ちかよしまりで同棲してみた。 5

善子「持つわよ、貸して」ガサ

 

花丸「ありがとう。久しぶりだね、善子ちゃん」

 

善子「そうね。ダイヤも」

 

ダイヤ「ええ、ご無沙汰しています。しかし、まさか善子さんに会うとは。もしかしてお花見ですか?」

 

善子「そうよ。ものすごい偶然よね、同じ日に同じ場所でお花見なんて。さっき果南さんに会ってびっくりしちゃったわよ」

 

花丸「おらは現在進行形でびっくりしてるよ」

 

善子「千歌さんと鞠莉が来るまでには心の準備をしておきなさいよ」

 

ダイヤ「ああ、三人でお花見なのですね。大方この場所は鞠莉さんがご提案なさったのでしょう」

 

善子「ご明察。想い出の場所らしいわね」

 

ダイヤ「そうよ。まったく、わたくし達と来る前に他の方に教えてしまうなんて、困った人ね」

 

善子「そう言うあなた達こそ、ずら丸連れてきてるじゃないのよ」

 

ダイヤ「ふふ、言葉もありませんわ」

 

花丸「善子ちゃんが手伝ってくれて助かったずら~。ところで、果南ちゃんは?」

 

善子「ブルーシートのとこにいるわよ。ほら、見えるでしょ」

 

ダイヤ「一生懸命なにをやっていますの?」

 

善子「ゼルダ。めっちゃ面白いわよ」

 

ダイヤ「はあ…」

 

 

果南「くあっ、そこっ、ていっ!はあ!?カキンじゃないよ、なんで弾かれるのさ!」カチカチ

 

ダイヤ「…あなたは人が買い出しに行っている間になにをやっているのですか」

 

果南「あっダイヤ、その声はダイヤ!待って、画面から目を離したら殺られる!」カチカチ

 

善子「見てみて、ほら」

 

ダイヤ「…ほー。あの大きなのが敵ですか?」

 

善子「そう。そんで、手前の――今左の方に行ったやつが果南さん」

 

花丸「なんだか野蛮な香りがするずらあ…」

 

ダイヤ「よくわかりませんけど、劣勢のように見えるわねえ」

 

善子「ここまでよく持ったと思うけど、めちゃくちゃ劣勢よ。えっとね、んん…あ、もう死ぬわよ」

 

果南「……あっ!!」

 

善子「ね」

 

ダイヤ「ゲームオーバー。なるほど」フム

 

花丸「なんだか悲しげな音楽ずら…」

 

果南「ちょっと!みんなで感心してないでコイツ倒すの手伝ってよ!」モーッ

 

ダイヤ「いえ、今からお花見ですので」

 

善子「滅多に会えるもんじゃないんだから、ゲームしてないでお話ししましょうよ」

 

果南「善子がそれ言うなー!っていうかダイヤとまるとはすぐ会えるし!」

 

花丸「おら達とお花見するよりゲームしていたい…?」ウルッ

 

果南「善子これ返すよ。ありがと、いい暇つぶしになった」

 

善子 (ずら丸…いつの間にそんなテクを…)

 

花丸 (AZALEAでは娘だからね。子はかすがい、だよ) ギランッ

 

善子 (見習お)

 

 

ダイヤ「というわけで、善子さんです!」

 

善子「やー、どもども」

 

ダイヤ「鞠莉さん達が到着するまで、せっかくなので一緒にやりましょう」

 

善子「悪いわね、AZALEA水入らずのところに」

 

果南「ブルーシートまでこっちに寄せてきといてよく言うよねー」

 

善子「いや、持ってこいって言ったのあなたでしょうよ」

 

花丸「はいはい、漫才はそれくらいにして、乾杯するずら。少し多めに買ってきておいてちょうどよかったね」ガサ

 

花丸「善子ちゃん、お茶はどっちが好き?」つ爽健美茶 スッ

 

ダイヤ つ綾鷹 スッ

 

善子「え~、そうねえ。どっちとも普通だけど、どっちかというならー…って、なに二人とも。その目なんなの。なんでそんな真剣に見るのよ、やめなさいよ」

 

果南 ガサガサ

 

果南「……あれ?ねえ、私どれ呑んだらいいの?」

 

ダイヤ「ああ、果南さんにはこれを買ってきましたよ」ガサ…

 

ダイヤ つウィルキンソンタンサン!!

 

果南「!?」

 

果南「な、なんで!?お酒は!?」

 

花丸「買ってないよ」

 

果南「なんで!?」

 

ダイヤ「だって、果南さん酔ったら帰りは寝てしまうでしょう。せっかくのお出かけなのに、そんなのもったいないですもの」

 

果南「お花見の醍醐味みたいなものでしょお酒って!休日の真っ昼間から桜をつまみにお酒を呑んでも誰からも咎められないイベントでしょ!?」

 

善子「お花見の化けの皮をあっさりと剥がしてきたわね」

 

花丸「でもほら、お酒ないのはイヤかなーと思って、その代わりに買ってきたんだから」つウィルキンソンタンサン

 

果南「だからってなんでウィルキンソン炭酸 <S O R E> なんだよ!」

 

ダイヤ「しゅわしゅわしますし」

 

花丸「口当たりちょっと苦いし」

 

果南「……………え、それだけ!?それだけの理由でお酒の代わりになると本気で思いましたか!?」

 

ダイヤ「大丈夫ですって。気になるのは最初のうちだけ、たくさん飲んでいるうちにすぐ慣れますから」ガサ

 

ウィルキンソンタンサン ワラワラ…

 

果南「買ってき過ぎだよ!二人揃ってなにやってるんだよ!!」

 

花丸「もう、果南ちゃんってばさっきから文句ばっかりずら!」

 

ダイヤ「そんなにやいやい言うなら、もうあげません」プゥ

 

果南「元々いらないよ!!」

 

果南「そんな買ってきて、ちゃんと処理しなよ!?」

 

果南「……最後に一つ」

 

果南「業務用スーパーにでも行ったの!!??」

 

善子 (冷静な第三者視点から言わせてもらっても、確かに買ってき過ぎよ) ←巻き込まれたくないので心の内に留めておいた

 

 

鞠莉「やっと着いたわね~」

 

千歌「運転ありがと、鞠莉ちゃん。疲れてない?」

 

鞠莉「全然ヘーキよ!ちかっちこそ早くからお弁当の仕込みしてくれて本当にアリガト。疲れてないかしら?」

 

千歌「チカだって全然だいじょーぶだよ!それに、ね」ニッ

 

鞠莉「ええ」ニッ

 

ちかまり「「疲れるのは今からだもんね!!」」イェーイッ

 

鞠莉「…あら?善子いない…」

 

千歌「え、ここなの?」

 

鞠莉「え、ええ。確かにあの辺に seat 敷いて、善子にお願いって言っておいたんだけど…」

 

千歌「まさか――なにか事件にでも巻き込まれちゃったとか!?」

 

鞠莉「そんな、善子に限ってそんなばかなこと…ッ」

 

千歌「それともまさか、場所取りに飽きちゃってどこか行っちゃったとか…」

 

鞠莉「………善子に限って、……」

 

千歌「鞠莉ちゃん?はっきり否定しよ?」

 

鞠莉「行きのクルマであんな会話をしておきながら、マリーのこと捨てたっていうの!?絶対に許さないんだから!」ムキーッ

 

千歌「鞠莉ちゃん。なんか全然違う方向に飛んでない?」

 

千歌「でもほら、どっか行っちゃうにしてもブルーシートとか荷物とかみんな持っていっちゃうとは思えないでしょ。善子ちゃん面倒くさがりだし、ないない。きっと鞠莉ちゃんが場所を勘違いしてるだけだよ」

 

鞠莉「いーや、そんなことない!マリーは確かにここにしました!」

 

千歌「少しは善子ちゃんを擁護してあげてほしい」

 

千歌「えっとぉ、んーっとぉ、ぅぅ…」キョロキョロ

 

千歌「………あ!見て鞠莉ちゃん、あっちに善子ちゃんっぽい人いるじゃん!果南ちゃんっぽい人とダイヤさんっぽい人と花丸ちゃんっぽい人と!」

 

鞠莉「果南にダイヤにハナマルぅ?なんであのコ達がこんなところにいて、しかもうちの善子と一緒にいるのよ!」

 

千歌「うちのって。ここにいるんなら一緒にいるのはそんなに変でもないでしょ」

 

鞠莉「…………」

 

千歌「…………」

 

ちかまり「「いやあれ本人達じゃない!?」」

 

千歌「よく見てよあれ、どう見ても善子ちゃんだよね!?」

 

鞠莉「よ、善子ね。マリーが見間違うはずがありまセーン!」

 

千歌「それにほら、果南ちゃん達で間違いないよね!?」

 

鞠莉「果南は頻繁に髪型変えるから、ちょっとよくわかんないかも」

 

千歌「鞠莉ちゃん!!」

 

千歌「とりあえずあそこ行ってみよ」

 

鞠莉「Yes, Sir!!

 

 

果南「よ、遅かったね」ノ

 

ダイヤ「お先に頂いています」

 

花丸「重いものは早く置いちゃって。そっちは芝生に直接で、こっちは簀の子の上だから、好きな方に座るといいずら」

 

善子「千歌さんのお弁当キターーー!待ってました!」

 

果南「やっとまともなものが食べられるね~」

 

ダイヤ「失礼な、ちゃんとおつまみだって買ってきたでしょう」

 

果南「おつまみのセンスどうかしてるよ!炭酸水とカロリーメイトってなんだよ!アスリートか私は!!」

 

善子「アスリートみたいなもんでしょ」

 

花丸「そう言いつつウィルキンソン炭酸に関してはだいぶ飲んだよね」

 

ダイヤ「飲まないと減りませんからね」

 

果南「一本くらいダイヤ達も飲んでよ!!」

 

善子「wwwww

 

鞠莉「善子」

 

善子「どしたの、鞠莉。千歌さんも。早く靴ぬいで、一緒にお花見しましょうよ」

 

鞠莉「善子」

 

善子「っ、…な、なに?」

 

鞠莉「朝は、向こうに seat 敷いたわよね。なのに戻ってきたら善子がいなくなってて、挙句果南達と一緒にいるなんて。果南達がいたこととか、合流するから移動したこととか、連絡くれたらよかったじゃないの」

 

善子「あ、うん、それは…その、ごめん………怒ってる?」

 

鞠莉「……い」

 

善子「え、なに…?」

 

鞠莉「――――ずるいっ!!」

 

善子「………へ?」

 

鞠莉「果南達がいるんならもっともっと急いで戻ってきたのに!」

 

善子「え、あ、ごめん…?」

 

鞠莉「それにこれだけの荷物を移動させるの大変だったでしょーに!」

 

善子「それはまあ、半分以上果南さんがパパっとやってくれたから…」

 

鞠莉「んもーーーっ、こんな chance そうそうあるもんじゃないわ!一分一秒だってムダにできない!ちかっちお弁当!広げましょ!」

 

千歌「あ、あいあいさあ!」ゞ

 

鞠莉「drink も途中でたくさん買ってきたから、果南達も好きなの飲んで――って、なにこの repertory は!?炭酸水ばっかりじゃないの!」

 

果南「それはダイヤ達に言って」

 

ダイヤ「それは果南さん用です」

 

果南「好きなそぶり見せたことあった!?なんでそんな自信満々なの!?」

 

千歌「は~い、チカの特製お花見弁当ですよ~」

 

花丸「わああっ、とっても美味しそう!」

 

千歌「遠慮しないでいっぱい食べてね、花丸ちゃん。三人じゃ食べきれないくらい作ってきたから!」

 

花丸「わーーーいっ、いただきまあす!」

 

ダイヤ「あっ、ずるいわまるちゃん!わたくしも食べます!」

 

千歌「こっちにはおにぎりいっぱい作ってきたのだ♡」

 

善子「んむ!私チカさんのおにぎりめっちゃ好きなのよ。もーらいっ」

 

果南「どれ?どれがオススメ?」

 

善子「果南さんは…これかな」つオニギリ

 

果南「ありがとー」

 

鞠莉「あら?善子、それ…」

 

果南「んぐっ!?うべえええっ、これ梅なんだけど!」

 

善子「wwwww

 

果南「善子ぉ!わざとやったなー!?」

 

善子「ごめ、ごめんなさいっ、ついww

 

千歌「果南ちゃん…チカのおにぎり、おいしくない…?」ウルッ

 

果南「めっちゃ美味い」モグモグペロリ

 

善子 (千歌さんも同じテク持ってるゥーーーー!!) ※千歌は天然

 

花丸 (果南ちゃんが年下から甘えられるのに弱いのは、たぶんそもそも千歌ちゃんが原因だよ)

 

善子 (こいつ…っ、脳内に直接…!)

 

ダイヤ「そうだ、千歌さん達もこの日を空けておいてくださると嬉しいのですが」

 

千歌「ん?いつ~?」

 

花丸「ここの土日と、予備で前後の土日も!」

 

千歌「え?来年…?」

 

果南「だからやめなよ!チカも困ってるでしょ!そんな先の日付空けとけって言われてもどうしようもないよ!」

 

花丸「みんなの都合を合わせようとしてるのに非協力的なのは感心しないよ、果南ちゃん」

 

果南「責められるべきは絶対私じゃないはずだーー!」

 

善子「やっぱどっかズレてるわね、この人達」

 

ワイワイ………

 

千歌「お花見と言いつつ誰も桜の方ちらりとも見ないね」

 

ダイヤ「きっとどこの地域のどこのお花見会場でもそれは同じだと思いますわ」

 

鞠莉「そうよ。だからね、ただ桜を見たいだけなら北海道でも沖縄でも、Italia だっていいの。桜はどこでだって見られるんだもの」

 

千歌「身も蓋もないなあ」

 

鞠莉「うふふ。ちかっちにもいずれわかるわ」

 

鞠莉「どこでも見られる桜の下で、大好きな人達とするお花見が、とってもシャイニーだってことが…ね♡」

 

 

後で、ルビィにも予定を空けておくよう伝えたら、なんだか哀れんだような視線を向けられてしまいましたわ…。

 

 

 

せっかくなので、採用できなかったこの内容も書いてみることに。

 

190名無しで叶える物語(庭)2019/03/28() 07:36:56.00ID:275LMsHr

マリーが海外出張

 

 

マリーが海外出張

 

 

鞠莉「ふわぁ…起きなきゃ…あら?二人とも bed にいないわ…早いわね」

 

鞠莉 ノソノソ…

 

鞠莉「ちかっち~、善子~、おはよ――…う?」

 

千歌「おはよう鞠莉ちゃん。よく眠れたかい」

 

善子「おはよう鞠莉。目覚めは良好かい」

 

千歌 つキャリーバッグと 善子 ドーン

 

鞠莉「う、ウン…?よく眠れたし、目覚めも良好よ。…えっと、言っておいたと思うけど今日から America に行ってくるから………って、その carry bag マリーのやつ…」

 

千歌「これはね、人質なんだよ鞠莉ちゃん」

 

善子「海外出張に行くとは前から聞いてたけどね」

 

千歌「行かせ」

 

善子「ないぜ」

 

ちかよし ギランッ

 

鞠莉「………………ウン…?」

 

鞠莉「…………」

 

鞠莉「マリー今ちょっと寝起きでぼーっとしてるから、出張から戻ったら一緒に video game でもやりましょうね」ススス

 

千歌「待てえい!」

 

善子「私達の奇行をスルーするんじゃなあい!らしくないわよ!」

 

鞠莉「自分で奇行とか言っちゃうような行いをしないでちょうだい」

 

鞠莉「あのー…別にそこまで時間ギリギリってわけじゃないけど、ほら、一応仕事の準備とかしなくちゃいけないから、遊ぶのは後にしてほしいかな~」

 

千歌「違うやい!チカ達だって遊んでほしいわけじゃないやい!」

 

善子「私は一緒にやりたいゲームがあるのも確かよ」

 

千歌「ひどい裏切りを見たよ!!チカだって鞠莉ちゃんと遊びたい!」

 

善子「ふっふ~ん、残念でした。鞠莉は多忙の身だから遊べるのは一人だけで~~す」

 

千歌「きぃぃぃぃっ!」

 

鞠莉「朝食って作ってくれてるの?」

 

善子「興味を失うんじゃなあい!」

 

千歌「お仕事の準備をするとか言うけど、鞠莉ちゃんのキャリーバッグはこうやってチカ達が人質に取ってるんだからね!そこをゆめゆめお忘れなきよう!」フフン

 

鞠莉「バッグなんだから、『人』質って言い方はおかしいんじゃないの?」

 

千歌「えっ」

 

鞠莉「それとも、日本語ではそういう風に言うのが正しいものなの?」

 

千歌「え、どうだろ、そんなことないと思うけど。言われてみたら変化も。ちょっと待って、じゃあなんて言ったらいいんだろ…」

 

鞠莉「タマゴ余ってるわね。仕方ない、ちゃちゃっと French toast でも作りましょうかね~」

 

千歌「ねえ善子ちゃん、どう思う?人じゃないから、バッグ…ばっ、鞄…かばじち、とかでいいのかな…」

 

善子「あっさり惑わされないで!それは鞠莉の罠よ!どうでもいいことに思考を割くのやめなさい!」

 

千歌 ハッ!

 

千歌「鞠莉ちゃんめ!はかったな!」

 

善子「今の鞠莉は敵と思いなさい!」

 

千歌 コクコクコクッ

 

鞠莉「タマゴ、二人分ならなんとか French toast 作れそうだけど、どっちか食べたい人」

 

千歌「だ、騙されないんだからねっ」プイッ

 

善子「あ、千歌さん食べないなら私欲しい」

 

鞠莉「OK~♪」

 

千歌「善子ちゃん!!?」ガーーンッ

 

 

鞠莉 モグモグ

 

善子 モグモグ

 

千歌 モグモグ ←善子と半分こした

 

鞠莉「ちかっち、今日出かける予定じゃなかった?用意しなくていいの?」

 

千歌「い…いいの!今日は鞠莉ちゃんの足止めに一生懸命だから!」

 

鞠莉「善子は?」

 

善子「いつも通り、これといった予定はないわ。鞠莉の足止めに成功したら積んでるゲームやろうと思ってるくらいね」

 

鞠莉「はあ、そうなの…」

 

鞠莉「ところで、なんでマリーの邪魔をしようとするの?っていうか、ホントに邪魔しようとしてる?」

 

善子「……」モグ

 

善子「半分くらい本気よ」

 

鞠莉「半分はおふざけ?」

 

善子「半分は、」チラッ

 

千歌「…………」モグモグ

 

鞠莉「…そう」

 

鞠莉「ねえちかっち、一体どうしてマリーが出張に行くのを止めようとするの?昨日まではお土産をあれこれ注文してきてたじゃない。出張行かなかったらお土産なんにも買ってこられないよ?」

 

千歌「…いらないもん、お土産なんか」

 

千歌「ねー鞠莉ちゃん、絶対行かなきゃだめなの?」

 

鞠莉「なにがなんでも今日この日に行かなきゃいけないってほどじゃないけど、まあ、よっぽどじゃなければ行っておきたいわね」

 

千歌「…………」モグモグ

 

鞠莉「だから、ねえ。理由によるってことよ。今日の出張より優先すべき案件があるなら、それはモチロン優先するわ。そのためにはちかっちがなにを考えているのか教えてもらわないと」

 

善子「…ごちそうさま」カチャ

 

千歌「言ったって、鞠莉ちゃん絶対聞いてくれないもん」

 

鞠莉「わからないじゃない。それよりも、理由も言われずにただ足止めだけされたって、ちかっちが気にしていることに気付きもしないまま私は出ちゃうだけよ」

 

千歌 プクー

 

鞠莉「困ったちゃんねー」モウ

 

千歌「とにかくッ、鞠莉ちゃんを海外出張になんか行かせないんだから!行かないって言うまであのキャリーバッグは渡さないからね!」

 

千歌「ごちそーさまっ!」タタタ…

 

千歌 ガシッ ←キャリーバッグにしがみ付いてる

 

鞠莉「…ところで、善子はなにやってるのかしら?」

 

善子「とりあえず多方面からアプローチしておこうと思って、あなたの靴を軒並み隠してるところよ」ゴソゴソ

 

鞠莉「こ~らっ、なんてことするの!返しなさい!」

 

善子「サンダルは残しておいたわ」

 

鞠莉「sandal で出張に行く人がどこにいるっていうのよ!」

 

千歌「果南ちゃんはお仕事中も裸足だったりするもん」

 

鞠莉「淡島原人と一緒にしないの!」

 

 

9:30

 

 

鞠莉「ハァ…ハァ……まっったくもう!二人ともすばしっこいんだから!こんな時間になっちゃったじゃないの!」

 

善子「そろそろ諦める気になった?」

 

鞠莉「諦めるも諦めないもないわよ、お仕事に。当然行くに決まってるじゃない」

 

善子「ま、そうよね…」

 

千歌「でもキャリーバッグはまだチカの手の中にあるもん」ギュ

 

鞠莉「………ふう」

 

鞠莉「マリー、向こうにも office あるから。カバンは持っていく必要ないのよ」

 

千歌「えっ」

 

鞠莉「もっと言うと、靴も服もあるわ」

 

善子「あー…」

 

鞠莉「そろそろ迎えがくるから、もう行くわよ?ちかっち」

 

千歌「……っ」ギュ…

 

鞠莉「……帰ってきたら教えてちょうだい」スタスタ…

 

善子「行ってらっしゃい」

 

鞠莉「あなたはちかっちほど意固地になって止めないのね」

 

善子「まあ、ムダだってわかってるのもあるし、そもそも無用な心配だってこともわかってるから」

 

鞠莉「よかったら、一体なんだったのか、教えてくれない?このままじゃ向こうでも考えちゃってお仕事に集中できなさそうなの」

 

善子「…」つ新聞 スッ

 

鞠莉「新聞?今朝の…?」

 

鞠莉「………!」

 

 

『アメリカで飛行機墜落事故――』

 

『同機墜落は今年に入って二件目――』

 

『飛行機の安全性に疑問――』

 

 

鞠莉 ハッ…

 

善子 コク

 

善子「今朝、私も叩き起こされたのよ。『鞠莉ちゃんを出張に行かせたくないから手伝って』って。一面記事はすぐに見えたから、千歌さんがなにを考えてるのかはすぐにわかったわ」

 

善子「またばかなことで騒ぎ始めたって思った。心配し過ぎだって。だから遊び半分で付き合ってたと言えばそうなんだけど、でも…たった数ヶ月で二回も事故が起きたって言われると、私も…」

 

鞠莉「そういうことだったの…」

 

 

鞠莉「ちかっち」

 

千歌「鞠莉ちゃん…」ハッ

 

鞠莉「マリーのこと、心配してくれてたのね。飛行機に乗ったら事故に遭っちゃうんじゃないかって」

 

千歌「………だって」

 

千歌「だって、チカは飛行機なんか今まで五回も乗ったことないけど、鞠莉ちゃんはたくさん乗るし、昨日も事故があって、今日また事故が起こらないなんてわかんないし、事故に遭ったら――しっ、死んじゃう…し…っ」グス

 

鞠莉 チラッ

 

善子「………」

 

鞠莉「…まったく、心配性の妹達なんだから」

 

鞠莉「おいで。ほら、善子も」

 

鞠莉 ギュウッ

 

千歌 ギュッ

 

善子 ギュ…

 

鞠莉「ダイジョーブ。ダイジョーブよ」

 

鞠莉「私は事故に遭ったりしない。二人の前からいなくなったりしないから」

 

鞠莉「これから何回だって外に行くけど、そのたびに、必ずあなた達が待ってるこの家に帰ってくるって約束するわ」

 

千歌「なんでそんなこと言えるの…わかんないじゃん…」

 

善子「そうよ。事故に遭った人達が、『今日は事故に遭うかも』なんて思いながら飛行機に乗ってたと思うの?」

 

鞠莉「ンー…きっとそんなことはないと思うけど、ほら、私はちょっぴり事情が違うじゃない」

 

千歌「へ…?どーゆーこと…?」

 

鞠莉「だってほら、私は海外往復を自家用機でやってるから」

 

千歌「…………」

 

善子「…………」

 

ちかよし「「へ?」」

 

鞠莉「エ?言ってなかった?毎回クルマで迎えにきてもらって、小原の privatehelicopter で海外には飛び立ってるよ?」

 

千歌「き――聞いてないよ!」

 

鞠莉「機内には常に三人の操縦士が控えてるし、淡島の管制塔から遠隔操作に切り替えることもできる。万が一の場合に備えて緊急脱出用の装備も一式揃ってるから、民間の飛行機より何倍も安全だよ」

 

善子「ち、ちなみに墜落したことは…?」

 

鞠莉「小原の helicopter が稼働し始めて四十年になるらしいけど、墜落どころか操縦支障を起こしたことすら一度もないって聞いてるよ」

 

ちかよし「「 」」

 

鞠莉「だから、ね?ダイジョーブ。マリーのことなら心配しないで…」ギュ…

 

善子「もういいわよその雰囲気!別世界の人間を心配するだけムダだったわ!」

 

千歌「早く行きなよ鞠莉ちゃん、お仕事遅刻するよ」

 

鞠莉「エーーーーーーッ!?」ガーーンッ

 

善子「こっち戻ってくるとき柔軟剤とトイレットペーパー買ってきてよね、よろしく」

 

千歌「お土産お願いね、鞠莉ちゃん。美味しいお菓子とカワイイものね!」

 

鞠莉「え、や、あの…」

 

ちかよし「「行ってらっしゃい」」アッサリ

 

鞠莉「あーーーんっ、ちかっちと善子の意地悪ぅーーー!!」

 

 

海外出張は今回も何一つ不都合なく終わり、飛行機のストラップをお土産に持って帰ったら悪趣味だと言われました。

 

 

 

これにて終わりです。

こういう日常モノはその気になれば延々と書き続けられるのが怖いですね。