私の死神 8

606>>1(しうまい)2020/02/11() 22:46:48.65ID:Y+lzQqZn

ED3:ビターエンド】


金曜日、放課後…


ルビィ フー…

ルビィ (もう金曜日が終わっちゃった)

ルビィ (一週間がこんなに長くて短くて、重くて苦しかったのは初めてだなあ)

ルビィ (『七日後』まで、あと二日…か)

ルビィ (明後日、ルビィはほんとに死ぬのかな。善子ちゃんに殺されるのかな。そんなの──)

善子「ルビィ」 

ルビィ「よしこちゃん」 

善子「一緒に帰りましょ。明日のことも話したい…から」

ルビィ「そっか、明日のこと…そうだよね…」 

 

607>>1(しうまい)2020/02/11() 22:52:34.70ID:Y+lzQqZn

帰り道…


トコ…トコ…

善子「ぁ…明日、どうしましょっか。あのね、私またゲーム買ったのよ。今度はルビィが得意そうなやつ!パズルみたいな、頭使ってやるのって得意でしょ?逆に私ああいうの普段やらないから楽しいかなって思ったし」

善子「それと、晩ごはん!なに作りましょっか。いつだかルビィが作ってくれたあの、なんだっけ、なんとかいう料理!あれ美味しかったわよね、辛くしたらもっと美味しそう。あっでももちろんお皿に分けてから香辛料入れるからね」

ルビィ「…」

善子「…っ」

善子「それとも、うーん、明日は出かける?イシバシさんに行くのもいいわよね、内浦に住んでるとなかなか行く機会なさそうだし。なんなら晩ごはんも外で済ませてもいっか、体力温存しといて夜通しゲーム!」

善子「………とか、さ…」

ルビィ「…よしこちゃん」

善子「! う、うん!なに?なにがしたい?ルビィのやりたいことでいいわよ!」

 

608>>1(しうまい)2020/02/11() 22:58:38.58ID:Y+lzQqZn

ルビィ「明日ね、ルビィ、やっぱり行かないよ」

善子「え──」

善子 グ…

善子「な、なーんでそんなこと言うのよ!あれ?またダイヤになんか言われたりしたとか?大丈夫だってば、私達ももう高校生なんだから友達の家に泊まるくらいのことみんな普通にやってるし、」

ルビィ「じゃあ、お母さんにゆえる?」

善子「っ」

ルビィ「明日からルビィが泊まりにくるよって、よしこちゃん、お母さんにゆえる?」

善子「そ、れは…」

善子「親がいないときはだめだって、たぶん言われるし…」

ルビィ「そうだよね。だったらやっぱり行かないよ。また今度、お母さんに許可もらったときにしよ」

善子「ど…どうしてそうなるのよ!誰もいないからいいんじゃない、別に悪さしようってんじゃないんだし、それに一泊くらい黙ってればわからないって──」

ルビィ「そうゆうのをやめようってゆってるんじゃん!!」

善子「…!」

 

609>>1(しうまい)2020/02/11() 23:04:51.67ID:Y+lzQqZn

ルビィ「お母さんがだめってゆうならそれはだめだよ。黙ってればわかんないとかそうゆうことじゃないよ、それって嘘つくってことじゃん」

善子「嘘…っていうか、そうだけど…」

善子「る、ルビィは私といたくないの!?お泊まりしたいって思わない!?先週は賛成してくれてたじゃない!」

ルビィ「ルビィだってよしこちゃんと一緒にいたいよ。お泊まりだってしたい。一晩じゅうゲームしたりおしゃべりしたりしてたい」

ルビィ「でもお母さんに嘘ついてやるのは、やっぱりよくないことだもん」

善子「だって、そんなの…親が勝手に決めたルールでしょ?親がいないときにお泊まりすることのなにがいけないのよ、だめな理由なんかないじゃない」

ルビィ「だったら説得しよう?」

善子「説得…?」

ルビィ「うん。二人きりでお泊まりするののなにがだめなのかちゃんと聞いて、納得できなかったら頷いてもらえるように説得しようよ。もちろんルビィも一緒にお話しするし、それで許してもらえたら喜んで行くよ」

 

610>>1(しうまい)2020/02/11() 23:14:24.03ID:Y+lzQqZn

善子「それは、さ…」ゴニョ

ルビィ「…」

ルビィ「ルビィ達はまだ高校生なんだから、お母さんお父さんが決めたルールは守らないと。だって守ってもらってるんだもん」

ルビィ「学校に行くのだって、授業をちゃんと受けるのだってそうだよ。ルビィ達が一緒にいるためには、それを許してもらえるようにしてなくちゃいけないんだよ」

ルビィ「ルビィはね、『よしこちゃんと一緒にいるようになって、よくなった』ってゆわれるようになりたいの。ルビィ達が一緒にいることを喜んでもらえるようになりたいの。じゃないと──」

善子「…ルビィは、私といたい気持ちより…そんな周りの人達からの評価が気になるのね」

ルビィ「………」

善子「私はルビィと一緒にいる時間が最優先で、他のことなんかどうだっていいし他の人達だってどうだっていいのに。私達、感情に随分な温度差があるみたいね」フッ…

ルビィ「……………」

ルビィ「そっか…」

 

611>>1(しうまい)2020/02/11() 23:19:34.78ID:Y+lzQqZn

善子「そうよ」

善子「ルビィの『好き』はそういうごちゃごちゃしたことを気にし過ぎて固くなってる。私は『好き』をそのままあなたにぶつけてるだけなのに」

善子「だから、そうね、あなたの『好き』は私の『好き』より弱いってことよ──残念だわ。私と同じだけ好きでいてくれてると思ってたのに」フゥ…

ルビィ「…そうだね。ルビィとよしこちゃんでは、気持ちに差があるみたい」

善子「やっとわかった?だから、

ルビィ「だから」

ルビィ「もう、さよならしよっか」

 

612>>1(しうまい)2020/02/11() 23:25:09.00ID:Y+lzQqZn

善子「────は…?」

善子「いや」

善子「いやいや、待ってよ。なんでそうなるわけ…?なによさよならって、どういう意味…?」

ルビィ「…」

善子「ねえ、なんとか言ってよ。冗談でしょ?私そういう話をしてたわけじゃないじゃない。ただもっと全力で私に『好き』を向けてほしいっていうか、

ルビィ「それは…できないことだよ。ううん、ルビィがしたいことじゃない」

善子「は?」

ルビィ「よしこちゃんがゆう『「好き」を全力で向ける』ってゆうのは、他の大切なことをみんな置いてきぼりにして、それしか考えないってことでしょ。ルビィはね、そうはなりたくないの」

 

613>>1(しうまい)2020/02/11() 23:31:02.90ID:Y+lzQqZn

善子「なに?わかんないわよ。この頃ルビィは私の言うことを否定してばっかり!全然付き合ってくれない、『いい』か『よくない』かでしか判断してくれない!」

善子「もっと私のこと好きでいてよ!!」

ルビィ「好きだよ」

ルビィ「好きだから、もう一緒にいられないよ。これ以上一緒にいても、ルビィ達、きっと幸せにはなれないから」

ルビィ「何回もゆったよ。このままじゃよくないって。今の付き合い方は好きじゃないって。でも、よしこちゃん聞いてくれなかったよね。もうルビィ達、歩こうとしてる方向が全然ちがくなっちゃってるんだと思う」

 

614>>1(しうまい)2020/02/11() 23:37:00.69ID:Y+lzQqZn

善子「なんなの…わかんない、わかんないわよ…」ポロポロ…

善子「そんなこと、言わないでよ」

善子「私はルビィと一緒にいたい、悪いところがあるなら治すから。お願い…あと一回だけチャンスをちょうだい…!次こそちゃんとしてみせるから…!」ガシ…

善子「好き、好きよルビィ。愛してるの」

ルビィ「……っ、…!」

善子「やだ、離れたくない…まだあなたとやりたいことがたくさんあるの…!私変わるから、変わるから…!」ポロポロ

ルビィ「………………っ…!」ギリ…

ルビィ「…………だ、め」

ルビィ「もう、…だめ…だよ」

善子「…!!」

 

615>>1(しうまい)2020/02/11() 23:40:59.69ID:Y+lzQqZn

ルビィ (この一週間、たくさん注意してきた。なんとか変わってほしいって思って、ほんとの気持ちをずっとぶつけてきた)

ルビィ (でも、善子ちゃんには伝わらなかったんだ…)

ルビィ (このまま一緒にいたら、きっと善子ちゃんはまた同じになっちゃう。ルビィだっていつまでもいつまでも厳しくし続けることなんてできない。いつか負けちゃう)

ルビィ (そしたら、もう止められないところまで二人で落ちていくだけだ──)

──死神「七日後、あなたへの想いが強くなり過ぎてどうしようもなくなった津島善子さんは、とうとう殺すことであなたを手に入れようとします」

ルビィ ゾッ…

ルビィ (善子ちゃんの気持ちは、ここで──終わりにしなくちゃいけない)

 

616>>1(しうまい)2020/02/11() 23:46:55.19ID:Y+lzQqZn

ルビィ「よしこちゃん」スッ

善子「ルビィ…ルビィ……」グズ

ルビィ「…」

善子「わだしの、言葉、気持ぢ…っ」

善子「わかってぐれる、わよ…ね…?」ズビ

ルビィ「………」

──善子「ルビィ!今日からあなたは私の最上級リトルデーモンよ!」

──善子「ルビィは私だけのものなんだからねっ、他の誰にも渡さないわ!」

──善子「は~~~ルビィぎゅってすると落ち着くわ~」

──善子「ルビィ」

──善子「ルビィってば!」

──善子「ねーっ、ルビィ」


──善子「大好きよ。ルビィ」


ルビィ「────────」

 

617>>1(しうまい)2020/02/11() 23:51:52.56ID:Y+lzQqZn

ルビィ「よしこ、ちゃん」

善子「うん…うん……っ!」

ルビィ「今まで、ありがとう」

善子「ゃ、だ………」

ルビィ「楽しかった。嬉しかった。よしこちゃんの最上級リトルデーモンでいられて、ほんとに幸せだったよ」

善子「やだ、やだ……イヤよ…イヤよルビィ…」

ルビィ「ルビィ達、もっと大人にならなくちゃね。成長しなくちゃ。胸を張って二人でいられるくらい、立派にならなくっちゃね」

善子「それはっ…それは、一緒にいながら目指していきましょうよ…!二人ならできる、私達ならできるからっ…」

ルビィ フルフル…

ルビィ「甘えてちゃいけないんだと思うの。ルビィも、よしこちゃんも」

ルビィ「立派な大人になったとき、まだ……」

ルビィ グッ…

ルビィ「よしこちゃん」


ルビィ「さようなら」ニコ──


善子「ぁ…ぁぁあ………っ…」

善子「ルビィーーーーーーーーっ!!」



ED3
ビターエンド

【安価SS】私の死神 ── 終わり

 

618>>1(しうまい)2020/02/11() 23:53:27.75ID:Y+lzQqZn

ED3はパラメータが振り切った時点で迎えることになるので、進行具合によって場所や時間帯などはどこでも有り得ました
わかりやすいかと思って分岐する形で書きましたが、ここに至るまでの道筋が全く違ったのだと思ってください

 

619名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/02/12() 00:12:52.53ID:JKnLUAry

正直善子のベクトルの大きさ考えたら、13も自殺しそう...

逆に4はお互いの依存度が増して1よりもヤバい状況になりそう
...
それこそ好きすぎて無理心中すらしそうな位

 

620名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/02/12() 00:13:35.50ID:lO2qC5l7

前二つに比べれば良いエンドだよなぁ
善子を諭す選択続けるとこうなるのか

 

622名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/02/12() 00:18:02.25ID:JKnLUAry

>>620 諭すだけだとこうなると思う

諭した上でルビィ側も好きだと伝えると状況は好転するっぽい(end2に大きく進んだ時を見つつ)

 

623名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/02/12() 00:18:19.04ID:JKnLUAry

>>1

 

624名無しで叶える物語(えびふりゃー)2020/02/12() 00:19:33.83ID:3PCc8YMb

諭す上で善子がルビィを殺すっていう嘘を看過できていれば2の方に進めるはず
最悪看過できていなくても、二人の関係を維持するために回りに頼りながらでも改善する選択肢がとれていればどーにか

 

625名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/02/12() 00:29:01.14ID:JKnLUAry

>>624 と言うか嘘に気づくトリガーとかあるのかな?
下手に死神について聞くと4に近づくし、ダイヤさんが嘘に気づいたのも倒れる直前だし
(
おそらく死神が力を振るうと4に近づく)

多分、非現実的な事象を引き起こさないようにしつつ、善子の意識改革をはかる、が正規ルートだと思う

 

626名無しで叶える物語(らっかせい)2020/02/12() 06:12:23.14ID:+12H+G41

凄かった
一気読みしてしまった
ここまで読んであれだけど
ダイヤは死神に自分が死んでも良いからルビィを助けて欲しいと頼んだのでは?→4はダイヤの希望ルート
後ある程度badに寄るのは仕方なかったのかも
ダイヤの瀕死は良くない傾向だけど片側に寄ることでの降り戻しも期待できるからね
ヤンデレルートだとヨハネにさんざん厳しくした3方向→甘やかすと一気に1に走りそうだし
だからある程度4に行ってからダイヤが倒れた時点ですぐに果南に行ってそこから死神の力を拒否して仲間増やして解決が1が望んだ正解な気がする(何周もできるなら別だけど、一周で終わらせるなら)

 

627名無しで叶える物語(らっかせい)2020/02/12() 06:42:07.25ID:+12H+G41

始めの方読んでた感じではヨハネ以外のAqours全員と話しをして結束して解決する話かと思ったけど
登場人物の偏りを考えると
序盤はヤンデレ回避で動くけどルビィの性格的にあまりきつくは出来ず1に寄る
ダイヤの願いで二人の修羅場を回避するためにダイヤが力を使い調子が悪くなる(ただこの時のダイヤがまだ察してない感じがあるのは気になるけど単なる疲労が一気に来る位に考えてた?)
その後ルビィはヨハネだけでなくダイヤや周りの皆も考えて動くがヨハネがそれでおかしくなってくる
それを花丸が心配して死神の件をルビィが花丸に話す
更に悪化するヨハネを見かねて花丸がヨハネに暴露→ここで死神がダイヤにこのままでは…。となり、再度ダイヤが力を利用して倒れる
そこから気付いたダイヤの話しをちゃんと聞いて果南からその日のうちに情報入手
以降死神は信じずにダイヤが死神の力を使っていたことをルビィが勘づいてスーパー死神タイムで今回の件であなたの力を使わないでと頼む(これは願いの範疇ではない?でも使うことを頼む事はルビィが出来ることだからそれを使わないように指示することも可能?)
ダイヤの死神の力の件は話さずに花丸や果南、まりぃの話を通してヨハネに自分たち二人だけではなく周りのみんなと一緒にいる大切さを伝える
最終日ダイヤの病室で全員で行き一人だけ起きたルビィと死神が会話して死神が素直に退散
体調が戻ったダイヤが起きる
ヨハネとルビィも皆との繋がりを大事にしながら末長くハッピーエンド

 

628名無しで叶える物語(っかせい)2020/02/12() 06:48:31.84ID:+12H+G41

って考えると安価は割と良い感じに進んでたとは思うんだよね。

少なくともダイヤが倒れなきゃルビィはヨハネとのヤンデレ回避に動くしかないから3のヨハネ発狂かもしくは降り戻しの1にしか行けないと思う

ダイヤが倒れた時点で死神の力が自分の為というよりは自分を守りたい誰かが使ってるって事を勘づかないとハッピーエンドにはたどり着けなさそう
その上で死神は嘘も言っていない(少なくともヨハネによってルビィが殺される展開だけは回避しなきゃ自分が減給されるみたいな。花丸が言ってることも間違ってはいなかった)
って事も考えてヨハネと自分がこれからうまく歩める道を模索っていうのがしっくりくる

だから下の3エンドはヨハネはその後自殺するんじゃない?
3
4は死神にとっては勝利(自分の護衛対象は守りつつ死神としての仕事を追加で行う)
1
は死神にとっては避けなくちゃ行けない展開
2
は追加報酬は貰えないけど最低限の仕事は出来た
だから2は死神にとってもまあハッピーだしルビィ達にとっては大勝利

横からの考察ごめん

 

629名無しで叶える物語(らっかせい)2020/02/12() 07:08:14.67ID:+12H+G41

よく考えたら
ダイヤの意識不明がないとヨハネはルビィの話聞いてくれなさそう
始めからヨハネ懐柔ルートに動いて他のみんなを味方に着けてもヨハネは納得せずに最終的にヨハネはルビィを殺しちゃいそう
言い方は悪いけど周回が可能でもダイヤの意識不明必要な条件でそこからヨハネが会話可能になる感じだったのかな?

 

631>>1(しうまい)2020/02/12() 21:13:56.05ID:BRr+hdP5

ED2:ハッピーエンド】


ルビィ「あと一時間、だね」

善子「そうね」

ルビィ「二人っきりでお泊まりはできなかったけど、急ぐ必要ないよね。だって──」


そっと、隣に座る善子ちゃんにもたれる。

預けた分の体重が同じように返ってきて、くすぐったくて心地いい。

そんな、日曜日──『七日後』の夜。

このまま安心で眠っちゃいそうなくらいの穏やかな時間に、とうとう運命が動き始めた。



ダイヤ「ルビィ!この家から逃げなさい!善子さん──」


ダイヤ「必ずルビィを守って!!」

 

632>>1(しうまい)2020/02/12() 21:20:25.54ID:BRr+hdP5

──ダイヤ「この週末は我が家で過ごしなさいな」

──よしルビ「「へ?」」


きっかけは、お姉ちゃんのそんな言葉だった。

長くて短くて重くて苦しい一週間を終えて、金曜日の放課後。

内緒で計画してたお泊まりをどうしようか善子ちゃんと話してるところにお姉ちゃんがやってきて、そんなことを言ったのだ。


──ダイヤ「わたくしは善子さんがルビィを手にかけるなどとは、万が一にも思っていません。しかし『不慮の事故』がルビィに降りかかる懸念が絶対に拭えないのもまた事実」

──ダイヤ「なにがなんでもこの週末を生きて越えるため、ルビィは家から出しません」

──ダイヤ「といって軟禁しておくばかりなのもあんまりなので、善子さん。明日から我が家へ泊まりにおいでなさいな。この子の遊び相手をしてください。ああそう──」

──ダイヤ「二人とも、拒否権はありませんので」

 

633>>1(しうまい)2020/02/12() 21:24:03.43ID:BRr+hdP5

──ルビィ「なんだか変なことになっちゃったねえ」

──善子「ったく、せっかく二人きりでのお泊まりだと思ってたのに…」

──ルビィ「でも、ね?きっとよしこちゃんのお母さんはだめってゆうんでしょ。嘘は…?」

──善子「はいはい、わかってるってば。嘘はつかない約束、でしょ。ま、それだったら二人きりじゃなくてもダイヤ公認で堂々とお泊まりできる方がマシね」ハァ

──ルビィ「よしよしっ、素直でいい子♡」ナデナデ

──善子「子ども扱いするなあっ!」ンニャーッ

 

634>>1(しうまい)2020/02/12() 21:31:23.65ID:BRr+hdP5

そうして、お姉ちゃんの提案で逆に善子ちゃんがお泊まりしにくることになった。

ルビィ達のお母さんとお父さんには、週末おうちの事情で善子ちゃんが一人ぼっちになっちゃうことを逆手に取ってお姉ちゃんがうまく説明してくれた。

善子ちゃんのお母さんも『ルビィちゃん達のところにいるなら安心です』って笑ってた。一人だとカップラーメンとかばっかり食べちゃうから、って。

土曜日、善子ちゃんは朝早いバスで内浦まで来てくれて、それから二日間、三人で遊んで過ごした。

途中でお姉ちゃんはお稽古に抜けることもあったから、そのときは二人きりで──ちょっぴりだけ甘え合ったりした。

──死神『七日後、来週の日曜日の夕方くらいに死にます』

そんなの忘れちゃうくらいになにも起こらないまま時間は過ぎていって、あっという間に、気がついたらもう日曜日も残り一時間くらいになっていた。

 

635>>1(しうまい)2020/02/12() 21:36:13.43ID:BRr+hdP5

──ダイヤ「もうこんな時間ですか。お母様達も寝てしまったし、そろそろわたくし達も寝る準備をしましょうか。明日も学校なのだし」

──善子「え~、まだこんな時間なのに?」

──ルビィ「え~、学校行くの~?」

──ダイヤ「当然でしょう。行かない理由がどこにあるというのですか」

──ルビィ「今日死ぬかもしれないって人にゆうことじゃないと思う!」

──善子「そーよそーよ!」

──ダイヤ「不謹慎な言い訳をするのではありません…」

──ダイヤ「あの方の言うことでは今日の夕方頃が運命の時だったようだけれど、肩透かしを受けたような気分ね」

──善子「運命は変わった、ってことでいいのかしらね」

──ダイヤ「だとよいのですが」

 

636>>1(しうまい)2020/02/12() 21:41:33.75ID:BRr+hdP5

──ルビィ「死神さんが来たときはどうしようかと思ったけど、よかった。よしこちゃんに殺されちゃうなんて絶対にいやだし、よしこちゃんが人殺しになっちゃうのだって絶対にいやだもん」

──善子「当たり前でしょ。どうしてこんなに大大大好きなあなたを殺さなくちゃいけないってのよ」ギューッチュッチュッ

──ルビィ「きゃあもうよしこちゃんってばー♡」

──ダイヤ「わたくしもいますが」

──ダイヤ コホン…

──ダイヤ「ああおっしゃった以上、日が変われば緊張を解いてもよいでしょう。逆に言えばそれまでは気を抜かずにいなければね」

──ルビィ「はーい」

──善子「ダイヤ、ジュース飲んでいい?」

──ダイヤ「もう遅いのでだめですわ」

──善子「こんなの遅いうちに入らないもん!ダイヤのケチ!」

──ダイヤ「ケチで結構!おとなしくお茶を飲んでいなさいな!」

 

637>>1(しうまい)2020/02/12() 21:45:53.67ID:BRr+hdP5

──善子「十一時なんて昨今小学生だって今から元気にドラマ観始める時間よ。特に私なんかこれから一時間は後にならないと生放送やらないし…」


カタン


──ルビィ「…?今、なにか音しなかった?」

──善子「え、そう?私はなにも…」

──ルビィ「気のせいかなあ」

──ダイヤ「念のため確認しておきましょうか。どの辺りから聞こえたの?」

──ルビィ「えっとね、上の方──」


ヒュンッ


──ダイヤ「!! ルビィ危ないっ!」バッ

 

638>>1(しうまい)2020/02/12() 21:48:34.62ID:BRr+hdP5

カシャァァァンッ


──ルビィ「おねいちゃん!」

──善子「ダイヤ!大丈夫!?」

──ダイヤ「っ…平気よ、少し足を切りましたが…」

──ルビィ「きゅ、救急箱持ってくる!」タッ

──善子「時計が落ちてくるなんて…気をつけて、ガラスが散らばってるわ」

──ダイヤ「ええ、善子さんも。…先週お父様がかけ直してくださったばかりなのに…」


──ルビィ「わあああっ!」


──ダイヤ「!?」

──善子「ルビィ!?」

 

639>>1(しうまい)2020/02/12() 21:51:20.03ID:BRr+hdP5

──善子「どうしたのルビィ!」タタタッ

──ルビィ「よしこちゃんっ!」ダキッ

──ルビィ「救急箱、取ろうとしたら、扉がすごい勢いで閉まってっ」

──ルビィ「もうちょっとで、腕思いっきり挟まれるとこだった…」

──善子「…!」


──ダイヤ「ルビィ!?善子さん!?どうしたというのですか!?」


──善子「一旦ダイヤのとこに戻るわよ」

──ルビィ「う、うん…」

 

640>>1(しうまい)2020/02/12() 21:54:36.34ID:BRr+hdP5

──ダイヤ「そんなことが…」

──ルビィ「ごめんねおねいちゃん、救急箱取り出せなかった」

──ダイヤ「そんなのは後でいいわ。それよりも、この異常な感じ…まさか…」

──善子「………ねえ」

──善子「あれだけ騒いだのに、あなた達のお母さんもお父さんも起きてこないのって変じゃない…?」

──ダイヤ「…! となると、やはり…」

──ルビィ「な、なに…?」

──ダイヤ「ここに来て死神が、強行な手段に打って出てきたのでしょう…!」

──よしルビ「「!!」」

 

641>>1(しうまい)2020/02/12() 21:59:44.47ID:BRr+hdP5

カタカタ…

カタカタカタカタ……


──ダイよしルビ「「「…!」」」

──ルビィ「ものが、揺れてる…」

──善子「ねえ、これ、もしかして…」

──ダイヤ「…まずいかもしれませんわね」

──善子「死神がこの家を乗っ取ってる!?」

──ダイヤ「っ、これだけ物に囲まれていてはどこからなにが飛んでくるかもわからない…!二人とも、家から出なさい!」

──ルビィ「おねいちゃんは!?」

──ダイヤ「わたくしはすぐに追いかけるから、まずはあなたの安全が第一よ!」

 

642>>1(しうまい)2020/02/12() 22:02:31.91ID:BRr+hdP5

──ルビィ「やだ、それでおねいちゃんになにかあったら…!」

──ダイヤ「大丈夫。死神の狙いは恐らくあなたなのだから、取り残されたわたくしだけが危険に晒されるということはないはずよ」

──ダイヤ「それよりも、足にケガをしたわたくしの傍にいては思うように動けないでしょう。大丈夫、すぐに応急手当をして追いかけるから」

──ルビィ「でも…でも…!」

──善子「…っ」

──善子「ルビィ、行くわよ」ガシッ

──ルビィ「よしこちゃん!やだ!」

──善子「聞き分けないこと言わないの!」

 

643>>1(しうまい)2020/02/12() 22:05:33.68ID:BRr+hdP5

──善子「死神が狙ってるのはあなたなんでしょ!?だったらあなたが近くにいることでダイヤにも巻き添えが行くのよ!現にそれでダイヤは足をケガしたんだから!」

──善子「ダイヤのことを思うならまずは離れないと!」

──ルビィ「ぅぅ…」ジワ…

──善子「ダイヤ。それでいいのよね」

──ダイヤ「ありがとうございます」コク

──ダイヤ「さあ、早くお行きなさい!この家から逃げて!」

──善子「行くわよっ」ダッ

──ルビィ「おねいちゃん…!」

──ダイヤ「善子さん!どうか──どうか──」


──ダイヤ「必ず、ルビィを守って…!!」

 

644>>1(しうまい)2020/02/12() 22:11:37.80ID:BRr+hdP5

そして、今──…


善子「来てる、わね…」ハァハァ…

ルビィ「来てるね…」ハァハァ…


ユラユラユラ…


善子「死神って刀とか鎌とか持ってるんじゃないのね…」

ルビィ「ルビィがお話ししたときはあんなんじゃなかったんだけど…」

善子「ものすごい速さで来ないだけ、マシっちゃマシよね…」

ルビィ「あれがここにいるってことは、おねいちゃんは大丈夫だよね…?」

善子「だと、思うけど…」

善子「もう走れる?」

ルビィ「うん、だいじょうぶ…」

 

645>>1(しうまい)2020/02/12() 22:16:58.54ID:BRr+hdP5

善子 タッタッタッタッ…

ルビィ タッタッタッタッ…

ルビィ (あと三十分。あと三十分で、明日になる。そしたら運命を乗り越えられたことになる)

ルビィ (絶対に逃げ切らなくちゃ──)

善子 (このまま追い付かれなければ、なんとか。日が変わるまで──日が変わるまで──)

タッタッタッ… ケンッ

ルビィ「! ぁぅっ…」ガクッ

善子「ルビィ!」

 

646>>1(しうまい)2020/02/12() 22:22:44.52ID:BRr+hdP5

ルビィ「いた…」

善子「ルビィ、大丈夫!?挫いた!?」タタッ

ルビィ「う、うん…平気。そこまでじゃないみたいだから」

ルビィ「立てるよ。手、貸してくれる?」

善子「もちろん、ゆっくりでいいから」


ユラユラユラ… チカッ


そのとき、視界の奥で死神さん()がふいに点滅するように見えた。

それと同時に  ──ビュオオオオオオッ


善子「っ!?」


ものすごく強い風が吹いてきて、


バス停が 倒れてきた。


ルビィ「ぁ…」

 

647>>1(しうまい)2020/02/12() 22:28:50.90ID:BRr+hdP5

タッタッタッ… ケンッ

ルビィ「! ぁぅっ…」ガクッ

善子「ルビィ!」


慌ててルビィに駆け寄るその瞬間、私の視界で、二つのことが起こった。起こっていた。


一つ、奥からゆらゆらと近づいてくるものが点滅するような動きを見せたこと。

それが合図だったかのように強い突風が吹き付けて、私は思わず身を庇ってしまった。

その風がバス停をも煽って、ルビィに襲いかかるのを──だから私は、咄嗟にどうすることもできなかった。

アスファルトに座り込んで、茫然と近づくバス停を見上げるルビィ。

私は手を伸ばすのが間に合わなくて、


──ゴッ…