

 

146ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:17:12.08ID:Dc9V1hN/

せつ菜「そうなんです。昨日は寮に行く途中で裁判になってしまったので結局確認できなかったわけですが、そうでなければきちんと確認できていたのではないかと思います」

彼方「このルールを読む限り、部屋の方は、基本的には許可なく立ち入れるってこと?」

せつ菜「そう読めますね。あえて入室されることを拒否する意思を示さない限りは、誰でも自由に立ち入れるということではないかと思います」

果林「そうだったのね…」

彼方「てっきり教室と同じだと思い込んじゃってたよ…」

しずく「私もです…」

エマ「…でもそれって、ものすごく危ないんじゃないかな」

エマ「だって、眠ってるときに他の人が入ってきちゃったら好きにされちゃうってことだよね」

せつ菜「そうならないように、ルール11が敷かれてるんですよ」

果林「ルール11って……ああ」


11.
一日が終わる(14時になる)と、全員が自動的に自室のベッドで入眠する。翌13時になると眠っている全員が目を覚ます。ただし彼方だけは例外、ゲームにログインした時点で目を覚ます


せつ菜「誰かが眠っているときは、他の全員も眠っている。自分の部屋が教室と同じ仕様だと、たやすく籠城できてしまいますからね、それを回避するためのルール6とルール11なのだと思います」

 

147ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:20:29.88ID:Dc9V1hN/

しずく「……待ってください、でもこれじゃあ」チラッ


しずくちゃんをはじめ、果林ちゃん、愛ちゃん、エマちゃんの視線が一身に向けられる。
せつ菜ちゃんだけ表情が違うのは、答えが推測できているからかもしれない。


彼方「心配してくれてありがとう、しずくちゃん。でも大丈夫なの」

彼方「彼方ちゃんの【特殊能力】は──【超睡眠】。眠ってる間、【特殊能力】も含めて外部からの干渉を一切受け付けないっていう能力なんだ」

彼方「だからね、果林ちゃんは絶対に眠ってる彼方ちゃんに危害は加えてないんだよ」

果林「彼方…!」

彼方 ニコッ

 

148ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:23:51.23ID:Dc9V1hN/

しずく「そうでしたか……」

しずく「…すみませんでした、果林さん」

果林「いいえ、元はと言えば私が先にあなた達によくない意識を向けたことが始まりだもの」フルフル…

果林「私の方こそ、ごめんなさい」

しずく「い、いえ。そんな」

エマ「せつ菜ちゃんのおかげで気になってたことはこれですっきりしたけど、…そしたら…」


エマちゃんが言いにくそうに言葉を切る。
続く言葉が意味するところは、全員がわかってると思う。

毎日13時になるまでは全員眠っていて、こっそり行動することはできない。
全員が13時からしか行動できなかったのなら、これまでの話から、誰が歩夢ちゃんの秘宝を奪ったのかは明白になってる。

つまり──

 

149ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 09:27:05.86ID:Dc9V1hN/

しずく「……せつ菜さん」


この場の全ての視線を受けて、それでもなお、せつ菜ちゃんは。


せつ菜「…この状況では、異を唱えるだけの私の言葉は意味を持たないと思います」

せつ菜「具体的に根拠をもって反論できれば、あるいはもっと説得力のある解答を提示できれば。そうできないことがとても歯がゆいのですが…」

せつ菜「信じてください、彼方さん。歩夢さんの秘宝を奪ったのは私ではありません」

せつ菜「私が敗北することは構いません。ですが、あなたがここで最終判決を誤れば、かすみさんと交わした約束が──かすみさんの想いが叶わなくなってしまいます」

せつ菜「お願いです、どうか……真実に辿り着いてください」


そう言って深く頭を下げた。
決して声を荒げることはなく、無根拠に誰かが真犯人だと糾弾することもなく、ただ真摯に心の内を伝えて。

そして、私は──

 

 

少しだけ皆さんの考察を挟みます

 

 

151名無しで叶える物語(もんじゃ)2022/03/11() 09:38:14.43ID:ZTpd1VTr

部屋の仕様は俺も勘違いしてた
果林が先に声あげたからそういう作戦なんだと思った

 

152名無しで叶える物語(八つ橋)2022/03/11() 10:12:29.02ID:LyvJ4ZTg

他人の部屋に入れることを初めから分かっていて、彼方を起こす時に、そろそろ裁判が開始することを知っているような口ぶりしてた愛さんが怪しいかな

 

153名無しで叶える物語(しまむら)2022/03/11() 10:30:35.90ID:XIGDeOIv

愛さんは頭良いから怪しい

 

154名無しで叶える物語(茸)2022/03/11() 12:35:21.96ID:ng5fqHLj

この仕様で寝坊なんてするのか、出来るのか?って所くらいかな気になるのは

 

155名無しで叶える物語(茸)2022/03/11() 12:54:20.77ID:2y011f0T

間取り的に個室は窓もない出入口はドアだけのお部屋なのかな?
場所的に愛さんもせつ菜のノックや呼びかけが聞こえてそうなんだけどスルーする?スルーだけに

 

156名無しで叶える物語(もこりん)2022/03/11() 13:40:30.98ID:MyQcGueY

彼方の部屋に向かった人はアリバイ作りor他人に干渉できる能力があってそれを試そうとした、とか

 

 

本編再開します

 

 

157ぬし z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:05:12.99ID:Dc9V1hN/

彼方「……最終判決は、まだできない」

愛「え…」

彼方「もう一つだけ確認しておきたいことが残ってるから」

果林「彼方が納得していないなら、もちろん聞くけど…もうそんなに時間も残ってないのよ。大丈夫?」

彼方「うん。すぐ確認を済ませちゃうよ」クルッ


彼方「──愛ちゃん。今日、目を覚ましてから彼方ちゃんのお部屋に来るまでなにしてたの?」


愛「え?」

彼方「言ってくれたよね、彼方ちゃんのことが心配だったから、超速で駆け付けてくれたって。その割にはちょっと時間があったみたいだけど、五分くらい…なにしてたのかなって」

愛「それは…だから、言ったじゃん。寝坊しちゃったんだって」

彼方「お寝坊か~」

愛「う、うん。ほら、だって今こんな状況だよ。昨日一日でだいぶ精神的に疲れたしさ……カナちゃんならわかるっしょ、ちょっと長く寝ちゃう気持ちとか」

彼方「うん、それはよくわかるよ。彼方ちゃんもすやぴするの大好きだもん」

愛「だから、こんな状況で一秒だってムダにしちゃいけないのはわかってたけど──」

彼方「寝坊ってするんだっけ?」

愛「………ぇっ…」

 

158ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:08:25.79ID:Dc9V1hN/

彼方「ううん、するならいいんだ。それなら愛ちゃんのこと疑わずに済むから、そっちの方が嬉しい…いや、そしたらせつ菜ちゃんを疑わなくちゃいけなくなるから、やっぱり複雑な気持ちかも…」

愛「するんだっけって、そりゃ、するっしょ寝坊くらい。あはは…ヤだなカナちゃんってば、自分はよく眠っちゃってるくせに、愛さんの寝坊だけは許さないなんて…不公平だぞー!」ハハ…

しずく「……愛さん…」

愛「ちょ、みんなまでどしたん。五分寝坊しちゃったことそんなに責められるなんて、お先真っ暗だよ、枕だけにー……」

果林「愛」

愛 ビクッ


気付けば、果林ちゃんは身体ごと愛ちゃんに向き合っていた。
腕を組んで、ゆっくりと、言い聞かせるように。


果林「寝坊、したのね?間違いないわね?」

愛「…………うん、間違いないよ」

果林「そう」

 

159ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:11:35.53ID:Dc9V1hN/

果林「璃奈ちゃん、確認させてちょうだい」

璃奈「なに?」

果林「私には、ルール11を読む限り、今の私達には『寝坊』なんて有り得ないように思えるのだけど──どうなのかしら」

愛「っ!」バッ


11.
一日が終わる(14時になる)と、全員が自動的に自室のベッドで入眠する。翌13時になると眠っている全員が目を覚ます。ただし彼方だけは例外、ゲームにログインした時点で目を覚ます


愛 サー…

愛「あ──あの、ちがっ」

璃奈「しない」

璃奈「寝坊は有り得ない。彼方さん以外、毎日13時になった時点で眠ってる全員が同時に目を覚ます」

果林「そう。ありがと」


小さく頷くと、果林ちゃんはただ無言で愛ちゃんを見詰めた。

 

160ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:15:07.92ID:Dc9V1hN/

愛「違うんだよカリン、カナちゃん……寝坊って言ったのは、言葉の綾で、その…13時になったことに気付くのが遅くなっただけで」

しずく「13時になったら目を覚ましたのに、ですか?」

愛「いや…だから、それは……」

彼方「13時になったことに気がつくのが遅れたっていうのは、本当のことなんじゃないかな」

彼方「愛ちゃん、眠らなかったんでしょ?」

エマ「で、でも、14時になったらみんな自分のベッドで眠るんだって書いてあるよ?」

彼方「うん。つまり、眠らない──それが愛ちゃんの【特殊能力】ってことだよね」

愛「ち──違うよっ!それはりなりーの【特殊能力】で、愛さんは借りただけ──ッ………!」ハッ

果林「理由はどうあれ、眠らなかったのは事実なのね。愛」

愛「ぁ……う、うぅ…」


愛ちゃんは言葉なく項垂れて──それがなによりも如実に全てを物語っていた。

 

161ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:18:36.54ID:Dc9V1hN/

愛「…愛さんの【特殊能力】は、【ハイセンス】──誰か一人の【特殊能力】を借りられるっていう能力だよ。

愛「借りるためには相手に触れなくちゃいけなくて、借りるまではどんな能力なのかわかんない。

愛「だから、昨日どうしようか迷って、りなりーから能力を借りられるか確認することにしたんだ。りなりーはゲームマスターみたいなものだから、きっと強力な【特殊能力】だと思ったから…

愛「…それで借りたのは【機械じかけ】。ゲーム終了まで眠らなくなるっていう能力だった。

愛「愛さんは、本物とか偽物とかなんだってよかった。今までみんなと過ごしてきた時間は好きだし、それが嘘っこだって言われてもよくわかんないしさ。だから、ほんとに誰かの秘宝を奪ったりするつもりなんかなかったんだよ。

愛「でも、昨日眠らずにりなりーと話してたら、りなりーが言うんだもん…

──璃奈『それ、せっかくなら有効活用した方がいいと思う』

──璃奈『ルール6の真実にみんなが気付くのは時間の問題。そうなれば、たぶん各々の部屋には勝手に入らないっていう約束が出来上がる』

──璃奈『今夜だけかもしれないよ。愛さんが自由にみんなの部屋に出入りできるの』

愛「……って…!

愛「そんなん言われたらさ、今しかないって思うじゃん。後からやっぱり勝ちたいって気持ちになってももう遅いかもしれないって、勝つ機会があるとしたら今だけだって、そんなんさ……っ!

愛「…歩夢の秘宝を奪った理由は、みんなわかるっしょ。歩夢がいる限り、裁判で勝ち目はない。だから歩夢にした、そんだけ。歩夢のことがキライだったわけじゃないし、誰のこともキライじゃない。ただ、もしこのゲームで勝とうと思ったら、アタシにはそうするしかなかっただけで…っ

愛「ごめん歩夢、ごめんっ……カナちゃんも、せっつーも、カリンも……エマっちもしずくもかすみんも、みんなごめん……ごめんなさいっ…!」

──────
────
──

 

162ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:21:46.25ID:Dc9V1hN/

彼方「最終判決。──歩夢ちゃんの秘宝を奪ったのは、愛ちゃん」

璃奈「正解」

璃奈「おやすみ愛さん。昨日眠らなかった分、ゆっくり休んでね」パチン

愛 フッ… ガクッ

せつ菜「……っ」

果林「愛…」

璃奈「もう時間もギリギリ、そろそろ14時になる。【特殊能力】は全員違うから、私以外、今夜以降行動できる人はいないけど、念のため自分の部屋には入らないように意思を表明しておくことをお勧めする」

果林「……遅いのよ、言うのが」ボソ

エマ「昨日のうちにそれができていれば、愛ちゃんは歩夢ちゃんの秘宝を奪ったりせずに済んだんだよね…」

 

163ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:25:04.36ID:Dc9V1hN/

せつ菜「それはそうですが、イコールでこのゲームが終了していたことを意味しますよ。彼方さんの勝利という形で」

せつ菜「今の時点で残っているメンバーの中に、それを快く思わない人がいるかはわかりませんが」

しずく「…もう、裁判は終わったんだよね。部屋に戻ってもいい?」ガタ

璃奈「いいよ。部屋に戻るくらいの時間はあると思う」

しずく「……璃奈さん」

璃奈「なに?」

しずく「最低だよ」


スタスタスタ……


璃奈「………これにて閉廷。みんな、お休みなさい」

──────
────
──

 

164ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2022/03/11() 19:28:23.10ID:Dc9V1hN/

「……待って!」

「…どうしたんですか」

「さっきはごめんなさい。改めて、謝っておきたくて。…考えたくないけど、これが最後になるかもしれないんだもの」

「そう、ですね…いえ、私の方こそすみませんでした。こんな気持ちのまま誰かとお別れしてしまうかもしれないなんて、考えたくないですね…」

「…」

「「………あの──」」


……
………