【ギャルゲ風安価SS】>>3「また一年が始まる」 1/3 7

418名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:31:15.32ID:dKQEoMWT

放課後…


もう金曜日の放課後だって!

毎日楽しいからあっという間に一週間が終わっちゃうな。

今日はやっと校内で愛ちゃんに会えたし、来週もなにか楽しいことが起こるかな。

今からわくわくしちゃうよ!


放課後はなにをしようかな? 
>>419
1.
まっすぐ帰る
2.
寄り道して帰る(中庭、部室棟、屋上、公園、お台場から選択)

 

419名無しで叶える物語(茸)2020/11/06() 18:31:56.89ID:YD5wYc5+

中庭行こうぜ!

 

420名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:36:03.87ID:dKQEoMWT

侑「歩夢」ズイ

歩夢「な、なに?侑ちゃん」

侑「金曜日だよ。放課後だよ」

歩夢「そ、そうだね」

侑「このまま帰るのは惜しいと思わない?」

歩夢「どこか寄り道して帰る…?」

侑「猫探そう!!」

歩夢「猫…?」

侑「中庭で!!」

歩夢「また引っかかれても知らないよ!?」

 

421名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:39:06.85ID:dKQEoMWT

中庭


侑「こっちの方に逃げてったはずだよね、確か」キョロキョロ

歩夢「侑ちゃん、引っかかれちゃったのもう忘れたの?」

侑「忘れてないけどさ、あの子だって私達と遊びたがってると思うんだよね」

歩夢「どこから来る自信なの…」

侑「猫の巣を見つけられたらいつでも会えるんだよ、ね?」

歩夢「いつでも引っかかれちゃうだけだよ」


ニャー


侑「! 猫の声だ!」

歩夢「聞いてないし」

 

422名無しで叶える物語(茸)2020/11/06() 18:40:43.04ID:5Ywdl31m

りなりーくるか?

 

423名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:45:23.12ID:dKQEoMWT

侑「う~ん、こっちから聞こえたと思うんだけどなぁ」ガサガサ

歩夢「絆創膏用意しとくね」ゴソゴソ


シュタタタ


侑「ん!?」

侑「今、あっちの方で動いたかも!」ササッ

歩夢 (侑ちゃんは外で遊んでるときすごくイキイキしてるなぁ)

侑「………そこかーっ!」ガサ

??「っ!」ビクッ

侑「うわっ!」

侑「わ、と、と……っ」ヨロ

侑「うわーっ!」ドテッ

歩夢「え?」


コツゼン…


歩夢「あ、あれ!?侑ちゃん!?どこ行っちゃったの!?」

 

424名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:48:53.51ID:dKQEoMWT

歩夢「侑ちゃ~ん」タタタ

侑「いてて…」

侑「ぁ…歩夢、こっちこっち~…」

歩夢「転んじゃったの?大丈夫?」ガサ

侑「私は大丈夫だけど、えっと、ケガしなかった?」

歩夢「ぶつかっちゃったの!?」

??「してない。ぶつからなかった」

侑「よかった…」ホッ

??「あなたこそ大丈夫?派手に転んだ」

侑「私は平気だよ、心配してくれてありがとう」

??「そう」

 

425名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:51:52.39ID:dKQEoMWT

歩夢「何事もなかったみたいでよかった…」

侑「いやー、茂みの奥に女の子がいるなんて驚いちゃったよ」タハハ

??「茂みの向こうから女の子が飛び込んできたのもなかなか驚いた」

侑「確かに、それは驚くよね」ウンウン

歩夢「侑ちゃん、危ないことしちゃだめって言ってるでしょ!一歩間違えば二人ともケガしてたかもしれないんだよ?」

侑「わ、ごめんなさい!」

 

426名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:56:29.52ID:dKQEoMWT

侑「私、普通科二年の高咲侑。あなたは?」

璃奈「天王寺璃奈。一年生」

侑「璃奈ちゃん、驚かせちゃってごめんね」

璃奈「大丈夫」フルフル

璃奈「それより、なにしてたの?」

侑「あー…猫を追いかけてて、こっちの方に行ったかなって思ったんだけど」

璃奈「猫?」

歩夢「この前から何回か見かけた白猫なんだけど、侑ちゃんが会いたがっちゃって。…あ、私は二年生の上原歩夢っていいます。よろしくね、璃奈ちゃん」

璃奈「よろしく。です」

 

427名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 18:59:32.92ID:dKQEoMWT

璃奈「中庭で白猫っていったら、たぶんあの子のことだと思う。ます」

侑「璃奈ちゃんわかるの!?」

璃奈「うん。今もエサあげにいく、いきます、ところ」

侑「私もついていっていい!?」パァ

璃奈「いいよ」

侑「あ、璃奈ちゃん、無理に敬語使おうとしなくていいよ。私そういうの気にしないからさ、話しやすいようにしててよ」

璃奈「………ありがとう」コクン

璃奈「こっち」

侑「……!…!」フンスフンス

歩夢「わかったわかった、落ち着いてついていこうね」ヨシヨシ

 

428名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:02:54.99ID:dKQEoMWT

ガサ

璃奈「はんぺん、ごはんだよ」

猫「…」

侑「はんぺん?」

璃奈「この子の名前。白くてやわらかいから、はんぺん」

侑「か、可愛い…!」

歩夢 (可愛い…)

猫 モキュモキュ…

璃奈 ナデナデ

侑「な、撫でてるぅ…!」フラ…

歩夢「侑ちゃん、近づいたら怖がらせちゃうよ。せっかく安心してごはん食べてるのに」ガシ

侑「そんなぁ…私も撫でたいよぅ…」

歩夢「我慢しなさい」メッ

猫 モキュモキュ…

璃奈 ナデナデ

 

429名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:05:31.02ID:dKQEoMWT

猫 …ケフ

猫 モゾモゾ

猫 ゴロン…

璃奈「お腹いっぱいになって寝るみたい」

歩夢「こんなところにお家があったんだね」

璃奈「くぼみになってて雨も降り込みにくいから」

歩夢「戻ろっか」

侑「うん………………」ジーーー

歩夢「戻るよ」ポン

侑「はぁい…」シュン

 

430名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:10:47.49ID:dKQEoMWT

侑「はんぺん、璃奈ちゃんに懐いてたね」

璃奈「そう?」

侑「うん。近づいても撫でても全然怖がってなかったもん、羨ましいなあ」

璃奈「よくごはんあげてるからかな」

侑「私も今度ごはんあげる!そしたら懐いてくれるかな」

歩夢「あんまりあげ過ぎちゃうのもよくないんじゃないかな?」

侑「う、それもそっか…」

璃奈「だったら、私がごはんあげるとき一緒に行こう。そしたらはんぺんもあなたに慣れるかも」

侑「いいの?」

璃奈「うん」

侑「やった!ありがとう、璃奈ちゃん!」

璃奈「うん」


璃奈とはんぺんにごはんをあげました! ▼

 

431名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:17:37.39ID:dKQEoMWT

翌朝…


侑「………あれ?」パチ…


床だ、ここ。

私のベッドはソファも兼ねた形をしてるから、寝相によっては転がり落ちちゃうことがある。

お母さんが「侑は寝てるときおとなしいから大丈夫よ」って言うから信じたのに、たまに落ちてるんだよなぁ…しかも落ちたのに気づかないでちゃんといつもの時間まで寝てるし。

ベッドから落ちたときくらい目を覚ませばいいのに、私。


今日はなにをしようかな? 
>>432
1.
一人でのんびり過ごす
2.
歩夢と過ごす
3.
お買い物に出かける

 

432名無しで叶える物語(わんこそば)2020/11/06() 19:17:57.70ID:8WKQJLfq

3

 

433名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:27:51.52ID:dKQEoMWT

お台場


朝ごはんを済ませて、ふらふらと外に出た。

新刊はこの前買ったし、文房具も足りてる。

特に目的はないけど時間があるとこうして商業エリアに来てしまう。

今頃歩夢はちゃんと課題やってるんだろうな。

毎週毎週偉いなぁ、ほんと。


侑「今日は変なもの買わない!買わないよ!見るだけ!」


そう心に決めておけば滅多な買い物はしないはずだ。

それでも買ってしまうものがあったら、きっとそれは本当に欲しかったり必要だったりするものだよね。

よーし、ウインドウショッピングだー!

 

434名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:30:13.08ID:dKQEoMWT

1,320円です」


チーン


侑「変なもの買っちゃったなー」ビヨヨヨ


薄紫色のヘビをもてあそんでみる。

見た目を裏切ってしなやかな動きが愛嬌たっぷりで可愛い。

歩夢こういう動物系のアイテム好きだけど、あげたら喜ぶかな?

いや、怒られるかな…

 

435名無しで叶える物語(茸)2020/11/06() 19:31:46.25ID:nbh9uWi2

サスケぇ…w

 

436名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:34:57.41ID:dKQEoMWT

手持ち無沙汰をごまかしてくれるヘビをお供に、適当に商業エリアを散歩する。

さすがにこの子がいればこれ以上余計な買い物はしない。

お昼時に向けて少しずつ人が増えていく様子を見ながら歩くのってなんだか楽しいよね。

街が『出来上がっていく』のを眺めてる感じ。


侑「あ、あの服可愛いなー」ビヨヨヨ

「ふうん、ああいうのが好みなの?」

侑「ぅえっ!?」

果林「あら、そんな反応されると悲しいわね」クス

侑「か…果林先輩!いきなり話しかけられたらそりゃびっくりしますよ!」

果林「うふふ、ごめんなさいね」

 

437名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:40:16.19ID:hFJ7Ijr+

一通り遭遇したけど、ここからどうなっていくんだろ
ギャルゲらしく誰かを攻略していくのかな?
ほぼ一緒にいる歩夢が強敵だがw

 

438名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:40:28.23ID:dKQEoMWT

果林「知った姿が見えたから、つい声かけちゃった」

侑「なにもあんな背後からじゃなくても…」

侑「って果林先輩、それ私服ですか…!?」

果林「ん?」


少し落ち着いて果林先輩に目をやると、その服装に思わずそんなことを呟いてしまった。

胸元が広く開いた黒のワンピーススカートに存在感のあるレザーのベルトでスタイルがいやと言うほど強調され、かと思えば肩から羽織って流した薄手のジャケットがもどかしい気持ちにさせてくれる。

とてもちょっと買い物にきた格好ではない、ように見える。


果林「ああ、ふふ。似合ってるでしょう?」ヒラ

侑「と、とっても。デート…とか、ですか?」ドキドキ

 

439名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:42:58.44ID:dKQEoMWT

果林「んー」


すらりとした人差し指を口元にあてがって視線を漂わせる、そんな些細な動きすらも見とれてしまうくらい様になってる。

そわそわしてしまうのを堪えながら返事を待っていると、


果林「どうかしらね?」

侑「な…っ」


あまりにも生殺しなウィンクを返された。

 

440名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:46:21.43ID:dKQEoMWT

果林「…なんてね、デートなんかじゃないわよ。そんな相手いないもの」

侑「そ、そうなんですか…」

果林「キミをドキっとさせちゃったかしら?だったら私もまだまだ上を目指せるわね」

侑「ドキっとしましたよー、もう。デートじゃないってことは、それが普段着…」

果林「ということではなくって」

果林「言ったかしら?言ってないかな。私、読者モデルやってるのよ。今朝その撮影をしてて、今はその帰り」

侑「ど…読者モデルですか!?」

果林「駆け出しだけどね。普段からいちいちこんな格好してるんじゃ気軽に出歩けないじゃない」フフッ

侑「そ、そうですよねー」ハハ…

 

441名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:51:21.01ID:dKQEoMWT

侑「…ん、ってことはやっぱりあれって…」

果林「なに?」

侑「この間、海辺の方で撮影とかしてましたか?」

果林「海辺の…?ああ、したわね。放課後でしょ?見てたの?」

侑「やっぱり果林先輩だったんだ!遠くから見かけただけなんですけど、見慣れない光景だったから印象的だったんですよ」

果林「ふふ、そう。春から夏にかけてファッションも変わるから、色々な服を着られて楽しいのよね。そのときはどんな格好してたんだったかしら」

侑「あ!果林先輩が言ってた『個人的な活動』って読者モデルのことだったんですね!」

果林「あら、よくそんな会話の端を覚えてるわね。もしかして私のファンだったりする?なんてね」

侑「えへへ…こんなにキレイな姿を見かけたら、ファンになっちゃいそうですよ」

 

442名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 19:55:23.82ID:dKQEoMWT

果林「ふうん…」

侑「私なんか家の近くだからってこんな気の抜けた格好で来ちゃうから、眩しくて直視できないくらいです」

果林「…ねえ、今って暇?暇よね」

侑「え?はい、別に用事はありませんけど」

果林「決めた。今から侑とデートしようっと」

侑「え……えええ!?」

果林「デートにぴったりの格好だと思うんでしょう?いいじゃない、付き合ってよね」

侑「や、私、こんな格好、とても隣を歩くなんて」アワワ

果林「面白いことを言うわね」フフ

果林「あなたをコーディネートするデートなんだから、ビフォーアフターを活かすのに最適な格好だわ。さ、行くわよ!」グイ

侑「え………うわーーーー!」ズルズルズル…


果林に連れ回されました! ▼

 

444名無しで叶える物語(茸)2020/11/06() 20:28:33.75ID:nbh9uWi2

乙ん
今の好感度とか設定あるのかな?

 

445名無しで叶える物語(しうまい)2020/11/06() 20:39:25.45ID:hFJ7Ijr+

しずくとの演劇デート前に果林とのデートも来たか
平和なSSで安心するな、約一名曇りそうだけどw

 

446名無しで叶える物語(うめぼし)2020/11/07() 05:58:27.75ID:5b6FP5AS

全員に出会ってしまったか…
ここからどうなるか更に期待深まる

 

447名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:17:28.87ID:/q0rUiGk

翌朝…


高咲母「侑、ケータイ鳴ってるわよ」

侑「アラーム!止めといてー」

高咲母「はいはい」


念のために掛けておいたアラームが鳴った頃、私はすでに朝ごはんも済ませて歯を磨いていた。


高咲母「日曜日にアラームまで掛けるなんて、随分用意がいいわね」

侑「んー」グチュグチュ…ペ

侑「だって絶対寝坊なんかできないんだもん!」


今日はしずくちゃんと演劇を観にいく日!

 

448名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:24:33.49ID:/q0rUiGk

侑「行ってきます!」


気軽に出かけるときはお気に入りのリュックを持っていくんだけど…去年のお年玉で少し背伸びして買った可愛いカバンを提げていく。

駅までの慣れた道を歩くだけでもどこかドキドキしてしまうのは、うん、あの人のせいだ。

私、どこか変じゃないかな。

ふとガラスに姿が映るたびに横目でさっと全身を眺め、ほっとして脚を進める。

うう、一日こんな気持ちで過ごすのかな。

早く慣れちゃいたいよ…

 

449名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:29:05.97ID:/q0rUiGk

『新橋、新橋に到着です。お忘れ物のないようお気をつけください…』


流れる人混みに身を任せて電車を降りる。

ここからJRの駅までも、一番人が多い群れについていくだけでいい。

ピ──

定期圏内の移動がほとんどの毎日だからICカードの残高が足りないかもしれない、ってちょっとだけ心配したけど、大丈夫だった。

でも帰りの分は足りなさそうだからどこかのタイミングでチャージしておかなくちゃ。

 

450名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:32:46.18ID:/q0rUiGk

『ドア、閉まります…』


侑「ふう」


ここからは乗換もなしで40分。

起こしてくれる歩夢はいないから、寝過ごすのにだけは気をつけないとね。

ぼーっと流れる景色を目で追いながら、ふと。


侑 スマスマ…


『おはよう。今新橋で電車に乗ったよ』

『楽しみにしてるね!』


こういう日の振る舞いには慣れてないんだけど、これで合ってるよね?

 

451名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:36:30.30ID:/q0rUiGk

しずくちゃんから返信があったのはほとんど目的駅に到着する直前だった。


『しずくちゃん:おはようございます』

『しずくちゃん:私も楽しみです』

『しずくちゃんがスタンプを送信しました』


傘を差した女の子の可愛いスタンプ。

大きな雨の雫がひと粒あしらわれたそれは、しずくちゃんによく似合ってるように感じた。

 

452名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:38:48.59ID:/q0rUiGk

しずく「侑先輩、お待たせしました!」タタタ…

侑「しずくちゃん、おはよう」

しずく「おはようございます。すみません、私の方が近いのにお待たせしてしまって」

侑「全然気にしなくていいよ。私こういうの遅刻が怖くて早く着くようにしちゃうんだよね」

しずく「そうなんですか。素敵な心がけですね」

侑「いやあ、それでよく怒られたからさ…」

しずく「…それにしても」チラチラ

侑「ん?」

 

453名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:42:29.46ID:/q0rUiGk

しずく「なんだか、その、とても素敵な格好ですね」

侑「ああ…」


どこか照れたように視線をくれるしずくちゃん、その言葉で忘れていたことを思い出す。

今日の私は、ちょっとお台場で遊ぶのとはもちろん、約束をして出かけるときにだって滅多にしないようなオシャレをしてるんだった。

これはひとえに──


しずく「制服姿でしかお会いしたことがないのですごく新鮮です。そんな風に着こなせるなんて、羨ましい…」

侑「いや、違うのこれ!私のセンスじゃなくて!」

しずく「え?」

侑「昨日、ちょっとした知り合いに着せ替え人形にされた名残というか………」

しずく「はあ…」

 

454名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:48:32.68ID:/q0rUiGk

昨日、この服を見たお母さんは大はしゃぎで、すぐに引ったくられたかと思ったら今朝にはアイロンまでかけて枕元に置いてあった。

使い慣れたリュックもいつの間にか隠されていて、大切にしまってたはずのカバンが代わりに出されていて。

こんなことならしずくちゃんとお出かけすること報告しなきゃよかったかなぁ、なんて思ったけど。


しずく「とってもお似合いですよ。隣を歩くのにこんな格好で、気後れしてしまいます」


こうやって微笑んでくれる様子を見たら、案外悪くなかったな、って思っちゃう。

我ながら単純だなぁ。


侑「そんなことないよ、しずくちゃんの服だってすごく可愛いよ!」

しずく「あ、ありがとうございます…」//

侑「行こっか!」

 

455名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 07:55:12.97ID:/q0rUiGk

侑「私この辺初めて来たよ。結構栄えてるんだね」

しずく「そうですね。近いですし、簡単なお買い物はここまで出てくればだいたい済んでしまいます」

侑「鎌倉に住んでるんだよね。通学大変じゃない?」

しずく「時間はかかりますが、自分で選んだことなので。色んなことに集中するいい時間だと思うようにしてるんです」

侑「偉いなぁ、私なんか家から近いし幼馴染みも行くからって理由で決めちゃったよ」

しずく「それだって合理的でいいじゃないですか」

侑「そうかな?」

 

456名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:05:50.68ID:/q0rUiGk

侑「ニジガクに行くこと自体はまあ変わらなかったと思うんだけどさ、せっかくなら普通科じゃなくて他の科にしてみてもよかったかなーって思うんだよね」

しずく「例えば何科ですか?」

侑「そうだなー、音楽科とか?」

しずく「侑先輩、音楽が得意なんですか」

侑「ううん、全然。でも他にできそうな分野もないし、音楽ならなんとなく面白いかなーって」

しずく「ふふ、なんですか。それ」

侑「えへへ…しずくちゃんは国際交流学科だよね。どういうことするの?」

しずく「私は英語とオランダ語を専攻しているんですけど、今はまだ読み書きやOCばかりですが、秋頃には映画を観たり文学作品の翻訳をしたり、ニ年次には大学の方々と交流を取る課外学習なんかもあるみたいです」

侑「うへ~、大変そうだね…」

しずく「興味があると楽しく感じますよ」ニコッ

 

457名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:10:03.21ID:/q0rUiGk

侑「国際交流学科ってオランダ語も選べるんだね」

しずく「はい。人気が高いのは中国語とイタリア語みたいですが、珍しいところだとスコッツ語なんかもあるそうですよ」

侑「スコッツ語?」

しずく「スコットランド語、ですね」

侑「適当に思い浮かぶものすらない国だ…」

しずく「バグパイプとかでしょうか?」

侑「スカートで演奏するやつだ!」

しずく「それです!」

 

458名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:13:51.32ID:/q0rUiGk

劇場


しずく「ちょうどいい時間ですね」

侑「文化ホールっていうのかな。こういうところも小学生のときに行事で来た以来だな」

しずく「私的に来るのは珍しいかもしれませんね。文化的な用途でしか使われることがない場所ですから」

侑「私には文化的な趣味がないってことだね…」

しずく「ええっ、そんなつもりで言ったわけじゃ!」アワアワ

 

459名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:20:17.63ID:/q0rUiGk

しずく「客席の入口はこっちですね。お手洗いを済ませておきましょうか」ススス

侑「あれ、そういえばチケットはどこで買うの?」

しずく「私が持っているので買う必要はありませんよ。前売分が完売しなかったら入口で当日券を売っているのですが、この様子を見ると完売したみたいですね」

侑「えっ、待って、チケット代出してもらっちゃったの!?ごめん、いくらだった?」サッ

しずく「あ、いいんです。私きっと二回行くだろうと思って、この回の分と日時指定のないものと一枚ずつ持っていたので、改めて買ったわけじゃないんですよ」

侑「それって結局私が観る分もしずくちゃんが払ったってことだよ」

しずく「それは、そういうことになりますが…」

しずく「そ、それなら、ランチをご馳走になってもいいですか?私、行ってみたかったお店がこの近くにあるんです!」

侑「うん、うん、ぜひ行こう!食べたいものみんな頼んでね!」

しずく「はいっ」

 

460名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:28:08.82ID:/q0rUiGk

しずく「間もなくですね」

侑「なんか緊張するな…」

しずく「開演前のこの空気、独特ですよね」

しずく「会場にいる全員がこれから始まる物語に対してそれぞれの想いを、あるいは願いを抱いて待つ時間」

しずく「今からここで出会う物語が、未来の自分を作ってくれるのか。はたまた過去の自分を解き放ってくれるのか。ほんの一時間ばかり『誰かの人生』を歩もうとする、現実と境界線を越えた向こう側への旅支度の時間」

しずく「難しいことを考える必要はないと思います」

しずく「ただ目の前で繰り広げられる物語を、感じるままに感じてください。悲劇ならば共に悲しみ、喜劇ならば共に笑ってください。それだけがただ一つ、演劇を観るためのルールだと私は思っています」

侑「………わかったよ。ありがとう」

しずく ニコッ──


しずくちゃんが優しく、美しく微笑むと同時に、人生の始まりを告げる低いブザーが会場を包んだ──

 

461名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:36:19.39ID:/q0rUiGk

『ノスタルジア』

脚本・演出、大瀬夢見。

深い森の奥に二人きりで暮らすリョウと娘のハナ。

ある日、奔放な母がアンドロイドのユウを連れ帰るところから物語は始まる。

『その辺で拾った』というユウのお世話をするようにとリョウから言いつけられるも、自身の気難しい性格とアンドロイドの素直な複雑さに奮闘するハナ。

ようやくユウとの生活に慣れてきた頃、ハナは──最愛の母もまたアンドロイドであったことを知る。

ユウは、自身の躯体が長くないことを悟ったリョウがハナのために遺したものだった。

三者の感情が大きく入り乱れ、すれ違い、絡み合い、物語は悲しくも優しい終焉を迎えた…

 

462名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:40:52.05ID:/q0rUiGk

ワァァァァァ…


侑 ────ハッ


大きなブザーも聞き逃した私を呼び戻したのは、会場に満ちる拍手だった。

見ればお客さんはそれぞれに笑顔や涙を浮かべて、はちきれんばかりに両手を叩いて称賛の声を送っていた。

演劇というものを初めて観た私には衝撃的なことが多すぎて、上手く褒めることだってままならない。

それでも自然と両手は動いて、ついに客席の全員が拍手と喝采を送ることになった。

その光景が、今の演劇がどういうものだったのかを教えてくれたような気がした。

 

463名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:43:56.43ID:/q0rUiGk

侑「──よかったね!!」


まだどこか放心気味だった(らしい)私は、しずくちゃんに手を引かれて例のお店に連れられた。

お水を飲んだところでやっとしっかり呼吸ができるようになって、そんな第一声が店内の雰囲気にそぐわない大きさで飛び出した。

周りから視線が刺さったように感じたけど、しずくちゃんはそんなこと気にもしないで微笑んで頷いてくれた。


しずく「はい、とっても」コクン

 

464名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:51:23.27ID:/q0rUiGk

しずく「たった三人きりの世界でああも濃密な物語が描き出されるなんて、やっぱり大瀬夢見の作品は素晴らしいものです。もしくはたった三人だからこそだったのでしょうか」

侑「そうかもしれないね。なんていうのかな、他になにも邪魔するものがないから三人の気持ちがダイレクトにぶつかり合うっていうか!」

しずく「あのシンプルな舞台演出も、それをより濃く活かすためのものだったのかもしれませんね」

侑「あれってやっぱりシンプルなんだ?」

しずく「プロ劇団のステージであれだけ大道具が少ないのは相当珍しいことです。音響も最低限に留められていて、役者の表現力を絶対的に信頼した演出になっていましたね」

侑「うう、そうなんだ。そういう部分も噛み締められるようになったら、きっともっと面白いんだろうなあ!」

しずく「そうですね。でも一番大切なこと、今日覗かせてもらったあの方々の人生は──侑先輩の心を豊かにしてくれましたか?」

侑「──もちろん!!」

しずく「よかったです♡」

 

465名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:55:25.51ID:/q0rUiGk

侑「あのね、私が一番印象的だったのは、リョウがユウに自分を解体するように命令したところで、照明が消えてユウが…!」

「お待たせしました」

侑「あっ…」

しずく「うふふ。興奮冷めやらぬうちにたくさん語り合いたいのは私も同じですけど、まずはお料理冷めやらぬうちにランチを頂くことにしませんか?」

侑「は、はい…」

侑「ここ、雰囲気もいいしお料理も美味しそうだね。一緒に来られてよかったよ」

しずく「私もです。チケット二枚持っててよかった」

侑「え、どういうこと?」

しずく「ぁ……」

 

467名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:58:30.02ID:/q0rUiGk

丁寧におしぼりで手を拭いていたしずくちゃんは、しまった、という風に私を見つめた。

まだソースを味わってもいない口元をひと拭きすると、少しはにかんで、


しずく「ランチをご一緒する口実を見つけられたから、です」


音響も照明も置き去りにしてしまうほどの、それは可愛い笑顔だった。


しずくと観劇を楽しみました! ▼

 

468名無しで叶える物語(茸)2020/11/07() 08:59:20.84ID:/q0rUiGk

本日はここまでで。
次回は月曜日になると思います、ご了承ください

 

469名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/11/07() 09:12:53.60ID:8jvHDMiF

乙!
日曜ないのは残念だけど、楽しみにしてる

 

470名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/11/07() 09:18:20.70ID:h6JN3XSa

おつです
すき

 

472名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/11/07() 11:11:53.52ID:wKCssR3D

おつおつ。いつもありがとう
にやけながら読んでるわ

 

474名無しで叶える物語(たこやき)2020/11/08() 03:27:17.87ID:oWOVIxf8

ゆうしずてぇてぇ