61ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:14:34.52ID:ZOT8RwaC
「きりーつ、きをつけー、れー」
それから二週間ほど経ちました。
今日もルビィは図書室に向かいます。
最初はただ時間を潰すためだけに選んだ場所だったけれど、少しずつ図書室そのものが好きにもなってきました。
スクールアイドルの本、可愛い衣装の本、懐かしい童話。
本がたくさんあって、今日はなにを読もう、明日はなにを読もう、なんて考えるのが楽しかったりします。
ちなみに昨日は『おいしいイチゴ図鑑』を読みました。
うゆゆ…イチゴ食べたい。
62ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:15:28.46ID:ZOT8RwaC
ー図書室ー
カラリ
ルビィ スタスタ…
ルビィ キョロキョロ
ルビィ「うーん…」
「なにか捜してるの?」
ルビィ「ピギャッ?!」ビクッ
ルビィ ビュン!
「あ…図書室では走っちゃだめずら」
ルビィ ササッ コソ…
「もしかして、驚かせちゃった?ごめんね」
ルビィ「…だれ?」コソ
国木田「おらは国木田。図書委員だよ」
ルビィ「と、しょ…委員さん…」
国木田「うん」
ルビィ「図書委員さんなんていたんだ…」
国木田「そりゃいるよ。図書室があるんだもん」
ルビィ「だって、今まで会ったことないもん…」
国木田「あなた、よく図書室に来るの?」
ルビィ「…最近は毎日」
国木田「あ~。ってことは、やっぱりみんなさぼってるんだ」
ルビィ「…」モジ
63ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:23:35.74ID:ZOT8RwaC
国木田「ほんとは交代ばんこで毎日図書委員が来ることになってるんだよ。でも、図書室の利用者なんかいないからって、みんなさぼっちゃうみたいなの」
ルビィ「…そうなんですか」
国木田「うん。…なんでそんなずっと隠れてるずら?」
ルビィ「…」モジ
国木田「図書室に来てくれる人がいて、おら嬉しいな。ね、一緒に本読もうよ」
ルビィ「…うん」ソロソロ…
国木田「お名前は?」
ルビィ「…黒澤ルビィです」
国木田「ルビィちゃん!きらきらした名前ずら~」
国木田「ルビィちゃんは明日も図書室に来る?」
ルビィ「たぶん」
国木田「じゃあ、明日からおらも来ようっと!」
ルビィ「交代ばんこじゃないんですか?」
国木田「どうせみんな来たがらないから、おらが代わるって言ったら喜んで譲ってくれるに決まってるずら」
国木田「ね、明日からも一緒に本読もうよ!」
ルビィ「う、うん…」
国木田「よろしくね、ルビィちゃん!」
64ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:24:07.78ID:ZOT8RwaC
そうして知り合った国木田さん。
言葉通り、次の日も図書室に行くと国木田さんが待っていました。
その次の日も、その次の日も。
やがてルビィは放課後になると毎日図書室へ行くようになって、国木田さん――花丸ちゃんと本を読むのが日課になりました。
65ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:25:23.16ID:ZOT8RwaC
ルビィ「はなまるちゃん、今日はなに読むの?」
花丸『エルマーの冒険』サッ
花丸「これ!」
ルビィ「ぶあつい…」
花丸「そんなことないよ。読み始めたら面白くて夢中になっちゃって、このくらいあっという間ずら!」
ルビィ「はなまるちゃん、これまでにどのくらい本読んだの?」
花丸「わかんないなあ。でもばあちゃんが持ってるのは全部読んじゃったから、千冊くらいなのかな」
ルビィ「せんさつ!!」
花丸「一日一冊読んだら三年で千冊だもんね。もっと多いか」アハハ
ルビィ「ごめんちょっと笑いどころがわからないかも」
どれだけ早く帰っても、お姉ちゃんが帰ってくるのは遅い。
それなら、花丸ちゃんと本を読んでから帰っても変わらない。
それに、万が一お姉ちゃんの方が早くても。
――ダイヤ『よかった…』ヘナ
ルビィ「…♡」
***
66ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:26:56.89ID:ZOT8RwaC
ダイヤ「ルビィ、最近なんだか楽しそうね」
ふと、お姉ちゃんがそんなことを言った。
ルビィ「えっ。そうかな?」
ダイヤ「ええ。学校に行くのも嫌じゃなさそう」
なんだろう。
自分ではそんなつもりなかったけれど、…でも。
ダイヤ「お友達でもできた?」
お姉ちゃんの言葉に、はっとする。
――花丸『ルビィちゃん!』
ルビィ「あ、そっか…」
ダイヤ「ん?」
ルビィ「そう、お友達ができたんだよ」
ダイヤ「あら!なんて子なの?」
ルビィ「はなまるちゃん!」
67ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:27:45.48ID:ZOT8RwaC
学校に行くのが楽しい。
そうかもしれない。
クラスが違うからお昼の間は一緒にいることはないけれど、放課後に花丸ちゃんと本を読む時間は好き。
花丸ちゃんはしっかりしてるけどのんびり屋さんだから、どんくさいルビィでも無理せずお話しできる。
うふふ…
やっと、ちゃんと「お友達」って呼べる相手ができたんだ。
嬉しいな――
ダイヤ「花丸さん。可愛らしいお名前ね」
ルビィ「――――――は?」
思考がぴたりと止まる。
今、お姉ちゃん、なんて…?
68ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:28:44.74ID:ZOT8RwaC
ダイヤ「そのうちお家に連れていらっしゃいな。ご挨拶を、」
ルビィ「つれてこないよ」
ダイヤ「…ルビィ?」
ルビィ「はなまるちゃんなんか、つれてこないもん」
ダイヤ「ルビィ。せっかくのお友達になんてことを言うの。『なんか』なんて言い方しちゃ失礼でしょう」
ルビィ「はなまるちゃんなんか可愛くないもん」
ダイヤ「可愛く…?とにかく、お友達の悪口はいけません!」
ルビィ キッ
ダイヤ「?!」ビクッ
――ダイヤ『花丸さん。可愛らしいお名前ね』
ルビィ「はなまるちゃんは、可愛くなんかない」
――ダイヤ『誰よりもあなたのことが好きよ。ルビィ』
ルビィ「お姉ちゃんには絶対会わせないから」
ダイヤ「な、えっ、ちょっとルビィ…」
ルビィ タタタタタッ バタン!
ダイヤ「ルビィ?!お待ちなさい、ルビィ!」
………………
………
69ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:29:52.75ID:ZOT8RwaC
ールビィの部屋ー
ルビィ「 」 ←布団に潜ってる
うう…やってしまった。
お姉ちゃんにあんな言い方するつもりも、花丸ちゃんのことを悪く言うつもりもなかったのに。
なんだかついかっとなってしまって、抑えられなかった。
後でお姉ちゃんに謝らなきゃ…明日花丸ちゃんにも謝らなきゃ…でも謝ってもなんのことか伝わらないよね…
やっと、無理せず付き合えるお友達ができたのに。
大切なお友達なのに。
お姉ちゃんにも紹介したいし、お家に遊びにもきてほしい。
絶対に会わせないなんて、そんなの本気じゃ――
――ダイヤ『花丸さん。可愛らしいお名前ね』
お姉ちゃんはそう思ったからそう言っただけ。
なんの意味もない言葉だって、わかってるけれど…
…でも……
ルビィ「うう~………ううう…………」
***
70ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:32:15.72ID:ZOT8RwaC
ー次の日、放課後ー
『スクールアイドルの歴史』
ルビィ モクモク…
ガラリ
ルビィ「!」
花丸「あ。ルビィちゃんもう来てたずら~」トコトコ
花丸「早かったね」
――ルビィ『はなまるちゃんは、可愛くなんかない』
ルビィ「う、うん…」
花丸「? …またその本読んでるんだね。好きだね、それ」
ルビィ「え。あ、うん。ルビィ、スクールアイドル好きだから…」
花丸「そうなんだね~」
花丸「ところで、すくーるあいどるって、なんずら?」
ルビィ「えっ?!」バッ
花丸「えっ?!」ビクッ
ルビィ「はなまるちゃん、スクールアイドル知らないの?!」
花丸「う、うん…あの、図書室では静かに…」
ルビィ「ルビィたち以外誰もいないから今は平気だよ!!」
花丸「うん、平気かもしれないけど、だとしてもそれを言っていいのは図書委員だけだと思うよ」
71ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:33:22.22ID:ZOT8RwaC
ルビィ「スクールアイドルっていうのはね、高校生アイドルのことなんだよ!ほらこれ!」ササッ
花丸「高校生アイドル…」ジッ
『始まりのスクールアイドル A-RISE(UTX)』
『スクールアイドルが国内500組を突破』
『国立音ノ木坂学園 スクールアイドル μ'sに密着!』
ルビィ「スクールアイドルは学校の名前を背負って活動するんだよ!だからね、素人とはいっても覚悟が必要だし、どのグループも本気でやるからとっても輝いてるの!」
花丸「へえ~」シゲシゲ
花丸「これはなんて読むの?」
ルビィ「アライズだよ」
花丸「こっちは?」
ルビィ「ミューズ!」
花丸「みんな都会的で未来的なんだねえ」
花丸「東京にはこんなのがあるんずらか~」ホエー
ルビィ「うふふ…内浦にもいるんだよ、スクールアイドル」
花丸「え?そうなの?!」
ルビィ「うん。山の上の浦の星女学院にね。グループ名はまだ決めてないって言ってたけど」
花丸「ってことは結成したばっかりずら?よく知ってるね」
ルビィ「えへへ…だって、ルビィのおねいちゃんのグループなんだもん!」
72ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:34:41.37ID:ZOT8RwaC
花丸「お姉ちゃん?ルビィちゃん、お姉さんがいるの?」
ルビィ「いるよ。とっても綺麗で頭も良くって優しいの!」
花丸「はーっ…それは確かにアイドルさんに向いてる感じがするね」
ルビィ「うん!そのうちはなまるちゃんも会いに…」
――ルビィ『お姉ちゃんには絶対会わせないから』
ルビィ「…っ」グッ…
花丸「ルビィちゃん?」
花丸「…」ジッ
花丸「あ!」
ルビィ「うゆ?」
花丸「ルビィちゃんのお姉さんって、ダイヤさんか!」
ルビィ「えっ。はなまるちゃん、おねいちゃんのこと知ってるの?」
花丸「そりゃそうだよ。内浦に住んでて黒澤家のダイヤさんを知らない子なんかいないずら。あ~、苗字ですぐに気付けたよね…恥ずかしいなあ」
ルビィ (そっか、お姉ちゃん町内の行事とかに顔出すから…)
花丸「そう言われてみると、確かに似てるもんね」
ルビィ「えっ?ルビィとおねいちゃんが?!」キラ
花丸「へ?う、うん…髪の印象もそうだけど、目元とか顔立ちが…」
ルビィ「え~…やだあ…」// テレテレ
花丸 (ええええ…こんな嬉しそうなことあるの…)
花丸 (姉妹で似てるのってそんなに嬉しいことなんだ…)
花丸「姉妹揃って美人さんなんて羨ましいね」
ルビィ「ええ?ルビィはそんなことないよ!」アセアセ ブンブン
花丸 (確かに美人というよりは可愛い方かも) クス
73ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:36:19.91ID:ZOT8RwaC
花丸「それにしても、ダイヤさんなら、とっても人気が出そうだね」
ルビィ「! 人気が…?」
花丸「うん。だって美人だし、きっとファンなんかもたくさんできるずら!」
ルビィ「…」
――ファン『ダイヤさん!いつも応援してます!』キャー
――ダイヤ『ありがとうございます。皆さんの応援がわたくしの一番の力ですわ』ニコッ
ルビィ「……っ」ギリ…
花丸「おら、アイドルなんて全然わかんないけど…ダイヤさんだったら見てみたいな~。きっとすぐにトリコになっちゃう」
ルビィ「!」
――ダイヤ『花丸さん。可愛らしいお名前ね』
ルビィ「…だめ」ボソ
花丸「え?なんずら?」
ルビィ「おねいちゃんの応援はしないで」
花丸「え?な…なんで?」
ルビィ キッ
ルビィ「はなまるちゃんはおねいちゃんの応援はしないで!!」
花丸 ビクッ
ルビィ「おねいちゃんは…おねいちゃんはルビィだけの…」ブツブツ
花丸「ど…どうしたの、ルビィちゃん…」
ルビィ ハッ
花丸「…っ」ビク…
ルビィ「あ、あの、ごめん、ルビィ…」オロ
ルビィ「ごめんね!今日は帰るっ!」バッ
花丸「あっ、ルビィちゃん!」
ガラッ タタタタ…
………………
………
74ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:37:21.59ID:ZOT8RwaC
ルビィ「はっ、はっ、はっ、はっ」タタタ…
――果南『うん!ダイヤの書いた歌詞はいいね。こりゃ私たちのグループの代表曲になるよ』
ルビィ「……っ、はあっ…はあっ…」タタタ…
――鞠莉『ンー、一番ダンス映えするのはやっぱりダイヤねー。線も細いし女性らしいし… leader はダイヤに決まりね!』
ルビィ「はあ…っ、はあ……っ、はあ………っ」タタ… ピタッ
――花丸『ダイヤさんなら、とっても人気が出そうだね。きっとすぐトリコになっちゃう』
ルビィ「………っ、………………」ゼエ…ゼエ…
――にこ『アイドルに色恋なんて厳禁!だって、アイドルの恋人はファンのみんななんですもの』
――ツバサ『みんな!今日も最後までついてきてくれてありがとう!愛してるわ!』
――穂乃果『私、自分のこととか将来のこととか全然考えてなくって。だって今、目の前のアイドルで精一杯なんです。考えてないっていうか、だから、考えられないっていう方が正しいのかも』
――海未『みんなのハート、撃ち抜くぞ~っ♡』
ルビィ「うう…」ゼエゼエ…… …ギリリ
75ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:38:11.56ID:ZOT8RwaC
お姉ちゃんがスクールアイドルを始めたことは、嬉しい。
ずっと一緒に憧れてきたことだから。
ここからお姉ちゃんの物語が、そしてあと二年もすれば私も一緒に二人の物語が始まっていく。
ずっとずっと楽しみにしてきたことで。
だけれど。
ルビィ「おねいちゃんが…遠く、なっちゃう…」
ファンなら誰でも知ってること――アイドルはみんなのもの。
それはつまり、お姉ちゃんがルビィだけのお姉ちゃんではなくなるということ。
76ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:39:18.04ID:ZOT8RwaC
気付いていなかったんだ。
スクールアイドル黒澤ダイヤの始まりが、ルビィとお姉ちゃんの絆の終わりだってことに。
そんなことにも気付かないで、憧れて楽しみにして――ばかみたい。
お姉ちゃんがルビィだけのものでなくなるのなら、そうしてまで誰がスクールアイドルなんかやりたいものか。
いらないいらない。
お姉ちゃん以上に大切なものなんか、ルビィには、ない。
ルビィ「…」
ルビィ「…っはあ……」ユラ…
ルビィ「…帰ったらおねいちゃんに言お」トコ…トコ…
きっと同じ気持ちのはずなんだから、お姉ちゃんもルビィが言い出すのを待ってくれてるはずなんだ。
みんなの手前、一度決めたことを取り下げるなんて、黒澤ダイヤにできるはずがないから。
帰ったらルビィがちゃんと言うんだ。
スクールアイドルを、辞めて。
ってね。
………………
………
77ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:39:59.47ID:ZOT8RwaC
『ダイヤの部屋』
ルビィ「…」フウ
コンコン
ダイヤ「はい、います。手が放せませんので、入っていただいて構いませんわ」
ガラリ
ルビィ「おねいちゃあ」
ダイヤ「あら、ルビィだったの?」カリカリ
ルビィ「うん」
ダイヤ「ノックなんかするから、てっきりお母さまだと思ったわ。お入りなさいな」カリカリ
ルビィ「うん」
78ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:41:06.33ID:ZOT8RwaC
部屋に入ると、お姉ちゃんは机に向かっていた。
手を放せないとの言葉通り、なにか一生懸命にペンを走らせている。
ルビィ「なにやってるの?」
片耳だけイヤホン。
ダイヤ「曲の歌詞をね、メモしてるのよ」カリカリ
ルビィ「そっか。じゃあ待ってる」テテテ… ポフ
ベッドに座って、そんな後ろ姿を眺める。
やがてペンが止まり、お姉ちゃんがふーっと大きく息を吐く。
ルビィ「終わった?」
ダイヤ「ええ、お待たせ。終わったわ」
ルビィ「見てもいー?」
ダイヤ「いいですわよ」ハイ
受け取った紙には、最近よく聞くスクールアイドルグループの名前と、確か再来週CDが発売になるという曲のタイトル、そして殴り書きにも近い字で綴られた歌詞らしき文章。
ルビィ「…」ジッ
ダイヤ「汚いから、あんまりまじまじ見られると恥ずかしいわ」
ルビィ「おねいちゃんの走り書きなんて滅多に見ないから、ルビィ結構好きだよ」クス
ダイヤ「も、もう!からかうのはおやめなさいな。そんな字、ルビィ以外には見せられませんわ」
79ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:42:10.33ID:ZOT8RwaC
ルビィ「ルビィにも片方ちょうだい」
ダイヤ「コンポに切り替える?」
ルビィ「ううん。イヤホンがいい」
ダイヤ「どうぞ」クス
イヤホンを受け取って、耳に。
予想の通り、スクールアイドルをメインに取り扱っているラジオが流れてくる。
ルビィ「こうやって一緒にラジオ聴くの、久し振りだね」
ダイヤ「そうね」
コンポを持っていなかった頃は、一つのイヤホンを分け合って聴いていた。
立体音響は半分しか入ってこないし、音の拾いも悪くなるけれど、こうやってラジオを聴くのは好きだった。
世界でたった一人だけ、お姉ちゃんと同じ時間を共有していることを実感できたから。
ラジオ『………………』
ダイヤ「…ふふ。………ああ、そうそう」ウンウン
ルビィ「…」グ…
80ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:44:01.60ID:ZOT8RwaC
ルビィ「ねえ、おねいちゃあ」
ダイヤ「うん、なあに?」
ルビィ「スクールアイドル…始めて、よかった?」
ダイヤ キョトン
ルビィ「どうなのかなって。ずっと憧れてきたことに、とうとう踏み出した気持ち」
ダイヤ「…うふふ」
ダイヤ「聞かなくたって、わかっているくせに」
ルビィ「…」
ダイヤ「始めてよかった」
ダイヤ「これからはスクラジもラブライブ!も他人事じゃない。μ'sもA-RISEもただ憧れるだけの相手じゃない。胸がね、どきどきして止まらないの」
ダイヤ「こんなの――最高以外のなんでもないわ」
ルビィ「……っ」
ルビィ「…そう、だよね」
ダイヤ「ええ。一つだけわがままを言うのなら、隣にあなたがいないことだけが不満だけれどね」
ダイヤ「でも、だからって待ちませんわよ。スクールアイドルがスクールアイドルでいられる時間は限られている。その中で精いっぱい輝こうとするからこそ、映し出せる光がある」
ダイヤ「早く高校生にならないと、お姉ちゃんルビィのことどんどん置いていっちゃうわよ――なんてね♪」クス
ルビィ「っ!!」
ルビィ「…」ギリ…
ルビィ「…あはは、困ったなあ。おねいちゃんに置いていかれちゃったら、ルビィ一人じゃ輝けないよぉ」
………………
………
81ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/27(金) 07:44:38.19ID:ZOT8RwaC
ルビィ スッ
ダイヤ「あら。お部屋に戻るの?」
ルビィ「うん。宿題やらなくちゃいけないから」
ダイヤ「そう。わからないところがあったらおいでなさい」
ルビィ「ありがとう。おやすみなさい」
ダイヤ「ええ、お休みなさいな」
………………
………