156ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:21:17.71ID:TNJpj4r7
それから更に数年後…
コツ。
石畳を鳴らして、ふと立ち止まる。
都内に比べると手狭な駅…と感じたけれど、思い直す。
改札のすぐ隣にお土産屋さんやパン屋さんが設けられているのも、バスやタクシーが何台も乗り入れられるロータリーが広がっているのも、よく考えれば向こうではほとんど見ない光景。
車線数が少なく、ホームは狭く、改札機もどこか古っぽい。
それでも、案外こっちの方が敷地を贅沢に使っていると言えるのかもしれない。
『伊豆長岡駅』
ルビィ「久し振りだなあ」
背高な駅舎を仰いで独り言つ。
と、程ない距離からクラクション。
助手席と運転席からそれぞれ覗く懐かしい顔に、思わず笑みをこぼした。
157ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:22:47.42ID:TNJpj4r7
ブゥゥゥゥン…
黒澤母「長旅お疲れさまでした、ルビィさん」
ルビィ「うん。でもずっと座っていられたから、そんなに疲れてないよ」
黒澤母「でも三時間ほど掛かるのでしょう?今夜はぐっすりでしょうね」
ルビィ「んー?……うん、そうかも」クス
ダイヤ「お母さまはそんなに長い時間電車にお乗りになったことなどないでしょうからね。ぴんと来ないのでしょう」
黒澤母「まあ。ダイヤさん、今しがた母をおひゃらかしましたか?」
ダイヤ「そんなことありませんよ」
ルビィ「お姉ちゃんが運転してくれるなんて思わなかったな」
ダイヤ「電車での長旅の後に、またバスに乗るのも嫌でしょう」
ルビィ「いつ免許取ったの?」
ダイヤ「二十一歳になった頃よ」
黒澤母「助かるのですよ。沼津の方に行くのもバスに乗らなくてよいものですから」
ダイヤ「はじめは反対なさいましたのにね。今ではすっかり運チャン扱いなんだから」
黒澤母「よいでしょう。持ち腐らせては仕方ありませんよ」
ダイヤ「ふふ…調子のよいことですわ」
ルビィ「…うふふ」クス
ブゥゥゥゥン…
………………
………
158ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:24:57.15ID:TNJpj4r7
ルビィ「ただいまー」
ダイヤ「お帰りなさい。随分と久し振りなのではない?」
ルビィ「うん。どのくらいになるかな…」
ダイヤ「年末にもお盆にも帰ってこないで。お母さまも淋しがっていらしたのよ」
ルビィ「うん…忙しくて」
ダイヤ「…そうよね。社会人なんだものね」
ルビィ「…」
ダイヤ「…」
ダイヤ「あなたの部屋」
ルビィ「うん?」
ダイヤ「ほとんどそのままにしてるのよ。落ち着いてからでいいから、少し片付けなさいな。今回で終わらせなくてもいいから」
ルビィ「わかった」
ダイヤ「お夕飯まではどうするの?」
ルビィ「もう少ししたらちょっと出るよ。花丸ちゃんと会う約束してるから」
ダイヤ「そう。お夕飯に差し支えないようにね」
ルビィ「わかってるー。子どもじゃないんだから」
ダイヤ「ふふ。では、後でね」
ルビィ「うん」
159ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:26:53.98ID:TNJpj4r7
カラリ…
ルビィ「ただいまー」
ルビィ「ふう」ドサ
ルビィ キョロ
ルビィ「…ほんとに。ほとんど変わってないな」
お母さんが干してくれたのだろう、布団はふわりとやわらかく、わずかにお陽さまの匂いを纏う。
机や棚のレイアウトも記憶のままで、埃も被っていない。
ルビィ「久し振り。わたしがいない間、なにもなかった?淋しかったよねー」ムギュ
枕の周りを飾るぬいぐるみたち。
幼い頃から傍にいたコを持ち上げて、ぎゅっと抱き締めてみる。
これもほのかにお陽さまの匂い。
ルビィ「…お母さんは優しいなあ」
160ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:28:49.86ID:TNJpj4r7
高校を卒業して、内浦を発った日の前日。
せっかく干してくれた布団をみんな放ったらかして、お姉ちゃんの部屋で一緒に眠ったっけ。
畳の匂い、お陽さまの匂い、お母さんの匂い。
好きな匂いはたくさんあるけれど、あったけれど、決意と旅立つ前に最後に包まれたい匂いは一つしかなかったから。
…ギュ
ぬいぐるみに顔をうずめていると、置きっ放していたスマートフォンが震えた。
………………
………
161ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:30:06.05ID:TNJpj4r7
花丸「ルービィちゃんっ」
ルビィ「花丸ちゃん!久し振り!」
花丸「久し振り。もう内浦では会えないかと思ってたよ」
ルビィ「あはは…そんなわけないじゃん。わたしの家はここにしかないんだから」
花丸「その割には何年ぶり?年末もお盆も帰ってこないで」
ルビィ「それはもうお姉ちゃんに言われたから」
花丸「ダイヤさん…か」
花丸「こんなときにしか帰ってこないんだから」
ルビィ「帰ってきたんだから、もういいでしょ」
花丸「これを機に少しは帰省頻度を上げてほしいものだよ」
ルビィ「善処する善処する」
花丸「しないやつじゃん」
ルビィ「…これでも頑張ってるんだから」
花丸「…わかってるよ」
162ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:31:32.47ID:TNJpj4r7
ー松月ー
ルビィ「ん~、懐かしい匂い」スーッ
花丸「甘い匂いは落ち着くねえ」スーッ
ルビィ「みかんタルトと、みかんジュース下さい!」
花丸「もう夕方だよ。そんなに食べて平気なの?」
ルビィ「それも同じようなこと言われてきたから。もうオトナなんだからだいじょーぶだもん」
花丸「ルビィちゃんが大人かあ。…あ、私も同じので」
ルビィ「花丸ちゃん、もう『ずら』って出ることないの?」
花丸「ないよ。徹底的に治したもん。…でもお酒呑んだときは言ってるって言われる」
ルビィ「治ってないじゃん」フフ
花丸「お酒は仕方ないよ」
ルビィ「また最近もよく呑んでるの?」
花丸「そんなに呑んでないよ。別に好きじゃないからね」
ルビィ「でも強いよね」
花丸「周りが弱いだけだから」
ルビィ「うわ出た。酒豪の物言いだ」
花丸「酒豪とはひどい言いがかりだよ」
ルビィ「前のときだって花丸ちゃん以外みんな潰れちゃったし」
花丸「東京の人と比べたらいくらかはね」
ルビィ「わたしも内浦民なんですけどー」
アハハ… ………
163ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:33:14.63ID:TNJpj4r7
…カラン
花丸「…ダイヤさん」
ルビィ「…うん」
花丸「こう言っちゃなんだけど、よく帰ってきたね」
ルビィ「姉だよ?さすがに帰ってこないわけないじゃん。でもだいぶ頑張ったから。頑張ってるから。これはほんとに」
花丸「疑ってないよ」
ルビィ「言ってもわたしだってもう昔ほどじゃないから」
花丸「それならいいんだけど」
ルビィ ズズ…
花丸 モグ
ルビィ「…いや嘘。やっぱりかなり無理」グテ
花丸「…」
ルビィ「えー…ねえ、もー……」
ルビィ「………やだあ」グス
花丸「…よしよし」
164ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:34:33.66ID:TNJpj4r7
ルビィ「花丸ちゃんカレシいたことないの」
花丸「なに突然」
ルビィ「カレシじゃなくていいや。お姉ちゃんいたことないの」
花丸「ないよ」
ルビィ「味わってほしいよこの感覚…他人事じゃいられないんだからね…」
花丸「他人事でそんなことになるとは誰も思ってないよ」
ルビィ「えー………ねー………」
ルビィ「………もー…」
花丸「お姉さんがいる友達紹介しようか?」
ルビィ「いいよいらないよ。どうせ理解してもらえないもん」
花丸「身も蓋もないなあ」
花丸「でも、偉いよ」
ルビィ「なにが」
花丸「ちゃんと帰ってきたしさ。お祝いの場にも出るし。実のお姉さんだっていうのを差し引いても、ね」
ルビィ「…」
ルビィ「だって、そうするしかないじゃんか」
………………
………
165ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:36:01.27ID:TNJpj4r7
花丸「いつまでこっちにいるの?」
ルビィ「月曜の午前に発つよ」
花丸「そっか。じゃああと一回くらい会えるといいな」
ルビィ「うん。どうせわたし自身は別になにやるわけでもないから。誘ってくれればいつでも付き合うよ」
花丸「ありがとう。でも久し振りの帰省なんだから、ダイヤさんとかお母さんと過ごす時間も大切にしなきゃ」
花丸「特にダイヤさんは…ね」
ルビィ「………うん。わかってる」
ルビィ「…」グッ…
花丸「…」
花丸「それじゃ、またね」
ルビィ「あ、うん。また」
花丸「私は直接言う機会ないから、ダイヤさんに伝えておいて」
花丸「ご結婚、おめでとうございます――って」
………………
………
166ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:38:36.56ID:TNJpj4r7
ルビィ「めでたくないし」
夕飯とお風呂を済ませるや自室に引っ込んで、布団の上でふてくされてみせる。
なにが悲しくてお姉ちゃんの結婚に「おめでとう」なんて言わなくちゃいけないのか。
射し込む月明かり。
季節の音に紛れて、遠く聞こえるのはお姉ちゃんたちの談笑の声。
――花丸『久し振りの帰省なんだから、ダイヤさんとかお母さんと過ごす時間も大切にしなきゃ』
せっかく実家に帰ってきて、ただただぬいぐるみと添い寝してやり過ごすなんて、ばかみたいな時間もあったものだ。
172ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:45:15.52ID:TNJpj4r7
明後日には、親戚と地元の人たちを集めて結婚式が行われる。
内浦に限っているとはいえ、そこそこの歴史を持つ名家である黒澤家。
婿入りするという旦那さんの話も何度か聞かされたし画像を送られてきたこともあるけれど、全く記憶にない。画像は読み込みもせずに削除した。
明日の夕方にはこちらに到着するのだとか。
政策的な意味も含めて選ばれたのであろう相手といっても、お姉ちゃんが一緒になると決めた人だ。
きっといい人なのだろう。
笑顔であいさつをして、気さくに接してくれるだろう。
髪を短く整えた背が高めの人で、スーツか袴がよく似合うに違いない。
黒澤家のこと、お母さんのこと、内浦のこと、そしてお姉ちゃんのことを、なによりも大切にしてくれるのだろう。
だから、なんだというのだ。
ルビィ「…名前だって知りたくない」
173ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:46:33.26ID:TNJpj4r7
顔も見たくないし、声も聞きたくない。
お姉ちゃんに名前を呼ばれて、お姉ちゃんの名前を呼んで、親しげに笑い合って、手を取り合って、寄り添い合って――そして――
ルビィ「…………っ」
唇を蝕む痛みが、じわじわとした感覚から、はっとするような鮮烈なものに変わる。
そのとき。
コンコン、と部屋の戸が叩かれた。
誰、と問おうとして、咄嗟にうまく声が出せなくて、
ダイヤ「ルビィ?いますか?」
お姉ちゃんであることくらい、聞かずともわかっていた。
174ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:48:58.02ID:TNJpj4r7
カラリ
ルビィ「いるよ」
ダイヤ「もう、どうしたの。お風呂あがるなり部屋に引っ込んじゃって…って、電気も点けずに…」
ルビィ「ああ、えっと…ちょっと寝ちゃってた。やっぱり意外と疲れてたのかも…それとも帰ってきてほっとしたかな」
ダイヤ「…」
ダイヤ「あら?あなた、唇が…」
ルビィ「え?」
ダイヤ「血が出てるじゃない。手当てしましょうか」オロ
ルビィ「いいよ。リップ塗っとくから、平気だよ」
ダイヤ「…そう」
ルビィ「うん」
ダイヤ「…」
ルビィ「…」
ルビィ「なにか、用だった?」
ダイヤ「用だったって…お姉ちゃんに向かって随分な物言いをするじゃない」
ルビィ「えっ、ごめん…そんなつもりじゃ…」
ダイヤ「……ねえ、ルビィ。まだ寝ないでしょう?」
ルビィ「寝ないけど…」
ダイヤ「久し振りに、μ'sのライブでも観ましょうよ」
………………
………
175ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:51:59.63ID:TNJpj4r7
ルビィ「…」
オーイェー オーイェー オーイェー イッシンイッチョウ!
ダイヤ「…」
オーイェー オーイェー オーイェー ホラ、マッケナイヨネ?
ダイヤ スゥ…
ダイヤ チラッ
ルビィ「…」
ダイヤ「……っ」
クヤシーナマーダノーブラン
シラレーテナイヨノーブラン
ナニモカモーコーレカラー アツイーキブン………
176ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:54:04.29ID:TNJpj4r7
ダイヤ「ねえ、ルビィ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「μ'sは、今も昔も輝いているわね」
ルビィ「うん」
ダイヤ「目の前の一瞬に全力で、大切な仲間を信頼していて、誰もが追い掛けたくなるような熱さを放ち続ける」
ダイヤ「とっても素敵な人たちね」
ダイヤ「とっても素敵な…スクールアイドルね」
ルビィ「…ねえ、お姉ちゃん」
ダイヤ「なあに?」
ルビィ「わたしのこと、恨んでる?」
ダイヤ「えっ…」
ダイヤ「どうして」
ダイヤ「どうして、わたくしがあなたを恨むことがあるの?」
ルビィ「…」
ダイヤ「何年も帰ってこなかったこと?あなたにはあなたの考えがあったはずなのだから、それで恨むなんてことは」
ルビィ「スクールアイドルを辞めさせたことだよ」
ダイヤ「っ!!」
177ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:55:11.84ID:TNJpj4r7
ダイヤ「辞めさせた、なんて…そんな風には…」
ルビィ「事実そうだよ」
ルビィ「わたしがいたから、お姉ちゃんたちはスクールアイドルを続けられなかった」
ダイヤ「そんなこと、」
ルビィ「なくないでしょ」
ルビィ「今ではきちんと自覚してるよ。お姉ちゃんの大切な夢…ううん、わたしたちの大切な約束を奪ったのは、他でもないわたし自身だってこと」
ルビィ「…ほんとは、当時からわかってた。わかってたけど、感情をコントロールできなくって、どうすることもできなかった」
ルビィ「ただお姉ちゃんのことが好きで、好きで、大好きで」
ルビィ「それ以外のなにもかもを、少しも大事にすることなんか考えられなかったの」
ルビィ「ごめんね…」ポロ…
ルビィ「こんな妹で、ごめんね…」ポロ…ポロ…
178ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:57:01.99ID:TNJpj4r7
ダイヤ「………………………………あなたが」
ルビィ「え?」グス…
ダイヤ「あなたが、家を出てから、これまで一度も帰ってこなかったのは…」
ダイヤ「それが理由なの?」
ダイヤ「わたくしに後ろめたさを感じていて、だから帰ってこなかったの?」
ルビィ「………………うん」
ダイヤ「…………か…」ズ
ダイヤ「ルビィの、ばか…っ」グスッ
ルビィ「お姉ちゃん…」ハッ
ダイヤ「ルビィのばかっ!」ガバッ
ルビィ「むぎゅ」
ギュウウウウウ…ッ
ルビィ「お、おねえちゃ…くるし…」ペシペシ
ダイヤ「昔から頭がキレる子ではなかったけれど、ここまでばかだとは思っていなかったわ…」ギュ
ルビィ「んな…」
179ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:58:35.86ID:TNJpj4r7
ダイヤ「物心がついて、初めてスクールアイドルというものに触れてから、憧れを語らなかった日は一日もなかったわね…」ギュ
ルビィ「…うん」
ダイヤ「μ'sの真似をして、A-RISEの真似をして、歌って…踊って…お母さまにライブの真似事を披露したりもしたわね…」ギュ
ルビィ「……うん」
ダイヤ「年齢を重ねて高校生になる日が近付くにつれて、グループ名を考えては、衣装案を考えては、振付を考えては、ステージに並んで立つ瞬間を待ち詫びたわね…」ギュ
ルビィ「………うん」
ダイヤ「わたくしが高校生になって、果南さんたちとスクールアイドルを結成してからは、いよいよ現実になる可能性に手を伸ばして、毎日いてもたってもいられなかったのよ…」ギュ…
ルビィ「…………うん……それなのに、それ…っ、わたし…」ヒック…
ダイヤ「……果南さんに解散を提案されたときのことは、一日だって忘れたことはないわ。目の前で分厚い扉が閉まってしまったかのようだった――」
ルビィ「ごめ…っ、ごめんなさ……わたっ、ルビっ、うう…」ヒグ…グス…
ルビィ「だから…わたし、もう…お姉ちゃんの傍には、いら…いられないって……高校を卒業するまで、っく…めいっぱい甘えたら…罪を……っ、時間を奪っちゃった償いをっ………っ」
ダイヤ「――それでもっ!!!」
180ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 21:59:12.87ID:TNJpj4r7
ダイヤ「確かにわたくしは、わたくしたちは夢を諦めた…諦めるしかなかった…」
ダイヤ「それは、もしかしたら…あなたが理由だったと、…言えるのかもしれない」
ルビィ「………っ」
ダイヤ「それでも…たとえそうだったとしても!」
ダイヤ ギュ… ギュウ…ッ
ダイヤ「わたくしがルビィのことを恨んだり、嫌いになったり、それが絶対に有り得ないってことくらい…あなた自身が誰よりもわかっていてよ!!」
ルビィ「――――っ!」
181ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 22:00:35.39ID:TNJpj4r7
ダイヤ「ルビィ」スッ
ダイヤ「あなたはたった一人の大切な妹」
ダイヤ「長年の夢がだめになったって、友人との絆が淡くなったって、そんなことはどうでもいいと言ってしまえるほど…」
ダイヤ「わたくしにとっての、かけがえのない宝物なのよ」
ルビィ「おねいちゃん…」
ダイヤ「あなたが傍にいなかった数年間、どれだけ淋しかったと思っているの?」
ダイヤ「お姉ちゃんのことを、一人にしないでちょうだい」ニコ
ルビィ「――――~~~~……っっ!!」
ルビィ「おね…っ」
ルビィ「おねいちゃああああああああ……っ」ビエエエッ
ダイヤ「よしよし…やっぱり、あなたは変わらず泣き虫ねえ」ナデ…
………………
………
182ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 22:02:38.98ID:TNJpj4r7
ルビィ「今日は一緒に寝る!」ウユーン
ダイヤ「お母さまがルビィの布団を干していらしたわよ」
ルビィ「知ってる!」
ダイヤ「やれやれ…途端にこうなのですから…」クスクス
ルビィ「布団では明日でも明後日でも寝れるから」
ルビィ「でも、」ギュ
ルビィ「おねいちゃんとは…今夜までしか、一緒に寝れないでしょ」
ダイヤ ギュ…
ダイヤ「そうね」
ダイヤ「電気、消すわよ」
ルビィ「うん」
パチ
183ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市)2018/07/28(土) 22:04:23.69ID:TNJpj4r7
ルビィ ギュ…
ダイヤ ギュ…
ルビィ「おねいちゃんとこんな風にして寝られるの、嬉しいな」
ダイヤ「とても懐かしいわね」
ルビィ「やっぱり、こうして寝るのが一番落ち着くかも…」
ダイヤ「ふふ。わたくしも」
ルビィ「ねーえ、おねいちゃん」
ダイヤ「なあに、ルビィ」
ルビィ「ルビィのこと、好き?」
ダイヤ「当然でしょう。大好きよ」
ルビィ「ルビィもね、おねいちゃんのこと大好き」
ダイヤ「ありがとう。嬉しいわ」
ルビィ「…ねーえ、おねいちゃん」
ダイヤ「なあに、ルビィ」
ルビィ「ルビィのこと、旦那さんより好き?」
ダイヤ「ええ?」
ダイヤ「そんな答えづらいことを………」
ダイヤ「…ルビィ?」
ギシッ
ルビィ「ルビィはねえ」
ルビィ「おねいちゃんのこと、他のどんな誰よりも」
ルビィ「いっちばんに、好きだよ――――♡」
***