サヨナラの意味 2

28名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:53:35.28ID:YLJ37Jp/

理亞「すご。あれみんな棘人なんでしょ」 

英玲奈「そうだな。だが後ろの六人は人だぞ」 

理亞「げ…あんな近くで踊るの?絶対危ないじゃん」 

英玲奈「ふふ…そうだろう。棘人のトゲで怪我人が出るようなことになれば、たいした問題だ。よくもあんな儀式をこの時代にまで続けるものだよ」 

理亞「あ!あれ今年の代表じゃん」 

英玲奈「東條希だな。ここからが見ものだ」 

理亞「知ってる!棘人斬るんでしょ!よし…録っちゃお」 


そう言って鹿角理亞が取り出したのは、ビデオカメラ。 

その姿に、私は飲み込み切れない感情が込み上げてくるのを感じた。 

くだらない好奇心で、私たちの決意を―― 


ルビィ「やめて!!」 

@@@

 

30名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:54:21.23ID:YLJ37Jp/

占占占 

ルビィ「やめて!!」 


私も、南さんも、果南も。 

傍付きの棘人も、人も。 

誰もがその声に振り返った。 

けれど、最も強く反応したのは黒澤ダイヤだった。 


ダイヤ「ルビィ?!」 


言うが早いか駆け出したその後を、一瞬遅れて追う。 

視線を先にやり、得心する。 

あれは確か…聖良さんの妹と、統堂さん。 

少し身を引いて立つ統堂さんと打って変わって、聖良さんの妹と取っ組み合っているのは、黒澤ダイヤの妹。 

黒澤ルビィちゃんだ。 

学舎と黒澤邸の外ではほとんど姉に付きっきりで、誰かと話す姿さえ見たことがない。 

それが、取っ組み合いを。

 

32名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:55:18.72ID:YLJ37Jp/

理亞「放して!放せって言ってるの!」 

ルビィ「放さない!あなたこそこれをしまって!」 

理亞「あんたが掴んでるからしまえもしないっての!放しなさいよ!」 

ダイヤ「ルビィ!なにをやっているのですか!」 

ルビィ「お、おねいちゃ…」 

理亞「黒澤ダイヤ!このバカをどうにかしてよ!」 

ルビィ「おねいちゃんに乱暴な口きかないで!」 

ダイヤ「ルビィ、よしなさい!その子の手を放して!」 

ルビィ「い…嫌あっ!あなたが謝るまで放さない!」 

理亞「誰が!なにを!謝る必要があるのよ!」 

ダイヤ「あ、謝る…?」 

希「ぼさっとしとかんと、止めるのが先やん!」 


会話をへたに聞いてしまったがために混乱を共有した黒澤ダイヤに代わり、もつれ合う二人の元へと飛び込む。

 

33名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:56:08.75ID:YLJ37Jp/

希「喧嘩はあかんって!なにがあったか知らんけど、そういうときは話し合うのが先よ!」 


それより、どうしてこの人は…統堂さんは、こんなに近くにいて眺めているだけなの。 

と、余計なことに思考を割いていたのがよくなかった。 

私は気付いていなかった。 

忘れていた。 

黒澤ルビィが棘人であることを。 


ダイヤ「…っ、ルビィ!あなたトゲが…」 

希「とにかくまず落ち着いて――――っ、痛っつぁあ!」 


手の甲に鋭い痛みが走って。 

視界に赤色が舞い踊った。 

占占占

 

34名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:56:56.61ID:YLJ37Jp/

◇◇◇ 

善子 ねえ。私のとこにも来たんだけど…あのセンパイ。 

真姫 そう…これで何人目かしら。 

花陽 凛ちゃんも理亞ちゃんも花丸ちゃんもだから…六人かな。 

真姫 ふーっ…一体なんのつもりかしらね。聞いた話じゃ、三年生にも声を掛けて回ってるらしいじゃない。 

善子 花陽。演劇ってこんなに人数いるものなの? 

花陽 どうなんだろう…私も演劇って観たこともやったこともないから… 

真姫 そこよ、そこ。人数集めるのはまだいいとして、なんで揃いも揃って未経験者をこんなに集めてんのって話よ。素人ばっかり集まったってどうなるもんでもないでしょうに。 

善子 三年生には何人か経験者いるらしいわよ。 

真姫 いたって一緒よ。私はやらないわ。イミワカンナイもの。 

花陽 で、でも…ちょっと楽しそうかな…なんて。 

善子 あら。花陽は乗り気なのね。

 

35名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:57:30.79ID:YLJ37Jp/

花陽 ちょびっとだけだよ!花陽は舞台に立つのなんて、考えただけでも耐えられないし…緊張しちゃう… 

真姫 あなた可愛いし声も綺麗なんだから、舞台映えはするんじゃないの?知らないけど。 

花陽 そ、それを言うなら真姫ちゃんこそ。美人だし歌も上手だし、向いてると思うけどなあ。 

真姫 そ…そりゃ、私に向いてないことなんか一つもないけど! 

善子 キャラも立ってるしね。 

真姫 今ばかにした? 

善子 知らなーい。ま、花陽だって真姫だって、別に他にやりたいことがあって時間がないっていうんじゃないでしょ?だったら試しにやってみてもいいんじゃないの? 

真姫 ……善子がそこまで言うならいいけど、 

花陽 ……ね。 

善子 は?なに? 

真姫、花陽 もちろん、善子もやるのよ。/善子ちゃんもやるんだよ。 

◇◇◇

 

36名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:58:08.04ID:YLJ37Jp/

◆◆◆ 

『棘人。』 

『感情が昂ると体表からトゲが生える体質を持つ亜人。』 

『危険な存在であるとしてかつて人と争った彼らは、やがて淘汰されていきました』 

『ただ一人の生き残りである、少女を除いて』 

『棘人の血を濃く受け継いだ少女は、幼い頃に一度だけ、両親を亡くしたときに全身からトゲを生やしました』 

『心優しい少女は、ただ一度きりのその姿を村人に見咎められ、以来、一人ぼっちで生きています』 

『伸ばす手は払われます』 

『寒い夜に身を寄せ合える相手はいません』 

『喜びに抱擁を交わしたことはありません』 

『少女は今日も』 

『一人ぼっちで生きていきます』 

◆◆◆

 

37名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:58:39.67ID:YLJ37Jp/

占占占 

『少女は今日も一人ぼっちで生きています』 


何度も読んだ一文に、改めて目を落とす。 

大樹の影、吹き抜ける風。 

広場はしんと静まり返り、見渡す限りよそよそしさがそこらじゅうに転がっている。 


希「はあ…」 

果南「ため息なんかつくと幸せが逃げるぞ~ってね」 

希「果南」 

果南「なんで本なんか読んでるのさ。早く帰って治療しなよ」 

希「…今ウチがこの場を去るわけにはいかんよ」

 

38名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:59:15.55ID:YLJ37Jp/

棘人。 

人。 

立場がある者。 

原因を作った者。 

なにもできなかった者。 

そして、最渦中に位置する私。 

この場にある全ての視線が自分に注がれている。 

立ち居振舞いを誤れば、それが棘人と人との隔絶に決定打となってしまうことは想像にたやすい。 


果南「だからって、希になにができるのさ」 


ぶっきらぼうに言いながら、ごそごそとポケットを探る。 


果南「…酢こんぶしかなかった。ごめん」 

希「ええよ。たいした傷やないし」 


差し出された酢こんぶを丁寧に押し返す。

 

39名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 20:59:53.52ID:YLJ37Jp/

けれど、果南の言う通りだ。 

ここで棘人の存在を非難するなんて選択肢はまさかないにしても、それなら、どうすればいい。 

ルビィちゃんのもとへ行き、「気にしてないよ」と笑えばいい? 

聖良さんの妹ちゃんを連れて、「ごめんなさい」と謝ればいい? 

なにをしたって誰かを傷付けることになりはしないか。 

私に、今、なにができるという―― 

草の根を踏む音。 

二つ。 


ダイヤ「東條さん」 

希「…黒澤さん。ルビィちゃん」 

ダイヤ「お使いください」 


絆創膏。 


希「あ…ありがとう」 

ダイヤ「では」 

希「………」 


凛と去りゆく黒髪と、時折なにか言いたげに振り返るツインテール。 

それだけ。 

たったそれだけ。

 

40名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:00:25.94ID:YLJ37Jp/

たったそれだけのことに、一体この人は、どれだけの勇気を振り絞ってくれたというのだろう―― 


希「黒澤さん!」 

ダイヤ「はい」 

希「ありがとう」 

ダイヤ「…はい」 

希「明日からも、よろしく。ルビィちゃんも、また明日ね」 


言えたのは、それだけだった。 

なるほど。 

勇気とは、こういう風に使うんだ。 

最善だったかはわからない。 

けれど、決して誤りはしなかったはずだ。 

今は、それでいい。 

振り向くと、呆けた様子の幼馴染み。

 

41名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:01:07.94ID:YLJ37Jp/

果南「希」 

希「ん。ウチ、間違わんかったよな」 

果南「黒澤…さん、が」 

希「え?」 

ダイヤ「東條さん」 

希「え?あれ?黒澤さん。ごめん、ウチなんか…」 

ダイヤ「ダイヤです」 

希「え?」 

ダイヤ「この子はルビィ」 

ルビィ「…」ペコ 

ダイヤ「私たちはどちらも『黒澤』ですから」 

希「あ、ああ………ああ!」 

希「ダイヤ…ちゃん」 

ダイヤ「ふふ。希さん」 

ダイヤ『棘人とネコ』スッ 

希「あ…その本」 

ダイヤ「私も、よく読むのです」 

希「あ、えっとね、ウチも」ゴソゴソ 

希『棘人とネコ』サッ 

ダイヤ「この本は…とても、大切な読み物です」 

希「……っ!」

 

42名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:01:40.07ID:YLJ37Jp/

優しく、優しく。 

『棘人とネコ』に瞳を落とす姿は、決して恐れるべきものには見えなくて。 

私は。 


希「なあ」 

ダイヤ「はい」 

希「ウチのと、交換しいひん?」 

ダイヤ「…ぜひ」 


差し出し、差し出され。 

本を挟んではいたけれど。 

私たちは確かに、お互いの手を取った。 

占占占

 

43名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:02:25.70ID:YLJ37Jp/

*** 

善子「……」コソコソ ジイッ 

あんじゅ (また見てる…無視無視

あんじゅ「…あ」 

あんじゅ「凛ちゃあん♡」トトト 

凛「にゃ!あんじゅちゃん。こんにちは~」 

あんじゅ「こんにちは。今日もネコみたいで可愛いわね」 

善子「!」ギリ… 

凛「あんじゅちゃんもかわいいよ!」 

あんじゅ「まあ、嬉しい」クス 

あんじゅ「今日は学舎どうだった?楽しかった?」 

凛「うん、楽しかったー!でもね、やっぱりみんな凛とお話ししてくれないの…」 

あんじゅ「あら~…みんなって、花陽ちゃんとか?」 

凛「そう。花陽ちゃんね、凛のこと怖いみたいなの。凛なんにもしないのにな~」 

あんじゅ「よしよし…それでもいつも元気で、偉いわね」ナデ 

凛「♡」ゴロゴロ 

善子「………っ!!」ギリギリ… 

あんじゅ「いつかみんなと仲良くできるといいわねえ」 


あんじゅ「たとえ表面だけでも…ねえ」 

………………

………

 

44名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:03:00.81ID:YLJ37Jp/

テクテク 


善子「!」ハッ 

善子 (あんじゅさんだ!) ササッ コソコソ 

善子 (今日も一人…格好いい。孤高にして至高の存在ね) フフ 

善子 (どこか行くのかな) ジイッ… 


――あんじゅちゃん。こんにちは~。 

――こんにちは。今日もネコみたいで可愛いわね。 


善子「!!」 

善子 (星空凛だ…また…

善子 (あんじゅさん、なぜかあの子にだけ優しい…

善子 (羨ましい…

善子 (…いやいや!孤高なるあんじゅさんの気高さを脅かす邪悪な存在め!

善子 (あんなトゲも出せないチビっこが…

善子 (…私も出ないけど


ナデナデ ゴロゴロ 


善子 (……いいなあ

***

 

45名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:03:45.70ID:YLJ37Jp/

◇◇◇ 

希 それで?協力するんはええけど、具体的にはどうするん? 

穂乃果 それは、………梨子ちゃんお願いっ。 

梨子 ええ~?!もう、しっかりしてよ穂乃果ちゃん。部長でしょ! 

穂乃果 穂乃果はお飾りで、真のリーダーは梨子ちゃんと海未ちゃんだから! 

海未 自信満々に言わないでください… 

果南 あははっ、なかなか面白いかもね。漫才演劇やるってことか~。 

梨子 ち、違いますっ!ほら穂乃果ちゃん、あなたのせいよ! 

穂乃果 あはは、ごめんごめん。 

ことり …まだ、みんな頷いてくれたわけじゃないんだね。 

希 そりゃそうよ。ウチら三年生も、暇を持て余してるわけやないんやから。 

果南 まあ、英玲奈と希とあんじゅは持て余してるけどね。 

英玲奈 おまえもな。松浦。 

あんじゅ 学年でものんびりしていると名高いものね。私たち。 

希 一緒にされてえらい迷惑よ、ウチは。生徒会やってるっていうのに。 

理亞 …一年生の間でも、希先輩は自由人だって噂だよ。 

希 そんなあっ?!

 

46名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:04:27.44ID:YLJ37Jp/

真姫 そういえば、三年生にはあなたのお姉さんもいるでしょ。なんでこの場にいないのよ。 

理亞 は?なんでいるのが当たり前になってるわけ?こんな素人集団に姉さまが加わる理由なんかないからだよ。 

善子 でも自分はやるのね… 

理亞 あんたなんか言ったァ?! 

花陽 ちょ、ちょっとみんな!先輩たちの前だよ! 

曜 随分と元気な子が揃ってるねー、一年生は。 

千歌 でも力になってくれるっていうんだから、根は優しくて良い子たちばっかりってことだよ!ね! 

理亞、真姫、善子 ………………// 

ことり あれ?そういえば、花丸ちゃんは? 

海未 花丸には人を呼びにいってもらっていますよ。 

穂乃果 私がどうしても声を掛けられなくって…花丸ちゃんが仲良しだっていうから、お願いしたの。 

凛 穂乃果ちゃんが声を掛けられなかった?!どんな相手なの、それ?! 

穂乃果 り、凛ちゃんの中で穂乃果どういうイメージなの… 

真姫 だって強引だったもの。あんなに無茶苦茶な誘い方ってないわよ。 

理亞 とか言いつつのこのこついてきてるからね。 

真姫 あなただって一緒じゃないの! 

理亞 私は姉さまに代わってやむなく来ただけだし! 

梨子 ま、まあまあ二人とも…

 

47名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:05:21.29ID:YLJ37Jp/

ガチャ 

花丸 遅くなりました。…ほら、ルビィちゃん。 

ルビィ …… 

穂乃果 あ!ルビィちゃん来た! 

ルビィ ぴっ?! 

花丸 穂乃果さん。あんまり大きな声を出すと、ルビィちゃんがびっくりしちゃうから。大丈夫だよ、ルビィちゃん。 

穂乃果 あ…ごめんね。 

凛 ルビィちゃんだったんだ… 

善子 それなら穂乃果さんが声を掛けるのに失敗したのも… 

真姫 まあ、頷けるわね… 

希 あ。ルビィちゃんって、ダイヤちゃんの妹さんかな。 

ルビィ は、はい…お姉ちゃんを知ってるんですか? 

希 まあ、そりゃあね。おんなじクラスやし。 

果南 よ、ルビィ! 

ルビィ かなんちゃん。かなんちゃんも一緒なの? 

果南 そんなとこだよ。よろしくね。 

英玲奈 しかし、黒澤の妹も一緒にやるのか。それなら…なあ。 

果南 うん…そうだね。やる理由になってくれたらいいんだけど。 

希 ダイヤちゃん以外にも、三年生はクセモノ揃いやからねえ。 

ルビィ お姉ちゃん… 

◇◇◇

 

48名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/11() 21:05:55.16ID:YLJ37Jp/

◆◆◆ 

『ある日、少女が森を歩いていると、小さな泣き声が聞こえてきました』 

『声のする方へ行くと、ひざを擦りむいたネコがいました』 

『どうやら、木の根につまずいたようです』 

『たいへん。少女は駆け寄ります』 

『しかし』 

『少女は手を伸ばすことができません』 

『払われた感覚が、女の子の表情が、はっきりと甦ります』 

『私は何度傷付いたって構わない。けれど、この手はみんなを怖がらせてしまう…』 

『少女はただ傍にひざを付き、呼び掛けました。すると、』 

『…手を、貸してはもらえませんか』 

『ネコは言います』 

『どうにも、わたしだけでは立ち上がれません』 

『お願い。手を――』 

『少女ははっと息を呑み、伸ばされた手の震えを慰めるかのように』 

『しっかりと握りました』 

『さあ、立って。村まで一緒に行きましょう』 

『ありがとう。ありがとう』 

『少女が初めて聞くお礼の言葉は、とても暖かく、胸に染み込んでいきました』 

◆◆◆

 

51名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/12() 00:40:25.39ID:W2PjMw5p

*** 

千歌「…ふう」 

にこ「ため息なんかついて、どーしたのよ」 

千歌「あ、にこちゃん…」 

にこ「しけたカオしてるわね。そんなんじゃよくないわよ」 

千歌「にこちゃんって、果南さんと希さんと幼馴染みなんだよね」 

にこ「そーよ。それがどうかした?」 

千歌「今日は一緒に帰らないの?」 

にこ「別に。毎日一緒に帰る契約してるわけでもないし。今日は一人で帰る気分なのよ」 

千歌「……」 

にこ「……あ。や、いいわよ。急に誰かと帰りたい気分になった」 

千歌「にこちゃんは優しいし強いんだね」 

にこ「は?なにがよ」 

千歌「果南さんと希さんだけどこか寄って帰るかもって思うと、淋しくならない?」 

にこ「ならないわねー」 

千歌「なんで?」 

にこ「そんなんで私たちのなにかが変わるとは思わないからよ」 

にこ「…わかった。穂乃果と曜のことね」 

千歌「うん。学舎では三人でいるけど、でも…帰りとか、やっぱり一緒にいづらくって」 

にこ「気にしなきゃいいのよ」 

千歌「どっちを?」 

にこ「どっちも!いづらくたって一緒にいたいならいりゃいいし、それが嫌で一人になるんならその場にいない相手のことなんか考えない」 

にこ「そんだけよ」 

千歌「…あはは。チカもにこちゃんみたいに強くなりたいなあ」 

にこ「なれるんじゃない。そのうちね」 

………………

………

 

 

52名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/12() 00:41:21.63ID:W2PjMw5p

穂乃果「曜ちゃんっ!もう帰れる?」 

曜「穂乃果ちゃん。うん、ちょっと待ってね……オッケー!」 

穂乃果「かえろーっ!」 

曜「おー!」ゞ 


穂乃果「準備も進んできたね~」 

曜「わくわくしちゃうよね、この雰囲気!あああ、なんだか走りたくなっちゃうなー」ウズウズ 

穂乃果「う~ん…穂乃果も!せっかくだし走ろう!」 

曜「じゃあポストまで競走しよっか!」 

穂乃果「競走はだめ!曜ちゃん速すぎるから!」 

曜「全速前進…」 

ほのよう「「ヨーソローーーーーーッ!!」」タタタタタッ 


穂乃果「はあ…はあ…っ」 

曜「わーい、勝ったー!」ブイッ 

穂乃果「競走じゃないって言ったじゃん!なんで本気で走るの?!」ゼエゼエ 

曜「えー。せっかく走るなら本気じゃないと楽しくないよ」 

穂乃果「お昼ごはん全部出てきちゃったらどうするの…うえっ」 

曜「鍛え方が足りないなー、穂乃果ちゃん」 

穂乃果「体力オバケに言われたくないよ…」