【安価SS】鞠莉が社長(仮) 裏側

※過去イチの異常な長さです。

 

書いたきっかけ

本編の頭にも書いていますが、本作を書いたスレは、元はネタスレとして他の方が立てられた場所でした。>>7で出現していることからもわかるよう、たまたま私はスレ立てより早々に発見し、安易な気持ちで唐突に安価をふん投げました。

当時、私は転職期間の真っ最中で、>>7を書き込んだのは繋ぎのバイトの休憩中でした。大型商業施設のいち店舗でバイトしていたので休憩中といえど特にやることもなく、暇潰しにラ!板を眺めていたときのことで、本当に気まぐれだったのだと思います。その証拠に、>>32まで書いたところで休憩時間が終わったのであっさり書くのをやめています。とは言え即死域を脱していたためバイトが終わった後で覗いてもスレは当然残っており、「残ってるなら続き書こう」くらいの感じで再び書き始めます。しかしそのまま四時間ほど更新しているところを見るに、楽しくなったんでしょうね。

そこから三週間程度にわたって更新を続け、やがてスレを完走し完結となりました。

 

 

本作の功績

相当適当な心持ちで書き始めた本作ですが、当然のことながら、ストーリーの構想や着地点などは一切頭にありませんでした。普段から書き出し以外は比較的考えずに書き始める方ですが、本作はそんな次元の話ではありません。なんなら「カキコミ」送りだった可能性も充分にありますし、一歩違えば(例えばバイトが終わった時点でスレが落ちていた、他に強い興味を持っていかれるものがあった、などの理由で区切りらしい区切りさえつかなかった場合)どこにも収録されることなく、私の歴史から姿を消していた可能性も大いにあります。

完結した今でこそそれなりに見れる作品となっており(なっていますか?)、非常に危うい気まぐれが積み重なって出来上がった一作ですが、本作を書き上げる過程で培ったいくつかのスキルは後のSS書きとしての私に大きく作用したと思っています。

 

・ギャグの書き方

ある程度「せっかくだしちゃんと書くか」と思った辺りで、私はまず本作でギャグの練習をしようと考えました。

ギャグSS(とまで言わずともシリアス展開をやわらげられるくらいのギャグシーン)を書けるようになりたい、とは常々思っていたものの、どうしても腰を据えて書き溜めするとその比重は大きく下がってしまいます。そんな折に書き始めた、あまりにもなんのしがらみも思い入れもない、オチも展開もそれどころか話の系統すら決まっていない、最悪やばくなったら切り捨てて失踪すればいい、そんな無責任文章を練習台に使わない手はない、と思ったのです。

そこで、1レスどころか一行先も考えずに書きながら、ふと頭に浮かんだギャグ(らしきもの)を即座に落とし込む、というスタイルで更新しました。おかげで「越後製菓」とか今では絶対に採用しない類いの言葉や表現がバンバン出てくるので読み返すと結構息苦しくなるのですが、今の私がギャグシーンを入れたくなったときに書くようなシーンも少なからずあって、本作がなければ今以上にギャグの水準は低いままで来ていたのだろうと思います。

 

・安価の使い方、捌き方

個人的な2chの利用はVIPから始まっており、そのせいか「安価は絶対」という思想がかなり強く根付いています。

基本ラ!のSSしか読まない身からすると、SSにおける安価の絶対性がどれほどのものなのか測りかねていたため、おいそれと安価SSを書く気にはなれずにいました。加えて安価を採用する以上、どうしても劇場的な書き物になるため、私自身の筆致とは合わないだろうと自覚していました。

しかしそもそも「やばくなったら切り捨てればいい」という心持ちで書き始めた本作において、ここで試さなかったらもう試すチャンスはないだろうと思い、ここぞとばかりに安価を振り撒きながら駆け抜けてみました。(もはや第一声が安価)

その結果から言わせてもらうと、「SSで安価の絶対性はそこまで高くない」というのが正直な感想です。要は面白い話が書けていればいいわけであり、多少安価を意図的に曲解してしまっても、片鱗やヘリクツで適当に繋いでしまえば存外文句は上がらないということです。反対に、一人の読み手が連続して安価を取り、それを特別の理由なく採用していると結構な確率で不満が聞こえます。

と、この辺りのSSにおける安価観は本作でかなり勉強できました。またこの時期、ちょうど(?)安価に反応するタイプの荒らしがいたのですが、その方を含めた「安価SSの読み手」との付き合い方も学ばせてもらいました。(ちなみに私個人としてはその方を荒らしとまでは思っていないのですが、「荒らしだ」という意見が大勢を占めていました)

この後、割と安価SSを書くようになりますが、本作を完結まで持っていけてなかったとしたらそうはなっていなかったと思います。

 

・連載という書き方

約三週間、ほぼ毎日、かつ一日に複数回更新していました。バイトの身であり拘束時間が短かったためできた芸当ですが、そこまで極端ではなくとも、本作で得た「連載」という経験は非常に有意義だったと感じています。

平均して一時間半程度のことが多い通勤時間を、私は概ね書き物に費やしてきましたが、これが非常に「連載」と噛み合います。私は相当面倒くさがりというか気分屋なので、書き溜めをしようと思っていてもふとラ!板を覗いたが最後、そのまま一時間半スレをはしごして終わるようなこともザラです。が、ひとたび連載となると、1レス投下してしまえばもうその瞬間から読み手の方々が次の1レスを待つ体制に入るので、ひと区切りがつくまではイヤでもやめることができなくなります。しかしそうやってある程度強引に筆を動かさせられ続けることもそうですが、やっぱり、書くそばから反応を貰えるのはとても強く、1レス目さえ捻り出してしまえばどんどん筆が進むことの方が圧倒的に多いのです。

また、読み手の方々の反応がリアルタイムに見えるので、今書いているシーンがウケているのかいないのか、かなり正確に読み取れると感じます。盛り上がりに欠けるときはテコ入れで雰囲気を変えたり、予定より早くなってもそのシーンを切り上げたり。反対に盛り上がっているときはそのシーンを少し引き延ばしてみたり、ウケたのであろう要素を以降のシーンに取り入れてみたり。一人で粛々と書き溜めるのとは全く違う、「作り上げていくSS」が書けるのは連載の大きな強みです。

 

と、ぱっと思い付いたのは上記の三点です。

特に安価と連載の相乗効果は凄まじく、その場合シリアスよりもギャグの方が相性がいいため、後に書いた『黒澤ダイヤの実況』シリーズは本作なしには絶対に生まれ得なかったであろうことを思っても、とても大切な一作です。

 

 

第一話 旅立ちのみかんジュース編

せっかくなので各話を振り返る形で感想を書いていきますが、本作の大きな特徴として、『未完』という点があります。ノット orange.

ここで言う『未完』とは想定したストーリーが完結していないということではなく、「回収されていない設定や伏線が(大量に)残っている」ことです。次の話など一切考えていないので前者の意味での『未完』はわずかにもないのですが、後先考えずに思い付きで書き殴った結果として「ほのめかされたまま放ったらかし」の設定や伏線のようなものが結構大量にあります。ここでは私が思い出せる範囲で、その点にも触れていきたいです。

 

第一話、鞠莉とダイヤが事業を起こし企業活動を開始します。

ハイパー手探りで書いたのであまり掘り返すこともないほど無難ですが、果南はプー太郎(無職でふらふらしてる期間)が相当長かった、という設定があります。二人が起業に際し、すぐ傍にいたであろう果南に声を掛けなかったこと、また第三話の終わり際の千歌の台詞でも少しほのめかしています。

これをどう活かすつもりだったのか知りませんけどね…

 

第二話 友情のしいたけクエスト

果南が十千万に派遣社員として送り込まれ、なんやかんやでしいたけとの友情を育み千歌から免許皆伝されます。

もうすでに「なに言ってんの?」が止まりません。

ちょこちょこ描写していますが、千歌にはそれなりの社会人力を備えさせています。世襲とは言え女将としての立場を与かるからには相応の教育を受けているだろう、との目算からです。ちなみに千歌の「仕事に雑用なんかない、あるのは雑務」という台詞はかつて自分が感銘を受けた言葉です。言わせてみました。

求人票に関する教育は受けなかったんでしょうか。

 

第三話 幕間・あわてんぼうの女将さん

求人票を見た千歌が(株)みかんに来ちゃいます。

思い切った安価を取られて少々ビビりましたが、自分としても上手く捌くことができたと感じ、読み手の反応も上々だったのでよかったです。

求人票の教育を受けていないにしてもあんまりな間違い方だと思いますが、まだ人事に関する部分は任されていないのでしょう。千歌が自分で求人票の掲載を依頼しておきながらこのムーブを取ったのだとしたらさすがにやば過ぎるので。

たまたま鞠莉に紅茶を淹れさせていましたが、コーヒーを淹れさせていた場合どんな会話になったのか、細か過ぎてどうでもいいレベルのifですが興味があります。

 

第四話 産地直送函館みかん

聖良が(株)みかんの採用面接を受けにきて、無事合格します。タイトル下ネタじゃね?

求人票を掲載した瞬間に労基から電話が来ていますが、こんなこと有り得るんですかね。指導があるとしたら、労基から求人票を掲載した転職サイトへ、転職サイトから求人票の掲載を依頼した企業へ、という流れが順当に思います。正しいところは知りませんが。しかもサイバー警察かというような速度で反応しています、元々睨まれてたのかな?どうして私は自分の首を自分で絞めているんですか。

この聖良も、ややプー太郎の期間があったようです。果南ほど明確にその設定を考えていたわけではないように記憶していますが、聖良自身「自堕落な生活を送っていた」と発言していますね。なんだろう、私が転職期間中(=無職)だったからキャラにも同じ業を背負わせようとでもしてたんですかね。書き始めた時点で次の職は決まっていたはずなんですが。

昨今でこそ転職時のWeb面接はかなり市民権を得ていますがこのときはそんな風潮もなかったので、聖良しれっと函館から沼津まで採用面接のためだけに出向いていますね。アニメ本編のフットワークを思えば頷けてしまうのが怖いですが、…まあでも現実的に採用面接で地方から東京に出向くことはままありますか。ちゃんと交通費出たのかな。

個人的に、>>112 鞠莉「やっべ」 と、>>127 鞠莉「なに上手にマリーのせいにしてるのよ」 が気に入っています。

 

第五話 朝食は暗黒色で

聖良が朝ごはんを作ろうとして失敗します。

ここで例の安価反応型の荒らしがスレにいらして、その性癖を遺憾なく発揮し始めてくださいます。荒らしかどうかは置いておいて、単純に書くのが難しい内容で安価が取られるので結構考えなければならなかったことは事実です。

鞠莉の「せらりー」呼びは好評だったようですが、これ公式のどこかで採用されていましたよね?私が自分で考えた呼称ではなかったんじゃないかと思うのですが…。聖良は独り言で「せらりーのコトコト朝ごはん教室の始まりですよー」とかのたまっているので、割と気に入っていそうです。あまりこうやって気安く接してもらう機会がなく、あだ名らしいあだ名を貰ったのが初めてなので嬉しかった、と見るのが自然かなとも思っています。実際聖良ってクラスメイトとの距離感どんなものなんでしょうね。ちなみに張り切り過ぎて失敗しただけで、料理の腕は普通の設定です。次の日以降も料理当番を続投していることからもわかります。(どれだけ張り切れば卵焼きをダークマターにできるんですかね)

この話の途中でコテ(「社長」)を付けました。最初から「ぬし」コテを使っていなかったことが、やばくなったら放棄するつもりでいたことを暗に物語っています。いざコテを付けるという段階になってもしれっと新しいものを採用しているあたりどう考えても悪意があります。しかし本作が無事完結してくれたことで、「社長」も晴れて使っても大丈夫なコテとなりました。以降、安価系のSSを書く際にはここで使用したトリップを流用することが多くなっています。「ぬし」はよくも悪くも硬めの話を書く印象が強かったようなので、先入観を持たれないようにするためです。

なお各話のタイトルが最後に書かれているのは、書き終わるまで実際どんな話になるのか全く想定ができていないことと、「ここでこの話は終わりですよ」というのを明確に示すのが楽であることが理由です。

 

第六話 千歌とマリーと、時々善子

千歌が梨子への恋心を相談しに訪ねてきて、なんやかんやで鞠莉と一緒に善子の実家へ遊びにいきます。

いや、どういうこと?文章の前後繋がってませんよ。本作の話は一行に要約するとまじで「なんやかんや」での場転が多いので驚きます。ここまで理路非整然とした話は私の中では相当珍しく、ああ、ちゃんと意味不明な話も書けたんだ、と少し安心します。

意図せずここでちかよしまりトリオを書いているんですね。この三人組は割と書きやすく、後に(安価で指定されて)この組合せでのSSもそこそこの長さで書いています。その礎になったのかな、わかりませんけど。私はカプに強いこだわりがある方ではありませんが、(千歌のことは一旦置いておいて)よしまりは明確に「好きなカタチ」を自覚している数少ない組み合わせの一つです。鞠莉が善子に向けてすきすき光線を容赦なく浴びせていて、善子は割と冷たくあしらう、というのがそれです。この場合、恋愛感情の有無は問いません。また外せない要素として「善子も鞠莉のことが大好き(あるいは強く感謝しているなど)」があります。端的に言うと善子がツンデレなんですね。いつからかはわかりませんが、よしまりの最も好きなカタチはこれになっており、先に述べたちかよしまりのSS(『ちかよしまりで同棲してみた』)における鞠莉と善子の関係が私にとって一次二次含めた全ラ!供給の中で最の高です(非常におこがましいことですが)。本作のよしまりもそれに似た関係性になっており、この時点で好きだったものを無意識に書いたのか(当時その自覚はまだなかったはずです)、もしくは本作を書いたことでそれが確たるものとなったのか、真相は不明です。

ここで生まれた善子と母親の歪な関係性も、『未完』に手を貸す大きな一因です。いずれ続きを書くことがあれば必ず取り組みたい問題の一つですね。

>>217 で千歌がお願いするにあたって目力で訴えるシーンがすげえ頭悪そうで気に入っています。

 

第七話 鬼の居ぬ間に選択ミス

採用面接を受けにきた梨子の職業訓練としてドライブします。いいタイトルが付いたなと思っています。

この梨子は東京ドームのウグイス嬢をしているそうですが、第二話でも実家にいたようです。出現する頻度は高くないのでまだなんとも言えない段階ですが、まさか内浦から毎日東京ドームに通っているわけではあるまい…。しかしわざわざ沼津(にあるのであろうはず)の会社に採用面接を受けにくるあたり、なにか事情持ちの可能性も捨て切れません。オフシーズンの間は実家に帰省するのがスタンダードなのでしょうか。

読み返していてふと思いましたが、ダイヤは鞠莉を社長として相当きちんと立てていますね。もちろん旧知がゆえの信頼から来る部分は大きいのでしょうが、それを勘案しても、鞠莉の横暴というか無責任というかな指示や判断に対して文句は言うものの従うことが多いようです。第一話を振り返るに鞠莉は小原グループの中枢メンバーとしての顔も持っている感じがしますが、その上で『小原』と無関係と思しき小さな株式会社を友人と起こしたこと、その代表者はやはり鞠莉であること、この辺りは掘り下げてみても面白いかもしれません。その場合、恐らくほぼ間違いなく鞠莉ママを書くことになるはずですが、彼女には別の作品のおかげでなかなかの思い入れがあるので苦戦しそうな気配も強く感じてしまいます。

本作の聖良は賛否両論でした。否の理由は公式と比べて最もキャラクターが違うからでしょう。意図的に改変した部分は確かにありますが、なにより「新入社員」である様子しか描けていないため本来の個性を発揮する段階に至っていないことが最大の要因なのではないかと思っています。言うまでもなくこの聖良は鞠莉を始めとした主要キャラクターの誰とも(少なくとも会話をした相手とは)面識がなく、つまり本当にたまたま縁を得た会社に入社した新入社員でしかない状態です。もう少し物語中の時間が進めばいずれは私達のよく知る姉様が表に出てくるのかもしれません、まだ理亞も顔を見せていないので、本作の聖良を評価するのは(よくも悪くも)まだ早いと言えそうです。

 

第八話 善子・クライシス

果南がやらかした尻拭いに、鞠莉・千歌・善子がみとシーのお手伝いをします。

本作の中で一番私らしい構成の話だと思います。別に差し込みたいとかは考えていませんでしたが、例の安価取り荒らしと周りの読み手の方々を全員納得させるために頭をひねらせた結果ああいう話に落ち着きました。善子が鞠莉の家に住み込んでいるというなかなか不思議な状況を図らずも丁寧に回収することができたので、結果的にはよかったなと思っています。この話がなければそこも『未完』要素の一つとなっていたことでしょう。

ここで曜が初登場します、みとシーに就職してたんですね。マリンパークでも深海魚水族館でもないあたり、内浦住みなんでしょうか。専門学校で潜水士を取ったそうです。まさか大水槽で給餌するために取ったわけではないと思いますが、どういう進路設計なんだ、それは。しかししれっと果南も当然のように潜水士を「高校出てから取った」と言っていますが、もしや高卒から直行でプー太郎だったわけじゃないのか…?

>>629 善子「私だけ人間のお世話じゃないのよ!」 千歌「口が過ぎるよ接客業の場で」 は非常に好きな掛け合いです。

>>623のようにラ!無関係の曲を歌わせるのは、今では思い付いてもやらない気がします。…と思ったけど、『黒澤ダイヤの実況』ではたびたびキャラクターに歌わせていました。やや例外かもしれませんが。

一番気がかりなのは、水槽にアイスを一つ投げ込んだ程度のことで魚が全滅するのか、という点です。

 

第九話 善子と鞠莉の楽しい一日

本当に楽しかったかどうかは本人達に聞いてください。

 

第十話 善子ちゃん争奪オーディション

凸してきた花丸と鞠莉が善子を取り合ってオーディション()を行います。

本作最大のボリュームパートです。これぞ安価SS、というような話に仕上がっています。前話(前々話?)が若干シリアス成分を含んでいただけにここぞとばかりに思い浮かんだギャグ(のようなもの)をふんだんに取り混ぜたこともあって、とんでもない雰囲気が続いたなーと感じています。本作は各話のメインキャラを安価で決めていましたが、千歌の人気が非常に高かったようです。この人ちゃんと女将の仕事やってんのか。

花丸は記者だそうです。本を読むのが好きなのでそういう道もありそうですが、花丸にしては結構アクティブな職種についているなというのが感想です。一度転職を経ていることもわかっていますし、ここも掘り下げてみたい箇所の一つです。

…ここまでの書きぶりからお察しかもしれませんが、本作、本当にほとんどなにも考えずに書いているのです。再三言及しているのでもうわかったよと思っていることでしょうが、振り返っていて自分でも驚くくらい「お客さん」なんですよ、私。書きながら一行先を考えていたので、さっき書いていた一行に対する思い入れというか熱量のようなものを残すひまがなく、結果としてそもそも自分が書いたものだという意識があまり高くないのです。書きながら「へ~そうなんだ~」と同時に読んでいる感覚でした。物書きの端くれの端くれとしてその意識は問題だろうという指摘はごもっとも受け取るとして、しかし存外これは嬉しいことです。「(自身の作品を指して)この傑作に唯一の欠点があるとすれば、それは私が作者であることだ」みたいなことを言った人がいたと思いますが、(決して本作を「傑作」とまで言いたいわけではなく)自分の作品を作者としての先入観を持たずに読める機会はそうそうあるものではありません。しがらみなく自由に書いた当然の結果としてかなり好きな雰囲気ややり取り、要素が溢れた作品に仕上がったので、それをフラットに読めるのは単純にすごくラッキーです。唯一惜しむらくは、発端がネタスレであるためにSSとしての存在をあまり認知されなかったことです。もっとたくさんの方に読んでほしかったな。

えっとなんでしたっけ、第十話の振り返りの途中でした。

>>893から>>895の怒涛の流れはすごくいいなと思っていて、自分でも読んでいてクスッとします。いやあ、こんな面白いシーンが書けるなんて作者の人はすごいなあ!!

本話の途中で「カプ厨の思惑をことごとく平均化していく安価捌きがいい」と評価していただいています。言葉のセンスに若干の棘を感じるのは置いておくとして、初めての安価SSでその評価を得られたのは単純に嬉しかったと共に、実はかなり精密に私の意図を感じ取ってくださった感想なんですよね。

本作、そもそもをギャグSSとして書き始めたので、あまり恋愛要素を含ませるつもりはありませんでした。恋愛要素が含まれると当事者間のやり取りが毎度似たようなものになってしまい動かしづらくなるのと、恋愛要素関係を持つキャラクターが場面に揃うと話題がそこに持っていかれやすくなり勢いや展開の自由さが減ってしまうのが理由です。安価で明確に恋愛要素を引っ張り出された部分などは仕方がないので採用していますが、それ以外は自発的に取り入れていないはずです(千歌→梨子、花丸→善子、だけですよね?)。そういう意味で、先に明言してしまうのもやや心苦しいのですが、本作の中で恋愛要素を大きく発展させるつもりは今のところありません。例えば千歌と梨子が付き合ったりすると一気に関係性が固まってしまうので、その二人だけ異質な存在になってしまいます。せっかくこんなに自由に書ける作品の中で、できるだけ窮屈なものは持ちたくないんですよね、私が。どうしてもと言うなら別できちんとSSを書くのでそれはご意見フォームなどから送っておいてください。

と話が長くなっていますが、要は、このオークションの勝敗がどうあれ登場人物達の関係性を(主に恋愛方面において)大きく動かしたくなかったのです。とは言えギャグ安価SSで作者の都合で展開を最初から狭める形で舵取りするのはイヤだったので求められるままに安価オークションを実行しましたが、内心とてもヒヤヒヤしていました。どうなっていたとしてもなんとか読み手の方々を丸め込むことに苦心したとは思いますが、上手いこと着地してくれて本当にほっとしました。

ちなみに本作の鞠莉→善子の強い愛情は恋愛感情ではありませんよ。

 

最終話 私達の日常

果南が昇給します。

ここの果南は随分ノリがよくて、三年生三人の絡みがこれでもかとギャグに振り切っているのがいいですね。「契約更新」とか、普段の私なら狂ったような速度で駆け寄ってきてクソ真面目に書き上げるところですが、こんなテンションで書き通せるのは本作くらいのものでしょう。しかし期間満了を待たずして自ら契約料金の引き上げを申し出るって十千万旅館やばいですね。直接雇用した方が安いぞ絶対。

安価を取った方の意図に沿ったかは不明ですが、経営成績が可もなく不可もなかったことに決まったので、比較的穏やかな最終話となりました。絶好調だった場合、絶不調だった場合、いずれにしてもダイヤがいらぬ気苦労を背負い込んでいたような気もするので、優しい世界でよかったです。当時意識的していたのか、最終話にも関わらず内容が「決算」の話に社員ではない善子を出していないのはなんだかきちんとしている感じがしますね。えらいぞ。梨子はドームか?

たびたび指摘された点として善子と聖良の不仲(と思しき関係)があります。善子からは(本人がいないところで)「ポニ子ちゃん」と呼んだりしていて感情が読み取りづらいところですが、聖良は仲良くなりたいと思っているようなので、日常が続けばいずれ距離は縮むはずでしょう。たぶん。

 

おまけ esculent YOU

ルビィと千歌で曜の家にお泊まりします。

ルビィがおまけにして初登場しました。これでサンシャイン関係で未登場の主要キャラは理亞だけになりましたね。

時系列としては当然『第八話 善子・クライシス』より後のことで、このとき久し振りにキャッキャしたことで再び頻繁に連絡を取り合うようになった千歌と曜、という意識で書いた記憶があります。しかしこの話を見るに、曜は沼津市街の付近に住んでいますね。なぜみとシー勤務なんでしょうか。(掘り返す)

相当オトナになったルビィが出てきており、なかなか強烈な存在感を発揮しています。おまけが完結すると同時に残っていたレスが即行で埋められてしまい、このルビィに対する皆さんの感想や意見を貰えなかったことは残念です。ダイヤが(株)みかんにいるということは…?という観点で思考を拡げたらこんな形に落ち着きました。相変わらず黒澤邸に住んでいるとのことで、曜とルビィ、花丸・善子とルビィはそれぞれ縁は続いていたようですね。曜はスーパー勤務の黒澤(こくざわ)さんとしてたまに会うことがあったようで、なんか地元って感じがしていいなあ。いや待て、なんだこくざわさんって。誰だ。まさか雇用契約を偽名で結んでいるとは考えづらいので、店長などに事情を話した上で「こくざわさんとして扱ってもらっている」ということですかね。

>>986 ルビィ「わたしが追い出したんだ。お姉ちゃんを、実家から」 ルビィが身の上を語る部分は本作にそぐわない雰囲気をしていますが、特にこの台詞は結構重く突き刺さります。あくまでもおまけだから出せた雰囲気かもしれません。黒澤家次期当主を巡ったこの経緯も『未完』要素と言えばそうですが、ルビィの独白だけで充分な気もしますし、本作の雰囲気から考えてもあえてストーリーを描くことはきっとないのでしょうね。こういう重い話の方が筆の進みがいいのですが。

ちなみにタイトルの『esculent』はカタカナで書くと『エスキュレント』という読みになり、形容詞として『食用の』『食べるのに適した』のような類いの意味を持ちます。本編の文中はともかくSSのタイトルなどに一般的に認知度が高くなさそうな英単語を使用することは普段あまりないのですが、こういう部分でも思い付いたものを遠慮せず採用していたんですね。『YOU』を素直に訳すのか曜と見るのかで、意味が結構変わってきます。曜の場合、さてこのタイトルの意図は………。

ところで『黒澤邸』って気付いたら使っていたのですが、発祥はどこですか?

 

 

全体を振り返って

と~~~~っても自由に書いたんだな、自由というより無責任に書いたんだな、というのが一番大きな感想です。

普段やらない(主に思い付いても遠慮して採用していない)ことを存分にやったので私の歴史の中でもとりわけ異質な一作となっていますが、でもやっぱり楽しく書いた記憶が強く残っています。じゃなければスレ完走までしないと思うんですよね。

主要キャラが全員出てくるのが原因か、世界観の拡がりが他の作品に比べてもかなり大胆な感じがします。おかげさまで未完なのですが。

実はスレ完走から程なくして次スレを(今度は自分で)立てて少し続きを書いたのですが、保守を怠り早々に落としてしまいました。それからは他の作品をまた書き始めたりしたせいで結局お蔵入りになったままです。今回改めて未完であることを強く実感できたので、やはりいつか続きを書きたいですね。書いたら書いたで未完要素が増えるだけなんでしょうけど。

本作はスレの発祥を理由とした圧倒的な知名度の低さがあるので、願わくば今からでももっと多くの方に読んでほしいというのが私の欲求です。そのためにはこのサイトを広く認知してもらう必要があるわけで、SSを書いたり絵を描いたりしてなんとか誘引を起こすか…と決意を新たにして、この異常な長さの裏側を〆ようと思います。

 

 

頂いた感想(ラ!板、ツイッター)

SS総合で感想を求めたところ、頂いたものです。

・安価捌き上手いし面白い。もっと自信持って書いてくれ

・ネタスレなら新規にスレ立てしろし。内容は悪くないんじゃない?安価の取り方にちょい難アリだったけど徐々に調整してたし捌き方もよかったと思う。派遣設定で鞠莉とダイヤが登場しにくいからそっちをフォーカスするというのも善子。でも社員数少ないから序盤は全員行くでってやると会社組+α(派遣元)の描写ができて面白かったんじゃないかなーって。ただ、個人的には安価の宿命であるキャラ崩壊はもう少し抑えてほしかったかなと

 

・鞠莉社長SSが面白いことになってる