【ギャルゲ風安価SS】>>3「また一年が始まる」 3/3 7

752>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 07:58:28.03ID:fYxiZD39

翌朝…





朝を告げる音。

いつか、歌って聞かせてくれたんだったと思う。

あれはいつのことだったっけな。

そう、確か──


侑「ふぁぁ…」トコ…


ガラッ


侑「おはよう、歩夢」

歩夢「おはよう、侑ちゃん」

 

753>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:03:33.80ID:fYxiZD39

歩夢「すっきり晴れてよかったね」

侑「ね。今日も中庭でお昼ごはん食べられそう」

歩夢「もう、侑ちゃんってばいつもごはんのこと考えてるんだから」

侑「そんなことないよ。他にもほら、えっとー…現代文今日から新しい物語だなー、とか」

歩夢「そうだね」

侑「ね?」

歩夢「今日は現代文ないけどね」

侑「あれ?」

歩夢「うふふ。もう一回時間割確認しておかなくちゃだめだからね」

侑「はーい」

歩夢「それじゃまた後でね」スイッ

 

754>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:09:06.91ID:fYxiZD39

侑「お母さん、おはよう~…」コソ

高咲母「おはよう、侑」

高咲母 ジッ

侑「…」

高咲母「うん、今日も可愛いわよ」

侑「もう気にならない?」

高咲母「うん」


くい、と目元を拭ってくれる。


高咲母「顔を洗ってきなさい。それでもう涙はみんな流れちゃうからね」

侑「…うん」

高咲母「目玉焼き食べる人?」

侑「二枚!」ニコッ

 

755>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:15:45.16ID:fYxiZD39

寝間着を脱いで、制服を着て。

紐タイを結んで、髪を結って。

歩夢の音で目を覚まして、お母さんのごはんを食べて、歯も磨いたしリップだって塗った。

今日もまた、私の一日が始まる。

一緒に朝を迎えるのは昔からずっと変わらない、大切な──


侑「…あっやば、教科書入れ替えなきゃ!」ハッ


月曜のげは現代文のげ!

ちょうど一年前に歩夢が笑いながら教えてくれた覚え方が、まさか二年になってあだになるなんてね。

大慌てで支度する私は、今日もこうして歩夢を待たせる。

 

756>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:21:12.23ID:fYxiZD39

侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


ずっと続いてきた私達の朝。

歩夢は少しだけオトナっぽくなった。

それは髪型のせいかもしれないし、…私の気持ちのせいかもしれない。

歩夢の目に映る私はどうだろう。

昨日よりも、背は高く見えますか?


歩夢「侑ちゃん」ジッ

侑「な、なに?」

 

757>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:26:09.82ID:fYxiZD39

歩夢 スッ…


ツン


歩夢「リップ、お鼻の頭にちょっとついてるよ」

侑「…へ」

歩夢「もう、どうしたらそんなことになるのか全然わかんないよ」クス

侑「あ、あはは…なんだろうね。たまになるよね」

歩夢「ならないよ。…ねえ、覚えてる?侑ちゃんが十一歳のときの誕生日、うちで一緒にパーティやったじゃない?あのとき侑ちゃん、『誕生日にチョコレートのケーキなの初めて!』ってすっごくはしゃいでて──」

侑「気づいたら、おでこにチョコホイップつけてたんだよね」

歩夢「だね」ニコッ

 

758>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:36:05.85ID:fYxiZD39

侑「私、あんまり成長してないなぁ」

歩夢「ふふっ、そうだね」

侑「あー、認めた!そこは嘘でも否定してほしかったなぁ」

歩夢「侑ちゃんに嘘をつける私じゃないのでー」

侑「そういうことじゃないよ~」

歩夢「でもね、私だってあんまり成長してないよ」

侑「ええ、そう?歩夢はいつも頑張ってるし、毎日すごいなぁって思うよ」

歩夢「そう見える?」

侑「見えるよ。まだ弱くて子どものままの私を、いつも支えてくれたり引っ張ってくれたりするもん」

歩夢「だったらそういうことなんじゃないかな」

侑「え、どういうこと?」

歩夢「侑ちゃんがいるから私は成長してるってこと」

 

759>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:43:13.86ID:fYxiZD39

歩夢「私、一人じゃなんにもできないよ」

歩夢「臆病で、泣き虫で、進む道だって決められないの」

歩夢「でも、少しだけ先に侑ちゃんがいてくれるから、もう一歩、もう一歩だけ、って踏み出せる」

歩夢「侑ちゃんが転びそうになったら走れるし、悩んでうずくまってたら駆け寄れる。侑ちゃんと一緒に進みたい道だったら、私は一秒も迷わずに決められるの」

歩夢「昔からあんまり成長してない私達かもしれないけど、それって少しは成長してるってことでしょ?小さな一歩も、二人で歩めば二歩だよ」

 

760>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 08:53:44.63ID:fYxiZD39

歩夢「もし、侑ちゃんが色んなこと考えてもうわかんないってなったときには、私が前を歩くから。私が立ち止まっちゃったら、侑ちゃんが手を引いてくれるでしょ?」

侑「…もちろん!」

歩夢 ニコッ

歩夢「私達、これからもきっとたくさん悩んだり迷ったりすると思う」

歩夢「そんなときは、私のことを思って進んでほしい。私と二人でいる明日のために」

歩夢「そうすれば私達、いつまでも、なにがあっても、ずっとお互いの一番同士でいられるはずだから」

侑「そうだね」

 

761>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 09:04:13.14ID:fYxiZD39

侑「歩夢」スッ

歩夢「うん」


私より少し体温が低くて、細い指。

ずっと、ずっと、私の隣にいてくれた人。

これからもそうであってほしいし、そうあれる私でいたい。

選んだ道を、私は──歩夢と一緒に信じて進む。

どれだけ迷っても、悩んでも、またこの手を繋ぐ。

それだけ心に決めておけば、きっと私は大丈夫だ。


侑「ねえ、歩夢」

歩夢「なに?侑ちゃん」

侑「今日は、どこでお昼ごはん食べよっか──!」


【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」 ―終わり―

 

762名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 09:06:15.57ID:YXkQSNXZ



ノーマルエンド、かな?
歩夢や菜々は好感度が足りなかったからフラグを建てなかったのか...

 

763>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 09:09:26.36ID:fYxiZD39

概ね二ヶ月間にわたり、ご支援いただきありがとうございました
賛否あるとは思いますが、このSSの本編としては以上で完結となります。

【ノーマルエンド】

です。
一応完結したのであまり長々と居座るつもりはないのですが、消化不良だという声はあると思うので、ご要望があれば可能な範囲で書きます

お疲れ様でした

 

764名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 09:18:26.84ID:YXkQSNXZ

しずくルートに入った上でフラグを折ったからかなぁ
...
やっぱりと言うか何というかあそこの安価が戦犯になっちゃったかぁ(取った人には失礼になっちゃうけど)

歩夢や菜々の√に分岐しなかったのは好感度不足かフラグ建築不足なのかな?

 

765名無しで叶える物語(光)2020/12/21() 09:23:15.15ID:LW3wZPVM

他の人の√に入ってフラグ折ると次点のキャラの好感度が高くても強制的にノーマルエンドなんじゃない?
個人的には他のルート観たいけどわざとフラグ折る安価選ぶ奴がいるならここで終わってもいいのかも
どのルートに進んでも結局はフラグ折られて今回のノーマルにしか行かないんだし

 

766名無しで叶える物語(やわらか銀行)2020/12/21() 09:32:45.71ID:zYemxmmR


1
が書く他の分岐もやっぱり気になるところ。

 

767名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/21() 09:41:43.84ID:Fml3WBll

お疲れ様です
しずく√と同好会のライブイベント見たいです

 

768名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/21() 09:45:37.57ID:2hZQc4Cd

乙です
登場人物全員が可愛くて毎日楽しみに見てました
素晴らしいSSに感謝です

個人的にはやっぱりあそこでしずくに会いに行く√が見たいです

 

769名無しで叶える物語(庭)2020/12/21() 09:47:26.99ID:vOuZ6Vvd

おつおつ、楽しかったわ
しかし√入ってたならなぜあそこ安価にしたのか

 

770名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 09:54:06.92ID:ITZ6cSqs

おつ
消化不良感あるのでしずく√見たいです

 

771名無しで叶える物語(とばーがー)2020/12/21() 09:54:36.03ID:Rczbo1HF

乙です
アニメとは違う設定の虹ヶ咲が見れてとても面白かったです
出来れば2周目も見たいところ

 

772名無しで叶える物語(SIM)2020/12/21() 09:55:23.22ID:eH9/dxIf

お願いします
>>664でしずくの元へ行った分岐を書いてください
素晴らしいSSなのに圧倒的に消化不良すぎるので

 

773名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 10:02:20.97ID:rp+46DSC

まずは完結お疲れ様、そしてありがとう!
本当に自分の感動とかうまく言い表せなくて歯痒いくらいなんだけれど。
いつも当たり前のようにさらっと書いてくれてた朝パート昼パート放課後パート始まる時の侑モノローグも含め大好きだった。
>>1のキャラへの理解や愛がすごい伝わってきた。
毎日ワクワクしながらこのスレを覗くのが日課になってた。
ほぼ毎日決まったペースで、しかも安価に合わせてなのに大ボリュームで安定して書いてくれるのすごく大変だろうに続けてくれて有り難い限りだった。
時間も頭も沢山使うだろうに本当にありがとう。

 

774名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 10:02:48.14ID:rp+46DSC

こんなに良くしてもらったのだからまず一息ついてほしいという思いもありつつ、やっぱりまだまだ読みたいのでリクエストもさせて頂きますね。

個人的には
>>664で「1.しずくの元へ行く」を選んだ場合のifかつしずくendはすごく読みたい。

加えて、もう少し受け付けてくれるというのなら、
>>664で「1.しずくの元へ行く」を選んだ場合にしずくend直行じゃないのなら、同好会のライブを観る日まではまたSS楽しみたい。そしてあわよくば菜々end読みたいです。

ただ、リクエストは出したけど自分達は読者“様”ではないので、
>>1が可能かつ書いてもいいなと思える範囲で!書くって言ってくれたけど、これで終了でも構いません。

 

775名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/21() 10:03:02.68ID:Fml3WBll

二週目も出来ればして欲しいです…
ここのキャラみんな可愛いのでもっと見ていたい

 

776名無しで叶える物語(SIM)2020/12/21() 10:04:47.26ID:mpqTT01k

やっぱ見てぇよなぁ

 

777名無しで叶える物語(八つ橋)2020/12/21() 11:21:10.11ID:s9M1+vsC


雰囲気も良くて面白かったです

 

778名無しで叶える物語(八つ橋)2020/12/21() 14:11:02.53ID:C4wwO4lt

乙でした
もう散々言われてるけど登場人物がみんなイキイキしてて読んでて楽しかったし、高咲家がかわいくて好きでした。

 

779>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 15:15:22.46ID:fYxiZD39

たくさんの声をありがとうございます、
際限がなくなるので次スレに移行しないという範囲で書けるものを書きます
まずはしずくルートのEDでしょうかね

 

780名無しで叶える物語(たまごやき)2020/12/21() 15:42:02.59ID:fbTpYEiJ

とりあえず好感度高めのしずくと菜々?せつ菜?ルートは見たい

 

781名無しで叶える物語(公衆)2020/12/21() 16:28:27.27ID:xx98tmdM

しずくifに期待

ちなみに
>>664はエンディング分岐確定ですか?もしくはそこから別√に入る可能性はありましたか?

 

783>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 17:12:12.40ID:fYxiZD39

>>781
確定です
この後にはエンディングしかありません

 

782名無しで叶える物語(おにぎり)2020/12/21() 16:52:51.29ID:Z7ZBdPCl

誰かも言ってたけど、この先も安価があるなら重要な安価は多数決で選べるようにしてくれると非常にありがたい

 

784名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/21() 17:15:26.64ID:wd23yWrx

菜々ルート、逝く

 

785名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 17:53:01.88ID:C3ff/R5e

どこでしずくエンド確定したんだろう?

 

786名無しで叶える物語(茸)2020/12/21() 18:36:11.61ID:cjbWxUza

1愛してる

 

787名無しで叶える物語(茸)2020/12/21() 19:00:20.76ID:IlUKwfEA

ひとまず、お疲れ様でした

誰に対する文句でも何でもないが
あそこでの選択に未だもにょらされてて、だからこそ、それほどにすごいssだったんだなぁと感じさせられたな、と
およそ2ヶ月間、ありがとうございました。残りも楽しみにしています

長文を重ねて申し訳ないのですが
一点、希望をば。余裕があればの回答でお願いしたいんですけど
結局、侑ちゃんの親の仕事って何だったんでしょうか…? (見落としてるだけだったらごめんなさい)

 

802>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 20:32:55.65ID:cFsexyg0

>>787
本編に記載はしていないと思います、
どんな風に話が進んだとしてもルートやエンディングに影響を与えることは恐らく一切ありませんが、高咲父はガス会社勤めの設定で書いていました
漏洩通報に対して出動する緊急班の部署です

 

788>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:16:56.97ID:cFsexyg0

やがて、下りた幕が上がって役者の皆さんが揃って挨拶をする。

もう一度大きな拍手が送られて、今度こそ『名誉の涙』は終わりを迎えた。 

今すぐ走り出したい。

一番に駆けつけるって約束したんだ。

余韻の鎖に縛られたみたいに重い足を踏み出す。

会いたい──

会いたい──

しずくちゃんに、会いたい──


──侑「歩夢」

──侑「私はずっと、歩夢の一番傍にいるからね」 


侑「………っ!」

 

789>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:20:05.60ID:cFsexyg0

歩夢。

私の大切な幼馴染み。

大切で特別な、お互いにたった一人きりの相手。

ずっと支えられてきた。

ずっと頼りっ放しだった。

気づいてないだけで、きっと私も歩夢に同じだけのものを返してきたんだよね。

私達、二人で一つって言っていいくらいの関係だと思う。

思うんだ。

歩夢が傍にいない未来を私は思い描けないし、きっと歩夢もそうだよね。

 

790>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:25:22.84ID:cFsexyg0

友達が百人できたって、

恋人ができたって、

家族ができて、子どもができて。

夢が見つかって別々の進路に向かったって、

いつしかお互いの道で連絡を取らなくなったって。

歩夢。

あなたは私の一番大切な存在だよ。

膝を抱えてあなたが泣くとき、私は全てを置いて駆けつける。

私が光を見失ったとき、きっとあなたがそうしてくれるようにね。

信じてるんだ、私は私達の絆を。

だから、今だけは──


侑「すみません、前通ります!」タタッ


抱き締めたい人がいるんだ。

 

791>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:29:10.11ID:cFsexyg0

どこだろう。

講堂の舞台、脇に控え室があったと思う。


会いたい──


そこかな。

ろくに音も遮ってくれなさそうな薄い扉があるだけの、なんにもない部屋だったような気がするけど。


会いたい──


終わったばっかりじゃ、他の部員の人とかみんないるかもしれないな。

突然部外者が訪ねてきたら驚かせちゃうかも。

…別に、いっか。


だって私──なによりも大事な約束があるから!

 

792>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:32:50.90ID:cFsexyg0

侑「…………はっ!」タンッ


『ステージ控え室』


ぼろぼろのプレート。

窓から明かりと興奮気味の談笑が漏れる、薄い木製扉の前。


侑「はぁ……はぁ………っ」


時代を飛んじゃったのかと思った。

物語で見るような欧風の服、さっぱりと整えられた髪。

腰には剣を携えてもおかしくないような革ベルト。


美しい革命家の女が、横たわっていた。

 

793>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:34:56.91ID:cFsexyg0

侑「…!」タタタ…


駆け寄って、膝を付く。


侑「し  スッ


温かい人差し指が、私の言葉を遮った。


「やっと………会えた、のね」


侑「────……!」

 

794>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:43:49.19ID:cFsexyg0

侑 スゥ…

侑 ハァ…

侑 ────


「もう、来てしまったのかい。随分と早かったね」

「…ええ。貴方に会いたくて、急いでしまったの」

「キミは昔からせっかちだね」

「貴方が、のんびり屋だから。…代わりです」

「そうか。そうだね」

「私の、最期を…見てくれた……?」

「ああ、もちろん。見たよ。とても格好よかった。誇りに思うよ」

「……嬉しい。離れている間、とても…寂しかった。怖くて、苦しくて、貴方に触れたいと…毎夜手を伸ばしては、空を掻きました」

「こんな手で、いいかな」キュ

「…この手がいいの。大好きな…貴方の、手」

「二度と離さない、そう誓うよ。別々に進んでしまった物語を、今また一緒に紡ぎ始めよう。ここからが、僕達の物語の新たな幕開けだよ」

「…………たくさん、待たせて、…ごめんね」

「平気だよ。僕は、のんびり屋だからね──」ナデ…

 

795>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:52:25.35ID:cFsexyg0

しずく「……侑先輩」スッ

侑「……しずくちゃん」

しずく「えへへ。ありがとうございます、付き合ってくださって」

侑「もう、こういうことやるならやるって言ってよ。倒れてるからびっくりしたよ」

しずく「アドリブとは思えませんでしたよ。先輩、演劇部に入って役者をやる気はありませんか?」

侑「ありません」

しずく「そうですか…」

侑「でも、しずくちゃんの専属マネージャーをやれるんだったら入ってもいいかも」

しずく「…やっぱりだめです。侑先輩、部に入ったらきっとみんなの人気者になってしまいますから」ギュッ

侑「ええ?しずくちゃんが誘ったのになぁ」

 

796>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:55:49.43ID:cFsexyg0

侑「これ、衣装でしょ?こんな風に寝転がっちゃっていいの?」

しずく「怒られてしまうかもしれませんね」

侑「とりあえず、ほら、起きよ」グイ

しずく「ぁ…」

侑「ん?」

しずく「…なんだかこの格好、どきどきしますね。まるで、抱きかかえられているみたいです…」//

侑「そ…っ!」

侑「……そういうこと言われると、恥ずかしくなるから…やめてよ……」//

 

797>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 19:59:52.31ID:cFsexyg0

しずく「………」

侑「………」


腕の中に、優しい体温を感じる。

じわり、じわり、温かくなっていく。

すぐ隣からは止まない談笑、少し離れたエントランスからは解放された喧騒が届く。


きゅ、と肩に力が入ったのがわかった。


しずく「侑せんぱい──

侑「しずくちゃん。私ね、しずくちゃんのことが好きだよ」

しずく「──っ…」

 

798>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 20:06:25.44ID:cFsexyg0

侑「演劇に打ち込む真剣な姿がかっこいいって思う」

侑「演劇のことを話す笑顔が可愛いって思う」

侑「ふとした拍子にすぐ演技しちゃうところが、…なんだろうね。大好きだよ」

しずく「…っ、もう…」プイ…

侑「私、しずくちゃんのこと、ずっと傍で応援したいんだ。次はもっと動く役をやって、その次はもっともっと動く役をやって、いつかしずくちゃんが主役の舞台に立つその日まで、ずーーーっと!一番近くで応援してたいんだ」

侑「だめかな?」

しずく「………だめなわけ、ないじゃないですか…」

しずく「どうして侑先輩の方から言っちゃうんですか!」

侑「え?」

しずく「私が!私から!言いたかったのにっ!」ポコッポコッ

侑「あ、いたっ、しずくちゃん、痛くはないけど、ちょっと」アワワ

 

799>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 20:17:12.37ID:cFsexyg0

しずく「私、侑先輩と出会えてよかったです」

しずく「初めての舞台経験、不安なことばっかりでした。でも、いつも先輩が私のことを想ってくださって、傍で支えてくださったから」

しずく「きっと乗り越えられるって、信じてましたよ」

しずく「フリメルダと心を通わせることも、先輩なしには絶対にできませんでした」

しずく「あの日…オーディションの日、愛しい人に触れることができない苦しさを知ることがなければ、私はフリメルダの気持ちを知ることはできなかった。今日の舞台に立つことはなかったと思います」

しずく「それに、昨日。あのお返事が、私にフリメルダの抱える全てを理解させてくれました」

しずく「私の方こそお願いします」ギュ…

しずく「もう、この手を離さないでください。次の舞台に立つときも、その次も、主役としての人生を全うしたその後にも──決して、離さないでほしいんです」

しずく「…だめ、ですか?」

侑「だめなわけ、ないじゃん」ポン

 

800>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 20:23:57.10ID:cFsexyg0

侑「私ね、やりたいことって今までなかったけど、やっとできたんだ」

侑「聞いてくれる?」

しずく「ぜひ、聞かせてください」

侑「──しずくちゃんの夢を応援すること」

侑「夢を追いかけるしずくちゃんを応援できたら、私も、きっとなにかが始まる。そんな気がするから」

侑「世界一の大女優になって、しずくちゃん。その隣に、私をいさせて」

しずく「…世界一の大女優になった後は、どこかへ行ってしまうんですか?」

侑「…まさか」フル…


侑「その後は、私だけのヒロインになってもらうんだよ!」

しずく「──はいっ♡」


【ギャルゲ風安価SS】侑「また一年が始まる」 ―終わり―

【しずくエンド】

 

801>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/21() 20:29:15.60ID:cFsexyg0

当然この一週間後には同好会ライブの予定日を迎えますが、現状しずくエンドとは直接の関係がないので描写は省略します

本日の更新は以上です、
明日からは菜々ルートを書いてみますが、スレの残数の兼ね合いがあるのでルートと直接関係がない日常パートは省くかもしれません
(
どのくらいかかるかわからないのですが、恐らくルート進行イベントだけを書いてもギリギリだと思います)

 

803名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/21() 20:38:07.10ID:Fml3WBll

これが見たかったんだ…!
ありがとうございました!!

 

804名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 20:38:48.91ID:rp+46DSC

本当に本当に本当にありがとう
最高だった
スレ残数ギリギリということでレスするか悩んだけどお礼言いたい気持ちが勝ってしまった……
後は完結するまでレス控えるけど、菜々√も超たのしみにしてます!感謝

 

805名無しで叶える物語(光)2020/12/21() 20:39:10.48ID:LW3wZPVM

お疲れ様です!
菜々編も楽しみです

 

806名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 23:02:08.44ID:93dqnSAR

乙、綺麗なしず子が見れて本当よかった。

 

807名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 23:09:27.27ID:47cFXgwj


欲を言えば同好会入ったルートも見てみたいな
あそこも大分大きな分岐点だろうし

 

808名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/21() 23:37:23.70ID:8LSThjCV

おつです
ついに完結か、すげえなぁ

欲を言えば
気が向いた場合、新スレたてて掌編をぼちぼち書くのとかしていただきものですね…。
個人的には
・スクドル同好会とは別軸で10人集まる話
・愛と連絡先交換する話
・エマと改めて仲良くなる話
・栞子と仲良くなる話
あたりを、一応、希望として挙げさせていただきたい…。

 

809名無しで叶える物語(たまごやき)2020/12/22() 00:15:03.81ID:qlJ6imTD

しずく√見れてよかった
欲を言えば同好会がどうなったのかも知りたい

 

810名無しで叶える物語(庭)2020/12/22() 02:10:13.86ID:DmqqD73u

やっと最新まで追いついた
各キャラの描写が丁寧で本当にすき

しずく√潰れたときはマジで心痛んだからifで書いてくれて本当に救われた…ありがとう…
菜々√も楽しみ

 

811>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 08:35:32.03ID:ybKBdXbQ

侑自身の好感度や関係性の調整上、

しずく…演劇部の見学以降のイベントなし(2スレ目以降の接触描写を全て破棄)
菜々…ここまでの描写通り
歩夢…しずくに会いにいかなかった以降のイベントなし(最終接触 >>629)

とした上で、525()から開始します。
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()は固定イベント演劇部公演がありますが、見学にも行っていないのでそもそも情報を把握しておらず、結果観劇にもいきませんでした。課題でも頑張っていたことにします

また、ルート進行上の重要な選択肢は安価を出さず最適な選択をしたものとして自動進行させます

 

812>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 08:48:08.09ID:ybKBdXbQ

525() 朝…


侑「お待たせ~」タタタ

歩夢「行こっか」

侑「うん!」


一昨日は果林先輩のお部屋で片付けをして、昨日はなんとか一人で課題を終わらせた。

なんだか、人としてしっかりした週末だったかも!


歩夢「はぁぁ…」シュン

侑「よしよし、朝になって思い出しちゃったんだね」

歩夢「みんな、私のこと変な子って思ったかな」

侑「そんなことないって。私だって授業中に寝てたらビクッてなって席から落ちたことあったけど、みんな笑ってくれただけだったじゃん」

歩夢「侑ちゃんはそういうキャラだから平気だったかもしれないけど~…」

侑「あはは。……え、私そういうキャラなの?」

歩夢「はあ。教室に行くのが憂鬱だよ…」

 

813>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 08:53:00.52ID:ybKBdXbQ

教室


優花「ああ、あったねそんなこと」ケロッ

歩夢「えっ」

香「なにー?」

優花「金曜の帰りさ、歩夢が大きな声出したんだよ。香はもう部活行ってたから聞いてないと思うけど」

香「そうだったんだ。侑ちゃんと話してたの?」

歩夢「そう、だけど」

香「じゃー痴話喧嘩でしょ」

優花「どうせ侑が変なこと言って怒らせたんだよね」

侑「そ、そんなんじゃないよ!…とは、ちょっと言いづらいけど…」

優花「ほらね。歩夢が大きな声出すなんて侑のことしか有り得ないし、侑のことなら有り得るし。誰も気にしてないでしょ」

ゆうぽむ「「そ、そうなんだ…」」ポカン…

 

814>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 08:57:52.05ID:ybKBdXbQ

お昼休み…


あれから他のクラスメイトにも謝ったけど、みんなだいたい似たような反応だった。

心配したほど問題視されてなくてよかったと思う反面、歩夢と私が周りからどう思われてるのか…

ちょっと不安になってきたなぁ。

でもみんないつも通り歩夢にも私にも接してくれるし、ほんとになんとも思ってないみたい…


侑「…まあ、みんなが気にしてないなら、いっか…」

 

815>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:01:02.11ID:ybKBdXbQ

歩夢「侑ちゃん、お昼ごはん食べよう」

侑「中庭行く?」

歩夢「うん…」

歩夢「ううん、教室で食べよ。優花ちゃん達と」

侑「だね。そうしよっか」

侑「優花、お昼一緒に食べようよ」

優花「お。賛成~」

香「やったー」トトト

 

816>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:07:11.41ID:ybKBdXbQ

「「「いただきます」」」

侑「香のお弁当、なんかすごく豪華だね」

香「いーでしょー。弟が遠足だからママが張り切って作ってくれたんだよ」

歩夢「へー、遠足。どこに行くの?」

香「葛西の水族館だって。『中学で水族館とかガキかよ』って言ってたけど、昨日めっちゃ魚の雑学とか調べてたんだよ」

侑「うわあ、可愛いね」

香「生意気盛りだけどねー」

優花「遠足なら台場の海でいいのにな。そしたら放課後遊んであげるのに」

侑「優花みたいなのに絡まれたら中学生怖くて泣いちゃうよ」

優花「なんだとー!?」

 

817>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:16:14.11ID:ybKBdXbQ

香「そういえば、石倉ちゃん転科試験受けるかもなんだって」

侑「転科試験?ってなに?」

歩夢「他の学科に移るための試験だよ。入学式で説明されたでしょ」

侑「そんな昔のこと覚えてないよ~」

優花「いつ?」

香「夏休み明けだって。試験に向けて勉強しなきゃーって言ってたよ」

侑「転科試験って難しいの?」

歩夢「難しいみたいだよ。学科別入試のレベルと、転科時期までに習う範囲が加わるから、範囲も広いんだって」

侑「うへ~」

優花「専門学校に途中で入るみたいなものだもんな。侑とか私には無理だなー」

侑「なんで巻き込むの!?私はいけるよ!」

優花「歩夢とクラス離れても勉強ついていける?」

侑「………」

香「黙っちゃうんだ」

 

818>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:20:54.05ID:ybKBdXbQ

優花「でもそんな試験受けるほどやりたいことが見つかるってすごいかもな」

歩夢「そうだね。入学してからこれまでの間にそういう気持ちになったってことだもんね」

香「なにがきっかけなんだろ。選択授業かな?」

優花「後で聞いてみよ」

香「うんー」


…そういえば、優花も私のこと名前で呼ぶんだ。

果林先輩、愛ちゃん、それに優花。

そのくらいかな。

やっぱり、呼び捨て自体がどうこうってことじゃなくて、関係性が変わったんじゃないかってことが気になったんだよね。

 

819>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:26:00.69ID:ybKBdXbQ

──菜々「侑」


正直、嬉しかった。

菜々ちゃんの交友関係は全然知らないけど、呼び捨てをする友達はいないって言ってたし、


──菜々「かすみさんやエマさんのファンだと言ってくれたのだと聞いています」


下級生にも上級生にもきっと態度はほとんど変わらないんだと思う。

そんな中、私にだけくれた、呼び捨て。

お母さんが煽ったのがきっかけっていうのは引っかかるけど、でもその事実は本当のことだもん。

 

820>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:28:27.84ID:ybKBdXbQ

例えば、例えばだけど。


──侑「菜々」


侑「…っ」


これは、結構照れるぞ…

歩夢も優花も香も呼び捨てなのに、一度定着した呼び方を変えるのって精神力を使うんだな。

…それを乗り越えようとしてくれてるんだ、菜々ちゃんは。

もっと仲良くなりたいなぁ。

 

821>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/22() 09:31:25.86ID:ybKBdXbQ

歩夢「侑ちゃん?」

侑 ハッ

侑「うん、なに?」

歩夢「もー、月曜日からぼーっとして。話聞いてなかったでしょ」プクー

侑「ご、ごめん」ハハ…

香「あーあー、学ばないなー侑ちゃんは」

優花「ねー。今日も歩夢が大きな声出すかもなー」

歩夢「だ、出さないも~んっ!」


クラスメイトとお昼ごはんを食べました! ▼

 

823名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/22() 20:50:56.59ID:9oytojZq

おつです
ありがとう

 

825>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:07:01.10ID:Ej2F6ea/

放課後…


侑「歩夢、はんぺんの様子見にいかない?」

歩夢「いいよ。今日もかすみちゃん達お昼ごはんあげたのかな」


かすみんに連絡してみる?

でも今日はあげてなかったとしたら、責めるみたいになっちゃうかな。

厚意で持ってきてくれてるんだもん、それはよくないよね。


侑「どうだろう。購買覗いてパンでも買っていこっか」

歩夢「まだ残ってるといいね」

侑「だねー。早い日はお昼休みのうちに売り切れちゃったりするもんね」

歩夢「生徒が多いからね」

 

826>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:11:45.75ID:Ej2F6ea/

中庭


侑「やっぱりかすみんのとこに寄ってコッペパンの余りがないか聞いたらよかったかなぁ」トボトボ…

歩夢「そしたらはんぺんちゃんにあげた残りは侑ちゃんが食べられたのにね」

侑「うん、最近かすみんのコッペパン不足ー……って違うよ、そんなこと考えてないもん!」

歩夢「うふふ。どうかな~」

侑「もー、歩夢のいじわるー」

歩夢「…あれ?あそこ、誰かいるよ」

侑「え?璃奈ちゃんとか?」

歩夢「ううん、……あれは…」

 

827>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:15:12.95ID:Ej2F6ea/

侑「菜々ちゃん!」

菜々「!」

菜々「侑。それに歩夢さんも」

歩夢「…こんにちは、菜々ちゃん」

侑「珍しいね、中庭で会うなんて。生徒会のお仕事?」

菜々「いえ、お仕事ではありませんが…その…」サッ

侑「? それなに?」

菜々「…ぱ、パンです」

侑「パン?」

菜々「お昼休みに買ったのですが、余ったので、お弁当を持ってきていましたし、食べ損ねて、せっかくなら…その……」ゴニョ

侑「菜々ちゃん、パン余ってるの!?」パァ

菜々「え?ええ、はい、まあ…」

侑「それ、貰ってもいいかな!?」

 

828>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:19:03.96ID:Ej2F6ea/

侑「はんぺん、いるか~?」ヒョコ

はんぺん zzz...

侑「いたけど寝てるや」

歩夢「残念だったね、侑ちゃん」

侑「こんなに近づいても起きないなんて、のんびり屋だなぁ」

歩夢「起こしちゃうから撫でちゃだめだよ」

侑「わかってるってば。…璃奈ちゃんだったら起こさずに撫でられたりするのかな」

歩夢「かもしれないね」

菜々 ジーッ

侑「菜々ちゃんももっと近くにおいでよ。はんぺんがこうしていられるのは菜々ちゃんのおかげなんだから」

菜々「は、はい。それでは」オズ…

 

829>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:23:09.92ID:Ej2F6ea/

菜々「白い、ですね」ジ…

侑「…ぷっ」

菜々「!?」

菜々「な、なぜ笑うんですか!?」

侑「だって、そんなにまじめな表情で『白いですね』なんて言うんだもん。白猫なんだから当然だよ」ククッ…

菜々「し、白猫なのだから白いという感想が出るのは当然でしょう!?」//

侑「いや、そう、そうなんだけど。くっ…なんだか、面白くて…」プルプル…

菜々「そんなに笑わないでください!」

歩夢「侑ちゃん、一度笑い始めるとしばらくこうだから、放っといていいよ」

菜々「むぅ…釈然としませんが…」

 

830>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:27:54.09ID:Ej2F6ea/

侑「はぁ……はぁ……」

歩夢「やっと落ち着いた?」

侑「うん…」

菜々「忘れませんからね、このこと」キッ

侑「お、怒らないでってば~…」

歩夢「侑ちゃん、パンどうしよっか?」

侑「そうだね。ちぎって置いといたら食べるかな」

歩夢「食べてくれると思うよ。…あ、でも他の野良猫とかに取られたりしちゃうかな」

侑「あー…あるかなぁ…」

菜々「…恐らくですが、敷地内に他に野良猫はいないと思いますよ」

侑「え、そう?」

菜々「はい。ここ一週間、はんぺんちゃん以外に猫は見かけてませんから」

侑「そっか!」

 

831>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:32:44.46ID:Ej2F6ea/

侑「菜々ちゃんがそう言うなら間違いないよね。少し多めに置いといてあげよーっと」ブチ

歩夢「二つか三つに分けておいたら?」

侑「今日の夜ごはんと明日も食べられるように?ナイスアイディア、歩夢!」ブチ…


パン
パン はんぺん zzz...
パン


侑「なんだか捧げ物みたいになったね」

歩夢「あながち間違ってもないんじゃない?」フフッ

菜々「残ったパンはどうしましょうか」

侑「あ…」

歩夢「侑ちゃんが食べるのでご心配なく」

菜々「た、食べるんですか。はんぺんちゃんにあげた残りを」

侑「だ…だって!食べなくちゃもったいないよ!」アセ

 

832>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:38:43.92ID:Ej2F6ea/

菜々「元々私が買ったものですし、持って帰りましょうか」

侑「菜々ちゃん、食べる?」

菜々「食べ…ま、す。夕飯に支障を来たすといけないので今は食べませんが、勉強中にでも、コーヒーのお供に」

侑「あんまりパン食べないんだったよね?お弁当もあったのに買っちゃうなんて、よっぽど食べたかったんだよね」

菜々 ギクッ

菜々「そ、それは…」

侑「はんぺんにあげたかっただけだから、返すよ。少しちぎっちゃったけど」エヘヘ

菜々「あ、ありがとうございます」

 

833>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:42:13.59ID:Ej2F6ea/

侑「はんぺんも起きないし、そろそろ帰ろっか」

歩夢「そうだね。あんまり賑やかにして起こしちゃうと可哀想だもの」

侑「起きて撫でさせてくれてもいいんだけどな」

歩夢「侑ちゃんにはまだ早いよ」

侑「ちぇ~」

はんぺん zzz...

侑「私達からのパンだよって、書き置きしとこう」ゴソ

歩夢「ええ?はんぺんちゃんに?」

侑「そ!少しでも懐いてほしいじゃん」カキカキ…

菜々「…?」チラッ

歩夢「たまにこういうよくわからないことをする子なの…」

菜々「そうみたいですね…」

 

834>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/23() 08:47:00.95ID:Ej2F6ea/

パン『侑』
パン『菜々』 はんぺん zzz...
パン『歩夢』


侑「よし!これで私達からの差し入れだってわかってくれるよね!」ムフー

歩夢「わかってくれるといいね」

菜々「どのパンを食べたかではんぺんちゃんが一番誰に懐いているか、占いみたいですね」クス

侑「!」

侑 スッ…

菜々「侑、なにを?」

歩夢「一番大きなのを自分のにしたみたい」

菜々「そうですか…」

侑「だ、だって菜々ちゃんがそういうこと言うから~!」


菜々とはんぺんのお世話をしました! ▼