善子「南ことりに恋をして」 3

125ぬし z9ftktNqPQ ()2018/06/10() 09:37:05.50ID:KyYM3O1R

ー東京、西木野総合病院への道ー 


善子「ほんとに来ちゃったのね…」ズン 

梨子「さっきまでのテンションはどこに行ったの?」 

善子「無理やり上げてたのよ。ここまで来ちゃったんじゃ、もう引き返せないじゃない…」 

ダイヤ「もとより引き返すつもりなどありませんわ」 

梨子「ここで引き返したら、それこそここまでの道程が全て無意味になるんだもの」 

善子「あなたたちはもう少し私の意見を聞いてもいいと思うのよ」 

ダイヤ「駅からの道はわたくしも調べておきました。10分もしないようですよ」スタスタ 

善子「…意外ね」 

梨子「なにが?」 

善子「元とはいえμ'sのメンバーに会うなんて、ダイヤだったら跳んで喜ぶかと思ったんだけど」 

梨子「…そうでもないよ」 

梨子 (自分の感情で一喜一憂する余裕なんて、ないよ。私がそうなんだから、ダイヤさんだって…同じはず

梨子「さ、ついていこ」スタスタ 

善子「うんー…」ハァ… スタスタ… 

……………… 

………

 

128ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:11:17.33ID:eyJC9Jj8

ー西木野総合病院ー 


善子「人が多いわね…」 

ダイヤ「東京の病院ですから…」 

善子「っていうか土曜もやってるのね…」 

ダイヤ「大病院ですから…」 

梨子「私は総合案内に行ってきますけど、お二人はどうしますか?」 

ダイヤ「も、もちろん行くに決まっているでしょう。なんのために来たとお思いですか」 

善子「私一人で待ってるなんてイヤよ」 

梨子 クス 

梨子「それじゃ、三人で行きましょっか」スタスタ 

善子「…意外ね」 

ダイヤ「なにがですか?」 

善子「リリー、知らない人と話すのとか苦手そうなのに」 

ダイヤ「…そうでもありませんわよ」 

ダイヤ (今日のこの動きは梨子さんの提案…責任感もあるでしょうけれど、

ダイヤ チラッ 

ダイヤ (善子さんのことを想う心が、ご自身の羞恥など呆気なく抑え込んでしまっているのでしょうね

ダイヤ「さて、遅れずについていきましょう。これだけ人が多いとはぐれてしまいます」スタスタ 

善子「うん」スタスタ…

 

129ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:16:13.45ID:eyJC9Jj8

案内係「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか」 


その一言に思考を失い掛ける。 

わかっていたはずなのに。 

用件、用件…は、 

しかし。 


梨子「私、桜内と申します」 


必死に言葉を捻り出そうとした私の隣で、梨子さんが一歩踏み出した。 

鞄から、クリアファイルに挟んだ封筒を取り出して。 


梨子「西木野真姫先生に用があって伺いました。お取り次ぎいただけますか」 

案内係「…ご用件は?」 

梨子「ピティナ正会員の桜内より伝令で伺った…とお伝えいただければ、おわかりになるかと」 

案内係「承りました。掛けてお待ちください」 


ぺこりと一礼。 

慌てて善子さんと共に倣い、颯爽と踵を返した背を追い掛ける――ぴてぃな? 

……………… 

………

 

130ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:17:27.76ID:eyJC9Jj8

案内係「お待たせいたしました。西木野と連絡が取れましたので、会議室までご案内いたします」 

ダイよし「「…………!!」」 


ロビーの長椅子で待つこと数分、無言の私たちに掛けられた案内係の方のそんな声に、思わず絶句した。 


梨子「ありがとうございます。行きましょう、二人とも」 


そう言い席を立つ梨子さんの表情は、取り繕っているながらも明らかな安堵の色に満ちていて。 

とてもあっさりと過ぎたように感じられるこの一幕が、"賭け" であったことを示していた。 

その証拠に。 


梨子「…………」スタスタ 


梨子さんの表情は未だに堅く、案内される道中、一言も発しなかった。 

……………… 

………

 

131ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:18:17.36ID:eyJC9Jj8

案内係「こちらでしばらくお待ちください」 


簡素な長机とパイプ椅子が並べられた室内。 

まあ、俗に言う会議室なのだろう。 

無機質な空間に三人だけで残され、扉が閉まると同時に、誰からともなく息を吐き出した。 


善子「…病院にもこんな部屋があるのね」 

ダイヤ「…法人の顔もありますからね」 

善子「ほうじん?」 

梨子「ふううーーーー…っ」 


その息に、善子さんと視線を交わす。 

あなたが訊きなさいよ、と言外の訴え。 

こ、こんなときばっかり年長者扱いして… 


ダイヤ「コホン。り、梨子さん」 

梨子「さっきの書類、お父さんから預かったものなんです」 


意を決したところに食い気味の回答。 

肩透かし…なのは、この際置いておくとして。 


ダイヤ「お父さま…から?」

 

132ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:19:03.18ID:eyJC9Jj8

梨子「全日本ピアノ指導者協会…通称を『ピティナ』と言います」 

梨子「ピアノ指導者から成る国内の組織なんですけど、私のお父さんが正会員…その、少し上の方の立場にいるんです」 

梨子「真姫さんも、ほら、ピアノ弾いてらしたじゃないですか。だからなんとかきっかけを作れないかと思って、相談してみたんです」 

梨子「それで、その…紹介状みたいなものを、ね…」 


照れ臭そうに説明を終えた梨子さんに、善子さんが詰め寄る。 


善子「す…すごいわリリー!まさかこんなにあっさり真姫さんを呼び出しちゃうなんて!」 

梨子「そ、そんなに大げさなことじゃないよ。それに私じゃなくてお父さんの力だし…」 

ダイヤ「いいえ。たとえお父さまのお名前を借りたとしても、その繋がりを武器にしたのは、紛れもなく梨子さんの功績です」 

ダイヤ「わたくしはぼーっとしていただけで、お恥ずかしい…」 

梨子「そんなことありませんよ!たまたま運がよかっただけで…」

 

133ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10() 10:19:58.70ID:eyJC9Jj8

善子「こんな秘策があるなら、教えておいてくれたらいいのに」 

梨子「上手く行く保証があったわけじゃないから。ぬか喜びになってもいけないなと思って」 


自身のふがいなさが身にしみた上、さらに後輩にフォローまでされてしまった。 

どうにか次のターンでは、私も役に立ってみせなければ。 

と心を引き締め直すのも束の間、 


梨子「…それに、私が切れるカードはこの一枚きりだから…」 


ややトーンの低い声に、私たちは再び黙り込む。 

加えて、懸念事項が拭われたわけでもない。 

梨子さんは言われるまでもなくそんなことわかっているようで、変わらず表情は晴れない。 


梨子「それより、あの紹介状で本当に真姫さんが私たちに会ってくださるかどうかは、まだ…」 

??「会いますけど?」ガチャ 

ダイヤ「……え」 


という私たちを、まるで観察して楽しんでいたかのように。 


真姫「どうも、西木野真姫です…けど、冗談みたいな顔ぶれね。冗談じゃないの?」 


あっさりと彼女は現れた。

 

147ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:16:27.95ID:udyFii49

真姫「改めて。西木野総合病院の心臓血管外科で研修医をしてます、西木野真姫です」 

真姫「…いります?」 

ダイヤ「あ、はい。頂戴いたします…」 


差し出されるままに名刺を受け取り、目を落とす。 

『西木野総合病院 心臓血管外科 研修医 西木野真姫』 


真姫「嘘なんか吐いてませんけど」 

ダイヤ「あっいえそんなつもりでは!」バッ 

真姫「ふふ。冗談よ」 

ダイヤ //

 

149ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:17:46.39ID:udyFii49

梨子「心臓血管外科…」 

善子「研修医…」 

真姫「それはどういうリアクションなんですか?」 

梨子「いえ、その…そういう科があるんだなって…」 

善子「病院にいるのに『研修』の途中なんだなって…」 

梨子「ちょっとよっちゃん?!」 

善子「あっ、や、あの、」アセアセ 

真姫「言うわね。病院には免許を取れば入れるけど、すぐに一人前ってわけじゃないのよ…」 


真姫さんを含めた三人で何事か話しているけれど、正直なところ、ほとんど耳にも頭にも入ってこない。 

西木野真姫 

その字面を、そして本人を目の前にして、やっと私の脳は正常な状態を取り戻したようだ。 

すなわち、興奮。 

大興奮。 

あ、私、今もしかしてあの真姫さんと対面しているの? 

しかも話してるの? 

む――無理――――なんて、思考が冷えるまでに短くない時間を必要とし、その間お話を全く聞いていなかったことをひどく後悔するのはまた後日の話です。 


そして。

 

150ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:19:23.41ID:udyFii49

真姫「それじゃ、本題に入ってもいいかしら。そう長く席を外すわけにもいかないから」 

梨子「は…はいっ」 ダイヤ「はい…」 善子「………はい」 

真姫「まず、あなたたちは誰なの?というかそもそも、私は桜内氏すら知らないんだけど」ピラ 

梨子「…あ」 

ダイよし ((あー…)) 

真姫「今回の伝令はわからないことだらけで、申し訳ないけどまだ半信半疑よ。この紹介状が本物なのかどうかすら訝ってる」 

真姫「まず、なぜ今さら声が掛かるの?次に、なぜ私に声が掛かるの?最後に、あなたたちは一体なんなの?」 

真姫「ピティナほどの組織が、なぜ郵便じゃなくて高校生三人を使わせてくるのかしら」 

真姫「この誘い自体は魅力的だけれど、それらがはっきりしないうちは、頷くつもりは全くないわ。なんなら、全てはっきりしたとしても…ね」 

真姫「わざわざ人を使わせるからには、説明してくれるんでしょ?というか、説明されるまで帰さないけど」キッ 

ダイよしりこ「「「………っ」」」ゴク… 

真姫「現役を退いたとはいえ、私もそれなりに知られてる自覚はある。まさかいたずらじゃないことを祈ってるんだけど、」 

真姫「どうなの?」 

梨子「……ぁ、あの」 

真姫「…」 

梨子「………ほ」オソルオソル… 

梨子「本題…は、その件じゃ…あり、ま、せん……」 

真姫「…………は」 


真姫「はああああああああああああああああっっっ?!!」ガタッ

 

151ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:20:09.50ID:udyFii49

梨子「本当に申し訳ありません!」バッ 

梨子「どうしても西木野さんにお会いしたい理由があって、父に無理を言いました!」 

ダイヤ「そっ、それを言うなら年長者はわたくしなのです!監督責任はわたくしにあります!」バッ 

善子「あ、ああああの…ちがくて、ダイヤとリリーは…あっこの二人のことなんですけど、二人がこんなことをしたのは全部私のためで、だから、」 

善子「その…ごめんなさい!」バッ 

真姫「ちょっ…」オロ 

真姫「や、やめなさいよ!謝られたってイミワカンナイだけだから!」 

真姫「いいから座って!」 

真姫「ああもうっ…なんなのよ!とにかく起きてってばーー!」 

……………… 

………

 

152ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:21:00.83ID:udyFii49

ダイヤ「黒澤ダイヤと申します。静岡県は沼津市の浦の星女学院にて、生徒会長を務めています」ペコ 

梨子「桜内梨子といいます。同じく浦の星女学院に通う二年生です」ペコ 

善子「つ、津島善子です…一年生です」ペコ 

真姫「…そう。」 

真姫「それで、えっと…なにから訊けばいいのかしら」 

梨子「私からお話しします」 

ダイヤ「梨子さん、」 

梨子「平気です。父のこともありますから」 

ダイヤ「…わかりました。お願いします」 

梨子「よっちゃん、いいよね?」 

善子「もちろんよ。それより、私のことなのにお願いしていいの?」 

梨子「うん。私が間違ってたり言葉が足りなかったりしたら補足してくれる?」 

善子「わかったわ…ありがとう、リリー」

 

153ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:22:25.41ID:udyFii49

梨子「なにからお話しすればよいのか、私たちも…」 


そう切り出した梨子さんは、しかし、簡潔に事のあらましを話した。 

私たちがスクールアイドルAqoursであること。 

ふとしたきっかけで善子さんがことりさんに憧れたこと。 

そして、なんとかしたいと思い、 

ことりさんに繋がりがあるであろう真姫さんを訪ねようと考え、 

真姫さんに会うために、ピティナ正会員である梨子さんのお父さまに協力を仰いで紹介状を発行していただき、 

今こうしていること。 

あらかじめ話運びは考えていたに違いない。 

ところどころ言い淀む場面はあったにせよ、私たちの補足など必要としない調子で、全てを。 

口を挟むことなくそれを聞き終えて真姫さんは、一言だけ。 


真姫「まだるっこしい」 


とおっしゃった。 

……………… 

………

 

154ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:23:46.10ID:udyFii49

真姫「話はわかったわ」 

善子「…怒ってますか?」 

梨子「よっちゃん!!」 

真姫「別に怒ってやしないわよ。なんというか、ただ…呆れてる」 

梨子「呆れて、ますか」 

真姫「そりゃ呆れるでしょ」ハァ 

真姫「こんなものまで作って…」ピラ 

梨子「あの、それは本当に私が無理を言って発行してもらったもので、その…都合がいいことを言うのは承知の上なんですけど、」 

真姫「平気よ。あなたのお父さまの不利になるように報告するつもりなんかないわ」 

真姫「この誘い自体が作り話っていうんじゃないのなら、これはこれで考えてみるから」スッ 

梨子「あ、ありがとうございます…」ホッ… 

真姫「その心労を抱え込むことになることくらい、わかってなかったわけじゃないでしょ。何度でも言うけど、まだるっこしいしやり方が下手くそよ」 

梨子「手厳しいですね…」 

真姫「行動力への褒め言葉だとでも受け取っておきなさい。それと…ああ、ちょっと待ってて」スタスタ 

梨子「? はい…」

 

155ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:24:52.48ID:udyFii49

真姫 カチカチ… 


善子「待ってる間、雑談してても平気かしら」 

ダイヤ「時折やけに図太いのはなんなのですか」 

梨子「なに?」 

善子「ついていけなかったんだけど、結局あれってどういうものだったの?紹介状?」 

ダイヤ「あっ。それはわたくしも聞きたいです」ノ 

梨子「ダイヤさんまで…」 

梨子「簡単に言うと、ピアノコンクールへの参加のお誘いです」 

梨子「ピティナ…全日本ピアノ指導者協会と、日墺文化協会ってところが協賛で、近々大規模なコンクールを開催することになってるんです」 

梨子「それで、真姫さんをエキシビションプレイヤーとしてお招きできないかって、父に頼んでみて…その紹介状です」 

ダイヤ「エキシビションプレイヤーですか…また随分と思い切ったことを…」 

善子「そんなのに融通利かせられるなんて、もしかしてリリーのお父さんってすごい人なの?」 

梨子「そんなことないけど…」 

真姫「そんなことあるわよ」(間近

梨子「真姫さん」 

真姫「ピティナ正会員というのは、ピアノやってるから誰でもなれる…ってものじゃないのよ。ついでに調べたけど、あなたのお父さま、指導者賞を3回も受けていらっしゃるのね。そりゃ文句なしの権力者だわ」 

梨子「ち、父に伝えておきます…」 

真姫「三人とも、こっちに来なさい。いいもの見せたげる」 

ダイよしりこ「「「?」」」

 

156ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:27:01.77ID:udyFii49

M' used 

真姫さんに手招きされるまま覗き込んだパソコンの画面。 

そこにはアルファベットの羅列と、一人の女性。 


梨子「っ!これ…」 

ダイヤ「間違いない…ことりさんですわ…」 

善子「………!!」 

梨子「ま、真姫さん…これは?」 

真姫「ユースト…って言ってたかしらね。ご覧の通り、南ことりのホームページよ」 

ダイヤ「ホーム…ページ…」 

真姫「あなたたち、今どきの高校生なのにネットに頼らないのね」 

梨子「…まさか」 

真姫「ええ」 


真姫さんはにっこりと目を細めて、 


真姫「標準言語がフランス語だから気付きづらくはあるけど」 


そう言うやブラウザの設定をいくつかいじり、 


真姫「ほら」 


わずかな読込みのあとに再び映されたのは。 

『デザイナー 南ことり お仕事のご依頼は下記メールアドレスまでお願いします』 


真姫「『南ことり』で検索すれば出るのよ、これ」 

ダイよしりこ「「「………………!!」」」 

真姫「外での仕事がメインみたいだし、連絡したからすぐどうなるってわけじゃないでしょうけど。でもことりのことだから、スクールアイドルって聞けば黙ってないかもね」 

……………… 

………

 

157ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:28:54.85ID:udyFii49

ー西木野総合病院近傍、喫茶店ー 


ダイヤ「完全に盲点でしたわ…」ズン… 

善子「三人いて誰も検索しないなんてね…」ズン… 

梨子「私たち女子高生なのにね…」ズン… 


華の女子高生、とはよく言ったものだ。 

囲うテーブルにはことりさんのホームページと真姫さんの名刺。 

成果を思えば喜びこそすれ落ち込む理由など全くないとはいえ、『ネット検索』という解法は私たちに大きなダメージを与えた。 

しかし。 


ダイヤ「…こんなことで落ち込んでいたって仕方ありませんわよね」 

善子「ま、それもそうね」 

梨子「時間は有限。切り替えていきましょうか」 


それぞれにカップを干す。 

と息巻いたはいいものの、やることといえば。 


梨子「ことりさんへメールを送る…か」

 

158ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭)2018/06/10() 14:30:19.04ID:udyFii49

善子「今さらだけど、このメールアドレスってお仕事以外の連絡に使ってもいいのかしらね」 

梨子「本当に今さらだね…騙し討ちで真姫さんを訪ねた時点で前科一犯よ」 

善子「今日のことって、真姫さんからことりさんに伝わるのかしら…」 

梨子「そうなると…なかなか印象は悪いよね…」 

善子「うう…」 

ダイヤ「それはないと思いますよ」 

梨子「えっ」 

ダイヤ「わたくしも真姫さんの人となりをよく知っているとは言えませんけれど、曲がりなりにもμ'sのいちファンとして言わせてもらうならば、」 

ダイヤ「西木野真姫は――そんな人ではない」 

よしりこ「「………」」 

ダイヤ「と、思いたい」 

善子 ガクッ 

善子「ダイヤの願望なんじゃないのよ!」 

ダイヤ「だって仕方がないでしょう!級友でもなければ幼馴染みでもないのですから!日常の言動などわかりませんもん!」 

善子「わかりませんもんじゃないわよ!まったく…」 

梨子「…ふふ。でも、そうかも」 

善子「リリー?」 

梨子「真姫さんなら、私たちの行方を見守ってくださるんじゃないかなって。いつかことりさんと会ったときに『そういえばね』なんて話はするのかもしれないけど…」 

梨子「そんな気がしない?」 

善子「…うん。それもそうね。いい人そうだったものね」 

ダイヤ「美しかったですしね」 

梨子「それは関係ないですしね」 

善子「それじゃ…メールの文面を考えましょうか」 

ダイヤ「ええ!」 梨子「うん!」 

……………… 

………