222ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:17:01.83ID:uP/hJHBh
last.今、贈りたい『ありがとう』
ー桜内家ー
梨子「ただいま」
果南「お邪魔します」
桜内母「お帰りなさい、梨子ちゃん。いらっしゃい、果南ちゃん」
果南「お世話になります」ペコ
桜内母「また背伸びたみたいね」
果南「そうですか?そう?」
梨子「言われてみたら、そうかも。いつも一緒にいるとわからなくなりますね」
果南「そうだね」
桜内母「ふふ。7時くらいにはお夕飯にするからね」
梨子「うん」
果南「手伝いますよ」
桜内母「いいわよ。ゆっくりしてなさい」
果南「え、でも…」
梨子「はいはい、じゃゆっくりしてるね。上行こ、果南さん」グイ
果南「え、あ、ちょっと、でも泊めてもらうのに…」
梨子「いいから」グイグイ
桜内母「ごゆっくり~」
………………
………
223ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:18:07.28ID:uP/hJHBh
♪♪♪
ー梨子の部屋ー
果南「梨子ってばたまに強引なんだもんなー。いいじゃん、晩ごはん作るのなんて手慣れたもんなんだから、ちゃちゃーっとやっちゃえば」
梨子「いやそれやるの私じゃないですか」
果南「私も傍にいるよ」
梨子「いいんですよ。ああいうのは、お母さんがやりたくてやってるんですから」
果南「そうなの?」
梨子「そうなの」
梨子「…」
果南「…」
少し沈黙。
下にお母さんがいると思うと、二人きりの時間がなんだか気恥ずかしいかも。
梨子「なにしましょっか。もうこっちにはほとんどなにもありませんけど、」
果南「ねえ」
果南「誉めて」
その声に振り向けば、頬を染めて、視線は逸らされて。
224ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:19:09.43ID:uP/hJHBh
果南「あのね、頑張ったんだ、私。今回もいっぱい梨子に頼っちゃって、やめたいって思ったときもあったけど、ちゃんと受検まで辿り着けた。
果南「受検会場ね、高校生ばっかりだったんだ。しかもみんな解くの早くて、私が終わらない中どんどん終わって出ていっちゃうし、わかんないとこなんかなかったみたいなカオしてさ。
果南「受検が終わってからも、大丈夫だって言い聞かせてたけど、ほんとはずっとドキドキしてて、合格しててほしいって、落ちてたらイヤだって、ずっと思ってて。
果南「梨子とか、他の人とかにしてみれば、きっとなんてことない資格でさ。合格して当然みたいな感じなのかもしれないけど、私は精いっぱいだったし、さっきからね、今もね、ずっと、こんなんでもすっごく嬉しいって思ってて、
果南「ねえ、梨子。誉めて――
梨子「果南さんっ」
果南「わっ?!」
225ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:19:56.06ID:uP/hJHBh
飛び付いた。
そのくらいのつもりとかじゃなくて、純粋な心の勢いで果南さんに飛び付いた。
勢い余ってベッドに押し倒す形になっちゃったけれど、そんなのどうだっていい。
強く、強く、この気持ちがそのまま伝わるようにって、強く抱き締める。
梨子「果南さん」
果南「梨子」
梨子「すごいよ。すごい。本当にすごいです」
果南「梨子…」
梨子「よく頑張りましたね」
果南「梨子ぉ…っ」
梨子「合格、おめでとう――――!!」
226ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:21:13.38ID:uP/hJHBh
ぎゅううううっと、回された腕に力が込められる。
いつでも笑顔で、どこか掴み所がなくて、なんでも卒なくこなしちゃう。
そんな風に見られがちな果南さんの心の声を、誰よりも近くで聞くことができるこの場所が、嬉しくて――嬉しくて。
ここまで手を繋ぎっ放しで帰ってきたこととか、心なしかいつもより饒舌だったこととか、頬の紅さとか、色んなことが頭の中を駆け巡って、愛おしくて堪らなくなる。
やがてふわりと腕の力が抜けて、果南さんと視線を交わす。
梨子「自分のことみたいに…ううん、それ以上に、すっごく嬉しい」
果南「えへへ…頑張ってよかったよ」
すん、と鼻をこすりつけて甘えてきたり。
前髪を掻いて額に口付けを落としたり。
二人きりの部屋、そっと頬に手をあてがえば、もう私たちを遮るものなんてなにもなくて――
――千歌ちゃんと目が合った。
千歌「はわー…なんだかセクシー…あ、だいじょぶ。続けて」ドゾ
梨子「ーーーーーーーーーー~~~~~~~~~~っっっっ???!!!」
………………
………
227ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:23:35.66ID:uP/hJHBh
∬∬∬
千歌「いやー、チカまでごしょーばんにあずかっちゃって」パクパク
果南「言葉と食の進みが噛み合ってないぞー」ズズ…
桜内母「たくさん食べてね。果南ちゃんも千歌ちゃんも」
千歌「遠慮なく!」
果南「ありがとうございます。ん、おいし。さすが、梨子の先生」
桜内母「梨子はさぼらずにご飯作ってる?」
果南「はい。作ってくれるたびに私の好きな味になっていくんですよ」
桜内母「あらあら♡」
千歌「えー、いいなー。チカも梨子ちゃんのごはん食べたーい」
果南「いいよ、今度は晩ごはん食べにおいでよ。曜とかも誘ってさ」
千歌「わーいっ、行く行くー!」
果南「ところで、」
桜内母「梨子ちゃんはいつまで拗ねてるのかしら」
梨子 プクーッ
千歌「チカ悪くないよ。窓開けたらたまたま梨子ちゃんたちが」
梨子「いいいい言わなくていいからっ!!」// アワワワ
桜内母「あらあら♡」
228ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:25:50.74ID:uP/hJHBh
梨子「もーっ!もーっもーっ千歌ちゃんったらもーっ!」パクパクモグモグ
梨子「いるならいるって言ってよ!」フンス
千歌「無茶言わないで」
果南「毎日報告じゃん」モグ
梨子「だいたい果南さんはなんでそんなに平然としてるんですか?!」
千歌「うわ矛先が」
果南「チカだし。キスくらいなら別に見られるの初めてじゃないし」
梨子「ちょっ!言わないで!」チラッチラッ
桜内母「ほぼ自白よ梨子ちゃん」ニコニコ
梨子「もーやだ…恥ずか死ぬ…」
果南「んー」
果南「私とスキンシップ取ってたのそんなに恥ずかしいかね」
梨子「?! ちがっ、そういうことじゃないです!」バッ
229ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:28:39.83ID:uP/hJHBh
梨子「果南さんと一緒にいるのが恥ずかしいってことじゃなくて、それをお母さんとか千歌ちゃんとかに見られるのが――ううん、そういうわけでもなくって、あのあの」アウアウ
千歌 ニコニコ
桜内母 ニコニコ
梨子 アウアウ アワアワ ハワワ…
果南 フフ…
くるくる表情が変わる。
優しくて大人っぽかったり、拗ねて子どもっぽかったり、照れて…なにっぽいのかよくわかんなかったり。
そんな梨子の素直な表情に、私はいつも救われてるんだよ。
ありがとう。ごめんね。私に任せて。一緒に頑張ろう。
こんなにたくさんの強い気持ちをくれるのは、世界中できっと梨子だけだから。
私は明日も、梨子の隣で歩いていきたい。
ねえ、梨子。
これからも私を支えて。これからも私に支えさせて。
大好きだよ――ね♡
last.今、贈りたい『ありがとう』 終
かなりこ、ふたりぐらし。 終
230ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:29:58.93ID:uP/hJHBh
本編は以上です
以下、蛇足となりますが、書いたものの本編には含めなかったシーンを少し投下します。
別の世界線か、別の時間軸だとでも思っていただければ。
※ 雰囲気が違うものもあるため、ここで読むのをやめるのも手です。
231ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:32:13.56ID:uP/hJHBh
♪h1.衝動
ー浦の星、二年教室ー
果南「梨子ー」ガラ
昼休み。
お昼ごはんを済ませて千歌ちゃんと曜ちゃんと談笑していると、果南さんが訪れた。
梨子「あら、果南さん」
千歌「果南ちゃーん」ノシ
曜「こんにちは、果南ちゃん」
果南「よ。三人とも」
梨子「どうかしましたか?」
千歌「梨子ちゃんに会いにきたんでしょ」
曜「ラブラブしにきたんでしょ」
果南「なんなのさ」
232ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:33:41.07ID:uP/hJHBh
果南「別に、なんでもないよ。ただ梨子のピアノ聴きたくなったから来ただけだよ」
梨子「へ?」//
果南「ね、聴かせて。音楽室行こ」グイ
梨子「え、あ、あの、はい、いいですけど…」アワワ
梨子「えっと、じゃあ、また後でね」
そのまま、私の手を取ったまま。
千歌「…なんでもなくないじゃん」
曜「…ラブラブしにきたんじゃん」
♪h1.衝動(たまにあります) 終
233ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:34:46.91ID:uP/hJHBh
∬h1.音楽は聴く人がいて完成する
ー浦の星、音楽室ー
果南「たのもーっ」ガラ
梨子「果南さん、音楽室では静かに」
果南「えー、いいじゃん。誰もいないんだし」
梨子「そうですけど」
果南「ほら梨子、見える?あれがピアノだよ」
梨子「見えます。知ってます」
果南「今からおまえはあれを弾くんだぞ~」
梨子「弾くなんて言ってませんけど」
果南「え?!弾かないの?!じゃあなんでついてきたのさ?!」
梨子「果南さんが勝手に引っ張ってきたんじゃないですか」
果南「ええ…弾かないの…」シュン
梨子「…」
梨子「ふふ。冗談ですよ」
そう言っていたずらっぽく笑うと、梨子はするりと私の手をほどいてピアノへと駆け寄った。
まったく、おちゃめな後輩だ。
先輩をからかうなんていい度胸をしてるね。
234ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:35:51.24ID:uP/hJHBh
梨子「座ってください。なにが聴きたいですか?」
果南「ん?んー、あれ。チョコパン。ショコラパン?」
梨子「……ショパンですか?」
果南「そうなのかな」
梨子「金輪際、果南さんの前でショパンは弾かないことを決意しました」
果南「えー!なんでさー!」
梨子「果南さんには童謡で充分です」ポロン…
果南「ちょっと!これでも一応スクールアイドルやってるんだよ!耳の肥えた私に今さら童謡なんて――お、この曲なかなかいいね」
梨子「そうでしょう。線路はどこまでも続くって曲ですよ」
果南「『HAPPY PARTY TRAIN』みたいだね」
~♪
陽気で、軽快で、心配事なんか一つもない、鼻唄のような曲だね。
梨子もまあまあいいセンスしてるじゃん…ふふ……
果南 スピー
梨子「ピアノせがんでは必ず寝るんですから…まったく」フフ
∬h1.音楽は聴く人がいて完成する(ちゃんと聴いてたよ) 終
235ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:37:51.32ID:uP/hJHBh
上の h1.
は、読んでのとおり高校時代のシーンです
このssを書き始めてかなり早々に書いたのですが、全体を二人暮らしに統一したことで無事お蔵入りとなりました
236ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:38:59.20ID:uP/hJHBh
∬9.闘いの日 のワンシーン
果南 トン… ……
果南「…?」
試験官 (止まっちゃった!そのペースで止まるのはまずいよ!確かに5問目は少しだけ捻ってあるけど、そんなに難しい問題じゃないから!キミなら解けるから!答えは借方『割賦売掛金』だよ!)
試験官「ン…」
果南「?!」ビクッ
試験官「ンー ンンー ゴホッゴホッ ンァップぅ ンァップぅ ンリカケぇ…ゴホッゴホッ」
果南 ビクビク
試験官「ンァッ ンァップぅ…ゴホッ」
受験生「すみません、うるさいです」
試験官「申し訳ありません。喉の調子が良くなくて」
試験官「ンンッ ンァ… ンァップぅ ンリカケぇ…」
果南 ビクビク…
果南 (あ、これ梨子とやったやつか。『割賦売掛金』だな…) カリカリ
試験官「ンイエスッッ!!」グッ
果南「?!」ビクッ
終
237ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:40:21.20ID:uP/hJHBh
これは>>198か>>199の辺りに差し込む予定でしたが、メインフォーカスが果南じゃないことと全体の雰囲気をぶち壊しそうな気がしたことで、試験官にはおとなしくしていてもらうことになりました
238ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:41:28.99ID:uP/hJHBh
∬h2.果南ちゃんと一年生ズ
果南 トコトコ
果南「…ん?」
ルビィ ジョキジョキジョキ
善子「ちょ、ルビィ。切りすぎ切りすぎ」
ルビィ「え?あー!線はみ出てるー!」ガーンッ
善子「もう!あんた一人で何本使うつもりよ!」
ルビィ「うゆ…むずかしいんだもん…」
花丸「また善子ちゃんがコーラ飲むことになるよ」
善子「ねえいいんだけど毎回ジュース飲むのが私なのはなんで?なんであんたたちは飲まないの?」
花丸「もう善子ちゃんが作ってあげたらいいずら」
ルビィ「!」ムムッ
善子「作ろうって言い出したのルビィよ?そこ私がやっちゃったら意味が――」
ルビィ ワクワク
善子「いやいいんかい」
ワイワイ
239ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:43:37.91ID:uP/hJHBh
果南「やっほー」
花丸「あ、果南ちゃん。こんにちはー」
ルビィ「かなんちゃん!」
善子「一人で散歩なんて優雅ね」
果南「誰も遊んでくれなくってさ。でもいいとこに会っちゃった」
花丸「果南ちゃんも一緒にやる?」
果南「なにしてるの?」
ルビィ「これ!」つペットボトル
果南「ペットボトル?」
善子「ペットボトルロケットって知らない?小学生の頃に理科で習ったんだけど。なんか突然ルビィがやろうって言い出したのよ」
ルビィ「みんなでやったら楽しいかなって」
花丸「まだロケットが完成すらしてないけどね」
ルビィ「うゆゆ…」シュン
善子「どう?なにも予定がないならやってかない?」
果南「…」
∬( c||^ヮ^||「やるやる!」← ペットボトルロケットがなにかぴんと来ていない
花丸「そうこなくっちゃ」
240ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:44:40.96ID:uP/hJHBh
果南「んで?どうすればいいの?」
ルビィ「まずはペットボトルを切るんだよ。線を引いて、」キュキュ…
花丸「ルビィちゃんずれてるずれてる。線がずれてるずら」
善子「あーあーもー、しょっぱなからなにやってんのよ。作り方は私が教えるから」カシテ
果南「こーやって線引いて、線の通りに切って」ジョギジョギジョギ
花丸「果南ちゃんずれてるずれてる。ずれてるっていうか盛大に線を無視して切ってるずら」
善子「ちょっともうなんなのよ。いいわよ作るのも私がやるから」カシテ
ルビィ「えへへ…おこられちゃった」
果南「へへ…怒られちゃったね」
花丸「本人たちは満足そうだよ」
善子「あっそう」キュキュ ジョキジョキ ← どうでもよくなってきた
241ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:45:44.76ID:uP/hJHBh
果南「完成~っ!」パパーン
ルビィ「ルビィのも!」パパーン
花丸「かっこいいのできたね。色塗っただけだけど」
善子「もういいから。本人たちがいいならいいから」
果南「で、これをどうするんだっけ」
花丸「果南ちゃんもしかしてペットボトルロケット知らな
果南「知ってる知ってる。知ってるんだけど忘れたの」
ルビィ「飛ばすんだよ。いちばん飛ばしたひとが勝ち」
果南「あー、そうそう。ロケットだもんね。飛ばさなきゃ話になんないよね」ウンウン
花丸「じゃあ飛ばすための加工しよっか。と言ってもそんなに――」
果南 ブンッッッ!! ピューーーーーーン… キラリーン
果南「おー、飛んだ飛んだ。私一位かな」
善子「あなたやっぱり知らないでしょ」
∬h2.果南ちゃんと一年生ズ(私は習わなかったしね) 終
242ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/08/23(木) 13:48:23.25ID:uP/hJHBh
こちらも高校時代のシーンであるため本編から除きました
供養は以上です 文末汚しを失礼しました
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