一目貴女を見た日から 7

232ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:22:59.95ID:EofmyWOT

ダイヤ「うわああああああああんっ!やっぱりわたくしだけがヨハネに誠意を見せることができなかったという業を背負ったままこの先ずっと歩んでいくことになるんだーーーっ!」ビエエエッ 

善子「えっ!?ちょ、ダイヤ!?ダイヤさん!?」アセ 

果南「え?ダイヤ…?」 

曜「善子ちゃん、主役がそんな端っこで――って、ダイヤちゃんどうかしたの…?」 


ドヨ… 


ダイヤ「うえええん…」メソメソ 

善子「や!ちが!私がいじめたわけじゃないわよ!ちょっとダイヤ、あなたそんな思い切り泣いたことなかったじゃない!とりあえず泣き止んでよ!」オロオロ 

花丸「善子ちゃん…お誕生日に浮かれるのはいいけど、大切な人を泣かせちゃだめずら…」 

善子「ちっちちち違うの!勘違いだってば!」

 

234ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:51:55.49ID:EofmyWOT

鞠莉「ダイヤ、どうしたっていうのよ。あなたが泣いてちゃ仕方がないじゃない、誰よりもお祝いしてあげなきゃいけない立場なのに」

ダイヤ「だって、だって…っヒクッ、ヨハネにっ…贈り物、ッグせめて、わたくしはっ、ぅ…わだくしだけはぁ…」グスグス

鞠莉「善子に、贈り物?せめて…?」

千歌「プレゼントがなかったからってダイヤちゃんのこと責めたの!?」

善子「え!?」

梨子「プレゼントはなしにしようって、みんなで決めたんじゃない。鞠莉さんのときだってなにも贈らなかったんでしょ?」

善子「いやいやいや!ちょちょ、そういうんじゃなくて――」

ダイヤ「ぁ、ちが、わたくしが…ヨハネにはあげたいと…」

ルビィ「おねいちゃんが『よしこちゃんにはあげない』ってゆったと思ってるの!?」

善子「思ってない思ってない!言ってないし!」

曜「善子ちゃん、だめだよ。プレゼント欲しかったのはわかるけど、それで責めたりしたら。ね?ダイヤちゃんに謝ろ!」

善子「責めるかー!謝るかーー!話を聞けえーーーいっ!!」

……………… 

………

 

235ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:52:56.66ID:EofmyWOT

帰り道 


ダイヤ「…先ほどは申し訳ありませんでした」 

善子「や、別に、誤解も解けたし気にしてないから」 

ダイヤ「そうですか…」 

善子「にしても、うん、嬉しかったかも。ダイヤがあんなに感情を露にするくらい私のことを考えてくれてたなんて」 

ダイヤ「それは、だって…当然のことではありませんか。ヨハネだって反対の立場だったらショックを受けたでしょう」 

善子「…うん」 

ダイヤ「本来ならば、日付が変わり誕生日になったと同時に電話あるいはラインでお祝いの言葉をかけるべきだったというのに」 

善子「そこまで必死こいて誕生日祝うことなんかないでしょ」 

ダイヤ「?」 

ダイヤ「鞠莉さんと果南さんとはそうしているのだけれど」 

善子「あ、ああ…そうなんだ…」

 

236ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:53:56.60ID:EofmyWOT

善子 テクテク… チラッ 

ダイヤ ショボン… 

善子「あー…そういえばね、今日ママ遅いのよね」 

ダイヤ「そうなのですか?」 

善子「なんか同僚の人と集まるとかで、うん、遅いの。だから私帰っても一人なのよね」 

ダイヤ「はあ…」 

善子「だからさ、その…もしよかったら、その……」 

善子「ダイヤんとこ、泊まりにいっても…いい、かな?とか…幸い明日は土曜日だし…」 

ダイヤ「!」 

ダイヤ「え、ええ結構です!お出でなさいますか!?」 

善子「迷惑じゃないかしら、こんな当日に突然」 

ダイヤ「全然!迷惑だなどと、そんなことは!文句を言うお父様がいたら我が家から追い出しますわ!」 

善子「お父さんに優しくしてあげて」 

ダイヤ「急ですからたいしたおもてなしはできないけど、ぜひ来てほしいわ」ギュ(

善子「ぅぁ……// そ、そう?だったら、えへ…行っちゃおうかな」 

ダイヤ「はい!」ニコッ

 

237ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:54:55.88ID:EofmyWOT

ダイヤ「さっそくお母様に連絡しておかなければ。ああ、携帯電話を手元に置いていないかもしれないからルビィにも連絡しておきましょう。まだお夕飯の用意に取り掛かっていなければいいのだけど」 

善子「ダイヤのとこって、普段どんな晩ごはんなの?」 

ダイヤ「どうって、特別なことはありませんわよ。和食中心のことが多いくらいね」 

善子「それはあなたが洋食を嫌がるからでしょ?」クスッ 

ダイヤ「そ!んな、ことは…洋食は全部が全部ニガテというわけではありませんし…」ゴニョゴニョ 

ダイヤ「それより、せっかくの誕生日なのだからケーキを買いにいきましょう!松月さんはこの時間もう閉まっているから、そうね…駅の方まで行けば開いているお店があるでしょうか…」 

善子「ケーキ屋さんねえ。うちの周りにあるのもだいたい19時に閉まっちゃうからなあ」 

ダイヤ「やはり準備が遅かったから…」シュン

 

238ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:55:57.37ID:EofmyWOT

善子「………ねえダイヤ。ケーキって、なにも買うばっかりじゃなくてもいいと思わない?」 

ダイヤ「へ?」 

善子「スポンジとクリーム買って、一緒に作ってみましょうよ」 

ダイヤ「つ、作る…!?ケーキを自分で!?」 

善子「ルビィがいるからなんとかなると思うし。ね、どう?」 

ダイヤ「や…やってみたいですわ!やりましょう!」 

善子「そう来なくっちゃね。運転手さん、買い物にも付き合ってくださるかな」 

ダイヤ「もちろん、付き合っていただきます。ではルビィを連れて駅の方まで行きましょうか」 

善子「うん!」

 

239ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:57:01.94ID:EofmyWOT

黒澤家 


ダイヤ「ただいま戻りました」 

善子「お、お邪魔します」 

ルビィ「おかえりなさーい。今日よしこちゃん泊まるんだね!やったー!」 

ダイヤ「そうよ。ルビィ、もう出られる?」 

ルビィ「でれるよ!お父さんもいつでも行けるって!」 

ダイヤ「そう、連絡ありがとう。ヨハネ、鞄はどうする?」 

善子「持っていくわ。もしよかったら、家にも寄ってほしいんだけど…着替えとか持ってきたくて…」 

ダイヤ「ええ、寄っていただきましょう」 

善子「毎日朝も帰りもお願いしちゃって、本当に悪いわ」 

ダイヤ「わたくしがお願いしていることなのだから、ヨハネが気にする必要はありませんわ。部屋に鞄を置いてくるから、戻ったらすぐに出ましょうか」 

ルビィ「はーい」 

善子「おっけー」

 

240ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:58:07.23ID:EofmyWOT

善子「ね、ルビィ。あなたケーキって作ったことある?」 

ルビィ「あるよ。簡単なやつだけど」 

善子「そう。ケーキ作りたいんだけど、手伝ってくれない?」 

ルビィ「ケーキ作るの!?あ、よしこちゃんのお誕生日ケーキでしょ!一緒にやるー!」 

善子「ダイヤってお菓子作りとかできるの?」 

ルビィ「んー…ごはんは作ってくれるけど、お菓子作ってるのは見たことないかも」 

善子「どヘタだったりして」 

ルビィ「ぷっ。おこられるよー、よしこちゃんw 

善子「あんたも笑ってるじゃないw 

ダイヤ「オホン…」 

よしルビ ビクゥッ


それから、ルビィに手を引かれ、ダイヤに背を押され、すっかり乗り慣れてしまった黒い車内へ。 

すでに運転席にスタンバイしてくださっている、これもどこか慣れ親しんだ気になってしまった運転手さん。 

女三人寄れば姦しい…私は特に喋っていないけれど、運転手さんにあれやこれやとルートの注文をつける姉妹の声を聞きながら、私は少しだけ物思いに耽っていた。 

思い出すのは、今日の、無事に誤解が解けて騒動も収まった最後の片付けタイムのこと――…

 

241ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 08:59:01.65ID:EofmyWOT

――千歌『さー、片付け片付け!はいよーちゃん、こっちは燃えるゴミ!梨子ちゃんは燃えないゴミ!集めて集めて!』 

――梨子『こういうのは意外とテキパキしてるのね…』 

――曜『普段からお家のお手伝いで美渡ちゃんに厳しくやられてるからねー』 

――花丸『次は来月の千歌ちゃんずらね~』 

――鞠莉『毎月 party で楽しいね!』 

――果南『善子。ちょっといいかな』 

――善子『ん?』 

――果南『私と善子でゴミ捨ててくるよ。貸して』 

――千歌『おっ、果南ちゃん気が利くぅ!』

 

242ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 09:00:00.05ID:EofmyWOT

――善子『…それで、なに?誤解は解けたと思ってたけど、まだ私がむちゃくちゃ言ってダイヤのこと泣かしたと思われてるの?』 

――果南『ううん、それは疑ってないよ』 

――果南『…いや、疑ってることになるのかな』 

――善子『この際だし、思ってることがあるならはっきり言ってよ』 

――果南『善子がダイヤと知り合ったのって、去年の夏休みだったよね?』 

――善子『は?なによ、急に。…そうよ、千歌さん達に連れられてルビィの家に行ったとき、初めて挨拶して知り合ったの。話したことあるでしょ』 

――果南『ほんとにそれが最初?』 

――善子『…なにが言いたいの?』 

――果南『…………ダイヤがあんなに感情を剥き出しにしたことって、ないからさ』 

――善子『ああ…』

 

243ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 09:01:00.09ID:EofmyWOT

――果南『前に言ったようにダイヤにとっては初めての恋で、ダイヤが好きな人とどんな風に接するのかなんて知らないし、どんな恋愛観を持ってるかだってよく知らないから。そういうこともあるのかもしれないけど』 

――善子『私もびっくりしたけど、まあ…それだけショックに思ったってことだった、んじゃ…ないかしら』 

――果南『私は、たぶん鞠莉も、てっきり善子が先にダイヤのこと好きになって、アタックしてるうちにダイヤもその気になったんだってばっかり思ってたんだけど…』 

――善子『…私もそう思ってるけど』 

――果南『それにしてはさ、それにしては……』 

――善子『……それにしては?』 

――果南『…………善子との関係に対するダイヤの態度ってさ、最初からあんまりにも積極的だった…って、……思わない…?』 

――善子『……………!』 

――果南『…ごめん』 

――果南『ダイヤのあんな様子見て、ちょっと戸惑ってたのかも。早く戻ろっか』 

――善子『…うん…』

 

244ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 09:02:00.65ID:EofmyWOT

果南さんが言ったことに、私は「そんなばかな」とは、返せなかった。 

誰にも言ってないことで、ダイヤと初めて会ったのはあの日ではなくて、その二日前――内浦こども祭りの日だったけど。 

あのとき、ダイヤは私を認識していないはず。 

私が勝手に憧れただけなのだから。 

だから、ダイヤと「知り合った」のは、あの日だと言ってしまっていいはずで―― 


――果南『…………善子との関係に対するダイヤの態度ってさ、最初からあんまりにも積極的だった…って、……思わない…?』 


それは、私だって何度も感じたことだから。 

どうしてダイヤは。 

私に想いを向けてくれるようになってからのことならば疑問はないけど、思えば、そう、ダイヤはずっと前から――それこそ、入学した最初の最初から―― 


ダイヤ「ではまずはヨハネの家に行きましょう。その間に買い物のお店を調べておきますわ」 


そんな声にはっとする。 

気が付けば、車は発進していた。 

慌てて運転手さんに声をかける。

 

245ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝立要塞都市)2019/06/20() 09:03:01.02ID:EofmyWOT

善子「ぁ、きょ…今日もよろしくお願いいたします」 

ルビィ「じゃーお父さん、出してー!」 

ダイヤ「ぁ」 

善子「………………ぇ、お…とう……?」 

ルビィ「ゅ?」 

善子「ダイヤ…?」 

ダイヤ ←向こう向いてる 


――善子『なんか、毎日悪いわよね。黒澤家に仕えてるのに、私のために毎朝二時間くらい割いてもらっちゃってさ』 

――ダイヤ『………まあ。でもね。運転手への配慮はともかく――』 

――善子『運転手さん、買い物にも付き合ってくださるかな』 


善子「だ、ダイヤ…私…あなた、わかってたのになにも…」 

ダイヤ「なんのことでしょう。嘘を言ったことはないと思いますが」 

善子「だ…っ、ダイヤーーーー!」 

ルビィ「しゅっぱーつ!」 


ふと私の心に拡がったもやもやした思いは、それから続く姉妹の騒がしく甘えた言葉の数々に掻き消されて、すうっと姿を消していって。 

ダイヤとご家族に囲まれて、引き続き楽しい誕生日会になったのだった。 

***

 

251ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:19:26.28ID:S3CeFQye

*** 

善子「――へ?生放送に?」 

ダイヤ コクコク 


ふとした会話。 

ギラリと堕天した私の挙動に訝られたことはこれまで一度もなかったけど、まさか。 


善子「え?ダイヤ、そういうの、興味あるの?」 


共に過ごすうちに、とうとうダイヤにも前世の――天界で共有していた時間の記憶が甦ったとでも―― 


ダイヤ「そのようなユニークな記憶はないけれど」 

善子「あ、はい」

 

252ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:20:25.85ID:S3CeFQye

ダイヤ「これまで、ヨハネの傍にいながら、あまり貴女自身の趣味に触れてこなかったじゃない」 

善子「そうね」 

ダイヤ「わたくしにはヨハネの趣味に関する知識があまりないけれど、だからこそ知ってみたいと思うの」 

善子「な、生放送とはどんなものなのかを?」 

ダイヤ クスッ 

善子「なんで笑うのよ!」 

ダイヤ「わたくしが知りたいのは、貴女のことよ」 


ダイヤ「堕天使ヨハネの姿を、もっともっと見てみたいのですわ」 

……………… 

………

 

253ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:21:26.27ID:S3CeFQye

in 善子の部屋 


善子「…で、それを今日決行しちゃうあたりがあなたの強いところよね…」 

ダイヤ「善は急げ、でしょう。夏季休暇などあっという間に過ぎ去ってしまうのですから」 

善子「善かしらねえ」 

ダイヤ「善よ」 

ダイヤ「恋人のことをより知りたいと思う気持ちが、悪であるはずがないじゃないの」 

善子「――…っ、じゅ…準備するから待ってて!」// 

ダイヤ「なにか手伝えることは?」 

善子「へーき!」 


どうしてこの人、恥ずかしげもなくこういうこと言えるのかしら。

 

254ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:22:25.13ID:S3CeFQye

『ヨハちゃんねる』 

『ヨハちゃんねる の放送が開始しました』 


ユラ… ボウッ 


善子「――さて、我がリトルデーモン達。急な召集にも関わらずよく集まってくれたわね。呼びつけたのは他でもないわ」 

善子「来なさい、デビアス」 

ダイヤ「皆さん、ごきげんよう。ヨハネ様の最上級リトルデーモン、デビアスと申します。以後、お見知りおきを」ペコ 

善子 (おお…思ったより雰囲気合ってるわね…

【コメント】デビアスちゃんキタ! 

【コメント】やっぱりこの人か

ダイヤ「…なぜこのような反応なの?まるでわたくしの存在をすでに知っていたかのような…」 

善子「ふっ、愚問ねデビアス。最上級リトルデーモンたるあなたの存在を、私がリトルデーモン達に知らせていないと思ったの?」 

ダイヤ「この場でわたくしのことを語っていたわけね」 

善子「端的に言うとね」

 

255ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:23:24.31ID:S3CeFQye

【コメント】デビアスちゃん学校は? 

ダイヤ「太陽と生命の躍動を前に、学校になど通っていられませんわ」 
(
訳:夏休みですわ

【コメント】デビアスの衣装も凝ってるなー 

ダイヤ「ふふふ…よいでしょう。ヨハネ様より賜ったのよ」 

【コメント】おねいちゃん今日帰ってくるの? 

ダイヤ「夕飯までには帰るわ」 

【コメント】―――――― 

ダイヤ「――――――」 

善子 (よ、よし…ところどころ変ではあるけど、意外と噛み合ってる感じがするわね。さすがダイヤ、


――ダイヤ『ルビィにいくつか見せてもらって、きちんと予習をしてきたわ!』ドヤッ 


善子 (意味わかんないとこに熱心で助かったわね)

 

256ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:24:24.46ID:S3CeFQye

善子 (余裕ありそうだし、定期放送でやろうと思ってた儀式でもやっちゃおうかしら――) ゴソゴソ… 

ダイヤ「――なろうと思い成ったのではなく、ヨハネ様とわたくしの想いが通じ合った結果としての必然よ」 

善子「…………ん!?」バッ 

【コメント】ヨハネ様から告白したってこと? 

【コメント】どこまで進んだー? 

【コメント】出会いはどんな感じだったの? 

【コメント】デビアスちゃんはいつからヨハネ様のこと好きだったの? 

善子「ーーーーーっ!!?」ギョッ 

ダイヤ「禁断の呪文はヨハネ様が唱えてくださったわ。最近は共に歩むとき手を繋ぐようになってきたわね。出会いは秘密です。わたくしがヨハネ様を慕うようになったのは、厳密には…  善子「ストップストップストーーーップ!!」ガバッ

 

257ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:25:23.78ID:S3CeFQye

ダイヤ「もが…っ、なにをするのですか」プハ 

善子「なにを誘導に乗せられて色々なこと話しちゃってるのよ!」 

ダイヤ「いえ、ご安心なさい。雰囲気を壊さぬよう、きちんとデビアスとして対応していたから」 

善子「そーゆーこと気にしてるんじゃないから!」 

【コメント】ヨハネ様ヘタレそう 

ダイヤ ムッ… 

ダイヤ「そういう言い方は頂けないわね、ヨハネは関係に丁寧なだけです」 

善子「だから答えなくていいから!素がァ!素が出てますよデビアスさァん!」 

ダイヤ「だって今この方ヨハネのことをからかうみたいに…」 

善子「いいのいいの!こういうキャラで売ってるだけだから大丈夫だから!だからとりあえずコメントに反応するのはやめなさい!」 

ダイヤ「ヨハネがそう言うのなら…」 

【コメント】ヨハネ様から滲み出る童貞感 

ダイヤ「いい加減になさい!戯れにしても度が過ぎていますわよ!ヨハネが優しいからと甘えるのも大概に――ッ」 

善子「はい終了終了ォーー!デビアスちゃんでしたありがとうございましたァーー!」カチー

 

258ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:26:27.08ID:S3CeFQye

善子「まったくもう…」 

ダイヤ「…なにかまずかったかしら」 

善子「や、うーん…悪いことしたわけじゃないんだけど、うーん…」 

善子 (ダイヤが私との関係を恥ずかしがって隠したがるよりは全然マシ…か

善子「インターネットでは些細な情報から身元が特定されたりするから、気を付けなきゃいけないってことよ」 

ダイヤ「ああ、なるほど。その点はうっかりしていたわね…」 

善子 (スクールアイドルやってる以上、身元の特定もなにもないけどね…

善子「でもま、初めてにしてはなかなかだったわね。デビアスもそれなりに様になってたし」 

ダイヤ「ふふん、そうでしょう。この黒澤ダイヤにかかれば、やってできないことなどないのだから」 

善子「はいはい、さすがさすが…」ハタ…

 

259ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:27:27.33ID:S3CeFQye

善子「そういえば」 

ダイヤ「はい?」 

善子「ダイヤって私の堕天使をからかったことないわよね」 

ダイヤ「はぃい?なんですか、今さら」 

善子「や、ほら、初対面の人ってまず戸惑ったりするんだけど、ずら丸なんか未だにからかうし…でもダイヤはさ、最初からなんかすんなり受け入れてくれたな、って…」 

ダイヤ「そうね。わたくしにとってはそう不思議なものではないというか、むしろ得心したというか――」 

善子「??」 

ダイヤ「…いえ。つまり、それも立派なヨハネの個性なのだから、『受け入れる』というほどたいしたことではないと、ただそれだけですわ」 

善子「ぅ、えへへ…そっか」 

ダイヤ「貴女が自分の振る舞いたいように振る舞えて、その上でわたくしと共に過ごす時間を心地よく感じてくれたら、それ以上は望むべくもないわね」ニコッ

 

260ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:28:27.26ID:S3CeFQye

善子「……」モジモジ 

ダイヤ「来ますか?」スッ 

善子「うんっ!」ギューッ 

ダイヤ「よしよし、善子さんは甘えん坊さんなのですから」ナデナデ 

善子「ダイヤが優しいのが悪いのーっ」ギュウ 

ダイヤ「ふふふ…よいのですか?堕天使ヨハネ様がリトルデーモンに甘える姿など、皆さんにお見せして」ナデナデ 

善子「誰も見てないもん」スリスリ 

ダイヤ「リトルデーモンの方々は人にあらず、ということね。難しい線引きですが」ナデナデ 

善子「………………ん?」 

ダイヤ「どうかしましたか?」 

善子「え?」バッ

 

261ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:29:28.09ID:S3CeFQye

『ミュートモード』 

【コメント】ヨハネ様デレデレじゃん 

【コメント】どう見てもデビアスちゃんの方が主だろ 

【コメント】おれも最上級リトルデーモンになりたいお 

【コメント】もしかしなくても切り忘れっぽいな 

【コメント】よしこちゃんかわいい 


善子「な、な、な…………っ!?」ワナワナ… 

ダイヤ「あらあら。ほら、主従が反転して見えているようですわよ。声は聞こえていないようだけどね」手フリフリ 


善子「んにゃーーーーーーっ!!!」/// 

***

 

262ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:30:32.97ID:S3CeFQye

*** 

部活動に追われ、宿題に追われ、友達と遊び、家族と出かけ、沼津より内浦で過ごす日の方が圧倒的に多かった、今年の夏休み。 

その終わりも近づいてきた日曜日のこと。 

すっかり日常となってしまったバスの揺れに身体を預けて、流れる景色をぼーっと眺める。 

そわそわ、どこか落ち着かなくて、寝付きがよくなかった昨夜をやり過ごし。 

重い瞼をこすりながらリビングに出て、出勤直前のママとの会話。

 

263ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:31:32.10ID:S3CeFQye

――善子『おはよう』 

――津島母『おはよう、善子。今日行くの?』 

――善子『うん、行く』 

――津島母『そう、ありがとう。花丸ちゃんたちもいるんでしょ?』 

――善子『まあね。…夏休みも日曜日もお仕事なのね』 

――津島母『ねー、本当に。こんなに大会が多いって知ってたら顧問なんかやらなかったのに』 

――津島母『そうそう、善子。出るのお昼前よね?』 

――善子『そのつもり』 

――津島母『だったら、あれ、目を通しといて。来週の金曜だって』 

――善子『…わかった』 

――津島母『よし、それじゃ行ってくるわね』 

――善子『暑いみたいだから、気を付けて』 

――津島母『善子もね』 


――善子『…………』 

『×××××× ××に関する説明会 詳細案内』

 

264ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:32:31.96ID:S3CeFQye

こぼれそうになる溜め息を、ぐっと噛み殺す。 

わかってたこと、なんだから。 

それよりも、今は目の前の楽しいことを考えよう。 


『オキシーテック前、オキシーテック前です…』 


もう何百回と聞いたのに、降りるのはこれで二回目だ。 

今年もやってきた。 


『内浦こども祭り』 


さて、今日も暑くなりそうね。 

……………… 

………

 

265ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:33:32.21ID:S3CeFQye

「おねーちゃんこっちこっちー!」 

善子「待てえーーーい!」 

ピューッ パシャッ 

善子「冷たあっ!?」 

「へへー、めいちゅう!」 

善子「やったわね、こんのぉ…逃がすかぁーーー!」 

「うわーっ、逃げろー!」 

善子「ふふっ、甘い…ガーナチョコより甘いわよ」ギラン 

「ここまでおいでーっ…」 

曜「捕まえたでありますっ!」ガバッ 

「うわー!よーねーちゃんだー!」ジタバタ 

善子「ナイス曜さん!」 

ピューッ パシャッ 

曜「んぎゃあ冷たーっ!!」 

千歌「今だ逃げろー!」 

善子「あっ…こら待てーーー…って千歌さんかい!!逃がすな曜さん、追え追えーーー!」 

……………… 

………

 

266ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:34:33.19ID:S3CeFQye

曜「おっと、もうこんな時間だね」 

千歌「体育館に行かなきゃだね!みんなー、体育館行くよー!」 

「「「はーーーい」」」 

曜「ほら善子ちゃん、一番前に行かなきゃ!」 

善子「あ、私…先に行っててもらってもいい?」 

曜「へ?いいけど…」 

善子「ありがとう、すぐ追いかけるから!」タタタ… 

千歌「よーちゃん、善子ちゃんの分までスペース確保しないと」 

曜「う、うん…」

 

267ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:35:34.07ID:S3CeFQye

善子「子どもってどこからあんなにスタミナ湧いてくるのかしらねー…」 


私だって、毎日それなりに筋トレや体力作りをしているのに、なんて。 

喧騒が遠い廊下を一人、ぶつくさと呟きながら早歩きで進む。 

今年のこども祭りも、後はダイヤの挨拶から始まる閉会式をもって終了となる。 

小学生が、お金をかけずに用意できるものなんて、そうたくさんあるわけじゃないから。 

出し物の並びは去年とほとんど変わらなかったように思うけれど、今年は去年よりも楽しかった気がする。 

勝手に慣れたから?自分から参加したから?友達と一緒だったから? 

どれもそうと言えばそうなんだろうけど、きっと、それだけじゃなくて。 

午前のうちに確認しておいた、特別教室を覗く。 


「あら、もうダイヤちゃんの挨拶が始まる時間じゃない?」 

善子「はい。これだけ、終わる前に買っておきたくて――」 

……………… 

………

 

268ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/20() 23:36:33.42ID:S3CeFQye

in 体育館 


曜「善子ちゃーん、こっちこっちー!」ノシシシ 

善子「あ、の、人は…私の名前を大声でっ…」// ソソクサ 


善子「――ちょっと!こんな人混みの中で恥ずかしいことしないでよ!」 

曜「え?私なんか変なことした!?」 

善子「んもー…っ」 

曜「あれ?善子ちゃん、それ…」 

千歌「二人とも。挨拶始まるよ!」 

ようよし「「やばっ」」 


ダイヤが出てくる、そのことが反射的に私と曜さんの背筋をぴんと伸ばす。 

だけど、それはほんの一瞬のことで。 


ダイヤ「皆さん、ごきげんよう。浦の星女学院生徒会長を務めます、黒澤ダイヤでございます」 


その姿が私の心にもたらすのは、冷や汗をかくような緊張感でも、息を呑むような高揚感でもなくて。 

ただひたすらに、胸が温かく、誇らしくなるような、安心感だけだった―― 

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