39ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶)2018/03/26(月) 23:01:35.98ID:TEkikqek
「……ああああんっ」
花丸「…ふうっ、ごちそーさまずらっ」
つやつや。
とは、こういうときの心境を表すのかな。
いっぱい頂いて大満足、お肌もつやつやになった気分だ。
今日はあんまり抵抗してみせなかったな。
繋いだ右手に時折きゅうっと力が入るのが、なんとも言えず可愛かったなあ。
さて、じゃあベッドに戻るとしよう。
…ぎゅっ
花丸「ん?」
布団を出ようとしたところで、右手に力が込められた。
それも束の間、すぐにぱっと離される。
花丸「…また明日、ずらね」
頭をひと撫で、するりと布団を抜け出した。
***
53ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶)2018/03/27(火) 05:46:54.82ID:JtY/mgnm
善子「函館の朝の恒例ね、もう」
アラーム直前の起床。
腰に付くルビィコバンザメ。
そして極端にうずくまる理亞の姿…もしかして寒いのかしら。
それなら暖房の温度を上げればいいのに。
自分の家なのだし。
善子「…あ、おはよう?」
理亞「…おはよう」
防御姿勢から、無防備な仰向けへ。
起きていたらしい理亞と挨拶を交わす。
手のひらを太陽に透かすように、しげしげと自分の右手を見詰めてる。
室内じゃ、真っ赤に流れるあなたの血潮は見えないと思うけど。
呆けたような表情で、今日もやや紅潮気味に見える。
善子「…どうかしたの?」
理亞「いや…べつに…」
善子「あ、そう…」
………………
………
54ぬし ◆z9ftktNqPQ (プーアル茶)2018/03/27(火) 05:47:49.27ID:JtY/mgnm
「頂きます」「頂きます」「頂きます」「頂きます」「頂きます」
聖良「今朝はみんなで食べ始められましたね」
花丸「ごはんはやっぱりみんな揃って食べるのが一番ずら」
ルビィ「花丸ちゃんはいつでも美味しそうだよ」
花丸「余計なこと言わなくていいずらよ~」
善子「…肝心の誰かさんは心ここにあらずっぽいけどね」
聖良「理亞。食事中に考え事は良くありませんよ。…理亞?」
理亞「え、ああ、ごめんなさい。少しぼーっとしてて」ジッ
善子 (とうとうチラ見ですらなくなった…一体なんなのよ…って、)
聖良「大丈夫ですか? やっぱり体調が良くないのでは」
理亞「ううん。大丈夫」ジ――ッ
聖良「そうですか? それならいいのですが…」
もぐもぐ…もぐもぐ… (ジ――――――ッ)
善子 (露骨が過ぎる!!)
………………
………
55ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 05:49:52.55ID:5yINbgff
善子「いよいよ面接ね」
ルビィ「が…がんばるびぃっ」
花丸「緊張しっ放してたって仕方ないよ、ルビィちゃん。肩の力を抜いて」ポンポン
ルビィ「う…うん、ありがとう花丸ちゃん」
理亞「…………き、緊張するーう」
善子「えっ…」 花丸「………??」
善子「あの、理亞…そんなに緊張しなくても…ってかあんまりしてなくない?」
理亞「する!してる!緊張するるる」チラッ
善子「…まあ、肩の力を抜いて」
理亞「緊張…し、すれ…緊張すれば…することを…」チラッチラッチラッチラッ
善子「……ずら丸。理亞が緊張をほぐしてほしそうなんだけど」
花丸「ずら?」
理亞「っ?!津島善子おまえ…っ!」(ありがとう…ありがとう…)
善子 (聞こえる…心の声が聞こえる…)
花丸「理亞ちゃんも。肩の力を抜いていくずら」ポン
理亞「っし!!」グッ
善子「やっぱ緊張してないでしょあんた」
56ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 05:50:43.78ID:5yINbgff
善子「じゃあ、私たちが見送れるのはここまでね」
花丸「行ってらっしゃい。ルビィちゃん、理亞ちゃん」
ルビィ「いいいい行ってきもす」ガチガチ
理亞「いいいい行ってこわす」ガチガチ
善子 (ずら丸の意味ないじゃないの…)
ルビィ「ルビィ、知らない人と話すの苦手…」
理亞「姉さまがいないのがこんなにも不安だなんて…」
善子「緊張上等よ」
ルビィ「善子ちゃん…」 理亞「津島善子…」
善子「知らない相手に主張をすることも、今までいつでも隣にいた人がいないことも、怖くて当然。不安で当然でしょ」
花丸「そうずら。人は未知を恐れるもの。新しいことに緊張するのは正常な反応ずら」
善子「でもさ。自分たちで全部やらなきゃ」
花丸「全て意味がなくなるずら」
ルビィ「…うん。行こう、理亞ちゃん」
理亞「うん。行こう、ルビィ」
よしまる「「がんばれ!」」
………………
………
57ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 05:51:44.33ID:5yINbgff
善子「ところで、ずら丸。あんた理亞になんかした?」
花丸「ずら?なにもしてないよ?」
善子「うーそ!絶対なんかしたでしょ!」
花丸「そもそも、『なんか』ってなに…そう曖昧に言われると、してないことなんて一つもないずら」
善子「う…だから、その……ほ」
花丸「ほ」
善子「惚れさせるようなことを…したのか、って訊いてんのよ…」
花丸「惚れさせるう?」
善子「ハグとか、キスとか、そういうことしたんじゃないの?」
花丸「なんでおらが理亞ちゃんにそんなことするの…」
善子「そんなの知らないわよ…」
花丸「というか、その言い方じゃまるで理亞ちゃんがおらに惚れてるように聞こえるずら~。あはは」
善子「…………」
花丸「あははは……え、うそ」
善子「私が見る限りではね…」
花丸「全く気付いてなかったずら」
善子「ルビィも聖良さんも気付いてないと思うわ」
花丸「だったら善子ちゃんの勘違いじゃないの?」
58ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 05:52:56.04ID:5yINbgff
善子「ええー…うーん…そう言われちゃうとなあ。ずら丸にも心当たりないんなら、勘違いなのかしら」
花丸「寝耳に水ずら…それに、おらと理亞ちゃん今までほとんど話したこともないよ。それが惚れてますって言われても、全くぴんと来ないずら」
善子「それは…ほら…ここ数日、同じ家で過ごして寝食共にしてるわけだから」
花丸「その理屈で行くと善子ちゃんにも惚れてることになるずら」
善子「この短期間で惚れちゃうようなことをしたのよ!あんたが!理亞に!」
花丸「だからしてないずら…たった数日で顔見知りから惚れるに至るなんて、おらがどんな過激なことしたと思ってるの」
善子「よ…夜這いとか」
花丸「梨子さんに影響され過ぎずら」
善子「…はあ。それもそうよね…ごめん、私の勘違いだったわ」
花丸「そういうことになるとしたら、ルビィちゃんとのほうがよっぽど有り得ると思うずら。一緒に苦難を乗り越えた二人の間には、自ずと愛が生まれるものずら…」
善子「愛が…」ポーッ
花丸「祝福するずら。ルビィちゃんと理亞ちゃんを」
善子「うん…祝福するわ…」
………………
………
60ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:04:30.78ID:5yINbgff
コンコン
理亞「姉さま」
聖良「おや、理亞。それにルビィさん。どうしましたか?」
理亞「もう寝るから、お休みなさいって言いにきた」
聖良「今日は早いのですね」
ルビィ「一段落ついたから、早めに寝るんです!」
聖良「そうでしたか。連日遅かったですからね、休めるときにゆっくり休んでください」
ルビィ「じゃあ、お休みなさい。聖良さん」
理亞「お休みなさい、姉さま。姉さまもあまり遅くならないうちに休んでね」
聖良「ありがとうございます。お休みなさい、二人とも」
ガチャ バタン
ルビィ「今日くらい聖良さんと一緒に寝なくてよかったの?」
理亞「う、うん。姉さまとはルビィたちが帰ったあとでも一緒に寝られるから」
ルビィ「そっか、そうだね。みんなで寝るのは今しかできないもんね」
理亞「それに…ずら子が…」
ルビィ「うゆ?花丸ちゃんがなあに?」
理亞「な、なんでもない!」
ルビィ「えー。変な理亞ちゃん」
理亞「うるさい。ルビィに言われたくない」
………………
………
61ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:05:38.59ID:5yINbgff
花丸「今日はみんなで揃ってお休みなさいできるずらね」
善子「昨日までは私たち先に落ちちゃってたからね」
ルビィ「ルビィたちのお願いに付き合ってもらってるんだもん。当然だよ!」
理亞「電気消すよ」
パチン
善子「明後日のライブが終わったら、ここもおいとまするのね」
花丸「なんだか感慨深いずら~」
理亞「ひ、人の家に勝手に感慨を持たないでくれる?」
ルビィ「ルビィたちが帰っちゃっても、泣いちゃだめだよ」
理亞「だ!誰が泣くのよ!」
花丸「ふあああ…おらはそろそろ寝ちゃうずら…」
理亞「え?!ずら子、寝るの?!」
花丸「え?寝ちゃまずいの?」
理亞「あ、ううん。なんでもないけど」
ルビィ「せっかくみんなでいるからお喋りしたいんだよね、理亞ちゃん」
花丸「お話ししたい気持ちは山々だけど…眠気…が…」グー
善子「落ちるの早っ!でも私も眠い。寝るわよ」
ルビィ「明日またいっばいお話ししようね、理亞ちゃん」
理亞「う、うん…おやすみ」
………………
………
62ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:08:39.31ID:5yINbgff
ドキ…ドキ…
ドキ…ドキ…
もぞ…
理亞「!」
ルビィ「うゆ…」もぞもぞ
理亞 (なんだ、ルビィか…)
ドキドキ…ドキドキ…
ドキドキ…ドキドキ…
理亞 (ずら子、あっさり寝たな…)
理亞 (でも昨日も私たちが寝るときは寝てたしな…)
理亞 (もしかしたら今日はなにもしないつもりかもしれない)
――花丸『…また明日、ずらね』
理亞 (…………)もやもやもや
………………
………
63ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:10:42.02ID:5yINbgff
体感――2時半ぴったり。
目覚まし時計を掛けたわけでもないのに、今日も目を覚ます。
からだが求めてる証拠か。
寝入りから睡眠時間が満足してるはずないのに、目はとてもぱっちりと冴えている。
今夜もルビィちゃんを頂かないと、再び眠りに就くことは叶わなさそうだ。
花丸「そうじゃなくても頂くけど」
音が鳴らないように、抜き足、差し足。
無事に端の布団まで辿り着く。
あつらえたように空いた一人分の隙間。
からだを滑り込ませる。
花丸「今日も起きてるずらね。お待たせしましたっ」
「…………」
花丸「あれ?」
無反応。
そういう日かな。
花丸「まあいいや。いっただっきまー チュ
64ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:25:36.59ID:5yINbgff
花丸「……?!………?! ?!」
ちょっと待っ、なにがなにやら…
どうして今、口が
口、が
理亞ちゃんに塞がれている…?!
首と布団の間に左腕を差し込んで、
右手は右手を握って、
脚は脚に絡めて。
うなじに口付けを落とそうとした ところまでは、いつもと同じだった。
なのに なのに、どこで違った?
腕の中には理亞ちゃんがいて、
器用に顔をこちらに向けて、
唇を 塞がれ、て…いる…
65ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 06:35:12.69ID:5yINbgff
そのまま何秒が、何十秒が経過したのか。
ぷは、と小さな声が口付けの幕切れとなった。
しかし、脳には酸素が届かない。
薄暗い部屋の片隅、布団の中で理亞ちゃんと見詰め合う。
その目は潤んでいて、まるで…まるで…
二度目の口付け。
そんな、有無も言わせず…
いつの間にやら両腕が首に回されていて、すがり付くような格好の理亞ちゃん。
吐息が熱く、舌はぬるぬると口内を駆ける。
口だけが解けてしまって一つになったかのよう。
混乱したままの頭で、わずか一点の快感だけを享受する。
だめ…まともに考えられなくなる…
先ほどよりも長い口付けが、ぷはっと終わる。
68ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:21:19.12ID:5yINbgff
花丸「えっと、理亞ちゃん…」
理亞「なに」
花丸「今の口付けは…」
理亞「ずら子からなかなかしてくれないから」
oh...
話が何足か飛んでる。
いや違う、理亞ちゃんの中では飛んでない。
つまり、話の前提がずれてる。
――花丸『その言い方じゃまるで理亞ちゃんがおらに惚れてるように聞こえるずら~』
――花丸『たった数日で顔見知りから惚れるに至るなんて、おらがどんな過激なことしたと思ってるの』
――善子『よ…夜這いとか』
69ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:22:15.85ID:5yINbgff
理解した。
全て理亞ちゃんだったんだ。
ルビィちゃんの寝込みを襲っていたつもりが、その実あれは理亞ちゃんだった――そういうことか。
表情を見るに、もう手後れ…
今さらここ数日の行いは間違いだったと伝えて意味はない、むしろ最悪の事態を招きかねないだろう。
逆転の手立ては…ない。
少なくともこの頭では思い付かない。
それならば。
理亞「ずら子?」
花丸「理亞ちゃん。おらの名前は、花丸ずら」
理亞「…花丸」
花丸「よく言えました」チュ
三度目はこちらから。
だってもう、混乱が解けてもいれば踏み止まる理由もない。
このからだは理亞ちゃんを求めているのだから。
70ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:23:17.44ID:5yINbgff
花丸「今日に限って真正面から受け入れてくれるなんて、どういう風の吹き回しずら?」
理亞「だって、あと何日もしないうちに花丸たち帰っちゃうから…それに」
花丸「それに?」
理亞「少女以上のこと、されてもいい…されたいって、覚悟したの」
花丸「 」
するりと、首に回されていた腕が離れる。
そのままころんと仰向けに転がって、
理亞「花丸……きて」
理性が吹き飛んだ。
***
「理亞ちゃん♡」
「花丸っ♡」
チュッチュ イチャコラ
善子 (がっつりヤってんじゃないのよーーーー!!!)
***
71ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:24:18.96ID:5yINbgff
善子「長い間お世話になりました」
ルビィ「なりましたっ」 花丸「なりましたずら」
聖良「いえ、たいしたお構いもできずすみませんでした。皆さんが泊まっている間、とても楽しかったです。妹がたくさん増えたみたいでした」
?! あの女、私の可愛い妹を勝手に自分の妹に
はいはい静かにしててねー
ルビィ「ところでその、理亞ちゃんは…」
聖良「部屋に籠っています。皆さんが帰るからお見送りを、と伝えたのですが…よほど寂しいのでしょう」
ルビィ「理亞ちゃん…」
善子「ずら丸、あんた呼んできなさいよ」
花丸「ず、ずずずら?!どどどうしておらが…ルビィちゃんのほうが」
善子「もう分かってんのよ。早く行ってきなさいこのキス魔」
花丸「ずらあああああっ!!///」ダッ
聖良「あっ、花丸さん?!」
善子「呼んでくるとのことですので、少しお待ちください」ニコッ
………………
………
72ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:25:20.76ID:5yINbgff
コンコン
花丸「理亞ちゃーん…」
スンスン…
花丸「理亞ちゃん。まるたち、もう帰るよ」
理亞「………」スンスン…
花丸「お見送り、してくれないの?」
理亞「…お見送りしたら、花丸が帰っちゃう」スン…
花丸「お見送りしてくれなくても帰っちゃうずら…」
理亞「なんで!なんでなんで!」ジタバタ ボフボフ
花丸「そ、そんなに叩いちゃ枕が可哀想ずら」
理亞「…花丸は寂しくないの」
花丸「それはもちろん寂しいけど…」
73ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:26:23.57ID:5yINbgff
理亞「函館と沼津だよ。そう簡単に会える距離じゃない」
花丸「でも、年が明けたら会いにきてくれるずら?」
理亞「それは特訓だから。花丸に会いにいくわけじゃない」
花丸 (そこは割り切れるのに…)
花丸「沼津に帰らないと、ラブライブ!に出場することもできないから」
理亞「そんなの分かってる。分かってるけど」
花丸「理亞ちゃん」ハグッ
理亞「花丸…」
花丸「まるたち、約束したずら。決勝で再会するって」
理亞「でも私たちは敗退した…決勝で会う約束はもう果たせない」
花丸「それでも、もう一つの約束はまだ生きてるずら」
理亞「もう一つの約束?」
花丸「うん。今回のラブライブ!を、歴史に残る大会にするって。そのためには沼津に帰らなきゃいけないし、きっと理亞ちゃんたちの助けがなくっちゃ叶えられないずら」
理亞「………」スン
花丸「だから、まるは沼津に帰るよ。帰って、ラブライブ!で優勝して、また理亞ちゃんに会いにくるから。それまで、ちょっとだけ待っててほしいずら」
理亞「…………………」
理亞「…わかった」
***
74ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:27:55.80ID:5yINbgff
時は流れ、春。
「私たちはやったんだ!」
「ラブライブ!で!!」
「優勝したんだ!!!」
「一緒に閉めよう?」
「嫌よ」
「一緒に閉めるずら…」
「嫌だってば――」
「一緒に閉めるずら!! …お願いだから」
「…分かったわよ」
(なぜかみんなで歌う)
「私たちが過ごしてきた時間の全てが…それが輝きだったんだ」
***
75ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:29:38.04ID:5yINbgff
善子「来週から沼津の高校に通うのか~」
ルビィ「途中で学校が変わるって、不思議な感覚だね」
善子「やだなあ…中学時代のクラスメイトに会うの…」
ルビィ「大丈夫だよ。善子ちゃん、きっと人気者になるよ」
善子「なにを根拠に言うのよ…あと、ヨハネ」
曜「あ。お~い、ルビィちゃん。善子ちゃん」
善子「曜さん」
曜「こんなところで珍しいね。たそがれてたの?」
善子「そんなところ」
曜「おとなり失礼っ。でもまあたそがれたくもなるよね~」
善子「あなたはどうせあれでしょ、高校生活の中で二種類の制服を着られる~って喜んでるんでしょ」
曜「ご名答!でも梨子ちゃんなんか三種類だよ、羨ましいな~」
ルビィ「毎年違う制服を着るなんて、ぜいたく…」
曜「そういえば、花丸ちゃんは一緒じゃないんだね」
ルビィ「あ、うん」
善子「あの子は今、函館よ」
曜「は、函館?!」
善子「約束を叶えたから、約束を果たしにいくんだってさ」
***
76ぬし ◆z9ftktNqPQ (茸)2018/03/27(火) 07:31:10.25ID:5yINbgff
サクサクサクサク…
3月も終わるというのに、まだ雪は深い。
沼津ならば報道されそうなほどの積雪が当然のように続く。
三ヶ月ぶりのスノーブーツで、滑らないように坂道を踏み締める。
下は残雪、上は陽光。
空気は冷たく涼しいのに、一歩ごとにじわりと汗が滲む。
雪の中を歩くというのは、習慣がないとなかなか疲れる。
……サクッ
歩みを止める。
もう、歩く必要はなさそうだ。
どこともつかない中途半端な道半ば。
きたる衝撃に少々怯えて、ぐっと腰を落とす。
ザッザッザッザッ ザッザッ
せわしなく揺れるツインテール。
上気した頬は、寒さのせいか、走ってるせいか、はたまた興奮か。
防水加工の鞄を脇に下ろし、両手を広げる。
花丸「――お待たせ、理亞ちゃん」
終わり
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ぬし (火曜日, 14 5月 2019 15:40)
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