ルビィ「消せない想いの行く末」 1

8ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:33:06.00ID:/BRlhQz4

お姉ちゃんが好き。 

わたしが初めて思ったことは、それだった気がする。 

きっとそんなことはなくて、覚えてない色んなことをいっぱいいっぱい思ってきたはずだけれど。 

うーんうーんと頭を捻っても、それらを思い出すことはできなくて。 

幼かった頃のことを一生懸命に思い出そうとしても、ふと浮かぶのは、いつだってその気持ちだけ。 

わたしは座ってたっけ。 

お姉ちゃんは立ってたかな。膝立ちだったかも。 

とにかくわたしはお姉ちゃんを見上げていて、にこっと微笑む優しい瞳に、ああ――好きだなあ――なんて、思ったんだ。 

そしてわたしがその気持ちを失ったことは、これまでに一度もない。 

お姉ちゃんと喧嘩したときも、お姉ちゃん以外の誰か(たとえば花丸ちゃんとか)と仲良くなったときも。 

一度もない。 

わたしをわたしたらしめる最も太い幹のようなものがこの気持ちだということは、みんなが知ってる1たす1と同じくらい、真実だ。 

だからわたしは今日も思う。 

今日も言う。 

いつまでだって、変わらないと誓えるこの想いを。 


ルビィ「お姉ちゃん、だいすき」 

***

 

12ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:35:34.53ID:/BRlhQz4

ルビィ カリ… 

ダイヤ「ルビィちゃん」 

ルビィ「…」カリ… 

ダイヤ「ルビィちゃんは、何年生になったの?」 

ルビィ「ひゅうがくいふぃねんふぇい」カリ… 

ダイヤ「そうね。だったら、そろそろツメを噛むクセは治さなくてはね」 

ルビィ「…」カリ… 

ダイヤ「いつまでもこうしていられると思ってるの?」 

ルビィ「…だからだもん」カリ… 

ダイヤ「……」ハァ 

ルビィ「おねいちゃあ、すき」 

ダイヤ「わたくしだって。誰よりもあなたのことが好きよ」ナデ 

ルビィ「えへへ…」カリ… 

ダイヤ「………ふふ」ナデ…ナデ… 

***

 

13ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:37:01.56ID:/BRlhQz4

ルビィ「おねいちゃあ!スクラジ始まっちゃう!」ドタバタ 

ダイヤ「ゆっくりしすぎたわ!」ドタバタ 

黒澤母「家の中で走ってはいけませんよ」 

ダイルビ「「ごめんなさ~いっ!」」ドタバタ… 


ルビィ「おねいちゃあ!はいイヤホン!」サッ 

ダイヤ「こっちはラジオの接続オッケーですわ!」ササッ 

ダイルビ セイザッ 

ラジオ『…始まりました、今週のスクラジ!ゲストは人気急上昇中の…このグループです!』 

ラジオ『こんばんはーっ!私達、ラブ☆フープです!』 

ダイルビ「「ラブ☆フープ、キターーーーーー!!」」キャッキャ 

ラジオ『まさかスクラジに呼んでもらえる日が来るなんてね』 

ラジオ『ねー!スクールアイドル始めるずっと前から聴き続けてて、私達の最初の目標だったんですよ』 

ラジオ『………………』 

ルビィ「ラブ☆フープがとうとうスクラジに出ちゃったね…」 

ダイヤ「感慨深いわよね…ラブ☆フープが結成前からスクラジを目指してきたというなら、わたくしたちは結成当時から応援してきたんだもの」 

ルビィ「それに、ずっとスクラジを聴いてきたのはルビィたちだっておんなじだもん」 

ダイヤ「わたくしたちがまだ高校生でないという、ただそれだけ…」 

ルビィ「…ね、おねいちゃあ」グッ 

ダイヤ「ええ。」グッ 


手と手を重ねる。 

言葉は必要ない。 

何度も何度でも交わしてきた、お姉ちゃんとの――憧れの誓い。 

***

 

14ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:38:06.77ID:/BRlhQz4

オーイェー オーイェー オーイェー イッシンイッチョウ

オーイェー オーイェー オーイェー ホラ、マッケナイヨネ


ルビィ「くやしーなまーだのーぶらー しられーてないよのーぶらー」 

ダイヤ「♪なにもかもこれから 熱い気分」 

ルビィ「たのしーよでーものーぶらー」 ダイヤ「♪Do you know?」 

ルビィ「はりきってるんだのーぶらー」 ダイヤ「♪Do you know?」 

ルビィ「だからー」 ダイヤ「♪おいで」 ルビィ「ここでーであうー ためにー」 ダイヤ「♪Yes, I know!」 


~♪ 


カーベーハ ダイルビ「「はいはいはい!!」」 コワセールモーノサ ダイルビ「「はいはいはい!!」」 タオセールモーノサ 

ジーブーンーカーラモオト チーカーラーヲーダシテヨー 

ダイルビ「「はいはいはい!!」」 コワセールモーノサ ダイルビ「「はいはいはい!!」」 タオセールモーノサ 

ユーキデミーラーイーヲミーセテー 

オーイェー オーイェー オーイェー ダイルビ「「うん 負っけないから!!」」 

……………… 

………

 

15ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:39:12.19ID:/BRlhQz4

ダイルビ「「へあ~~~…」」ヘナヘナ 

ルビィ「燃え尽きたね~…」 

ダイヤ「そうね~…文化祭ライブは何度やっても最高だわ…」 

ルビィ「ルビィね、おねいちゃんとμ'sの歌うたってるとき、とっても幸せ」 

ダイヤ「わたくしもよ。こんなにも同じ温度で歌えるのはルビィだけだもの」 

ルビィ「おねいちゃあ、μ'sのことになるとちょっとおかしいもんね」 

ダイヤ「誰がおかしいのですか」 

ルビィ「でもルビィはこっちのおねいちゃんも好きだよ」スリ 

ダイヤ「お姉ちゃんはいつだって変わらないけれど、ありがとう」ナデ 

ダイヤ「そういえばルビィ」 

ルビィ「うゆ?」 

ダイヤ「あなたまた『出会う』まで歌ったでしょう」メッ 

ルビィ「あー…」 

ダイヤ「『ここで』『出会う』『ために』はそれぞれ別のフレーズなのだから、あなたが『ここで』を歌うときは『出会う』をお姉ちゃんに譲ってっていつも言ってるわよね?」 

ルビィ (始まったぞ

ダイヤ「今日だってわたくしが咄嗟に合わせたからよかったものの、あんな風に打合せと違うことをされると一歩間違えばライブが失敗しかねないのよ」 

ダイヤ「本当に仕方のない子なんだから…」ハァ 

ダイヤ「もう一度やるわよ」ピッ 


オーイェー オーイェー オーイェー イッシンイッチョウ

オーイェー オーイェー オーイェー ホラ、マッケナイヨネ


ルビィ「くやしーなまーだのーぶらー しられーてないよのーぶらー」 

ダイヤ「♪なにもかもこれから 熱い気分」 


~♪ 

***

 

16ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:40:17.62ID:/BRlhQz4

ー約一年後ー 


ダイヤ「ただいま帰りました」 


タタタタ… 


ルビィ「おねいちゃあ!おかえりなさいっ!」ピョンッ ダキッ 

ダイヤ「わっ…とと。ただいま、ルビィ」ギュ 

ルビィ「おねいちゃんのにおい~」スリスリ 

ダイヤ「もう。お姉ちゃんまだ鞄も置いてないのに」 

ルビィ「だって学校にいる間おねいちゃんに会えないんだもん」プクー 

ダイヤ「だってじゃありません」クス 

ダイヤ「クラスにお友達はできたの?」 

ルビィ「うゆ…まだ…」 

ダイヤ「あなたはとっても良い子なんだから。みんな仲良くしてくれるわよ」

 

17ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:41:28.59ID:/BRlhQz4

ルビィ「でもルビィ、おねいちゃんがいればそれでいいから…」 

ダイヤ「そのわたくしがいないんだから、お友達を作らなくっちゃ」 

ルビィ「でもぉ…」 

ダイヤ「でもじゃありません」クス 

ダイヤ「ほら、あの子たちは?石野さんと吉木さんでしたっけ」 

ルビィ「クラスはなれちゃったからあんまり会わない…」 

ダイヤ「あらら。せっかく仲良くなれたのにね」 

ダイヤ「また新しくお友達を作らなくっちゃね」 

ルビィ「もうやだぁ」 

ダイヤ「やだと言っても仕方がないでしょう。お弁当も一人で食べて、教室移動も一人でするつもり?」 

ルビィ「そんなの気にしないもん」 

ダイヤ「あと二年間も?」 

ルビィ「うう…」ピ… 

ダイヤ「高校に入ってからも、わたくしと一緒にいられるのは一年間だけなのよ。残りの二年間、またおんなじように一人で過ごすの?」 

ルビィ「うううう……」グズ…

 

18ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:42:54.36ID:/BRlhQz4

ダイヤ「よしよし、泣かないの」ナデ 

ダイヤ「みんな、最初に話し掛けるのは怖いのよ。ルビィだけじゃなくて、みんな同じ。だからこそ、勇気を出して話し掛けてくれたら誰だって嬉しいし、お友達になりたいって思うの」 

ルビィ「…………」 

ダイヤ「頑張れるわね?」 

ルビィ「……」コク 

ダイヤ「さすが我が妹。お姉ちゃんも応援してるからね」 

ルビィ「うん…がんばる!」 

ダイヤ「よーし。それじゃ、一緒にμ'sのライブを観ましょうか!今日はどれにしましょうね~」 

ルビィ「ルビィあれ観たい!凛ちゃんの!」 

ダイヤ「ファッションショーの?あれ好きねえ、ルビィは」 

ルビィ「うん!はやく観よー!」グイグイ 

ダイヤ「もう。引っ張らなくたって、お姉ちゃんは逃げませんわよ」 

***

 

19ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:43:57.77ID:/BRlhQz4

カラリ… 


ルビィ「おねいちゃあ。いっしょに寝ていー?」 

ダイヤ「あらルビィ」 

ダイヤ「構わないけれど、わたくしはもう少し起きてるわよ?」 

ルビィ「お勉強?」 

ダイヤ「そうよ」 

ルビィ「えー。おねいちゃんならだいじょうぶだよ。いっつも一番だったもん」 

ダイヤ「中学生の頃はね。高校に入ってからどんどん難しくなっていくからね、きちんと復習しておかないと」 

ルビィ「どのくらいするの?」 

ダイヤ「そうね…あと一時間くらいかしら」 

ルビィ「じゃあ待つ!」ボフン 

ダイヤ「ええ?構わないけれど…眠くなったら寝るのよ」 

ルビィ「うん!本読んでるね」 

ダイヤ「はいはい」 

ダイヤ「…………」カリカリ 

ダイヤ「…………」カリカリ 

ダイヤ「……」チラッ 

ルビィ スピー 

ダイヤ「…ふふ、ほらね」 

ダイヤ「まったく。すぐわたくしの布団を占領するんだから」 

ダイヤ「お休みなさいな、ルビィ」チュ

 

20ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:45:06.16ID:/BRlhQz4

ルビィ「ふあ…」パチ… 

ルビィ「んあ。ここどこ…?」モゾモゾ キョロ 

ダイヤ スー 

ルビィ「あ。そっか、ルビィまたおねいちゃんのお布団で…」 

ダイヤ スー 

ルビィ「…えへへ」 

ルビィ モゾモゾ 


ギュ 


ルビィ「おやすみなさい、おねいちゃあ」 

ルビィ スピー 

***

 

21ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:46:09.69ID:/BRlhQz4

ドンナーアーシターガー 

マッテールンダローナンテネボクハー ボクタチハー 

スコシ、ズツ、テサ、グリシテッター 


ルビィ「はーげーまーしあってー ぶーつーかーりあったーときでさえー」 

ダイヤ「♪わかってた」 

ルビィ「おん、な、じー ゆーめをみてーるーとー」キャッキャ 

ダイヤ「♪目指すのはあの太陽……あら、ルビィ。間もなくお稽古の時間になるわ」ハッ 

ルビィ「あっ…」ハッ 

ルビィ「わすれてたー!すぐ準備してくるから!」パタパタ 

ダイヤ「はいはい」 

ダイヤ (どうもあの子は稽古を忘れがちね) フウ… 

ルビィ「おまたせ、おねいちゃあ」テテテ 

ダイヤ「では行きましょうか」スッ 

ルビィ「うん!」

 

22ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:47:20.14ID:/BRlhQz4

ダイヤ「今日はなにをするの?」 

ルビィ「課題曲の大詰めやるってゆわれた」 

ダイヤ「そう。原本先生のお持ちになる課題曲は難しいわよね」フフ 

ルビィ「うん。でもおねいちゃんなら楽勝だったでしょ」 

ダイヤ「そんなことないわよ。お姉ちゃんだって時間が掛かったわ」 

ルビィ「うそだー…おねいちゃんの方は、集まりの練習?」 

ダイヤ「そうよ。この時期だからね」 

ルビィ「どう?」 

ダイヤ「特に不安もないわよ。もう毎年のことだもの」 

ルビィ「すごいなあ…あんなたくさんの人の前で弾くなんて、ルビィには絶対できないもん…」 

ダイヤ「ルビィだって、立奏ができるようになったのでしょう?」 

ルビィ「そうだけど、立奏なんておねいちゃんは六年生でできたのに…」 

ダイヤ「…ふふ」 

ダイヤ「あなたにはあなたのペースがあるのだから、わたくしと比べる必要なんかありませんわ」

 

23ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:48:25.08ID:/BRlhQz4

ダイヤ「さあ、行ってらっしゃい」 

ルビィ「うん」 

ルビィ「おねいちゃんはなにするの?」 

ダイヤ「そうねえ。ライブの続きを観ちゃおうかしら」 

ルビィ「だーめーっ!ルビィのお稽古終わったら一緒に観よう!それまで待っててー!」 

ダイヤ「ふふ、冗談よ。勉強でもしてるつもり。終わったら一緒に観るって約束するから、お稽古を一生懸命やってきなさい」 

ルビィ「はあい」 

ルビィ「…おねいちゃんとお稽古の時間一緒だったらよかったのに」 

ダイヤ「え?」 

ルビィ「そしたらもっとたくさんおねいちゃんといられるのになって…」 

ダイヤ「ルビィ…」 

ダイヤ「先生が違うのだから仕方ありませんわ」ポン 

ダイヤ「その分、一緒に過ごせる時間をもっともっと大切にしていきましょう。ね?」 

ルビィ「うん…」 

ダイヤ「さ、ほらお行きなさい。先生をお待たせしてはいけませんから」ナデ 

ルビィ「はあい。いってきます」テテテ… 

***

 

24ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:49:16.67ID:/BRlhQz4

お姉ちゃんと遊んで、歌って、お話しして。 

お姉ちゃんに甘えて、頼って、守られて。 

お姉ちゃんが好きで、好きで、大好きで。 

ルビィだけの大切なお姉ちゃん。 


それは、ずっと変わらないと思っていました。 

***

 

25ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:50:56.71ID:/BRlhQz4

アイセー ヘイ! ヘイ! ヘイスターダッ

ヘイ! ヘイ! ヘイスターダッ 

~♪ 


ルビィ「うぶげのことりーたちーもー いつかそらにはばたくー」 

ルビィ「おおきなつよいーつばーさーでー と、ぶ!」キャッキャ 

ダイヤ ジィッ… 

ルビィ「……?」 

ルビィ「おねいちゃあ?」 

ダイヤ ハッ 

ダイヤ「ああ、なあに?ルビィ」 

ルビィ「なんだかぼーっとしてたから…」 

ダイヤ「ふふ。そう見えた?ぼーっとしてたんじゃなくて、じーっと観てたのよ」 

ルビィ「今日は歌い狂わないの?」 

ダイヤ「わたくしは歌い狂ったことなどありません」 

ダイヤ「ちょっとね、ダンスとか…しっかり見たくて」 

ルビィ「…?そういう日もあるよね」ウンウン 

ルビィ「じゃあ今日はルビィもダンスしっかり見る日!」

 

26ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:52:02.83ID:/BRlhQz4

ルビィ ジィッ… 

ダイヤ ジィッ… 


アシタヨ カ、ワ、レ! キボオニ カ、ワ、レ


ルビィ ウズ… 


マブシーヒカーリーニー テラサーレテーカワレー 


ルビィ「すたーっ!」バッ 

ダイヤ ビクッ 

ルビィ「かなしみにーとーざされーてー なくだけのーきーみじゃなーいー」キャッキャ 

ダイヤ「ふふ…」 


キイトー キイトー キミノー ユメノー 

チカラー イマヲー ウゴカスチカラー 


ダイヤ ジィッ… 

ダイヤ「なるほど…」 

***

 

27ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:53:20.54ID:/BRlhQz4

コンコン カラリ 


ダイヤ「ルビィ」 

ルビィ「なーに?」 

ダイヤ「『月刊スクールアイドル』何冊か借りてもいいかしら」 

ルビィ「うん、いーよ。どれがいい?」 

ダイヤ「そうねえ…あれ何月号だったか覚えてる?あわじきんちゃくともちピーポーが特集されてたの」 

ルビィ「あわじきんちゃくさんは去年の6月号で、もちピーポーさんは今年の2月号だよ」 

ダイヤ「ありがとう。それと、うーん……ああ、この辺なんか良いかも」ヒョイヒョイ 

ルビィ「………」ジッ 

ルビィ「みんな三人組のだね」 

ダイヤ「ええ、そうね。参考にしたくて」ンー 

ルビィ「参考?なんの?」 

ダイヤ ハッ 

ダイヤ「あ、えっと、その…授業の課題でね、音楽と体育の」 

ルビィ「そっかあ!がんばってね!」 

ダイヤ「ええ、ありがとう。借りていくわね」 

ルビィ「は~い」 


カラリ… パタン 


ルビィ「~♪」 

ルビィ「…音楽と体育の??」ン? 

***

 

28ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:54:51.43ID:/BRlhQz4

梅雨。 

ルビィのあんまりすきじゃない季節。 

しとしと、しとしと。 

毎日、音を立てずに雨が降り続けます。 

クラスに、何人かお友達ができました。 

お弁当を一緒に食べて、教室移動を一緒にするお友達が。 

でも、どんくさいルビィはいっつも会話についていけなくて、移動にもついていけなくて、相づちを打つのも隣に並ぶのもやっとです。 

正直、つかれます。 


ルビィ「おねいちゃんだったら、お話しするのも歩くのも合わせてくれるのにな」 


居間で一人、お姉ちゃんの帰りを待つ時間。 

学校は楽しいことばっかりじゃない。 

どちらかと言えば楽しくないことの方が多いようにさえ思います。 

それでも、学校に行かなくなることだけはしたくない。 

たとえば嫌いな教科しかない日でも、たとえばお友達と気まずくなった次の日でも、それだけは。 

だって、わたしは黒澤ルビィ。 

黒澤ダイヤの妹だから。 

わたしが情けないと、お姉ちゃんが責められる。 

それだけは絶対に嫌だから。

 

29ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:56:11.54ID:/BRlhQz4

それに、学校があんまり楽しくないことなんて、実はルビィにとってそこまで大きな問題じゃないのです。 

家に帰ればお姉ちゃんがいる。 

そう思うだけで、昔から国語だって算数だってへっちゃらでした。 

同じ学校に通っていたときは、毎日お姉ちゃんの教室の前で待って、一緒に帰っていました。 

二つも学年が違うから、一時間や二時間待つことだってよくあったけれど、そんなのは全然たいしたことじゃなくて。 

教室から出てきたお姉ちゃんに飛び付く瞬間が、なによりもなによりも幸せでした。 

お姉ちゃんが中学校や高校に上がってしまっても、それは変わらない。 

こうやって居間でお姉ちゃんが帰ってくるのを待って、そして、一番に「お帰りなさい」を言う。 

お姉ちゃんは、用事があってもいつでもまっすぐ帰ってきて、必ず一度帰ってきて、「ただいま」と言ってくれる。 

ルビィが待っているのを知っているから。 

その優しさが嬉しくて、そんなお姉ちゃんが大好きで。 

ねえ、お姉ちゃん。 

ルビィはずっとお姉ちゃんのことが大好きだよ――お姉ちゃんも、同じだよね…… 

……………… 

………

 

30ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/07/26() 21:57:16.40ID:/BRlhQz4

ルビィ「…んぁっ」 


からだがビクリと跳ねて、目を覚ます。 

うとうとしちゃっていたみたいです。 


ルビィ「…おねいちゃんは?」 


慌てて時計を見ると、六時になろうとしている。 

外は雲と雨で明るくはないけれど、まさか朝方なんてことはないはずで… 

玄関へ行き、靴を確かめます。 


ルビィ「…ない」 


まだ帰ってきていないのか、それとも帰ってきて出かけてしまったのか。 

帰ってきたなら居間のわたしに気付かないはずがないし、気付いたなら声を掛けてくれないはずがない。 

前に一度、それでわたしがひどく拗ねちゃったことがあるから。 

なにか学校で用事があって、たとえば先生にお願い事をされちゃったとか、お友達にお勉強を教えてあげてるとか、どうしても断れない用事があって、遅くなってる…ん、だよね。 

だって高校生だもん。色んなことがあるはずだもんね。 


ルビィ「おねいちゃあ…」 


ぐずぐずとした空は、雨のにおいだけを強く振り撒いています。 

……………… 

………