106ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:13:52.50ID:KyYM3O1R
梨子
(あんな…よっちゃんのあんな表情、初めて見たよ…)
善子「やんやんっ!遅れそおですぅ!」ピョインピョイン
善子「たいへんっ!駅までぇだあしゅう!」ピョインピョイン
梨子「さっきの緊張と恥じらいを感じさせる雰囲気はどこに」
ダイヤ「善子さんの胸に」
`¶cリ˘ヮ˚)| ヤンヤンッ! ソンナノォダメヨォ
`¶cリ˘ヮ˚)| タイヘンッ! デンシャヨォイソゲェ
梨子「…………」
ダイヤ「……………」
メノ*> ヮ <リ サンザンッ! カンガエェマシタア
|c|| ^.ヮ^|| ハンセイッ! ソレドコォロジャナアイ
………………
………
107ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:14:52.62ID:KyYM3O1R
ダイヤ「先ほどの一幕からわかるよう、善子さんは南ことりに恋をしているのです」
梨子「わかりました」
善子「なにもわかりませんでした」
ダイヤ「善子さんは自覚がないのですか?」
善子「自覚もなにも、ダイヤの妄想だもの…」
ダイヤ「妄想とな」ンマッ
梨子「ううん、私にもそう見えたよ。よっちゃん確かに、ことりさんが出たときだけ反応が違ったもの」
善子「それは、たまたま南ことりの曲に好きなやつが多いからよ」
ダイヤ「なかなか強情ですわね」
善子「なんでそんなに私を恋する乙女に仕立て上げたがるわけ?」
梨子「仕立て上げようとなんかしてないよ。最近よっちゃんがおかしいから、みんな心配してるだけなの」
善子「寝不足よ、寝不足。疲れてるだけだってば」
ダイヤ「…それならば、μ'sのディスクは一時お預けにしましょう」
善子「?! な…なんでよ!」
108ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:16:10.42ID:KyYM3O1R
ダイヤ「当然でしょう。それが原因で体調を崩しているのだから、取り上げるに決まっています」
ダイヤ「このままそんな生活を続けられては、わたくしたちの活動にも支障をきたします。いずれ善子さんは倒れてしまいますわ」
善子「だ…大丈夫だってば!」ガバッ
ダイヤ「きゃっ?!」
梨子「よっちゃん?!」
善子「体調は自分できちんと管理する!夜もちゃんと寝るし、練習だって授業だって問題ないようにするから!だから、お願い…取り上げないで!」
ダイヤ「わ、わかりましたから…手を…」
梨子「よっちゃん!放して!ダイヤさんが…」グイ
善子「あっ…ご、ごめんなさい…」パッ
ダイヤ「こほ…平気ですわ」
梨子「…よっちゃん」
善子「………」
梨子「今の取り乱し方、やっぱり異常だよ。普通じゃない」
ダイヤ「だからどう、ということにはしませんわ。ですから、正直に答えてください」
ダイヤ「好きなのでしょう?南ことりが」
善子「………」
善子 コク…
ダイヤ「やはり…」
109ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:17:44.57ID:KyYM3O1R
善子「…最初はね、憧れとかだったと思うの。μ'sに対する。
善子「ダイヤたちがよく言うような『μ'sは凄い』っていうのが、よくわかって。圧倒的なパフォーマンスに圧倒されてた。
善子「でもね、色んなのを観てるうちに少しずつ慣れてきて、それぞれのメンバーを追う余裕が出てきて、一人ずつしっかり見てみたりして…
善子「絵里さんはステップのキレが凄い。穂乃果さんはよく伸びる歌声が素敵。音を取ることに掛けては真姫さんが突出してる。
善子「一人ひとり違って、可愛くて、格好良くて、美しくて、みんな凄いなって…μ's凄いなって…
善子「そうしてるうちに、ふっと気付いたの。
善子「あ。私、この人を追い掛けてる――って。
善子「それが、ことりさんだったの。
善子「九人みんなが歌うパートでもすぐに声を聞き分けられたし、PVとかライブではずっと目で追っちゃうの。MCとかラジオとかでことりさんが喋ってると嬉しくって、もっと聞きたいって思うの。
善子「そのうち、ライブ観てないときもことりさんのこと考えちゃうようになって、朝起きてママと話してる間も、バスで曜さんと話してる間も、授業中も、練習中も…
善子「布団に入っても胸がどきどきして眠れなくって、気付いたらことりさんの曲流したり、それでもだめだったらライブ観始めちゃったりして、そしたらね、すっごく嬉しくって、でも、おんなじくらい切なくなって…
善子「ねえ、ダイヤ。リリー。
善子「こんなの、私知らないの。こんな気持ち、どうすればいいのよ――」
………………
………
110ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:18:43.68ID:KyYM3O1R
ダイヤ「…思ったよりも、深刻ですね」
梨子「みたいですね…」
善子さんは一足先にお帰りになった。夜は必ず休むことをしっかりと言い含めた上で、いくらかのディスクを渡して。
なんならしばらくはうちに泊まらせたいくらいだけれど…
梨子「どうすればいいんでしょう。これがクラスメイトとかだったら、まだやりようはあるけど…」
ダイヤ「素人とは言え、相手はアイドル…しかも、もう何年も前に解散したグループ。正直、手の施しようがありませんわ」
叶わない、想い。
いや、叶わないだけならばまだマシかもしれない。
想いを届けることも、育むことすらできない。
失うとわかっている箱に、大切な想いを詰め込んでいくかのよう。
ダイヤ「なんとか…なんとか、してあげたい…」
梨子「そんなの、私だって…」
でも、どうすればいいのか。
ただ刻々と、二人分の沈黙が過ぎていった。
………………
………
111ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:19:27.85ID:KyYM3O1R
ー桜内家、梨子の部屋ー
梨子「ふう…」
握り締めていたペンを転がす。
清々しいまでに白い五線譜ノート。
窓を挟んだ対岸からは、調子外れの鼻唄が聞こえる。
梨子「もう。どうして鼻唄になると途端に音が取れなくなるのかしら」
それを言い訳にしてみたところで、音符が並ぶわけでもなければ、頭の中が晴れるわけでもない。
むしろ、片付かないものは片付かないままでいいんだよと囁く子守唄のようで――
梨子「…なんて。これはさすがの千歌ちゃんでも怒っちゃう物言いね」
ぎ、と背もたれを鳴らす。
考えるのはよっちゃんのこと。
112ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:20:07.45ID:KyYM3O1R
ことりさんのソロ曲を前にした、緊張の面持ちも。
思考を取られて呆ける姿も。
恥ずかしそうに、嬉しそうに、語る頬の紅潮も。
そのどれをも、私は――私たちは初めて目の当たりにして。
どこか悔しい気持ちと、どこか羨ましい気持ちとが混在する。
――ねえ、ダイヤ。リリー。こんなの、私知らないの。
年頃の女子として、想いを歌うアイドルとして、胸に抱いておくべきその感情を、初めて知ったのはよっちゃんだった。
けれど、決して心地よいばかりのものには見えなくて。
――こんな気持ち、どうしたらいいのよ。
梨子「わかんないよ、よっちゃん。私だって知らないもの…そんな気持ち」
ぎぃぃ、と背もたれが鳴いた。
***
113ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:21:09.70ID:KyYM3O1R
悔しかったり、羨ましかったり。
そんな些末な感情は、けれど、もう全く顔を覗かせることはなかった。
なぜなら――
花丸「善子ちゃん。よーしーこーちゃん!」パン!
善子「きゃっ?!な、なによずら丸…」
花丸「なによじゃないよ。もうじゅうぶん真っ白になったずら」
善子「あ、ああ…ほんとね」
果南「ここまでぴかぴかにされると、改めてペンを走らせるのが申し訳なくなっちゃうねー」アハハ
曜「ホワイトボードってこんなに真っ白になるものなんだ…」
ルビィ「遅くなりましたぁ」ガチャ
千歌「あ、ルビィちゃん。こんにちはー」
ルビィ「こんにちは。…あ、よしこちゃん」
善子「なに?」
ルビィ「吉田先生、かんかんだったよ…『津島はカバン沼津駅にでも置いてるのか』って」
善子「げ!忘れてた!」バッ ゴソゴソ
善子「ごめん!課題提出してくる!」タタタタ…
花丸「あ~…」
曜「なに?どしたの?」
花丸「善子ちゃん、課題提出し忘れてて、さっき廊下で吉田先生に『すぐ持っていきます』って言ったんだけど…」
ルビィ「すっかり忘れてたみたい…」
果南「あははは。善子はドジだな~」
梨子「…………」
ダイヤ「…………」
***
114ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:23:33.29ID:KyYM3O1R
ー桜内家、梨子の部屋ー
梨子「よっちゃん…」
日に日に、よっちゃんはぼーっとしたり失敗したりすることが増えていく。
花丸ちゃんとルビィちゃんが言うには、授業中だって頻繁に上の空になっては思い出したように首を振ってノートに向かい、すぐにまた上の空…という様子らしい。
ライブディスクを貸す条件としてダイヤさんが言い含めたことが、ぎりぎり意識に残っているのだろう。
とは言え、ちらっとノートを盗み見た限り、ほとんど意味がないようだけれど。
まだ幸いなのは、誰かと一緒にいて話をしているときは集中してくれることくらい。
一人で歩かせると車に轢かれかねない、と、わざわざ曜ちゃんは朝晩よっちゃんの家まで付き添っているという。
梨子「ふう…」
何度目かになる溜め息を漏らす。
胸の内を吐露してくれたよっちゃんに、してあげられることが何一つない。
だってμ'sはアイドルで、しかも過去の人たちで。
例えば私が音ノ木坂に通っていたからといって、南ことりの『み』の字にすら触れたことがない。
理屈上は最も近いはずの私がこれでは、ダイヤさんにも、他の誰にも、たぐれる糸なんかあるはずもない。
115ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:24:34.88ID:KyYM3O1R
梨子「南ことりさん…」
ノートパソコンの画面には、舞台をいっぱいに跳び回るμ'sの九人。
南ことりさん。
確かに素敵な人だよね。
歌も上手い、ダンスも上手い、声も可愛い、顔も可愛い。
でもさ、歌なら花丸ちゃんだって上手いし、ダンスなら果南さんだって上手いじゃない。
声も顔も、Aqoursのみんなだって負けないくらい可愛いよ。
手が届く範囲にいる私たちの誰かじゃ、だめだったの?
どうして絶対に届かないような人を見初めちゃったの?
…なんて、
梨子「きっとそういうことじゃないんだよね、恋って」
私にはまだわからないけれど。
思い通りになるばっかりなら、きっと誰も恋なんてしないのだろう。
116ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:25:36.22ID:KyYM3O1R
よっちゃんだけの問題じゃない。
たまたまよっちゃんが誰よりも早かったというだけの話。
これはいずれ、私たちの誰しもに降り掛かる問題だ。
私たちだけですらない。
μ'sのみんなにも降り掛かり、あるいは乗り越えたのだろう。
梨子「ねえ、穂乃果さん。あなただったらどうしますか」
梨子「例えば真姫さんが、遠い恋に悩んでいたら」
梨子「どんな風に、手を伸ばしますか?」
梨子「…なんて、ね」
これは私たちが乗り越えるべき私たちの問題。
穂乃果さんも、真姫さんも関係ない。
穂乃果さんも、真姫さんも…
梨子「西木野、真姫さん…」
梨子「西木野…」
梨子「あっ」
その刹那、脳裏にあることが思い浮かんで。
私は、慌ててスマートフォンに手を伸ばした。
***
117ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:27:21.76ID:KyYM3O1R
ー週末の土曜日、沼津駅前ー
梨子「全員揃いました!」ゞ
ダイヤ「よろしい。それではさっそく電車に乗りましょう」
梨子「切符は2,270円のやつです」ピッピッ
ダイヤ「ありがとうございます。ICカードが使えれば便利なのですけれどね」ピッピッ
梨子「よっちゃんも早く」
善子「いや券売機両方とも埋まってるし」
ダイヤ「一緒に買っちゃいましたわ」ハイ
善子「あ、ありがとう…ちょっと待って細かいのないかも」チャリ…
ダイヤ「後で崩れてからで結構ですよ」
善子「悪いわね」
梨子「それじゃとりあえず入りましょう。電車そろそろ来ますし」
ダイよし「「はーい」」
カシャン カシャン カシャン
梨子「三番線の熱海行です」
ダイヤ「さすが、慣れたものですわね」
梨子「向こうじゃ電車に乗れないとどこにも行けませんでしたからね」
善子「こっちだとバスか歩きでいいものね」
梨子「あ。もう止まってますね。乗っちゃいましょう」
ハッシャ イタシマス
プシュー ガタゴト…
善子「…ってちょっと待てえええええええいっ!!!」
118ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:28:21.77ID:KyYM3O1R
ダイヤ「もう、なんですか善子さん。公共の場で大きな声を出さないでください」
善子「あっゴメンナサイ…」シュン
善子「じゃなくて!」
善子「どうして突如東京行くことになってるのよ!」
ダイヤ「なんですか今さら」
梨子「それはもう済んだ話じゃない」
善子「あなたたちの中ではね?!私は集合を掛けられただけよ!」
梨子「もう、よっちゃんってば…」
ダイヤ「仕方ありませんね…」
善子「なんで私が悪いみたいになってるのよ…」
………………
…………
……
119ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:29:42.99ID:KyYM3O1R
ー回想ー
ダイヤ『西木野総合病院、ですか…』
梨子「はい」
梨子「ことりさんの行方は知れませんけれど、真姫さんなら…ほぼ間違いなく、西木野総合病院にいると思うんです」
ダイヤ『それは、まあ…真姫さんはμ'sの現役時代から、高校卒業後は医大へ進んでお家の病院を継ぐと公言されていましたから…』
梨子「そうですよね。だったら、」
ダイヤ『だからといって、どうするつもりですか?』
梨子「どうって、だから…」
ダイヤ『真姫さんを訪ねて、ことりさんにアポを取っていただくと?』
梨子「…はい」
ダイヤ『………梨子さん』ハァ
梨子「い、嫌な声を出しますね」
ダイヤ『それはそうでしょう。その案にどれだけの実現性があるとお思いですか』
ダイヤ『病院を訪ねたとして、真姫さんがいるとは限らない。いたとして、面識のないわたくしたちに会ってくださるとは限らない。会ってくださったとして、ことりさんに取り次いでくださるとは限らない』
ダイヤ『そして、ことりさんが会ってくださるとも。』
梨子「…………」
ダイヤ『身も蓋もないことを言えば、真姫さんとことりさんの繋がりが健在である保証すらないのですよ』
ダイヤ『そんなことは承知の上でしょう?』
120ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:30:45.38ID:KyYM3O1R
梨子「もちろん、わかってます」
梨子「ダイヤさんがおっしゃったことは全て正論。乗り越えるべきハードルは多すぎるし、その全てを乗り越えられる可能性は、ほとんどないに等しいのかもしれません」
ダイヤ『そこまでわかっているのなら、』
梨子「だけど!」
梨子「このままよっちゃんを放っておくなんて、私にはできません」
ダイヤ『それは…』
梨子「よっちゃん自身なにもできない、私たちもなにもできない…これじゃ、よっちゃんが苦しみから解放されるのをただ待つしかないじゃないですか」
梨子「時間なのか、私たちの誰かなのか、それ以外のなにかなのか、きっかけを待ち続けることしかできない…そんなのには、耐えられないんです」
ダイヤ『…言うまでもないことだと思いますが、この行いが必ずしも善子さんを救う結果になるとは限らないのですよ』
梨子「…わかってます」
梨子「きついかもしれないけれど、そういう形でもよっちゃんが解放されるのなら、それでいいと思っています」
梨子「傷付いたよっちゃんの傍にいることだけは、私たちにもできるから」
ダイヤ『………………』
ダイヤ『…二年生は、強情な方ばかりですわね』
ダイヤ『善は急げ。善…かどうかはともかく、こればかりは待ったからといって日和が来るものではないでしょうからね。土曜日でよいですか?』
梨子「ダイヤさん……はいっ!」
ダイヤ『最悪、泊まりになりますわよ』
………………
…………
……
121ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:31:46.03ID:KyYM3O1R
梨子「で、よっちゃんに連絡したとおりよ」
善子「なんでそれを私に話さないのよ!話の肝を!」
梨子「話したら来なかったでしょ、よっちゃん」
善子「当たり前じゃない!」
ダイヤ「宿泊道具はお持ちになりましたか?」
善子「持ってきたわよ!持ってこいって言われたもの!」ホラ!
ダイヤ「よろしい」
善子「あああもうなんなのよこの先輩たちこの間から…」
ダイヤ「始まったことを悔いても仕方ありませんわ。それよりほら、トランプを買ってきたので…その…」ソワソワ
善子「いーえまだ間に合うわ!次で降りて引き返す!」
ダイヤ「んなっ!」
ダイヤ「ま、待ちなさい!ルック!ルックチョコもあります!」
善子「そんなんで釣られるわけないでしょうが!」
ワーキャー ワーキャー
梨子「……」
梨子 (ごめんね、よっちゃん。無理やりこんなこと…)
梨子 (でも、よっちゃんのためにできることがあるなら、どんな細い糸でもたぐってみたいの)
梨子 (…力を貸して。)
………………
………
122ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:32:47.18ID:KyYM3O1R
ミシマー ミシマニ トウチャクデス
善子「おりるぅぅぅ~~~っ!」ジタバタ
ダイヤ「おとなしくしなさい!」ガシッ
梨子「もうちょっと!もうちょっと我慢して!」ガシッ
カンナミー カンナミニ トウチャクデス
善子「離してぇぇぇ~~~っ!」ジタバタ
ダイヤ「他のお客さんの迷惑でしょう!騒がない!」ガシッ
梨子「ほらよっちゃん!イチゴのポッキーあるから!」ガシッ
アタミー アタミー、デスッ
善子 ブスッ
ダイヤ「なにをしていますの。早く降りますわよ」
梨子「よっちゃん早く。降り遅れるよ」
善子「なんなのよ、もう!!」ンニャー!
………………
………
123ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:33:44.64ID:KyYM3O1R
ハッシャイタシマス
プシュー ガタゴト…
ダイヤ「やっとおとなしくなりましたね…」
梨子「これで東京駅まで行くから。また途中で降りようとしないでね?」
善子「…もうしないわよ」プイッ
梨子「…怒った?」
善子「気分は害した」
梨子「ぅ…」
善子「でも、怒ってはいないわ」
善子「だって、ダイヤも梨子も私のためを想ってくれたから、こんなことするんでしょ」
善子「それなら…怒る理由はないもの」
ダイヤ「善子さん」
善子「だからここからは、頭を切り替えることにする」ハァ…
ダイヤ「頭を切り替える?」
善子 キッ
ダイりこ ビクッ
善子「会えるの?」
梨子「え」
124ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/06/10(日) 09:35:50.13ID:KyYM3O1R
善子「こんな思いして電車乗って二千円も払って、ほんとにみ…南ことりに会えるわけ?!」
梨子「それは…だから、言ったじゃない。わからないって」
ダイヤ「そうですわ」
ダイヤ「わたくしたちが無事ことりさんに会うためには、考えられないほどの幸運が必要になります」
ダイヤ「時間があれば作戦を練ることで少しは勝率も上げられたかもしれませんが…」
梨子「ううん…正直、時間を掛けたところで妙案が浮かぶとも思えなかったから。結局はほとんど出たとこ勝負だよ」
善子「なんなのよそれえ!」モーッ!
善子「それじゃ私はどうすればいいのよ。がっかりする準備をすればいいの?それともお話しする準備?」
梨子「どっちの覚悟も決めておいて」
善子「鬼ぃ!!」
ダイヤ (スパルタ…)
ダイヤ (………)
ダイヤ「善子さん。ここで言うことではないかもしれませんが」
善子「なによ」
ダイヤ「復路と宿泊費があるので、掛かる費用はこの二千円だけじゃ到底済みませんわよ」
善子「ほんとに言うことじゃないわね!ばか!」
梨子 (追い討ち…)
………………
………