223>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 07:59:01.88ID:8VQsNYZI
校門付近
侑「菜々ちゃん、半まで用事あるって言ってたよね。出てくるまでもう少しかかるかな」
侑「…用事、生徒会だけじゃないんだよね。会議の後にって言ってたし」
侑「…」
侑「まあ、今日か明日か聞いてみればわかることだもんね」
侑 ブラブラ…
侑「あれ?待てよ、もし菜々ちゃんの用事がそれだとしたら──」
タッタッタッタッタッタッ
侑「ん?」
224>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:03:12.02ID:8VQsNYZI
侑「あ、菜々ちゃ──
菜々「行きましょう!」ガシッ
侑「え?」グイ
菜々「今週もありがとうございました!皆さん、よい週末をぉぉぉおおお!!」タッタッタッ
侑「わぁぁぁぁぁ………!?」トットットッ
「今のって生徒会長?」
「たぶん…」
「誰か連れていかれた?」
「たぶん…?」
225>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:07:59.56ID:8VQsNYZI
菜々「ふぅ…ここまで走れば大丈夫ですかね…」ハァハァ
菜々「侑さん、迎えにきていただいてありがとうございます。と同時にいきなり走り出してすみませんでした──」
侑「」チーン
菜々「うわーっ、侑さん!?」
226>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:13:59.35ID:8VQsNYZI
侑「………はっ!?」
菜々「ああっ息を…息を吹き返しました!」
侑「あ、菜々ちゃん。用事終わった?お疲れ様」
菜々「やや記憶が飛んでいるようですが…」
菜々「すみません、説明もなしに走るのに付き合わせてしまいました」
侑「え、あ…あー……そうだったね」
菜々「その、先ほどまでグループで活動する用事があったのですが、ああでもしないと他の部員と侑さんが鉢合わせしてしまうことに遅まきながら気づきまして」
侑「ああ…なるほどね」
侑 (他のグループ──まあ、そういうことだよね)
菜々「平気ですか?」
侑「うん。びっくりしたけどなんともないよ」
227>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:21:00.55ID:8VQsNYZI
侑「それじゃうちに向かおっか。えっと…」キョロ
侑「結構変なところまで走ったね」
菜々「駅に向かう流れから離れなければという一心で、つい…!」
侑「あはは、菜々ちゃん面白いや」
菜々「も、もう。笑わないでくださいよ」
侑「ごめんごめん」
菜々「ここがどこかわかりますか?もう皆さん校門は抜けたでしょうから、一度戻ってからでも…」
侑「お台場に何年住んでると思ってるの?どこでも私の庭だよ、大丈夫」
菜々「頼もしいですね」
侑「ここだって、もう四回は迷って来たことあるからね!ばっちりわかるよ!」
菜々「庭…?」
228>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:28:04.96ID:8VQsNYZI
侑の家
菜々「今晩お世話になります、中川菜々といいます。侑さんと同じ虹ヶ咲学園の二年生で、侑さんにはかねてより親しくしていただいています。学校からまっすぐ来たもので手ぶらでお伺いして申し訳ないのですが──」フカブカ…
侑「菜々ちゃんはニジガクの生徒会長なんだよ、いつもはまじめなんだけど話すと楽しくていっぱい笑ってくれるんだ~」
高咲母「あら、生徒会長さん!侑がいつもお世話になっているみたいですね」
菜々「いっいえ!お世話になっているのは私の方で、」
侑「そんなことないよ、私菜々ちゃんに甘えっ放しだもん!」
高咲母「侑がお世話してるはずないでしょう。そんなに緊張しないで、ゆっくりしていってね」
侑「あー、お母さんひどいー」ブー
高咲母「自分でも同じこと言ったじゃないの」
侑「自分で言うのとお母さんに言われるのとじゃ全然違うじゃん」
高咲母「はいはい。菜々ちゃん、苦手な食べ物はない?」
菜々「あ、はい。なんでもよく食べます」
高咲母「そう。あと三十分くらいで晩ごはんできるから待っててね」
229>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:34:08.98ID:8VQsNYZI
「「「いただきます」」」
侑「お父さん今日遅番?」
高咲母「そうよ。終電になると思うから、わざわざ挨拶しなくていいからね。私から話しておくから明日の朝にでも会ったら一言話しかけてあげて」
菜々「わかりました」
菜々 モグ…
菜々「! 美味しい…!」
高咲母「美味しいって!」
侑「知ってるよ。お母さんの料理みんな美味しいけど、ピーマンの肉詰めはその中でも四番目くらいに美味しいもん!」
菜々「これで四番目ですか。一番から三番はなんですか?」
侑「なんだろうね?シチューとか美味しいよね」
菜々「具体的に思い浮かんでるわけではないのですね…」
高咲母「こういう子なのよ」
菜々「なるほど」モグモグ…
230>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:42:02.10ID:8VQsNYZI
侑の部屋
侑「お風呂あがったよー」ガチャ
菜々「お帰りなさい。ドライヤーお返ししますね」
侑「なに読んでたの?」
菜々「今はこれを!」
菜々「なかなか渋いラインナップをしていますね、侑さんの本棚は」マジマジ…
侑「そう?まあ、王道系は少ないかもね」
菜々「『空さん』が全巻揃ってるとは」
侑「知ってる友達に会ったの、今、菜々ちゃんが初めてだよ」
菜々「でしょうね。ブックオフでも全巻揃ってる様子を見かけることは稀なくらいですよ」
侑「面白いのにな~」
菜々「無名の名作というのは世に溢れているものですからね…」
侑「ちょっと髪乾かすね」
菜々「はい。私はここまで読み切ってしまいます」
ブオオオオ…
231>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:48:10.69ID:8VQsNYZI
侑「お待たせ!」カチッ
菜々「私もちょうど読み終えました。くうっ、ここでやめるのは生殺しの感が強すぎますね…!」
侑「あはは、なんならしばらく読んでていいよ?」
菜々「いえ、何度も読んだストーリーなので大丈夫です。今日はそれよりもやることがたくさんありますからね」
侑「だね。それじゃあ──」
菜々「はい。課題を済ませましょう!」
侑「──え?」
菜々「え?」
232>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 08:53:10.61ID:8VQsNYZI
侑「え?課題?お泊まりなのに?」
菜々「課題、出なかったんですか?」
侑「出たけど…」
菜々「…?」
侑「本気の反応されちゃうと苦しいなぁ…」
菜々「侑さん、課題は出た日の夜以外にいつやるんですか?」
侑 (歩夢に言われた日か提出日だよ!とは、言えない雰囲気がある) ウム
侑「い、いや、お泊まり中だから後回しかなーなんて思っただけだよ。やろうか、課題!」
菜々「そういうことでしたか。先に済ませた方が、なにも気にすることなく後の楽しみを満喫できますからね。ぱぱっと済ませてしまいましょう」
侑「はーい」
侑 (ぱぱっと済みますように…!)
233>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:01:05.13ID:8VQsNYZI
侑「へー、そっち進んでるんだね」
菜々「私達のクラスは梨山先生ですからね。淡々と進む分、速いのは確かです」
侑「あんまり範囲拡げないでほしいなぁ…」
菜々「ふふ、そうむちゃくちゃなことにはなりませんよ。ある程度まで進んだらテストまで復習と自習の時間になることが多いですから」
侑「そうなんだ。ちょっと安心した」
菜々「しかしあの速さで進められると一度躓くとそこから追いつくのが難しくなるので、理解度に開きが出てしまうのは問題ですね。あ、三問目、間違ってますね」チョイ
侑「…はい」
234>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:08:18.50ID:8VQsNYZI
侑「……終わったー!」
菜々「お疲れ様でした」
侑「待たせちゃってごめんね」
菜々「いえ、おかげでここまで読めました」
侑「菜々ちゃん読むの速いよね」
菜々「伸び伸びと読むわけにいかない環境が多かったので、短い時間で多く読む癖がついてしまいましたね。本当はもっとじっくり読みたいんですけど」
侑「でも別に読み飛ばしたりすぐ忘れちゃったりするんじゃないでしょ?私読むの遅くて時間かかっちゃうから羨ましいな」
菜々「一長一短のないものねだりですかね」
侑「かもね」
侑 (これでやるべきことは終わったよね。ここからは完全に自由な時間だけど──)
どうしようかな? >>235
1.アニメを観始める!
2.はんぺんの話を聞く
3.気になってることを聞く
235名無しで叶える物語(たまごやき)2020/12/03(木) 09:08:59.07ID:peGq+cWr
3
236名無しで叶える物語(茸)2020/12/03(木) 09:09:01.67ID:apt4WOmn
3
237>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:13:19.97ID:8VQsNYZI
菜々ちゃんは持っていたマンガを丁寧に棚に戻し、ちょこんと座り直した。
大きな目的があってお泊まりにきたとは言っても、あくまで進行は家主の私に委ねてくれるつもりみたいだ。
もちろんアニメは早く観たい。
観たいけど、話しておきたいことがある。
はんぺんのこと──も、聞きたいけど、それは私から切り出さなくても明日解散するまでに必ず菜々ちゃんから話してくれるはずだよね。
それなら、今のうちに話しておきたい。
侑「…菜々ちゃん」
菜々「はい」
238>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:17:31.77ID:8VQsNYZI
侑「前から気になってることがあるんだけど、聞いてもいい?」
菜々「そう改まって切り出されると緊張してしまいますが…なんでも聞いてください。答えられないことや答えたくないことはそう言いますので」
侑 (答えられないことや答えたくないこと──)
侑「菜々ちゃんの、グループ活動のことなんだけど」
菜々「!」
菜々「…それは」
侑「今日も、生徒会の用事と他にそっちの用事もあったんだよね。それってもしかして、部活…だったりする?」
菜々「………そう、…ですね…」
侑「それは──それって──」
239>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:18:07.18ID:8VQsNYZI
侑「────せつ菜、さん…?」
菜々「……………はい」
240>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:20:05.01ID:8VQsNYZI
菜々「……」
侑「……」
もしかしたらごまかされるかもしれないと思った。
もしくは、違う可能性もあるかもしれないって。
でも、そっか──そうだよね。
241>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:23:31.72ID:8VQsNYZI
菜々「もう黙っている必要はないようですね」
菜々「改めて、スクールアイドル同好会の部長、優木せつ菜です」
侑「優木?」
菜々「はい。スクールアイドルとしての名前です」
侑「芸名ってやつだね」
菜々「まあ、はい、そうですね」
侑「どんな漢字を書くの?」
菜々「待ってくださいね」スマスマ
菜々「こうです」っスマホ
侑「……ああ!だからラインの名前『菜。』なんだ!」
菜々「これなら菜々として接している相手にもせつ菜として接している相手にも説明ができますから」
侑「ははあ~」
242>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:28:20.92ID:8VQsNYZI
菜々「歩夢さんには気づかれていたみたいですが、侑さんも気づいていたんですね」
侑「え?歩夢気づいてたの?」
菜々「確認したわけではありませんが、恐らく。先週部室でせつ菜として会ったときに、すぐ見抜かれたと感じました」
侑「そ、そうなんだ…言ってくれたらいいのに…」
菜々「私が菜々だと名乗らなかったので、尊重してくださったんだと思います。歩夢さんはそういう方ですよね」
侑「…そうだね。私から聞いたならまだしも、人の秘密を勝手に話しちゃうような子じゃないもんね」
243>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:34:59.68ID:8VQsNYZI
侑「スクールアイドルで芸名を使う人って多いの?」
菜々「あまりいないと思いますよ。高校の名前を背負って活動するスタンスが強いので、プロのアイドルや芸能人より身近感を出す意味があるのかもしれません」
侑「菜々ちゃんが芸名を使ってるのはどうして?」
菜々「そうですね…」
菜々「実は、両親に話していないんですよ。スクールアイドルとして活動していることを」
侑「えっ!?」
菜々「できるだけ両親の情報網に触れないようにと苦肉の策で、というのが、だから理由ですね」
侑「よ、よくバレずに今まで来れたね…」
菜々「毎日が冷や汗モノですよ」
侑「度胸あるなぁ」
244>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 09:41:11.52ID:8VQsNYZI
侑「…それで、私がこんなことを言い出したそもそもの話なんだけど」
菜々「わかってます」
菜々「同好会のことを、気にしてくださっているんですよね」
侑「…うん」
侑「私が余計に掻き回しちゃったってことはわかってるし、歩夢にもこれ以上無責任に踏み込んじゃだめって言われたんだけど」
侑「かすみんと彼方ちゃんのこととか、ライブのこととか、色々…どうしても気になっちゃって…」
菜々「………せっかく勇気を出して聞いてくださったのですから、その話をすることにしましょうか。時間はたっぷりありますし──」
菜々「──考え事をしたまま閏都市学園を観てほしくありませんし、ね」ニコ…
菜々が泊まりにきました! ▼
246名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/03(木) 09:59:08.49ID:Ujrs6iHv
おつです!
遂にきたかこの展開…
247名無しで叶える物語(公衆)2020/12/03(木) 18:45:43.42ID:RdFt1Ox4
ひぇえ
248>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:32:02.84ID:8VQsNYZI
変わらず、侑の部屋
菜々「大まかに事態を言い表すならば、先日の一件から好転したことはありません」
侑「…!」
菜々「歌える曲は増えていませんし、部員同士の雰囲気も決していいとは言えない。正直なところ、直近のライブを開催することすら危ぶまれる状態です」
侑「ちょ…直近のライブって、いつなの?」
菜々「来週の日曜日です。31日ですね」
菜々「ライブステージの使用許可が取れたことが、こうなってはむしろ逆風にすらなりました。これでライブを開催できなければ、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会として同じステージを使わせてもらうことは今後ほぼ不可能になるでしょう」
侑「そんな…」
菜々「告知をまだ打っていなかったことだけは不幸中の幸いと言えますか。そもそも31日にライブの予定があることは、部員以外まだ誰も知りませんから」
249>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:34:57.68ID:8VQsNYZI
侑「…っ」
菜々「侑さんが気にされていることは、これで回答になりましたか?」
侑「……なったよ。なった」
侑「なった、けど…」
なったけど、聞きたかったことは聞けたけど、だからなんなの?
歌える曲は増えてない。
部の雰囲気はよくない。
ライブができるかも怪しい──今回だけじゃなくて、もしかしたら今後も。
そんなたくさんの問題を改めて知って、
だから──なんなの?
250>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:37:15.03ID:8VQsNYZI
菜々 ジッ
侑「…っ」
菜々「…侑さんが気にしてくださることはありがたく思っています」
菜々「ですが、部のことで私達が侑さんに頼ることは、ありません」
侑「……!!」ハッ…
251>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:43:02.26ID:8VQsNYZI
菜々「虹ヶ咲学園に部、あるいは部に準ずる組織がいくつあるか知っていますか?」
侑「えっと…百は超えるって、聞いた…と、思う」
菜々「そうですね」
菜々「正確には、部が四十七。部に準ずる組織、つまり同好会が百九。合わせて百五十六です」
侑「そんなにあるんだ…」
菜々「人数にすると、延べ千二百人を超える生徒が部か同好会に所属しています」
菜々「スクールアイドル同好会以外に、部や同好会に所属しているご友人はいますか?」
侑「演劇部の知り合いが、いるけど…」
菜々「演劇部ですか。いいですね」コク
252>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:49:39.38ID:8VQsNYZI
菜々「演劇部も部に昇格してからそれなりの年数が経過していて、毎年七~八名の新入部員を獲得しているみたいです。虹ヶ咲学園の代表的な部の一つですね」
菜々「他にも運動部、文化部、同好会──」
菜々「本当に様々な才能や興味を持った生徒がたくさんいて、それぞれが活気に溢れる毎日を送っていて、これぞ虹ヶ咲学園といった風景が毎日見られます。私は幸せですよ」
菜々「ですが、それだけの人間が各々やりたいことをし、やりたくないことを避けていれば、必然すれ違いや諍いは起こります。生徒会にも大小問わずに絶えず生徒の声が届いているんです」
菜々「その全てに向き合うことが、侑さんにできますか?」
侑「──…!」
253>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 19:57:02.62ID:8VQsNYZI
侑「それ、は…できないよ…」
菜々「そうでしょう。そんなことは、七人で組織された生徒会ですらできません。重要性や緊急性が高いと判断した案件から順番に解決にあたってはいますが、全く追いついていないとすら言えます」
菜々「届く声の全てに向き合えない、単純に作業量が足りていない現状もさることながら、『重要性や緊急性』を判断しているのは生徒会の役員です」
菜々「解決すべき期日が明確であったり、より問題が大きくなったときの影響範囲が広かったり、その判断基準は様々ですが、当事者達にとってみればそんなことは関係ありませんよね」
菜々「私達にとって百件のうちの一件でも、本人にとっては一件きりの超重要案件です」
菜々「全ての生徒が学園生活を一つの不満もなく伸び伸びと満喫してくれるならそれに勝ることはありませんが、そんなことはどうしても不可能です。人と人が関わり合う限り、必ずわかり合えないタイミングというのは訪れるものですから」
254>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:02:51.44ID:8VQsNYZI
菜々「なぜそんな話を、と思っていますか?」
侑「…えっと…」
菜々「侑さんがやろうとしているのはこれと同じことだと、私は思うからですよ」
侑「…!」
菜々「侑さんの気持ちを考えない言い方になってしまうことは、あらかじめ謝ります」
菜々「ですが、侑さんにとってスクールアイドル同好会の問題はたまたま出会っただけの一件です。たまたまかすみさんや彼方さんと面識があって、たまたま起こっている問題を知って、たまたまそれが表面化する瞬間に立ち会ってしまっただけですよ」
侑「そ、そうかもしれないけど…でもそのたまたまだって、私のことだよ!私の友達が抱えてる、私の問題だと思うのは間違ってる!?」
菜々「その『たまたまの一件』が侑さん自身の問題になるとすれば、それはあなたが当事者になる覚悟を決めたときです」
侑「当事者、に…」
255>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:09:16.73ID:8VQsNYZI
菜々「私達の問題が私達の問題なのは、それがスクールアイドル同好会で起こっていて、私達がスクールアイドル同好会の一員だからです」
菜々「スクールアイドル同好会の一員でない侑さんは、どれだけ親身になったとしても、部外者なんですよ」
侑「ぁ…」
菜々「…例えば、あなたに部外者のままこの問題の解決に奔走してもらったとしましょう」
菜々「その途中で演劇部でも同じような問題が起こったら、どうしますか?続いてご友人が所属する他の部で、さらに他の部で、同じことが連発したらどうしますか?」
菜々「侑さんがその全ての当事者であれば、全てを自分の責任のもとで解決にあたる義務があります。ですが反対にその全ての部外者である侑さんには、いつでも全てを投げ出す権利があるんです」
菜々「…かすみさんが懸念したのは、そういうことだと思いますよ」
──かすみ「一つお願いしたら、きっと次も、次も、ってなりますよ。責任のない相手を予定に入れて考えるようになるのは危険です」
侑「………」
256>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:16:23.53ID:8VQsNYZI
菜々「私達のことを心配して声をかけてくださったことには、本当に感謝しています。その上で、大変失礼な言葉をたくさん言ってしまったことを改めて心からお詫びいたします」ペコ…
菜々「全てを円満に解決してみせます、とは、なかなか言えないところですが」
菜々「なんとか最善の形に落ち着けられるよう、頑張るつもりでいます」
菜々「かすみさんやエマさんのファンだと言ってくれたのだと聞いています。その気持ちを裏切りたくないと、部員の全員が考えているんです」
菜々「結成したばかりでまだまだ不安定な私達ですが、どうか応援して、愛してくださると嬉しいです──」
そう言って深く頭を下げた菜々ちゃん──せつ菜さんに、私は小さく「はい」と声を捻り出すのが精いっぱいだった。
257>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:23:53.97ID:8VQsNYZI
菜々「さ!暗い話はこれくらいにしましょう!」パン
侑「菜々ちゃん…」
菜々「もう、そんな顔をしないでくださいよ。かすみさんや彼方さんとは同好会と関係なく仲がいいんですよね?あまり身構えず、以前と同じように接してあげてください。こんなことで繋がりを失ってしまうのはとても悲しいことです」
侑「…うん、そうだよね」
菜々「そうですよ。私だってスクールアイドルの優木せつ菜ですが、同時に中川菜々です。侑さんとはこれからも仲良くさせてほしいと思っていますが、それすらも許してくれませんか?」
侑「そ…そんなことないよ!私だって菜々ちゃんと仲良くしてたい!」
菜々「だったらそれで充分じゃないですか」ニコッ
菜々「さあ、もう一つ話しておかなければならないことがありますよね。その話も今してしまいましょう」
侑「あ、はんぺんのこと…?」
菜々「そうです!」
258>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:26:00.45ID:8VQsNYZI
菜々「こちらは朗報ですよ。端的に言って、はんぺんちゃんのことは不問となりました」
侑「不問?って、」
菜々「校内にいてはいけないとは言わないし、もちろん追い出すというようなこともない、ということです!」
侑「ほ…ほんと!?」
菜々「はい」
259>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:31:29.40ID:8VQsNYZI
菜々「ただし少し難しいのは、生徒会の総意として『はんぺんちゃんの存在を認める』のとは違うという点でしょうか」
侑「どういうこと?」
菜々「様々な意見が交わされたのですが、落ち着いたのは『はんぺんちゃんは校則とは関係がない』という結論です」
菜々「条文に特定の明記がないのを理由にはんぺんちゃんも例の校則の対象になると見なすべき、との声が途中まではかなり強かったのですが、そもそも論に立ち返って考えてみたんです」
菜々「はんぺんちゃんが校内にいることは、誰が校則違反を犯したことになるのか?と」
侑「誰が…?」
260>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:36:00.54ID:8VQsNYZI
菜々「規則というのは、組織が組織たる秩序を保つために構成する人員へ課すものです。虹ヶ咲学園の校則は虹ヶ咲学園がその秩序を保つために定められたもので、課され守るべきはもちろん虹ヶ咲学園の生徒達ですよね」
侑「うん」
菜々「でははんぺんちゃんが学園の敷地内に住み着いていることは、誰が──どの生徒が校則違反を犯した結果のことなのか?ということです」
侑「ああ…!」
菜々「答えは、『誰も校則違反を犯してない』ですよね」
菜々「はんぺんちゃんは勝手に住み着いた野生の猫であって誰かが連れ込んだわけではないし、広い目線ではんぺんちゃんが校則違反を犯したかというと、それも違う」
菜々「はんぺんちゃんは動物を放し飼いにしてなどいませんからね」
261>>1 ◆1Y9DDrqNbw (茸)2020/12/03(木) 20:42:59.14ID:8VQsNYZI
菜々「誰かが『飼っている』猫でない以上、はんぺんちゃんは例の校則とは──虹ヶ咲学園で定められたどんな校則とも関係がないんです」
菜々「もちろん、全ての校則を一から確認してそう結論付けました。新たな校則が制定されない限り、これは理論的に覆ることがないと言っていいと思います」
侑「す…すごい!すごいよ、菜々ちゃん!私だったら絶対に出てこない考えだ。きっと諦めちゃってたよ…」
菜々「苦肉の策でした。あのままでははんぺんちゃんを追い出さなければならないという結論に至りそうだったので、なんとか理屈を生み出したという感じです」
侑「それ、さらに他の人達から反論は出なかったの?」
菜々「ふっ…愚問ですね、侑さん」
侑「え?」
菜々「私がこれを唱えたとき、誰一人として反論する人はいませんでしたよ。むしろ全員が前のめりに賛同の意思を示してくれたほどです」
侑「そ、そうなの…?」
菜々「当然でしょう。だって──可愛い白猫を追い出したいと本気で思っている役員なんて、一人もいなかったんですから!」
せつ菜および菜々と色々な話をしました! ▼
263名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/03(木) 21:36:22.86ID:Ut5RLBJS
おつです
素晴らしい作品や……
菜々ちゃんの最後のほうのセリフ、教科書チックなアメリカンコメディを感じてふふってなった
264名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/12/03(木) 21:46:05.53ID:9eQ2yXBP
乙です
同好会に関しては解散してからそこでフォローをかけるかどうか、の段階だからなぁ
√の進行的に菜々絡みだと生徒会所属、彼方だとアルバイト始める、とかになりそうだけど
これ侑はどうやったらスクールアイドルに興味もてたんだろう?スクールアイドルに絡むフラグ自体はいくつかは立ってたと思うけど
268名無しで叶える物語(たこやき)2020/12/03(木) 22:21:20.54ID:c6XqplHg
>>264
スクールアイドルには興味を持ってましたよ
安価で、入らないを選んだだけで
265名無しで叶える物語(茸)2020/12/03(木) 21:51:24.98ID:um91YGJi
ただの安価やぞ
266名無しで叶える物語(らっかせい)2020/12/03(木) 21:52:48.56ID:iyC4vKpq
今日もありがとう。このSSが日々の大きな楽しみです。
菜々が本当に言いそうだからすごいわ……菜々に限らずどの子もそうだけど。
アニメ観賞編も楽しみ。
267名無しで叶える物語(茸)2020/12/03(木) 22:09:18.85ID:X1n5VkcA
菜々とせつ菜の好感度が統合されるのかな?
269名無しで叶える物語(八つ橋)2020/12/03(木) 22:37:05.19ID:3dDsvxQ9
今の展開つらいけどあの安価は有能だった