ことり(18)「今日からあなたの専属メイドになることりです。まりちゃんよろしくね♡」鞠莉(11)「ふんっ…」 8

215>>1(しうまい)2020/05/23() 13:02:52.06ID:krBraYn6

内浦限界バトル 1/11


五時間目──


先生「はい、今日は前から話していた通り、みんなの授業をご家族が見にきてくださっていますね」

児童達「「「………」」」

先生「先生は色々と考えました。みんなのどんな様子を見てもらおうかなって」

保護者達「「「………」」」

先生「国語で作文を書いてご家族の前で読んでみようか、算数で一つ難しい問題に挑戦してみようか。音楽で綺麗な合唱を聴いてもらうのもいいかもしれないな」

先生「たくさん考えて、決めました。今日の授業参観は、」

児童達 ゴクリ…

先生「ご家族の皆さんも交じってのドッジボールをやります!!」

児童達(体操着)「「「いぇーーーーーーーっ!!!」」」フウーッ

保護者達「「「!!!??」」」ドヨッ


──体育!

 

216>>1(しうまい)2020/05/23() 13:03:24.69ID:krBraYn6

内浦限界バトル 2/11


体育館


先生「それではみんなは出席番号でAチームとBチーム、Cチームに分かれて、ご家族の皆さんはそれぞれのチームに入ってもらいましょう。試合の順番は…」


ことり「ドッジボール、ですって」

鞠莉ママ「dodge ball... デスか…」

ことり「何年ぶりくらいですか?」

鞠莉ママ「そうね、に──……」

鞠莉ママ「…五年ぶりくらいデース」

ことり「高校生の年齢ですよ、それ!」チュン!

鞠莉ママ「マ、こんなこともあるかもしれないと」ヌギ

鞠莉ママ「準備は万端デーーース!!」バァァァン

ことり「あーーっ!お母さんがランニングとかするときによくしてる格好ーー!」

ことり「ずるい!なんで運動向きのお洋服なんか仕込んできてるんですか!」

鞠莉ママ「アリトアラユル状況を想定できなくては、経営などママなりまセーン。ママだけに!」チッ、チッ、チッ

ことり「私こんな服なのに~!」


児童達 (((あの人やばそう…))) ザワ…

 

217>>1(しうまい)2020/05/23() 13:03:50.79ID:krBraYn6

内浦限界バトル 3/11


まり「ママ!」

鞠莉ママ「マリはA-teamなのデスね」

まり「うん、ダイヤも一緒よ」

ダイヤ「ごきげんよう、まりさんのお母様」ペコ

鞠莉ママ「…ゴキゲンヨウ」

鞠莉ママ (デスワは大きな家の子だし礼儀は正しいのよね。ハグゥと一緒でなければおとなしいのだけど──)

ダイヤ「こっここここここ、ここここっここここ、ことっ、ことりさんっ、も!ご、ごきげんょ…こんにち、ご…」

ことり「こんにちは、ダイヤちゃん。おんなじチームだね。頑張ろうね!」

ダイヤ「ひゃ、ひゃいっ!」フニャ

鞠莉ママ (あっるぇーーーーー???)

 

218>>1(しうまい)2020/05/23() 13:04:20.89ID:krBraYn6

内浦限界バトル 4/11


男子「えいっ」三○ ヒュン

まり「ことり!ボール来るわよ!」

ことり「きゃあ!」サッ

まり「え?」

Σ まr○三 ビシッ

まり「ぎゃふんっ」

鞠莉ママ「マリ!!」

ことり「うわあごめんねまりちゃん!そんなところにいるなんて思わなくて!」

先生「顔はノーカン!小原さん平気ですか?」

まり「ギャグパートだったから平気です…」フラ

先生「よし、続行!」

ダイヤ「あら?ボールはどこでしょう、まりさんにあたって跳ねかえって…」

鞠莉ママ「hey, boy. カクゴはできていマスね──?」ユラァ

ダイヤ「スポーティな格好のおばさまが復讐に燃えていますわ!」ンマー!

鞠莉ママ「必殺!ギルティ☆ダイナマイト!」≡≡○ ビュンッ

Σ 男s○≡≡ ゴッ

男子「ふぐぅっ!」

先生「胴体(トルソー)!有効!!」ピッ

鞠莉ママ「URYYYYYYYYYYYY!!!


児童達 (((あの人やば…))) ザワ…

 

219>>1(しうまい)2020/05/23() 13:04:46.80ID:krBraYn6

内浦限界バトル 5/11


鞠莉ママ「なんとか勝ちまシタね」フゥ

ことり「結局外野から戻れませんでしたぁ」

まり「あなたボール見失うの早すぎたわよ」

鞠莉ママ「真後ろから両手の下投げであてられていたものね」

ことり「だってえ…」

ダイヤ「くっ、ことりさんをお守りすることができず悔しい限りですわ…」

ことり「そんな、ことりが弱かっただけだよダイヤちゃん!気にしないで!」

まり (弱かったわね)

鞠莉ママ (弱かったわね)

まり「少し休憩したら、BチームとCチームの試合を見ておかなくちゃね」

ダイヤ「かなんさんはCチームでしたね。味方のときは心強いですが、戦う相手となると気が重い──」


先生「試合終了!Cチームの勝ち!」


ダイまり「「──え…?」」

 

220>>1(しうまい)2020/05/23() 13:05:12.46ID:krBraYn6

内浦限界バトル 6/11


ザワザワ…


まり「え、あれ…?二試合目って始まったばっかりじゃ…」

ダイヤ「五分と経っていないはずですが…」

ダイヤ「あ、あの、今の試合はどうなったのですか?」

男子「見てなかったのかよ黒澤~」

男子「またあれが発動したんだよ!」

ダイヤ「あれ?…というと、まさか…『あれ』ですか!?」

男子「うわー、あいつとやりたくねー」

まり「ダイヤ?どうしたの?」

ダイヤ「…まりさん。あれを…」スッ

まり「…?」


かなん ダムダム…


まり「かなん…?」

ダイヤ「ドッヂボールをあんな風にダムダムできる人など、そうそういるものではありません。今日の試合──荒れるかもしれませんわね…」ザワ…

 

221>>1(しうまい)2020/05/23() 13:05:48.36ID:krBraYn6

内浦限界バトル 7/11


先生「AチームとCチームの試合を始めます。礼」ピッ

「「「お願いしまーす」」」

先生「ではボールじゃんけんをしましょう」

男子「勝てよ!絶対勝てよ!」

ダイヤ「ここでじゃんけんに負けることは、そのままチームが試合に負けることにもつながりますわ!」

男子「そんなこと言っても…じゃんけんって運じゃんか…」


鞠莉ママ「すごいデスね。全員とても真剣…」

ことり「それだけ、小学生にとってのドッヂボールって大きなことなんですよ。それに今日は──」

保護者達 ザワザワ… ソワソワ…

ことり「絶対に負けたくない闘い、なんだと思います」


「「ボールじゃんけん、じゃーんけーん………」」

 

222>>1(しうまい)2020/05/23() 13:06:13.27ID:krBraYn6

内浦限界バトル 8/11


先生「市原くん、矢上くん、アウト!」ピッ

一同「「「……………!!」」」

かなん ダムダム…

男子「お、おい…またボール松浦に戻っちゃったぞ…」

男子「早く奪わないと、このまま全滅するって…」

男子「だったらおまえキャッチしろよ」

男子「むちゃ言うなよ…」

かなん スッ

男子「! ま、また来るぞ!」

男子「絶対ボール奪え!もう松浦に戻すな!」

かなん ブンッ


ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○


男子「ひっ…!」


──バシッ バシッ


先生「棚元くん、榊くん、アウト!」ピッ

 

223>>1(しうまい)2020/05/23() 13:06:52.82ID:krBraYn6

内浦限界バトル 9/11


ことり「ぁ…また、ボールかなんちゃんに…」

まり「もう三回連続で、一度に二人あててかなんにボールが戻ってるわよ…」

ことり「じゃんけんでボール取られちゃってから、一回もこっちから投げてないね…」

まり「あんなのずるじゃないの…」

ダイヤ「あれこそが、かなんさんの必殺技ですわ」スッ

ことり「ダイヤちゃん!」

まり「まだ生きてたのね」

ダイヤ「ええ、なんとか。というか、おそらくかなんさんがあえてわたくし達はあてないようにしているのだと思います。わたくし達というか、女子ですかね」

まり「そういえば、さっきからあたってるのは男子だけね」

ことり「あんな速さのボール、女の子だったら痛くて泣いちゃうかもしれないよね…」

まり「ってか、なに、必殺技って」

ダイヤ「…」


ダイヤ「──『夏の大三角(トライアングル・シューティングスター)』」

 

224>>1(しうまい)2020/05/23() 13:07:22.44ID:krBraYn6

内浦限界バトル 10/11


ダイヤ「かなんさんがゾーンに入ったときだけ使えるという、ドッヂボール中の必殺技」

ダイヤ「みとれるほどの美しいフォームから放たれるボールは、一人を討って軌道を変えて、さらに一人を討ってからかなんさんの手元に戻る」

ダイヤ「一瞬のうちにえがかれる三角形は夏の夜空に輝く三つの星座のごとく。あまりの勢いにボールを受けた男子が吹っ飛んで尻もちをついてしまうその姿は流れ星のごとく」

ダイヤ「わたくし達の中では知らない子はいないその必殺技は、いつからかそんな風に呼ばれていましたわ」

ダイヤ「あの状態のかなんさんにボールが渡れば最後、こちらの男子が全滅してしまうまで──流星群がやむことはありません」

 

225>>1(しうまい)2020/05/23() 13:07:59.18ID:krBraYn6

内浦限界バトル 11/11


まり「そんな…ってことは、もう…」

ダイヤ「試合の途中でこうなったのならばまだ取り返しようがある場合もあるのですが、相手のチームは誰一人アウトになっていない。最初からこれでは、勝ち目は…」

鞠莉ママ「気弱なことを言うのではありまセン」ザッ

ことり「ここは私達の出番みたいですね」ザッ

ダイヤ「!」

まり「ま、ママ…?ことりも…」

鞠莉ママ「dodge ballをあんな速さで投げる人間など見たことがない。小学生ならば怖くて当然デス」

ことり「男の子でも太刀打ちできないんじゃ、女の子にはどうしても荷が重いですもんね。でも、それなら──『女性』がどうにかすればいいんです!」

鞠莉ママ「………ワタシは女の子なのでやめておきマース」ススス

ことり「あっ!わ、私だって女の子ですもん!小原さんずるいっ!」チュン!

鞠莉ママ「HAHAHA, 冗談デース!」

ことり「もうっ…」

ダイヤ (おばさまが…女の子………??)

鞠莉ママ「さて、それでは──反撃といきまショウ」コキコキ

ことり「はいっ!」

 

226>>1(しうまい)2020/05/23() 13:22:51.74ID:krBraYn6

放課後好々爺 1/10


ダムダム… ダムダム…


かなん (相手のチーム、残ってる男子は四人)

かなん (高橋くんの右肩、浦川くんの左脚、それでコースは見えた)

かなん (悪いね、ダイヤ。まり。ことちゃん)

かなん (あと二球で──終わりにするから!)

かなん ブンッ


ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○


かなん「──────」

高橋「うわっ!」バシッ

かなん「………!!」


ダイヤ「!」

まり「!」


ことり バッ…!!


一同「「「!!?」」」ザワ

 

227>>1(しうまい)2020/05/23() 13:23:19.07ID:krBraYn6

放課後好々爺 2/10


────バシィィッッ

ダイヤ「こ、ことりさん!」

まり「ことり!」

ことり「あ痛ったぁい…!」ヨロ…

かなん「こ……っ、ことちゃん…!!」

ことり「…小原さんっ!」ハァ

鞠莉ママ「イエス!」ダッシュ!

かなん「!?」ハッ…

「ま、松浦の『夏の大三角』が…止まった…」

「ボールが…」

鞠莉ママ ズザザザ…

………パシッ

「こっちに来た…!」


鞠莉ママ「ここからはour turnデース」ニッ っボールと

 

228>>1(しうまい)2020/05/23() 13:23:48.11ID:krBraYn6

放課後好々爺 3/10


鞠莉ママ「高橋ボーイ!ボールから目を離さない!」

鞠莉ママ「浦川ボーイ!out zoneに近づき過ぎデス!」

鞠莉ママ「womenは二人、girlsは三人で固まって!ボールを全体で受け止めて確保するのデース!」


 三○

○====

 ≡≡≡≡≡≡○

 ○)))……


ことり「す、すごい…」

ダイヤ「コート全体を見渡す広い視野、的確な作戦と指示。先ほどまでの一方的な差がどんどん縮まっていますわ…」

まり「ママが本気になったらこんなものなんだから!」ヘヘン

ダイヤ「さすがの手腕には感服ですわ。でも、やっぱり一番の原因は…」


かなん シュン… ←外野


ダイヤ「ことりさんにあててしまったことで、かなんさんがすっかり落ちてしまったことでしょうね」

まり「そうね…」

鞠莉ママ「コラ、そこ!ボールと敵に集中していなサイ!」

ことり「ぴっ!ご、ごめんなさぁい!」

まり「とにかく今は勝つことだけ考えましょ!」

ダイヤ「は、はい…!」

 

229>>1(しうまい)2020/05/23() 13:24:14.06ID:krBraYn6

放課後好々爺 4/10


鞠莉ママ「ハァ……ハァ………」

坂井()「はぁはぁ……ふぅ…」

鞠莉ママ「ギルティ☆ダイナマイト……っ!」==○ ビュッ

坂井()「…っ、ああ!」パシッ


まり「キャッチされたわ…」

ダイヤ「さすがに速度が落ちていますからね…」

まり「内野に残ってるのはママと坂井くん、それぞれ一人ずつ。ボールもお互いにキャッチし合うから、外野からも手出しできない…」

ダイヤ「っ、もどかしい…!外野でボールを回して翻弄すればよいのに!どうしてこちらへボールを下さいませんの?」

まり「それは坂井くんも同じね。なんでお互いにボールを投げ合うだけなのかしら、体力も残ってないはずなのに…」

ことり「それが、誇りなんだよ」

ダイヤ「!」

まり「誇り…?」

 

230>>1(しうまい)2020/05/23() 13:24:40.33ID:krBraYn6

放課後好々爺 5/10


ことり「そう。ここまで戦い抜いて、そして内野に一人きりになった自分の誇り。そして、同じようにたった一人になるまで残ってた相手に対する誇り」

ことり「小原さんも坂井くんも、自分自身の手で決着をつけたいんだよ。誰の手も借りずに、自分だけの手で──!」

ダイヤ「ことりさん…」

まり (よく、わからないんだけど…) ドーン

ことり「! 坂井くんが投げるよ!」

まり「ま、ママ!頑張って!」

ダイヤ「最後までお気を確かに!」

「がんばれ坂井!」

「ママさんがんばって!」


鞠莉ママ「来なサイ…!」

坂井「て、やぁあ…っ!」≡○ ヒュンッ

………

……

 

231>>1(しうまい)2020/05/23() 13:25:27.70ID:krBraYn6

放課後好々爺 6/10


先生「せいれーつ!」

児童達 ゾロゾロ…

先生「みんな、お疲れさま。ご家族の皆さんもお疲れ様でした」

先生「どのチームもとても頑張っていましたね。入学してきたばかりの頃はあんなに小さくて頼りなかったあなた達が、こんなに…たくましく、動き回っている姿に…先生はっ…」ウッ

まり「先生泣いてない?」

ダイヤ「先生は、昨年度赴任してきたはずですが…」

ことり ウルウル…

まり「って、ええ!?なんで貰い泣きしてるの!?」ギョッ

先生「すみません」ズビ

先生「どのチームも頑張ったけど、勝負事なので結果はつきましたね。見事二勝して──Cチームの優勝でした!拍手!」

パチパチパチパチ……

「やったなー坂井!」

「すごかったよ、坂井くん」

坂井「えへへ…」

先生「特に最後の試合はすごかったですね。頑張ったチームメイトと、素敵な試合をしてくれた相手チームのみんなにも向けて、全員でもう一度大きな拍手!」

パチパチパチパチ!

先生「それでは五時間目の体育はこれで終わります。ホームルームをするので教室に戻りましょう」

児童達「「「はーーい」」」

 

232>>1(しうまい)2020/05/23() 13:25:53.90ID:krBraYn6

放課後好々爺 7/10


帰り道…


鞠莉ママ「ハァ…」トボトボ

ことり「まだ落ち込んでるんですか?」

鞠莉ママ「だって!ワタシがもっと踏ん張っていれば、マリをwinnerにすることができたのデスよ!」

まり「わたしは楽しかったし、ママがカッコよかったから満足よ」

鞠莉ママ「そう言ってくれるのは嬉しいデース」ニコ…

まり「ママ…」

ことり「なかなか深刻だね…」

ことり (この日のためにお仕事を調整してお休み取ったんだって言ってたもん。すごく惜しかっただけに、悔しい気持ちもきっとすごく大きいよね…)

ことり (これが国語や算数だったなら、小原さんがこんな気持ちになっちゃうこともなかったのにな…)

まり「ママ、今日はママが作ってくれたごはんが食べたいわ──」


「まりのお母さん!」

 

233>>1(しうまい)2020/05/23() 13:26:26.69ID:krBraYn6

放課後好々爺 8/10


ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○

鞠莉ママ「!?」

ことり「お、小原さんっ!」

鞠莉ママ「クッ、ナンノコレシキ…!」

鞠莉ママ バシッ

ことり「な、ナイスキャッチ」ホッ…

まり「ちょ…ちょっと、危ないじゃない!なにするのよ──かなん!」


かなん ニッ


かなん「とうっ!」シュタッ

かなん「カモン、おばさん」クイクイ

鞠莉ママ「…ホウ、いい度胸デスね」

ことり「え?え??小原さん、ここ校門の前ですよ」アセ

かなん「運動場ならいいでしょ!」タタタタタタ

鞠莉ママ「受けて立ちマース!」ダッシュ!

ことり「えっ、あっちょっと小原さん!かなんちゃん!」

まり「二人とも待ってー!」タタタ…

 

234>>1(しうまい)2020/05/23() 13:26:55.46ID:krBraYn6

放課後好々爺 9/10


「すみませんな、うちのじゃじゃ馬が」ヌッ

ことり「あ、あなたは…?」

松浦爺「これは失礼、松浦と申します。果南の祖父をやっとりますわ」

ことり「かなんちゃんのおじいさんですか!初めまして、えっと…」

松浦爺「ことさんですかな。果南がうちでよく話しとる」

ことり「は、はい。小原さんのところでメイド…使用人のお手伝いをさせてもらってます、南ことりです」

松浦爺「小原さんは相変わらず元気だな」

ことり「そうですね」

松浦爺「もう何年前になるか、ホテルオハラを建てるっちゅうて挨拶に見えたとき。その頃からパワフルなお嬢さんではあったがな、果南に付き合ってやれるのは凄いことだ」

ことり (お、お嬢さん…そうだよね、松浦さんからしたら小原さんなんてまだまだひよっこだよね)

松浦爺「わしも若くないんでな、ドッヂボールは見学させてもらうだけだったが、終わってから果南を叱りつけてやったんですわ」

ことり「叱った、ですか?」

松浦爺「おう!試合の途中でやる気をなくすなんてバカタレのすることだっちゅうてな。果南が最後までやっとけば、小原さんなんか目じゃなかったろう、ってゲンコツくれてやったわ。かっかっかっ!」

ことり「げげげゲンコツ!!?」

 

235>>1(しうまい)2020/05/23() 13:27:22.01ID:krBraYn6

放課後好々爺 10/10


松浦爺「そしたら先生の話が終わるやボールを借りてきよってな、『リベンジするから見てろ』と抜かす」

松浦爺「小原さんに勝てなかったら晩メシは食わせんと言うとるからな、しばらくはああやっとるはずですわ。ま、わしはジャングルジムでもやって気長に待つとしますか」グッグッ

ことり「ジャングルジムはなさるんですか!?」

松浦爺「ことさんも?」クイクイ

ことり「や、私は、その、大丈夫です。かなんちゃん達の応援でもしてます」

松浦爺「そうか。残念」

松浦爺「勤めは小原さんのところだろうが、果南とも仲良くしてやっとくれな。あれも相当あなたを好いとるようだ」

ことり「はい、私もかなんちゃん大好きですから!」

松浦爺「かっかっかっ!」ヒョイヒョイヒョイ

ことり (するする登ってくー!!)


<
ことちゃーん、こっちおいでよー!

<
コトリ、ジャッジをしなサイ!ジャッジを!

<
ねえ、いつまでやるの?


松浦爺 ニカッ

ことり フフッ

ことり「はぁーい!」タタタ…

 

236>>1(しうまい)2020/05/23() 17:25:45.45ID:krBraYn6

まごころクッキング 1/11


十一日目、土曜日




鞠莉ママ「おっと電話デス。Hi, this is Ohara...

ことり ジッ

まり「どうしたの?」

ことり「ううん、やっぱりお仕事の電話は英語なんだなーと思って」

まり「当たり前じゃない…っていうわけでもないか」

ことり「そうなの?」

まり「うん」

まり「だってママ、イタリアでもお仕事するし、お仕事の相手はドイツの人だったり中国の人だったりするもの。だからいつも英語なわけじゃないわよ」

ことり「そ、そっちかあ…」

まり「今電話をくれたのがたまたま英語圏の相手だったんでしょうね」

ことり「ことりなんか、まだまだイタリア語もうまく喋れないのに…」

まり「ママってばすごいでしょ!」ドヤッ

 

237>>1(しうまい)2020/05/23() 17:26:11.98ID:krBraYn6

まごころクッキング 2/11


鞠莉ママ「Sorry, 出かける用事ができてしまっタわ」

家野「あら」

まり「えーー!ママ、今日土曜日よ!?」ブー!

鞠莉ママ「スミマセン、なかなか会えない人なのデスが、たまたま日本に来ているのだと…」

鞠莉ママ「マリ。イエノの言うことをキチンと聞いて、いいコにお留守番を──」

家野「! 奥様、」

ことり「?」

まり「大丈夫」

まり「わたし、もう五年生よ。ママがお仕事で忙しいことくらいわかってるから」

まり「このお休みだって頑張って取ってくれたのよね。一日くらい我慢するわ」

鞠莉ママ「マリ…」ホッ

鞠莉ママ「一日なんて言いまセン、afternoon-teaには戻りマス!」バッ

家野「運転手は待機させておきます、奥様もご支度を」ササッ

 

238>>1(しうまい)2020/05/23() 17:26:37.46ID:krBraYn6

まごころクッキング 3/11


ブ…

ブゥゥゥゥン…


まり「行っちゃった」

ことり「行っちゃったねえ」

まり「あーあ、せっかくの土曜日くらいママと遊んであげようと思ったのに。やることなくなっちゃったわ」プー

ことり「ね、まりちゃん」

まり「なに?」

ことり「ことり、いいこと思いついたんだけど」

まり「そうなの。よかったわね、頑張ってね」

ことり「違うの!まりちゃんも一緒に!」チュン!

まり「え~」

ことり「小原さん、午後には帰ってくるって言ったでしょ」

まり「言ったわね」

ことり「だからさ、ことりと一緒に──おやつ作って待ってない?」ニコッ

まり「…!」

まり「や、やる!」

ことり「それじゃ、美味しいおやつ作って小原さんビックリさせちゃおう!」

まり「うんっ!」

 

239>>1(しうまい)2020/05/23() 17:27:03.83ID:krBraYn6

まごころクッキング 4/11


まり「なに作るの?」ソワソワ

ことり「ふっふっふ…ことりはね、こんな日が来るんじゃないかと思って用意してたんだよ」ゴソゴソ

ことり「じゃじゃーん!」っメモ サッ

『まりちゃんと作る!おやつレシピ』デーン

まり「ええ…」

ことり「さーさーまりちゃん、お菓子作りはやること多いんだよ。てきぱき動かないと小原さんが帰ってくるまでに間に合わなくなっちゃうんだから!」

まり「わ、わかったわよ。…でもまりお菓子作るなんて初めてだからなにから始めたらいいかわかんないけど…」

ことり「はい」っメモ

『作業手順(まりちゃん)

まり「…………ことりは?」

ことり「こっちだよ」っメモ

『作業手順(ことり)

まり (用意よすぎ…きもちわる…)

ことり「さー、がんばろー!」

まり「お、お~!」

 

240>>1(しうまい)2020/05/23() 17:27:31.67ID:krBraYn6

まごころクッキング 5/11


ことり「まりちゃんはニガテなお菓子とかある?」

まり「ニガテなお菓子?考えたこともないけど…ことりはあるの?」

ことり「私はねえ、辛いのがダメなんだぁ」

まり「辛いの?」

ことり「唐辛子とかハバネロとか、そういうのあるでしょ。ちょっと食べただけできゃあってなっちゃう」

まり「ああ、そういうお菓子もありなのね。てっきりケーキとかシュークリームとかのことかと思ったわ」

まり「んー………あ、一つあるかも」

ことり「なになに?」

まり「なんていうお菓子か知らないんだけど、なんか…お仏壇に飾ってあるやつ」

ことり「お仏壇?」

まり「うん。かなんと辻宗さんに行ったときにおばあちゃんがくれたんだけど、すっごく甘くて、っていうかたぶんあれただの砂糖だと思うのよね」

ことり「…らくがんかあ」

ことり「らくがんは、そうだね。ことりもあんまり好きじゃないかなあ」

まり「ねー。仏様にあげたものなんだからまり達が食べるべきじゃないと思うわ」プンスコ

ことり「そーだそーだ!」プンスコ

 

241>>1(しうまい)2020/05/23() 17:27:59.12ID:krBraYn6

まごころクッキング 6/11


ことり「よーし」キュ

まり「なに、そんなに気合い入れて」

ことり「ここがね、ことりの作業の中で一番大事な部分なの。慣れてても気を抜いちゃいけないから頑張ろうって思って」

まり「ふうん。…見ててもいい?」

ことり「うん!でも飛んで顔についちゃうかもしれないから少し離れててね」

まり「わかった」ススス

ことり パラ

まり「…ことり!?それ塩よ!?砂糖はこっち!」

ことり「あっううん、お塩でいいんだよ。こうやってほんのちょっとだけ入れておいたら卵白が固まりやすくて、泡立つのが早くなるんだ。お砂糖は後から入れるの」

まり「へ、へえ…そうなの…」

ことり「まぜるよ~」カチ ウィィィィィィン

まり「………………へ~…」ジー

ことり「う~ん、このくらいでいいかな。そしたらまりちゃんがふるってくれたお砂糖を入れます」サラサラサラ

ことり「いっぺんにバンって入れたらせっかく立てた泡が潰れちゃうから、こうやって優しく全体にね」

まり「うん」

ことり「それじゃまたまぜま~す」カチ ウィィィィィィン

まり ジー

ことり (興味津々。可愛いなあ♡)

 

242>>1(しうまい)2020/05/23() 17:28:26.11ID:krBraYn6

まごころクッキング 7/11


ことり「まりちゃんがかなんちゃんとダイヤちゃんと仲良くなったときのこと、聞きたいな」

まり「えっ」

まり「別に、面白くないわよ。普通だし…」

ことり「それでもいいの。ね、聞かせて?」

まり「………」ムゥ

まり「特別なことなんてなにもなかったわよ、転校したばっかりのわたしにかなんがすぐ話しかけてくれたの。『髪の毛きれいだね』って、なでてくれたの」

まり「わたし、それがびっくりしちゃって。日本に来る前は、お金持ちばっかりのスクールにいたから、そんな風に気軽にしてくるコなんかいなかったもの」

まり「でも、そういうの慣れてなかったから、ちょっと怖い、なに考えてるのかわかんない、ってさけてたの」

まり「でもかなんってば、休み時間のたびにわたしの席まで来て一人で色んなこと楽しそうに話すの。ダイヤはうんとかそうですわねって言うだけだったけど、必ず一緒に来たわ」

まり「かなんのことちょっと怖かったけど、他にお話しする友達もいないし、いつも声かけてくれるから…嬉しかった」

まり「それでね、わたしの誕生日にね、二人がヘアゴムを二つくれたのよ。これ」

まり「誕生日なんか教えてないのになんで、しかもなんで二つ、って思ったら、かなんが『先生に教えてってお願いしたんだ』って。ダイヤが『お母さまとおそろいにしてください』って」

まり「髪の毛なでられたとき、びっくりしてとっさに『ママと同じ自慢の髪』って言ったのを覚えててくれたみたいでね」

まり「ああ、この人達と仲良くなりたい、って思ったの」

まり「…それだけ!面白くないでしょ!」プイッ

ことり「ううん、そんなことないよ。とっても素敵な想い出だなって思う。二人のこと、大切にしてあげてね」

まり「ことりに言われなくってもそうするもの!ほら、手が止まってるわよ!」

ことり「はーい」

 

243>>1(しうまい)2020/05/23() 17:28:57.04ID:krBraYn6

まごころクッキング 8/11


ことり「それじゃ焼こっか」ピピ

まり「そんな短くていいの?」

ことり「うん、まずはね。この後、何回かに分けて焼くんだよ。その間にもすることあるから頑張ろうね」

まり「…お菓子作るのって、大変なのね」

ことり「そうだね。慣れてなかったら段取りもわかんないし、途中でいっぱいいっぱいになっちゃうかも」

まり「ことりは随分慣れてるのね」

ことり「あはは。昔からたくさん作ってたからね」

まり「うちに来る前もどこかでメイドやってたの?」

ことり「えっ!メイドさん…やってなかったことはないんだけど………ううん、ただ普通に、友達にあげたり部活に持っていったりしてたんだよ」

まり「げ、こんな面倒くさいこと好きでやってたの!?」

ことり「めんどくさくないよぉ!手順は多いし時間もかかるけど、食べてくれる人のことを考えながら作ってる間って、すっごく楽しいから」

ことり「まりちゃんも。やること多くて大変だったと思うけど、イヤじゃなかったでしょ?」

まり「……」


──まり『ことり、これどうするの?』

──ことり『下にクッキングペーパーを敷いて、このくらいの高さで…トントントン、って』

──まり『あ、ありがと』


──『いただきマス。………so delicious!! さすがマリ!』


まり「…うん、楽しかった」

ことり「えへへ、よかったぁ」

ことり「もうひと頑張り、しようね!」

まり「うん!」

 

244>>1(しうまい)2020/05/23() 17:29:23.77ID:krBraYn6

まごころクッキング 9/11


ことり ペロ

ことり「うん、いいと思う」

まり「ほんと?」

ことり「ガナッシュが冷めたら生地に絞り出して、冷蔵庫に入れておいたら完成。小原さんが帰ってきたら食べられるくらいになってるはずだよ」

まり「わぁ…!」パァ

ことり「疲れちゃったね、冷めるまで休もっか」

まり「すごいわ、ことりもいえのも。毎日こんなことやってるなんて」

ことり「あはは、普段はもう少し簡単なものが多いよ。でも今日はまりちゃんとの初めてのお菓子作りだったから、やった、頑張った、って思えるものがいいなと思って」

まり「ママに食べてもらうのが楽しみだわ」ワクワク

まり「~♪」フンフン

ことり「…」

ことり「まりちゃんって、お星さま、好き?」

まり「え?星?なんで?」

ことり「あっううん、たいした理由はないんだけど…」

 

245>>1(しうまい)2020/05/23() 17:29:50.69ID:krBraYn6

まごころクッキング 10/11


まり「好きかキライかだったら好きよ。キラキラしてきれいだもの」

まり「でも、理科で習うのはニガテ。よくわかんないわ」

ことり「そっかぁ。ことりのお友達…に、ね、お星さまに詳しい子がいるんだよ。なんでも知ってて、科学館の職員さんみたいに色んなことを教えてくれるから、その子がなぞる人差し指を追ってお話を聞いてるだけでどんどん引き込まれていっちゃうの」

ことり「ことりもお星さまのことなんかよくわかんなかったけど、その子と星空を見るのは好きだったなぁ」

ことり「いつか、まりちゃんも会ってみてほしいな。そしたらきっとお星さまのこと、好きになれると思うよ」

まり「…色んなお友達がいるのね、ことりには」

まり「わたし、流れ星を見てみたいわ。知ってる?流れ星を見つけてお祈りしたら、お願い事が叶うんだって」

ことり「へえ、そうなんだ。ことり、流れ星は見つけたことないな。まりちゃんだったら流れ星にどんなお願い事をするの?」

まり「そうねー、やっぱり大好きな人達とずっと一緒にいられますように、ってことかなぁ」

ことり「…うん。すごくいいね。私も、そう願いたいな」

まり「ところで、なんで突然星の話?」

ことり「えっ!?」

まり「……………!まさかあなた、まりの部屋に入ったりした?」

ことり「えっっっ!!?し、してないよ!なんで!?」ギクゥッ

まり「ほんとに!?なんでそんなに動揺してるの!?」

ことり「ど、動揺なんてしてないよ。あ!ガナッシュ冷めたかな、様子見なくちゃ!」ガタ

まり「あっちょっとことり!!」ガタ

 

246>>1(うまい)2020/05/23() 17:30:17.57ID:krBraYn6

まごころクッキング 11/11


パタン…

ことり「冷えたら出来上がり!」

まり「やったーっ!」

ことり「小原さんが帰ってくるのが待ち遠しいね」

まり「うん。いっぱい食べてもらうわ!」

ことり「四人でも食べきれないくらい作っちゃったし、明日かなんちゃん達に持っていってあげたらどうかな?」

まり「わ、それいいわね。きっと喜ぶわ」

ことり「う~ん、それじゃことりは小原さんが帰ってくるまで少しホテルのお仕事を手伝ってくるね」

まり「あー、そうよね。じゃあまりは宿題やってるわ」

ことり「えらいっ!…あ。ところで、かなんちゃん達がくれたヘアゴムって、小原さんはどうしてるのかなあ?」

まり「つけたことは一回もないわよ」

ことり「そうなんだ…」

まり「でも、机の一番上の引き出しに入ってる。ちっちゃな箱に入れて、大切にしてるわ」

ことり「…うふふ。そうだよね」