92ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 06:39:20.25ID:r6obDQVR
***
時は流れ、四月某日。
訪れるのが何度目かになる体育館で、少し離れた位置で隣同士に並ぶずら丸とルビィを横目に感じながら、私は朝からずっと落ち着かない気持ちをなんとか抑え込んでいた。
新しい制服、指定の鞄。
慣れないバスでの通学に、未知なる日常への期待、緊張、不安、高揚。
わくわくして、どきどきして、クラス分けにはほっとして。
めくるめく私を襲うそんな感情の波は、実はふとくしゃみをすればうっかり忘れてしまいそうなほどに儚い。
今朝から――ううん、大きな掲示板の前で友人二人と跳びはねたあの日から、私の心を占める強い感情は、たった一つだけ。
「――以上、来賓紹介・祝電披露でした。ここで読み上げなかった分は、校門前に掲示しておりますので、各自ご覧ください…」
喉が鳴る。
何度も何度も読み返した式次第。
「続きまして、歓迎の挨拶です。生徒を代表して歓迎の挨拶を読み上げるのは――」
私は、今日、
ダイヤ「新入生の皆さん、ようこそ、浦の星女学院へ。本校の生徒会長を務めます、黒澤ダイヤと申します」
あなたと同じ学校に、入学しました。
***
100ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:33:48.15ID:FZIUjABW
「それでは、各自教室へ移動し、ホームルームを行なってください…」
ルビィ「担任の先生、優しそうな人だったね」
花丸「そうずらね~」
善子「授業中の休息を黙認してくれるタイプならいいんだけどね」
花丸「そんなタイプの先生いないずら」
ルビィ「…あ、おねいちゃん!」
善子「!」
ダイヤ「あら、ルビィ。花丸ちゃんにヨハネも」
花丸「ダイヤさん。歓迎の挨拶、とっても素敵でした」
ルビィ「うん!かっこよかったよ!」
101ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:34:47.55ID:FZIUjABW
ダイヤ「そう?ふふ、ありがとう。これで三人も晴れて浦の星の一員ですわね」
善子「…」
ダイヤ「ヨハネ。式典の間、居眠りしなかった?」
善子「し、しなかったわよ。ちゃんと起きてたもの」
ダイヤ「そう。偉いわ」ニコッ
善子「…っ」//
花丸「明日からは授業中に居眠りするって言ってたけどね」
善子「い、いいい言うなあっ!」
ダイヤ「まあ!だめよ、授業はきちんと聞かないと。中学の頃と同じ気持ちではすぐについていけなくなってしまいますわ」
ルビィ「わかんなくなってもおねいちゃんが教えてくれるから大丈夫だよ!」
ダイヤ「わたくしが手を貸すのは、きちんと自分ができることを頑張っている人だけよ?ルビィ」
ルビィ「ぴ…ピギッ!?」
花丸「そろそろ行こう、ルビィちゃん。善子ちゃん。ホームルームが始まっちゃうずら」
ルビィ「うん。おねいちゃん、また後でね!」
ダイヤ「ええ。頑張っておいでなさい」
102ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:35:53.80ID:FZIUjABW
善子「………あの」
ダイヤ「あら、ヨハネ。行かないの?」
善子「うん、…」
ダイヤ「……………」ジッ
善子「あのね、」
ダイヤ「ええ」
善子「私、たくさん頑張るから。だから、ちゃんと見ててね」
ダイヤ「!」
ダイヤ「…ええ、もちろんよ」
103ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:36:55.11ID:FZIUjABW
ダイヤ「貴女自身ができること、やるべきことを、一つひとつきちんと頑張りなさい。そして、一人でできないことや困ったことがあったら必ず相談しなさいな」
ダイヤ「応援していますから」ナデ…
善子「ぅ、……えへへ…」
ダイヤ「さ、お行きなさい。ホームルームに遅れてしまいますわよ」
善子「うん!」
<待ちなさいよ、二人とも~
<善子ちゃんが勝手に遅れただけずら。
<よしこちゃん、廊下を走ったら怒られちゃうよ。
<今日は入学式だからいいの!あとヨハネ!
ダイヤ「…………ふふっ」
***
104ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:38:07.02ID:FZIUjABW
***
花丸「――以上です。よろしくお願いいたします」ペコ
「じゃあ次、黒澤さん」
ルビィ「は、はいっ」ガタッ
自己紹介。
己が如何な存在であるのかを皆に知らしめるための名乗り。
これまで人間世界に身を置いてきて、幾度となく体験したこの儀式に、一体どれだけの煮え湯を呑まされてきたことか。
そもそも我に関心を抱く者が皆無の中、我の人となり――じゃなくて、在り方を知る者が皆無の中、なにを、どんなテンションで、どう言えばいいのか。
一人の自己紹介を聞いては頭の中で用意した内容を慌てて修正し、次の自己紹介を聞いてはまた慌てて修正し、そんな風にしているうちにあっという間に自分の番を迎えて、結果、声は小さくまとまりはなく。
そもそもからして意義がわからないこの儀式、己の存在を知らしめるのも己が在り方を布教するのもわざわざ場を設けてこんな晒し者みたいにして行うのが正しいとは思えないし、人前に立つのが苦手な人がいることを――じゃなくて、観測により発揮できなくなる類いの魔力を有する者がいることを理解しておいてほしいというか、これを繰り返したからといって精神的に強くなるなんて私には到底思えな――…
「津島さん、津島さん」
105ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:39:09.62ID:FZIUjABW
善子「へ?」
「次、津島さんの番だよ」
善子「え?あ、はいっ!」ガタッ
「クラスメイトの自己紹介はきちんと聞いておきましょうね、津島さん」
善子「あ、う、は、はいぃ…」
有り体に言って、私は自己紹介が苦手だ。
得意な人がいるのかは知らないけど、少なくとも苦手意識を強く持っているし、うまくできる方ではないと思っている。
しかもこの浦女、クラスの大半がすでに顔見知り。
ちょっとしたふざけ方も、もじもじするのも、ずれたセンスも、すでに『知ってて』流される。
大半がそんな中、誰もこちらを知らない身の上で行う自己紹介がどれほど重荷であるか、よく考えてほしい――…と。
106ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:40:04.95ID:FZIUjABW
以前の私ならそう思ったのかしら、ねえ。
「はい、それじゃ津島さん。お願いします」
ふと視線を上げれば、ずら丸とルビィ。
ずら丸はなんだか気合い充分の表情で頷いているし、ルビィはにこにこと笑いかけてくれている。
たった二人、友人がいることが、こんなにも心強いなんて。
それだけで、私はなにも迷わず、恐れることもなく、堂々と胸を張っていられる。
そう、堂々と――!
善子「…………クックック」フッ…
「「「……?」」」ザワ…
善子「愚かなる人間諸君。この美麗なる堕天使ヨハネのもとに傅けることを光栄に思いなさい」
「「「……!!?」」」ザワザワ…
花丸「あ、これ終わったずら」
善子「さあ、救いを求め畏れ敬い、今こそこのヨハネのリトルデーモンとなるのです――!!」
………………
………
107ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:41:07.65ID:FZIUjABW
in 善子の自室
善子「――――~~~~っ、やっちゃったぁぁああぁ……!!」ンヌゥゥゥッ
やっちゃったやっちゃったやっちゃった!!
友達がいることに甘えた!気が抜けて、言うつもりとやるつもりのなかったことを散々にやっちゃった!
せっかく二人と何回も自己紹介の練習したっていうのに!全部台無しにしちゃった!二人はちゃんとできてたのに!
どうすんのよ堕天使とかリトルデーモンとか言って!高校一年生にもなって!もう学校行けないじゃない!
うううう…………もういい!行かない!あんな恥を晒して平然と高校生活を送れるほどヨハネの心は強くありません!!
さーネトゲと生放送と安眠の毎日に返り咲こーっと!
善子「FPSゲームのなんと楽しいこと!」カチカチ
――善子『私、たくさん頑張るから。だから、ちゃんと見ててね』
善子「……………」カチ…
‐‐‐
次の日
善子「おはようございまァす!!」
「お、おはようございます津島さん…今日も元気ね…」ビクッ
善子「はいいッ!!」←血の涙
☆分岐回避!☆
***
108ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:41:59.31ID:FZIUjABW
***
ある日の放課後
善子「あ、やば…!」
ふと射した夕焼けに慌ててスマホを見ると、時刻は17時18分になろうとしていた。
気付けば先ほどまで周りにちらほらと見かけたはずの駆け足すら途絶えている。
バスが出るのは20分…この坂を一息に駆け下りることができれば間に合わないタイミングじゃない。
よし、よし、覚悟を決めるんだヨハネ。
善子「ギラン。闇魔法、『アンリミテッド・オーバーラン』を発動します」
春の陽気を溜め込む袖を気持ちまくって、いざ。
善子「アンリミテッドぉ………おーばーらーーーん!!」タタタタタッ
※ ただの全力疾走
109ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:43:02.16ID:FZIUjABW
いける!いけるわ!
我は風!今、この現世を忍び寄る闇より疾く駆けるのは、黒き雷鳴と成った堕天使ヨハネただ一人――
善子「あ、違う、堕天使は人じゃなくて…えっと、」エット…
と気を逸らすのが合図だったかのように、目の前に大きな黒い影。
善子「ぎゃ!?」
カラス「アガァーーーーーッ!!」バサッ
善子「ぎゃああああ……っなーんて、二度も下等な怪鳥ごときに後れを取るヨハネではないわぁ!」ヒラリッ
善子「堕天護身奥義、『瞬きの逃影』っ!」シュタッ
カラス バサバサバサ…
善子「ふっ、あれしきの速度で私に襲い掛かろうなんて甘いのよ…」ギランッ
プップー
善子「…あ?」
善子「あーーー!バスぅ!!」
華麗なる決めポーズから一転、再び走り出したけれど、現実はいつの日も無情なもので。
夕陽の中に溶けていく後ろ姿を見守ったのだった。
………………
………
110ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:44:00.76ID:FZIUjABW
とぼとぼ、一人歩く道。
高校生になっても、不幸の呪いは解ける片鱗も見せない。
バスを逃すのも雨に降られるのもかじりつく直前に落とすのも転ぶのも。
先の月曜日には、とうとう朝の不幸が顔を出した。
浦女に入学して初めての遅刻。
入学早々ではあったものの初回ということでそこまで怒られはしなかったし、お昼ごはんは楽しかったし、一概に悪いことばっかりとは言えなかったけど…
不可抗力があと何回許してもらえるのかと考えると、早くも気が重くなってくる。
善子「重須は51分よね。ゆっくり歩こ…」
バスを逃した方がゆっくり歩けるなんて、皮肉なものね。
なんて、またシニカルに頬をぴくつかせていると。
「善子さーん」
善子「え?」
111ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:45:01.03ID:FZIUjABW
それは、まさか聞こえるはずがない声。
だって、彼女はさっきのバスに乗ってるか、あるいはもう家に帰っちゃってるはずで――
ダイヤ「善子さんっ。追い付いたわ」トン
善子「ダ、イヤ…」
ダイヤ「何度か呼んだのだけど、聞こえなかった?」
善子「ううん…」
ダイヤ「そう、まあいいわ。重須まで歩くのでしょう。ご一緒してもよいですか?」
善子「う、うん。もちろん」
ダイヤ「よかった」ニコッ
善子「――――!」ドキッ…
112ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:46:00.87ID:FZIUjABW
ダイヤ「すっかり暖かくなってきて、参りますわね。少し走るともう暑いくらいで」
善子「そうね」
ダイヤ「随分遅かったのね。まさか補習など受けていたわけではないと思うけれど」
善子「そ、そんなんじゃないもん!ほんとは16時のやつに乗るつもりだったけど、先生に呼ばれて手伝ってたら遅くなって、ちょっと色々あって17時のやつにも乗れなかっただけよ」
ダイヤ「ルビィ達は?」
善子「待たずに帰ってもらったわ」
ダイヤ「そう。優しいのね。先生のお手伝いもして、偉いですわ」
善子「そ…それくらい当然よ!それに私は観測下では真の魔力を解放できないから、ルビィ達にはさっさと帰ってもらった方が好都合だっただけだもの!」プイッ
善子「それより、あなたこそなんで歩いてるのよ」
ざわつく胸の内をごまかすように、そんな言葉を捻り出す。
でもこれは本当に気になることで、きっちりしている彼女のこと、普段は校舎を出る時刻もバスのタイミングに合わせているはずなのに。
113ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:47:00.36ID:FZIUjABW
善子「歩く用事でもあったわけ?」
ダイヤ「いいえ。わたくしも先ほどのバスに乗りたかったのだけれど、帰り際に先生に呼び止められてしまってね。惜しくも逃してしまったのですわ」
善子「ああ、そう。不運だったのね…」
ダイヤ「そうでもないわ」
善子「え?」
ダイヤ「おかげでヨハネと帰り道を共にすることができたもの」
善子「な…」
ダイヤ「それに、わたくし達どちらとも同じ理由でバスを逃したんですのよ。それってなんだか、」
ふふ、といたずらっぽく笑って。
ダイヤ「運命みたいではありませんか」
すでに動揺している私の心に、甘い追い討ちをかけた――。
114ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:47:59.97ID:FZIUjABW
善子「…ぅ」
善子「運命なんて言葉を、そう易々と口にしないでほしいわ!」プイッ
ダイヤ「あら。お気に召さなかったかしら」
善子「男にとって運命とは、簡単に口にしていい言葉じゃないんだから!」
ダイヤ「ヨハネは女の子でしょう」
善子「いいの!口先の魔術師がそう言ってたんだもの!」
ダイヤ「そんなにも胡散臭い肩書きの知人がいるの…?」
善子「彼は運命の操り方の地引き網なのよ」
ダイヤ「もしかして、生き字引の間違いでは…?」
善子「とにかくっ!これくらいの幸運を指して『運命』だなんて、とてもじゃないけど言っちゃいけないってことなの!」
ダイヤ「はいはい、わかりましたわかりました」
善子「………あ、バス停着いたわ…」
あっという間の10分間。
スマホを眺めて歩くよりもずっと有意義な時間は、やっぱり無情にあっさりと終わりを告げる。
115ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:48:58.75ID:FZIUjABW
善子「それじゃ、私はここで。気を付けてね」
ダイヤ「ええ、ありがとう。ヨハネも乗り過ごさないように」
善子「だ、大丈夫だもん!早く帰りなさいよ、ルビィが待ってんでしょ」
ダイヤ「そうね。また夕飯前にお菓子を食べていないか確認しなくては」
善子「じゃあ、また…」
ダイヤ「…………」
ダイヤ「バスはすぐに来るの?」
善子「え?うん、15分くらいで」
ダイヤ「そう。それくらいなら平気でしょう」
善子「へ?」
ダイヤ「やっぱり貴女を見送ってから帰ることにしますわ。またうっかりバスに乗り遅れてしまわないようにね」
善子「あ、ぅ、そ…そんな気遣いまでしなくちゃいけないなんて、生徒会長サマも大変ね!」
それから15分間、色を濃くしていく黄昏の中、私達はぽつりぽつりと言葉を交わした。
116ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:50:04.82ID:FZIUjABW
善子「一緒に待ってくれてありがと。暗くなるから気を付けてね」
ダイヤ「近いのでさっさと帰りますわ。よい週末を」
善子「ダイヤも」
ダイヤ「そうそう、お休みに入る前に誤解を解いておくわね」
善子「はい?」
ダイヤ「いくら生徒会長サマと言えど、全ての生徒に等しく目を行き届かせることなんかできないわ。わたくしが立場を越えて傍にいるのは、そうしたい相手に対してだけよ」
ダイヤ「例えば善子さんとか――ね」
善子「……………へっ」
『扉を閉めます、お気を付けください』
ぱたりと隔たるガラス越しに、いつもの控えめな笑顔で手を振る姿。
運転手さんに急かされて席に着く間にも、緩やかにバスは進んで彼女を引き離す。
え? ねえ、今のどういうこと? なにか特別なこと言った?
ヨハネって言った? それって千歌さんとか曜さんも含まれるの?
聞きたいことの数々はバス停に置き去りになって、私は悶々とした週末と、それからの日々を送ったのだった――
***
117ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:51:01.52ID:FZIUjABW
***
「――これで今日のホームルームを終わります。部活動の仮入部期間は今週末までなので、気になる部があったら早めに体験しにいってくださいね。それではまた明日」
善子「…」
花丸「…」
ルビィ「…」
よしまるびぃ「「「部活、か…」」」
善子「あんた達、部活ってなんかやるの?」
ルビィ「うゅ…ルビィはお裁縫かダンスがやりたいかも…」
善子「ダンス部ってあったじゃない。仮入部は?」
ルビィ フルフルフルフル!!
善子「…ま、そうよね。ずら丸は?」
花丸「んー。まるは入るつもりないかなあ。委員会で図書室にいなきゃいけないこともあるし、別に…」
善子「そう。私も部活には入らないわ」
118ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:52:01.60ID:FZIUjABW
花丸「ルビィちゃん、ダンス部に行かないずら?」
ルビィ「行ってみたいけど、知らない人がいっぱいいるなら、ちょっと…」
善子「とりあえず体験だけでもしてくれば?付き合うわよ。ずら丸が」
ルビィ「ほんと!?」
花丸「入部はしないけど、体験に一緒に行くくらいならいいよ。三人で」
善子「なんでヨハネも巻き込むのよ!」
花丸「言い出したの善子ちゃんだもん」
善子「私はイヤ!ダンスなんかする気ないし!」
花丸「一日くらい付き合ってもバチは当たらないずら」
ルビィ「生放送の糧になるかもしれないよ」
花丸「ズラン!くくく、堕天使ヨハネのだんしんぐ講座ずら!」ズラリッ
善子「おそろしくださーーいっ!!」
119ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:53:01.06ID:FZIUjABW
千歌「ほらいた!」
花丸「え?」
曜「新入生三人組を見付けたであります!」
ルビィ「よ、曜ちゃん?それに千歌ちゃんも…」
果南「やっほー」
善子「あ、果南さん…」
千歌「それいけ、よーちゃんマン!かなんちゃんマン!確保ーーーっ!」
曜「イエッサー!」ゞ タタタタッ
果南「はいはい」スタスタ…
120ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:53:59.26ID:FZIUjABW
ルビィ「え?え??なに???」アワアワ
花丸「な、なにするずら…!?」
曜「ルビィちゃんつっかまーえた!」ガシッ
ルビィ「ピギャッ!?よ、よしこちゃあん!」ジタバタ
果南「ごめんね、花丸ちゃん。ちょっとだけ付き合ってよ」スルリ
花丸「え、ええ…っと…??」
善子「えっ、これ…なん……」タジ…
…ドン
善子「あっごめんなさ――」
千歌 ニコォッ
善子「…………え?」
千歌「善子ちゃんも、つかまえたー♡」
………………
………
121ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:54:58.18ID:FZIUjABW
ルビィ「スクールアイドル部!?」キラキラ
花丸「すくーるあいどる…?」
善子「なにそれ」
千歌「っかーーー、これだから高校生になり立ての子はァ!」
曜「イマドキの高校生の流行りといったら、なんといってもスクールアイドルなんだよ!これ常識ね!」
果南「チカも曜も知ったばっかりでしょ」
千歌「果南ちゃんよりは知ってるもん!」
果南「私よりは、ね」
曜「むむ~っ?なんだか含みのある言い方ですなー」
果南「私は確かにスクールアイドルのことなんて知らないよ、それはチカの方が少しくらい知識があるかもね。でも、」チラッ
果南「昨日今日知ったばっかりのチカなんかより、よっぽど詳しい人がすぐ近くにいると思うんだけどね」
122ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:55:55.08ID:FZIUjABW
千歌「チカより詳しい人ぉ~?そんなのいないよ!だって、ふふん、伝説のスクールアイドルμ'sが何人グループか答えられる人いる?作詞、作曲をそれぞれ誰が担当してたか言える人は?曲名を三つ言える人は?果南ちゃん、どれか一つでも言える?」
果南「ぜーんぜん。さっぱりだよ」
千歌「ほ~らね!だからみんなはこのスクールアイドル博士ちかちーに黙ってついてきてくれたらそれで――」
果南「ルビィちゃん」
ルビィ「!」
果南「いいよ」ニコッ
花丸「ルビィちゃん――?」
ガタッ
ルビィ「今では伝説のスクールアイドルと呼ばれてるμ'sは、結成当初は三人でした!それからちょっとずつメンバーが増えたみたいだけど、曲が公開されたのは三人の次が七人のとき、その次は九人!それでグループとしては完成です!」
善子「おお…っ!?」
曜「る、ルビィちゃん…!?」
千歌「………へー?」ポカン
123ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:57:07.19ID:FZIUjABW
ルビィ「作詞の担当は活動当時二年生の園田海未ちゃん!有名な日舞のおうちで自分もやってて、あと部活は弓道もかけもちしてて、活動の後半では生徒会にも所属してて、メンバーの中で一番忙しいってゆわれてました!作曲は活動当時一年生の西木野真姫ちゃんが担当してました!お医者さんのおうちで頭がすっごく良くて、あとカレシいない歴が十七年!あっでもμ'sが九人になって二番目の曲は海未ちゃんじゃなくてことりちゃんが作詞したみたいです!」
千歌「え、あ、そうなの…」
ルビィ「曲名?好きな曲でしたっけ?うーん、うーん…みんな大好きだけど、三つ選ぶんだったら…うーん…花陽ちゃんのソロ曲の『なわとび』と、みんなで歌った『スノーハレーション』と、えっとー…あと一つならぁ…」ウーンウーン…
果南「ストップストップ。もういいよ、ルビィちゃん」ポン
ルビィ「あ!『ぷわぷわーお!』かな!」
善子「もういいってば」チョップ
ルビィ「ゅ。よしこちゃんがたたいた!」
善子「叩いてないわよ。上からなんか落ちてきただけ」つチョコ
ルビィ「チョコレート!?」
善子「せっかくだからあんたにあげるわ」
ルビィ「ほんと!?やったー!」モキュ
花丸「流れるようにルビィちゃんを宥めたずら…」
果南「友情の為せる技だね」ウンウン
124ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:58:02.14ID:FZIUjABW
果南「ま、それよりもあっちかな。あの様子なら話はすぐにまとまりそうかも」
花丸「話?どういうこと?」
果南「ま、見てなよ」
曜「ルビィちゃんすっごいね!スクールアイドルに詳しいんだ!」
ルビィ「ぴっ!?あ、えっと、昔から好きだったから、その…」
曜「ちかちゃん、これは逸材だよ!ちかちゃんの目に狂いはなかったね――」
千歌「――――」
125ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:59:00.14ID:FZIUjABW
曜「ちかちゃん…?」
ルビィ ハッ
ルビィ「あのあの、ごめんなさい千歌ちゃん、ルビィちょっと知ってることだったからって調子に乗っちゃって、千歌ちゃんの気持ち考えてなくって、だからその、」
千歌「――っルビィちゃん!!」
ルビィ「わっ!な、なに…!?」
千歌「チカ達と一緒にスクールアイドルをやってください!!」バッ
ルビィ「へ…?」
曜「私からもお願い!ルビィちゃんが仲間になってくれたら百人力だよ!お願いしますっ!」ゞ
ルビィ「へ?へ??」オロオロ
果南「やれやれ…」
126ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 16:59:59.25ID:FZIUjABW
果南「チカ、曜。一旦頭上げて。説明もしてないのに仲間になってなんて、ルビィちゃんだって困っちゃうじゃん」
ルビィ「い、一体なんのお話なの…?」
果南「チカがね、言い出したんだよ。『浦の星にスクールアイドル部を作ろう』って」
ルビィ「す――スクールアイドル部を…!」
果南「うん。なんかそのミューズ?とかってのに刺激されちゃったみたいでさ、真っ先に私と曜が誘われたんだ」
ルビィ「それで…」
果南「私も曜もスクールアイドルなんて知らないし、そもそもアイドルなんて柄じゃないって断ったんだけど…ほら、ね?相手がチカだからさ」
――千歌『いつから知ってるとか、向いてるとか向いてないとか、そんなの関係ない!「やりたい」って気持ちがあればそれが第一歩になるんだよ!』
――千歌『チカが!果南ちゃんとよーちゃんと、やりたいんだ!』
果南「根負けしたってわけ。わかるでしょ?」
ルビィ「あはは…なるほど…」
果南「そんで私達の次は、ってなって――」
ルビィ「ルビィ達に声をかけてくれた…」
果南「そういうこと」b
127ぬし ◆z9ftktNqPQ (星の眠る深淵)2019/06/18(火) 17:01:00.05ID:FZIUjABW
千歌「ルビィちゃん!いやルビィちゃん先生!」
ルビィ「せ、先生!?」
曜「ルビィちゃん先生って」
千歌「μ'sってすごいんだね!スクールアイドルってすごいんだよね!知ったのはついこの間だけど、チカどうしてもやりたくなっちゃって、でも本当はスクールアイドルのことなんかほとんどなにもわかってなくて…だから!」
千歌「ルビィちゃんの力を貸してほしいの!私達が精いっぱい輝くために!」ガシッ
ルビィ「ぁ…」
曜「ルビィちゃん!私からも改めてお願いっ!」ガシッ
果南「ルビィちゃんさえイヤじゃなければ、ね。私も一緒にやってみたいな」ポン
ルビィ「ぅ、でも、ルビィ…からだも小さいし、どんくさいし、ダンスだって好きってだけで全然上手にできないし、千歌ちゃん達に迷惑かけちゃうに決まってるから…」ゴニョゴニョ
ポン ポン
ルビィ「!」ハッ